幻想籠球録~低身長バスケ部の記録~   作:Uさんの部屋

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前回までのあらすじ
ゲーム中盤、積牙は個人プレイに走ってしまったことで、優の罠にハマり最後のファールを取られてしまった。積牙に怒りと心配の様子を見せる優。部としても、積牙を受け入れられない雰囲気を見せ始める中、優は監督のゆうかに練習試合を組むよう依頼。そして決まった対戦相手は、選手身長平均が180cm越えの昨年の県大会ベスト4の相手、力豪高校で………!?


第4話 勝つ為に君が必要なんだ

1週間後、優達は部活メンバー全員を引き連れ力豪高校へとやってきた。もちろん、積牙も一緒だ。学校の正門に行くと、力豪の選手数人と、監督が出迎えに来ていた。

 

ゆうか「今日は突然練習試合をお願いしてごめんね、由乃。」

 

由乃「ううん、気にしないで。元々今日は練習しか予定が無かったから、練習試合をしにわざわざ来てくれて嬉しいわ。」

 

そう言ったのは、ゆうかとはかつてのチームメイトだった、道標 由乃(みちしるべ ゆの)。現在は力豪の監督をしている。

 

??「よく来てくれた。キャプテンの滝川 秦(たきがわ しん)だ。」

 

優「白宮 優です。本日はよろしくお願いします。」

 

2人は握手をかわす。

 

積牙「(すげぇ………道標 由乃………強豪校で監督をやっているとは聞いていたが、まさかこの学校だったとは思わなかった………)」

 

積牙はそんな事を考えていた。

 

滝川「………? そういえば………優くん、だったかな?」

 

優「はい、どうかしましたか?」

 

積牙「男子は君だけなのか? 去年の大会では、1、2年にもまだ数人男子がいたはずだが………?」

 

優「その事ですか………僕以外の男子は集団万引きをやらかして捕まりました。」

 

滝川「しゅ、集団万引き………」

 

滝川は明らかに引いていた。なんなら、後ろにいる力豪バスケ部の部員は笑っていた。

 

滝川「うちのチームは背の高い男子の方が多いから、不公平かもしれないけど、まあ宜しく頼むよ。」

 

優「お手柔らかにお願いします。」

 

2人はそう言い合って挨拶をかわした………

 

 

 

その後、一行は体育館へと移動。今回の試合はフルコートで執り行われるようだ。今回のユニフォームの色は、優達が白、力豪高校が赤だった。

 

ゆうか「さて、今回の相手はかなり凶悪。高校バスケの中ではかなり強いよ。それに、まずは相手チームの出方を見ないといけないし、うちの主力の優くんと春香ちゃんのスタミナを考えて、第1Qは2人抜きで様子を見て、残り時間に向けての情報収集をするわよ。」

 

積牙「ちょっ、ちょっと待ってください! 第1Qを捨てるつもりなんですか!? 俺が第1Qから出ればその必要は………!」

 

ゆうか「別に捨てる訳じゃないし………そもそも君はスタメンじゃないよ。今日はベンチスタート。」

 

積牙「そんな………!!」

 

春香「勝負は第2Q以降………という訳ですね。」

 

ゆうか「そう、それにうちには戦力になるCがいないから、リバウンド勝負になったら、勝てるのは優くんくらいしかいない。うちのチームに最も足りない弱点を相手が突いてこない訳が無いわ。そこで………こっちは敢えてそれをバラして戦うわよ………! 今からスタメンを発表します。」

 

今回の巫魔のスタメンは以下の通り。

 

7番 PG 雷 美咲

11番 PF 佐野 伊吹

12番 SF 夢野 明日香

15番 SG 風野 鈴香

16番 SF 水野 由香

 

 

全体的に身長が低めで、主にジャンプシュートが武器となる編成だ。

 

ゆうか「試合の流れは私がしっかりと見るわ。皆は自分の役割をこなすように戦って。」

 

5人「はい!」

 

スタメンに選ばれた5人は高らかに返事した………

 

 

一方、力豪高校側は………

 

