ステンノ・ファミリアにより経営されている飲食店がある。その店は、ファミリアの運営資金のためというよりは、ある転生者の趣味のために開かれた。
メインストリートに面した一角にあおの店はある。店名は『泰山』。Fate stay nightにおいて言峰綺礼がよく通っていた冬木市にある中華料理店『紅洲宴歳館・泰山』にあやかって付けられた名前だ。そのため、メニューは「麻婆豆腐」や「炒飯」を初めとした中華料理で占められている。
時刻は夕方。大通りに面していることもあってか店内はなかなかに賑わっている。店内では、店員が注文を聞き給仕を行っている。しかし、彼らの多くはステンノ・ファミリアに所属しているわけではない。ファミリア所属の団員は2人。厨房で大量の料理を作っているタマモキャットの転生者、店員兼用心棒として紛れ込んでいるクーフーリンの転生者の2人である。この2人は、ファミリア幹部の教授により店の経営を任されていた。
「おーい、店員さん、麻婆豆腐2つ」
「いやー、珍しい料理が多いって聞いていたが結構いけるな」
「ああ、ステンノ・ファミリアの巣窟だなんて噂もあったが、そんな雰囲気もないな」
「どうせ、ガセだろ」
「でも、実際、団員はよく見かけるらしいぞ、セイバーとかいう奴とか」
「そいつ、料理店ならどこにでも出没するんじゃなかったか」
「あれ、そうだったっけか」
客達は、談笑しながらオラリオでも珍しい料理に舌鼓を打っている。辛口の料理が多く、酒類も提供しているこの店は冒険者達に気に入られているようだ。
夜も更け、大通りの商店も店じまいを始めた頃『泰山』でも、その日の営業を終え片付けに入っていた。既に、店員の大半は帰り店にいるのは転生者の2人だけだ。
「お疲れ様にゃー。今日もがっつり稼げたことだし、明日に向けしっかり休むにゃよー」
「ああ、お疲れさん。急に教授の奴が飲食店を経営するとか言い出したときは何を言ってるんだと思ったが。これなら、なんとかなりそうだな」
「そうだにゃー、転生者だからとファミリア内で閉じこもるのではなく、他者とのつながりも作っていきたいって言ってたしにゃー。幹部の人は大変にゃねー」
「んー、あいつのことだから、裏で何かたくらんでんじゃねーかと思ったんだがな。杞憂だったか?」
「いくら、怪しくっても同じ仲間をそんな風に言うもんじゃないにゃ。きっと、大丈夫にゃ。多分」
「いや、そこは、言い切ってやれよ」
『泰山』ができた経緯を振り返りつつ、教授が何か企んでいるのではないかと思う2人。今のところ、不利益もないしあの人も仲間を傷つけるようなことはしないだろうと、ひとまずは納得することにした。
「店のメニューもこんなもんで良さそうだな。中華料理が受けるかわからなかったが、客の反応はいいようだぜ」
「そうにゃー。本当は原作に出てきた激辛麻婆豆腐もメニューに加えたかったんだけどにゃー」
「それは本当にやめろ!継続戦闘系のスキルがあるはずの俺でも3日寝込んだんだぞ。あんなもん出したら客が寄りつかなくなるどころか死人がでるぞ」
「あれはすまなかったにゃー。でもFateファンとして抑えられなかったんだにゃー」
『泰山』経営準備にあたりさまざまなメニューを試していたタマモキャット。試作品にはあの激辛麻婆豆腐も含まれており、それを試食したクーフーリンにはトラウマになっている。ちなみに、試食会はファミリアで行われていたため、その被害は大きなものとなった。結局、Fateの熱烈なファンだった転生者たちの後押しもあったが、被害を重く見たドクターと教授により激辛麻婆豆腐は絶対に人にふるまってはならないと封印された。
「あんなのはもう勘弁してほしいぜ」
「でもにゃー、何かしらインパクトのあるものが店にあった方が良いと思ったんだがにゃー。その店の特色みたいなにゃ」
「いや、インパクトのあるっておまえがそうじゃねーか。獣耳、獣の手、獣の足の料理人なんてそうそういないぞ。語尾がにゃーにゃー言ってるのはどうかと思うが」
「キャットも好きでにゃーにゃー言ってるわけじゃないにゃ。本来の語尾がワンはきつすぎるにゃ。でも英霊に少しでも近づかないと本領発揮できないから、仕方なくにゃーにゃー言ってるにゃ。ニャー語尾だったら、タマモキャットは猫要素が名前にあるからか、ぎりぎりセーフみたいだにゃ」
「ワンもにゃーもきつさにあんま差はないと思うがな。まあ、要は、にゃーにゃー言うのも英霊の力を出すためってか」
クーフーリンは癖の強い英霊に憑依してしまった転生者に同情した。
しかし、彼もまた忘れていた。自分の憑依先のクーフーリンは幸運Eであり、Fateでは不運の代名詞であったことに。これから先に待ち受ける苦難に彼はまだ気づいていない。
ネタが切れました。しばらく書きために入るので、気長にお待ちください。