幻想籠球録~低身長バスケ部の記録~   作:Uさんの部屋

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前回までのあらすじ
優との口論で、美矢はバスケに対しての本音を吐露する。だが、堕ちるところまで堕ちた自分には出来ないと言って、自分からいじめ等のことを自白し、謹慎処分を受けるのだった………


第31話 アンタなら出来る

それから3日、美矢は巫魔病院へ足を運んだ。無論、明日香の件で呼び出された為である。優によって心の内を明かされてしまった美矢はこれまでの悪評が嘘のように覇気を失い、萎れた様子で明日香の病室へと入った。

 

明日香「あっ、来た」

 

病室には明日香と、優と優真の3人がいた。尚、大人などはいない。

 

美矢「失礼する………しかし、何故お前達以外に人がいないんだ………?」

 

自分のような要注意人物なら、大人の1人や2人はいるものだと思っていた美矢は、意外そうな様子で首を傾げていた。

 

優「アンタと本気で話をする為に席を外してもらったんだ。ま、部屋の外からチラチラ覗いてきてるけどさ………」

 

優はそう呟くと席を立ち上がり………

 

優「ちょい黙らせてくるよ。明日香、優真。話したい事があるんだろ?」

 

そう言って後を明日香と優真に託し、病室を出た。3人とも、すぐに口を開ける状態では無かったが、少しして、最初に明日香が口を開いた。

 

明日香「………優の話を聞いてさ、天野さんの中学時代のビデオを見せてもらったんだ………凄かった。優が憧れるのも分かるなって思ったよ」

 

どうやら、この3日の間に優から美矢に関してのビデオを借りていたようで、彼女が大活躍していた時期のプレイを見て、単純に感心していたようである。

 

美矢「………昔の事だ。それに、もう3年近くバスケを離れて………情けない事に不良までやって影美の事をいじめちまったし………悪いが、何も凄い事じゃない。完全に過去の栄光でしかないんだよ、それは………」

 

美矢は先日の態度が嘘のように、申し訳なさそうな様子で明日香に言葉を返した。

 

明日香「………私にはそうは思わないよ。だって私の足を踏んでいた時、どこか悲しそうだったもの。自分の好きだったものを汚す申し訳なさみたいなのが感じられたから」

 

だが、明日香は美矢の言葉を否定した。

 

美矢「………確かに出来る事ならもう一度バスケがしたい。チヤホヤもされなくていい。ただ単純に、自分のバスケがしたい。けれど、どうせバスケ部では私の事で持ちっきりだろう? ………尚更入れない」

 

美矢は出来ないと言う理由を口にした。

 

明日香「………確かに難しいかもね。うちのチームは割と仲間想いだし。けど、私は思うよ………アンタなら出来る………少なくとも私は、アンタの………天野美矢のバスケが見たい」

 

すると明日香は彼女のバスケが見たいと呟いた。

 

明日香「私だってそう簡単にアンタの悪行を許す気は無いよ。けれど、自分の好きな物を嘘ついて欲しくは無い。だからこそ、私はアンタのバスケが見たい」

 

明日香はそう言うと、近くに飾ってあった12番のユニフォームを美矢に投げ渡した。

 

明日香「私も頑張って復帰する。だから、それまでそのユニフォームを守っていて欲しい」

 

どうやら、明日香は美矢の悪行は許さないが、バスケ選手としての彼女を知り、憧れた為に彼女のバスケ部加入を望んでいた。明日香の中では憎んでいる部分と望んでいる部分と、矛盾に近い感情だったが、それでもバスケ選手として彼女をチームに入れるべきと考えていた。

 

美矢「………アンタ、確か明日香って言ったっけ………良いのか………? これはアンタのユニフォームだろう?」

 

これには美矢も困惑していたが、明日香は迷わずに頷いた。それを聞いた美矢は………

 

美矢「………影美はどう思うんだ………? やっぱり私には相応しくないだろうか………?」

 

優真に自身が加入すべきかを問いかけた。美矢は彼女が嫌なら明日香の申し出を断ろうと考えていた。しかし、優真の答えは違った。

 

優真「ダメ………とは言いません………やるなら………条件が2つあります」

 

なんと、条件付きでそれを承諾するというのだ。

 

美矢「条件………?」

 

美矢は条件を問いかける。少しして優真は条件を答えた。

 

優真「これまで傷つけてきた人に謝る事………それと、本気で私を気にかけてくれているなら………私に………バスケを教えてください………!」

 

その条件は、これまで傷つけた人物達への謝罪、そして自分にバスケを教える事だった。優真の口からそんな条件が出ると思ってなかったのか、美矢は驚きを隠せなかった。

 

優真「天野さん、初めて私と貴女が顔を合わせた日は未だに覚えています………貴女が1人でバスケットボールを触っていたのが………初めて会った時でしたよね」

 

優真は困惑する美矢に対し、そう話しかける。

 

美矢「けど、その時の私は………練習を見られたっていうガキみたいな理由でアンタの事を………!!」

 

その直後に美矢はそう言って慌てる様子を見せるが………

 

優真「キャプテンとの言い合いで分かったんです。どうしてあの時ボールを触っていたのか………それは、バスケが今も好きだから………私だってこれまでの事を許すって言うのは難しいと思います。けれど、明日香先輩と同じで………私もバスケ選手としての天野さんが見たい。仲直りは………バスケをやっていくうちにしたいなって思うんです」

 

優真は優しい声で美矢にバスケをして欲しい事を願う。

 

美矢「影美………」

 

美矢は手元のユニフォームを再び目にする。すると直後に優が戻ってきた。

 

優「失礼。天野美矢、アンタの事で学校の教師からお達しだ。被害者の明日香と優真が彼女にバスケをやらせて欲しいと直談判した影響で、明日から謹慎を保留にするとの事だ………バスケ部部長、白宮優の責任において………と」

 

なんと、美矢の謹慎を、優の責任で保留にするという話だった。

 

美矢「どうして………どうしてそこまでするんだよ………!?」

 

優達3人の対応に困惑する美矢。すると優は美矢の手を掴み………

 

優「………単純にアンタのバスケが見たいからだよ。贖罪は僕も手伝う。それにアンタはまだ高校生だ。やり直すチャンスはまだあるよ。それに………僕も一発アンタに攻撃与えちゃったしな」

 

そう言って彼女を励ました。

 

美矢「(………もしもの話だけれど………こんなキャプテンと仲間の元にいれば………私も少しは真っ当な人間に戻れるかもしれない………)」

 

優達の心の広さに感服した美矢は優の手を掴み………

 

美矢「………こんな問題児だが………私を仲間に入れてくれ………キャプテン、優真、明日香………!」

 

3人に加入の意を見せる。

 

優「勿論。ようこそ、巫魔バスケットボール部へ………!」

 

優はそれを受け入れる。優真と明日香もまた、それに納得するように頷くのだった………

 

 

 

優達3人は美矢の真意を聞き、彼女の改心と共に、まだ蟠りこそあれども、彼女をバスケ部に入れる事となった。だが、積牙や光一以上の問題児とも言える彼女がバスケ部に入る事により、更なる問題が発生する事になるのだが、それはまた別の話………

To Be Continued………




次回予告
翌日、優は美矢をバスケ部に連れて行く。入部を認めた優達も覚悟していたが、彼女の加入には賛否が別れ………?
次回「俺は嫌だね」
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