由乃「いい? 相手は確かに県でも聞いた事がない学校だけど、うちのチームのスローガンは『常に全力』よ。例え相手がネズミや兎でも全力で倒すわよ!」

 

選手達「はい!」

 

由乃「よろしい。では、今日のスタメンを発表します。」

 

由乃が選択したメンバーは以下の通り。

 

 

4番 PF 滝川 秦

5番 SF 月宮 誠

6番 SG 笹掛 美代

7番 C 鈴木 聖矢

8番 PG 山田 悠介

 

 

と、このチームのベストメンバーである5人を選択した。特徴としては、6番の笹掛が唯一の女子であり、4番の滝川、5番の月宮と共に、昨年レギュラーメンバーとして戦っていた強力な選手である。

 

月宮「しかし、相手は主力足りうるメンバーは殆どベンチだ。舐められているのか?」

 

笹掛「知らないわよ、そんなの。アンタこそ、相手が女の子だけだからって、鼻の下伸ばしてデレデレしないでよ?」

 

月宮「ふん、俺がそんな事………スルワケナイダロー!」

 

片言になったあたりで、月宮は完全に鼻の下を伸ばしてデレデレしていた。

 

鈴木「月宮さん、デレデレじゃないっすか………」

 

笹掛「第1、このチームには紅一点のあたしがいるんだからね?」

 

月宮「いや、お前の事は女としてみてねえから。」

 

月宮の無神経な言葉で、笹掛は問答無用で月宮を殴った。

 

笹掛「このクソ男が!! アンタ独身決定だよ!! というか、試合に出られなくしてやろうか!!」

 

月宮「痛い痛い! というか、女として見られたいならもっと女らしく振る舞え!!」

 

笹掛「うるさい!! デリカシー0のクソ野郎が!!」

 

滝川「落ち着けよお前等………喧嘩なら後でゆっくりやってくれ。相手さんはキャプテンすら出してこない状態なんだから………なら、嫌でも引きずり出すぞ。」

 

笹掛「そういえば………相手のキャプテンってあの白髪の人?」

 

滝川「そうだ。白宮 優くん。あれでまだ2年生らしいぞ。」

 

笹掛「白宮 優くん………アンタよりもずっと紳士そうね、月宮。」

 

月宮「誰に向かって言ってんだこの女が………!」

 

滝川「そうやってすぐ喧嘩すんなって………」

 

山田「………キャプテン、そろそろ出ないと本当にマズいかと………審判から『早くしろ』といわんばかりの視線を送られてます………!」

 

滝川「お、おう! そうだな………!」

 

滝川は1度大きく息を吐くと………

 

滝川「行くぞ、お前ら!!」

 

4人「おう!!」

 

こうして、力豪最強メンバーがコートに出場した。

 

優「いやあ………こりゃきついかもしれないですね、監督。」

 

ゆうか「元から楽に勝てるなんて思ってないわ。でも、力豪のあの5人は全国クラスの最強メンバーよ。多分、思ったよりも速く、最近組んだばかりのこっちのベストメンバーを引っ張りだされちゃうかも………」

 

積牙「ベストメンバー………? いったいそれはどの5人を………」

 

積牙が質問しようとした時、試合開始の笛が鳴り、ジャンプボールで試合が始まった。伊吹は奮闘するが、Cの鈴木には届かずに押し負けてしまった。

 

鈴木「山田!!」

 

ボールはPGの山田に渡り、すぐ巫魔高校メンバーがマンツーマンディフェンスで守りにつくが………

 

月宮「キャプテン、ここは1発ご挨拶をすべきじゃないか?」

 

滝川「ふっ、いいだろう。山田、回せ!」

 

伊吹「何っ!?」

 

滝川をマークしていた伊吹は目を丸くする。山田は軽く頷くと、ゴールの上辺りにボールを投げ飛ばした。

 

伊吹「(高過ぎる………! 高い身長でボールを取る気か………!?)」

 

伊吹はそう読んでいた。しかし、滝川の行動は予想外のものだった。滝川は大きく飛び上がると、空中でボールを受け取り、そのままツーハンドダンクでゴールに叩き込んだ。

 

