僕は今、馬車に乗っている。6人がどうにか乗れる程度の小さな馬車に。整備された街道の上をガタゴトと音をたてながら進んでいく。
前世で主な移動手段だった車に比べると、揺れが大きく乗り心地は正直良くない。それでも、歩いて移動するよりはよっぽど早い。
迷宮都市オラリオ。この世界、「ダンまち」において中心となった場所。そこへ、僕は向かっている。
半年前、この世界に転生してから、僕は旅にでた。世界を回る旅だ。大陸の最西端にあるこの都市を出て、ひたすら東を目指し歩いた。ただ、この世界のことを知るために、この世界が現実であると理解する。ただ、それだけのために。
砦に囲まれた城塞都市、華やかな街並みときらびやかな城が建つ都市、多くの都市を巡った。陽気で荒々しいドワーフの人達に会った。他種族との接触を嫌う誇り高いエルフに会った。高い戦闘技術を持ち闘争を望むアマゾネス達に会った。彼らは、前世で言う人間―この世界ではヒューマンと呼ばれる―ではない。前世では、お伽噺に空想上の種族として存在していた。そんな彼らと交流し、彼らは作り物ではない、この世界に存在しているということを実感した。見る物全てが珍しく、何にでも驚きを示した僕を、彼らは変な人だと思っていたかもしれない。
そうして、旅に出て3ヶ月。東の果て、極東にまでたどり着いた。極東。昔の日本のような雰囲気をもちながらも、やはり日本ではなかった。この世界に、かつての故郷はもうない。極東を見たことで、ようやくそのことを理解できた。
さて、どうしよう。極東まで行き、この世界がかつての世界と違うことを理解した僕が持ったのは、これからどうすればいいだろうかという疑問だった。もう、オラリオまで帰ろうか。少しの間考え、出てきた結論はそれだった。
オラリオには僕と同じ境遇の仲間がいる。転生して1週間。自分達が転生したことを理解し、ファミリアとしての形が整った時間だ。それから、それぞれが思い思いに、やりたいことを見つけていった。僕は、そんな中で自分のやりたいことを見つけられなかった。僕は彼らのように英霊ではない。彼らのように、何かしらの特別な才能があるわけではない。
そのことで、彼らに責められたり、貶められたりすることはなかったけれど。なんだか、そこに居づらくなって、旅に出ることを決めた。この世界を旅し、この世界を知ることで、僕が自分の存在を肯定できるようになるかもしれない。そう思って。僕が旅にでることを伝えたのは、ドクターと教授の2人だった。突然、この世界に混乱する僕たちを、ファミリアという形でまとめあげた2人。彼らに、自分探しの旅に出ると告げた。彼らは、心配しながらも幾ばくかの路銀とともに送り出してくれた。いつでも、帰ってこい。仲間はここに居るからと言って。
自分探しの旅に出ると言った手前。とくに何かを見つけられたと言えない状況で帰るのは、少しばかりためらわれた。それでも、これから他に行く場所も特にはない。
帰ろう。そう思って、オラリオに向かって帰り始めた。途中、立ち寄った街で、オラリオ行きの馬車を見つけそれに乗りながら、向かっている。
馬車の中には、僕の他に、2人の親子もいた。小さな女の子とその母親だろうか。2人は、
怪物祭を見るために、オラリオまで行くらしい。
怪物祭その名称を聞き、原作のことを思い出した。確か、1巻で怪物祭の場面があったはずだ。もう原作は始まっているのだろうか。僕が、旅に出る前、ファミリアのルールの1つとして積極的に原作に介入しないというのがあったはずだ。今もそのルールが変っていないとすれば、ステンノ・ファミリアはそれほど目立たずにひっそりと活動しているのだろうか。そう思ったが、転生したことではっちゃけ、無茶をしようとしていた仲間のことも思い出し、それは無理だろうなと自分の考えを否定した。まあ、教授やドクターもいることだし、まずい事態にはなっていないだろう。そう自分に言い聞かせながらも、一抹の不安は拭いきれなかった。
オラリオにいる仲間達のことや原作のことについて思いを馳せている内に、馬車での旅はあっという間に終わってしまった。歩いて、極東までときよりも圧倒的に早く着いた。
オラリオに着いて、さっそくファミリアのホームへと向かった。時刻は昼間。みんなこの時間帯は何をしているのだろうか。ひょっとするとダンジョンなどに行っていて、ホームに人はあまりいないかもしれない。そう考えながら進み、ホームの前にたどり着いた。
半年前より、若干豪華になっているような。久しぶりに見るホームに、そんなことを思いながら入っていない。入ってすぐの広間には誰もいない。確か、右奥に医務室があったはずだ。そこに、ドクターがいるだろうか。彼はそこで、怪我人がでても大丈夫なように、常に居るようにしていたはずだ。
医務室の前まで来た。1度息を吸い、扉を開く。
中には、旅に出る前と変わらず、ドクターが椅子に座っていた。こちらを見て、驚いたように目を見開いている。それでも、僕が帰ってきたことを理解し始めると、その表情はだんだんと喜びの感情に変っていく。
ひとまず、帰ってきた挨拶から始めようか。僕は忘れられておらず、帰ってきたことを歓迎してくれる人がいることに安心しながら、口を開いた。
「ただいま、ドクター」
ドクターもうれしそうに答える。
「ああ、おかえり、藤丸君」
FGOの主人公に転生した人も書いてみたいと思って書いてみました。
備考ですが、この作品は完全に見切り発車で書いており、見直しも軽くしかしておりません。そのため、設定や時系列等に矛盾があったり、話ごとに文体が変っていたりするかもしれません。この作品は、ダンまちの世界にFate関連のものと複数の転生者を入れてみたいという考えでのみ作られています。なので、前の話と矛盾していると思っても、温かい気持ちで流していただけるとありがたいです。