日が傾き、街は黄昏に染まっている。ダンジョン帰ってきた冒険者が、仕事を終えた労働者達が酒盛りをしようと道を行き交い賑やかになっていく。
ここ、迷宮都市オラリオの北西に位置するステンノ・ファミリアのホームでも、夕食をとろうと人が集まっていた。
ホームの中。庭に面した窓のそばに、団員の一人である転生者の渡辺綱がたたずみ外を眺めていた。
「渡辺さーん。そろそろ、夕食の時間です。みんな食堂に集まり始めてますよー。
そんなところで何してるんですか?」
廊下の向こうから沖田が近づいていく。渡辺と同じように窓の外を見てみると、庭で1人の男が長い刀で素振りをしていた。
「アサシンさんですか。あいかわらず刀を振り続けてるんですね」
「ああ、朝から一日中ああしているらしい」
「あれで、本当に強くなれるんですかねー?」
「転生者の強さは元となった英霊の逸話などに依存している。新撰組として斬り合いをしていた沖田総司や鬼を相手に戦っていた渡辺綱ならば、ダンジョンでモンスターを斬り殺していればそれなりに体が馴染んでくる。しかし、Fateの世界における佐々木小次郎は山の中で1人刀を振るい続け、燕返しを習得したといわれているからな。だから、燕返しを習得するまではああやっているつもりらしい」
「いやー、先の長そうな話ですね。もしかしたら、一生かかるんじゃないですか?」
「それが、そうでもないらしい。ステンノと技術班の話だと既に宝具レベルの再現に届きかけているらしい。そう時間はかからないかもしれないぞ」
「それは、なんともすごい話ですね。
って、それより早くいかないと夕飯が無くなっちゃいますよ。アサシンさんにも声かけて早く行かないと」
そうして2人は、庭にいるアサシンにも声を掛けながら食堂に向かっていった。
次の日の朝早く、渡辺が庭に出ると佐々木小次郎が昨日と同じように刀を振るっていた。
「相変わらずだなアサシン。視界に入るといつも刀を振るっているな」
「ああ、渡辺殿か。いや、私には刀を振るうことしかできなくてな。しかし、昨夜月明かりの下刀を振っていたらようやく燕返しが完成してな。興奮を抑えきれず一晩中刀を振るってしまった」
「……もう、燕返しが使えるようになったのか?早すぎないか、それは」
「この世界に来てからひたすら刀を振るい続けたからであろう。それしかしてこなかったからなぁ。
私も、そろそろダンジョンに潜ろうかと考えている。その時は、先達として世話になるぞ、渡辺殿」
「ああ、そのときはよろしく頼む」
2人が話していると、近づいてくる者がいた。
「2人ともここに居たんですね。アサシンさん、ドクターたちが呼んでましたよ。何か話があるらしくて」
「ふむ、もう気づかれたか。いや、伝言感謝する。すぐに、行くとしよう」
そう言って、佐々木小次郎はその場を後にした。
「渡辺さん、渡部さん。アサシンさんに何かあったんですか?いつもと雰囲気が違いましたけど」
「ああ、ついに燕返しが完成したらしくてな。話もそのことに関してだろう」
「えっ、もうできたんですか。その話をした昨日の今日でって、早すぎないですかね」
「まあ、アサシンほど宝具の再現を目指していたやつはいないからな」
「うーん。私はいまだに使える気配すらないんですけどねー。もっと、ロールプレイを意識したほうがいいんですかね?」
「個人差もあるだろうし、ほどほどでいいのではないか。今でも十分な強さは持っているしな」
「それもそうですね。それじゃあ、今日もダンジョン攻略に励みましょうか。モンスターを斬るのは楽しいですし、強くもなれるから一石二鳥ですね」
「ああ、そうだな。今日も行くとするか」
ステンノ・ファミリアでは役割ごとにおおまかなグループに分けられている。中でもダンジョンに潜る者達は戦闘班と呼ばれている。戦闘班の団員はソロまたはグループでダンジョンに潜っている。転生者達は癖の強い者が多く、集団行動に向いていない。そのため、ソロで潜る者が多い。ただし、ダヴィンチを初めとした技術班により作成された、この世界においてはチートといえるアイテムの数々により不便を感じている者はいない。英霊の能力は千差万別であり、自分の能力を活かすことを転生者達は楽しんでいる。
しかし、そんな転生者達でも、ダンジョンには数日おきに潜っている。1度ダンジョンに入った後は、数日間を休息や装備の点検に当てる。そのため、連日のようにダンジョンに向かう渡辺と沖田の2人は転生者達の中でも戦闘好きの変人としてひとくくりにされていた。
そんな2人は、今日もダンジョンに潜ろうとしている。結局のところ、戦闘狂という点では似たもの同士な2人であった。
転生者達は、基本的にFateのキャラとしてロールプレイをしています。なので、口調に違和感を感じてもあまり気にしないでください。