伊吹「ア、アリウープだと………!?」

 

優「初っ端から派手なご挨拶だ………」

 

優は滝川の派手なパフォーマンスにある意味感心していた。と、同時に、PFとしてのライバル意識が芽生える。

 

のぞみ「(滝川 秦………身長193cm、体重78kg。PFとしては優と同格………いや、基本ができる時点で、優以上と見るべきか………)」

 

のぞみはPGとしての観察眼を活かして、力豪の各選手の様子を見る。彼女の観察眼が次に働いたのは、第1Q開始から2分半が経った頃。PGの山田が美咲を相手に上手く立ち回る。

 

美咲「くっ………!!」

 

山田「(………素早い。俺がこれまで対峙した敵チームのPGの中で振り切れない相手は初めてだ………)」

 

のぞみ「(山田 悠介。身長183cm、体重62kg。ベストメンバーの中で2番目に小柄ながらも、回転の速い頭でチームを回す強力な司令塔………そして………)」

 

山田が保持していたボールはSGの笹掛に回り、笹掛は素早いスピードでシュートを放つ。

 

のぞみ「(笹掛 美代。身長165cm、体重44kg。チーム唯一の女子であり、スリーポイントシュートまでのフォームが極端に速い。破壊力とボールのスピードが武器の春香とは違う意味で厄介………)」

 

ここまで3人の選手に注目したのぞみ。そして、次に注目したのは、巫魔のオフェンスリバウンドを力強く奪う力豪のC、鈴木だった。

 

鈴木「おっしゃあ! 山田!!」

 

のぞみ「(鈴木 聖矢………身長 198cm 体重81kg。2年生でありながら、県で一二を争う強力なセンターと呼ばれている。リバウンダーとしての基礎、パワーが兼ね備わったことから、強力なリバウンダーとも言われている………うちのチームであんな奴にリバウンドで相手になるのは………彼しかいないわね。)」

 

のぞみは優の方を向いた。優はポカーンとした顔で、のぞみを見返した。

 

のぞみ「(………こんな馬鹿面の奴だけがうちのチームで県トップクラスと相手になるなんて、バスケットの世界は分からないわね………)」

 

のぞみはそう考えながら優に呆れていた。すると………

 

山田「月宮さん!!」

 

ボールはSFの月宮に渡る。

 

月宮「ナイスパス………よっと!」

 

月宮は正面に明日香と由香の2人がいながらも、フックシュートを放ちこれを決めた。

 

のぞみ「(月宮 誠………身長191cm、体重77kg。県でも相手になる人物は殆ど居ないSF。例え2人や3人だろうと並の相手なら決めに来る。そして大抵の確率で入る。力豪のポイントゲッター………力豪はわかりやすく言ってしまえば、優を×3と春香を×2して合計したと言ってもいい程のチーム………ふざけてると言っても過言じゃない………しかし、県や全国クラスとなればそんなのは当たり前。やはり、レベルの差が目立ってしまう………)」

 

のぞみがそんな事を考えている間に、第1Q終了のブザービーターがなる………滝川がダンクを決めた直後の事だった………

 

 

 

そしてインターバル。第1Qというのに、14vs42の大量リードを許しており、美咲達5人の息も上がっている。

 

優「………監督、第1Qにも関わらず、美咲達の負担がここまで出ています………こっちもベストメンバーで行かないと負けます。」

 

ゆうか「そうね………いいわ、こちらもベストメンバーで行きましょう。」

 

ゆうかはそう言うと立ち上がり、テーブル・オフィシャルの方に行き交代を要求。

 

審判「巫魔、メンバーチェンジです。」

 

審判がそう言うと、ベンチから4人が立ち上がった。そして、優は積牙の前に立ち………

 

優「出番だ、積牙くん。」

 

積牙「俺が………ベストメンバーの1人………?」

 

優「出たがってたくせに何ポカーンとしてんだか。力豪はマジモンの強敵。ハッキリと言う。勝つ為に君が必要なんだ。出てくれるね?」

 

積牙「………また俺が個人プレイに走ってもいいのか?」

 

優「………珍しい。腐ってると思ってたんだが。」

 

積牙「………俺なりに反省して考えたんだ………昔も同じ経験をしたことがあったんでな………俺は中学3年の時に、ポイントゲッターとしてチームの中で大活躍していた。調子のいい時なんか、1人で60得点を上げてしまう時まであった程だ。しかし、いつしか俺はチームから浮いてしまっていた。味方がパスを回してくれなくなった………同中のメンバーのうち、高柴以外は着いてきてくれなくなった。」

 

優「高柴………あの時のCの男か。」

 

積牙「………そして、いつからか………俺が決めればいいという考えに至った。それが1週間前のあのザマって訳だ………ふん、こんな事、アンタに言ったって無駄だよな。」

 

優「………」

 

優はどこか不思議な表情を浮かべていた。バカにされたり、説教されたりすると考えていた積牙は疑問に感じていた。

 

積牙「………おい?」

 

優「………悪い、昔を思い出していた。それに………君の気持ちはよく分かる。僕も………バスケで仲間から孤立したくなんか無い。」

 

積牙「………まるで既視感満載の言い方だな。」

 

優「まさか。僕は君みたいにジャンプシュートすら出来ない。どうやって君と同じ孤立方法ができるんだ。」

 

積牙「それもそうだな………」

 

積牙はそう言って立ち上がると………

 

積牙「………それと、1週間前と2週間前………そして、今の今まで………生意気言ってすみませんでした………キャプテン!」

 

優「………!! まさかたった2週間足らずで改心するとは思って無かったよ………積牙………お前、ここまでの態度が全部演技だったとか言わないよな? 演技なら今すぐここで叩きのめすぞ?」

 

積牙「………ち、違いますって!! というか、それって俺に何の得があるんですか!?」

 

優「それもそうだ。」

 

優がそう言うと、2人は思わず笑い合ってしまった。そして、その様子を静かに見ていたゆうかは………

 

ゆうか「………話は纏まったみたいだね。PG 9番のぞみちゃん、SG 5番春香ちゃん、SF1人目 8番レイちゃん、SF2人目 10番 積牙くん、PF 4番優くん。貴方達5人が今回のベストメンバーよ! 力豪に見せてやりなさい! 私達の底力を!!」

 

5人「はい!」

 

上記の事を口にし、チームを送り出した。

 

滝川「おっ、来たか………ベストメンバー!!」

 

優「行くぞ、皆!!」

 

4人「おー!!」

 

遂に巫魔側もベストメンバーを投入。果たして、このピンチをひっくり返すことが出来るのか………!?

To Be Continued………




次回予告
ベストメンバーの投入により、巫魔高校は力豪を相手にまさかの優勢に立ち回る。だが、第2Q中盤、タイムアウトを取った力豪の監督、由乃は策に出る………!!
次回「反撃だ!!」

今回のバスケ用語解説
初めまして! 今回の解説を取り扱う事になった江野 積牙です。皆さん、この前は大変お見苦しい所を見せてしまい大変申し訳ありませんでした。さて、今回はユニフォームについての話をさせて頂きます。ユニフォームには淡色と濃色の二種類が存在します。これはどういう意味かと言いますと、淡色は白色、濃色は色付きと考えて頂ければ分かりやすいと思います。そして、試合では淡色と濃色で両チームを見分けられるようになっています。何故こんな制度になっているかと言うと、1番は審判が見分ける為です。審判はバスケにおいて迅速な判断や判定を求められるので、チーム名やユニフォームでわかりにくいとなっては、混乱が生じてしまいます。その為、それらを分かりやすくしているのが、このユニフォームという訳です。濃色で選択出来る色は濃い色であれば何でも構わず、例えば、俺の所属する巫魔なら黒、力豪は赤だったりと、色については様々であると言えます。色については、淡色とはハッキリと違うものならば特に指定は無いので、青や黄色、緑にすることだってできるんですよ。
今回の解説はいかがだったでしょうか? 次回はチームメンバーの誰がバスケットボールについて解説してくれるか、非常に楽しみです! では、僕は今回はこの辺で! さようなら!
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