幼馴染彼女NTR転生   作:効果音

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地球防衛しないと地球とプロフェッサーが爆発しそうだったの約二ヵ月空きました。
今日はモンハンのアプデ日です。


変わらずに変わっていくキミに

 最寄り駅近くの喫茶店の中で、店主の趣味か雰囲気作りのためか、落ち着いた曲調のクラシック音楽とは裏腹に緊張が解れずに落ち着かないでいる。

 これから俺が助けた子供の親であり、四年前の事故の加害者に会うことになっている。

 あの交通事故のことは叔父さんが色々してくれていたお陰で、初対面以降会ったことは無い。叔父さんに話は行っていたらしく、被害者の俺本人の合意であるならという条件で会うことを許されているらしい。

 

「……会って何しようってんだよ」

 

 一応、AST等の情報が出回らないように人払いをした上で折紙が店のバックヤードで、ここを映像のみで監視しながら待機しているのを良いことに悪態をついた。

 席に座ってすぐ出されたコーヒーにスティックシュガーとコンデンスミルクを入れようと、卓上に手を伸ばそうとすると──

 

「すまない。待たせた」

 

 カランカラン、と店のドアが開いて鈴が鳴る。高身長で黒スーツが妙に似合う如何にもデキる男といった雰囲気を纏う人がそこに居た。

 自然な足取りでこちらの席に接近してきて、俺の対面に着席する。

 

「……知っているだろうが、立壁清正だ。よろしく」

「どうも……」

 

 互いに軽くお辞儀をして、出会い頭は問題なし。

 正直な話一発位殴ってやろうかとも思ったが、殴ったところでどうにもならないと、理性的になって止めた。

 

「この度は息子を助けてもらったこと……いや、それだけじゃないな。

 私も過去に命を救われている。君と御両親には感謝してもしきれない」

 

 社交辞令だ、そんなものは。実際にどう思ってるかは知ったこっちゃないけど、感謝されてどうにかなる話じゃない。

 

「……それだけなら帰りますけど」

「今日の主目的他にある。君にする相談では無いとは重々承知した上でなのだが……」

 

 意外だった。これを機にってことだと思っていたがそうでもないらしい。

 立壁さんが何か言いたそうだったので何も言わずに待っていても口を開こうとしない。

 

「あの、主目的とは?」

「……すまない。少し、言葉を選んでいる。

 息子にも遺伝してしまって、私の悪癖を継がせてしまって、申し訳ないと思ってばかりだ」

 

 家族のことなんて聞いてない。

 事故なのだから、故意で俺の親を殺した訳でないのは頭では理解していた。だけど、目の前にいる男から不器用さが見え隠れするのは、今までのイメージと違った。

 

「はぁ、それで……?」

「そう。息子が私に何か言おうとしているのは分かるのだ。だが、こちらから聞いてしまうと息子の為にならないだろう。しかし……自分から踏み出す機会を搾取してしまうのは、父親として──」

「長い。長過ぎて主題が分からなくなってるでしょう」

 

 顔に手を当てて、もう片方の手の平を立壁さんに向けて制止する。

 整理すると、いつの間にか主題に入っていったのはまだ良い。息子の口下手? 自分の方? それともまだ主題じゃない? そもそもそんな話を事故った相手にするの?

 わからん。とりあえずこの人に主導権を握らせて喋っちゃダメな気がしてきた。

 

「えー、と。立壁さんは息子さんと話したいんですか? それとも息子さんに成長して欲しいんですか?」

「そうだな……息子に悩んでる事を話してほしい」

 

 数日前のあの空間震の時、あの子供は確かボールを気にして避難が遅れた。

 つまり、あまり買って貰えないからすぐ失くしたら怒られると思っているか、大事な思い出があるからのどちらか……だと思っていたけど、立壁さんの様子を見てると、あまりコミュニケーションがうまく行ってなくて、口数の少ない怖い雰囲気の父親として映っているのかもしれない。

 

「とりあえず、息子さんと会話したら良いんじゃないですか?」

「……妻にもよく言われているが、仕事が忙しいものでな」

 

 そんな話それこそ奥さんにすれば良いのではないだろうか。そんな家庭相談に乗る義理はない。

 適当に切り上げて終わりにしよう。

 

「あの、何で俺にそんな相談を?」

「……そうだな、人と話すのが得意でない息子が、君の事を話したがるものだから、気になってしまったんだ」

「だからって実の息子を差し置いて、こっちに逃げないでくださいよ!」

 

 放っておくのは、違うだろう。

 あのガキだって、俺と立壁さんに接点があったから話のネタにしようとしたのかもしれないのに。

 

「口下手でも息子さんに話し掛けて、好きなこととか話してやるとか、それが出来ないというのなら……間違った事はしない父であってください。

 息子というのは身近な大人を見て育つんですから、父親って存在がしっかりしてないとダメなんですよ!」

「……そう、だな」

 

 立壁さんが何か気にしていたが無視をして、勢いのまま席から立ち上がりテーブルを手で叩いてしまう。

 つい熱くなって、そうしまったことが我ながら嫌になる。可能なら今すぐこの場から立ち去ってしまいたい。いや、もうこうなったら、ここで打ち切って帰ってしまおう。

 

「家庭相談をしたいだけなら、もう帰ります!」

 

 一応出されたコーヒーを一気に飲み干して喫茶店から外に出て逃げるように走る。十分近く走ってから、立壁さんが追ってこないのを確認し立ち止まる。

 辺りを見渡すと、住宅街の方に入ってしまったらしいことが分かる。コンビニらしきものはスマホのマップ機能で確認しても見当たらない。再開発都市として東京23区内に負けず劣らずな発展をしている天宮市の中でも割と珍しい部類の場所だ。

 

「アホか……」

 

 落ち着いて状況を飲み込んだと同時に、砂糖とミルクを入れずにブラックのまま一気飲みしてしまった味覚が破壊された。それをどうにかしようと自販機を探し回るために大通りの方に足を向ける。

 苦手な味なのだから、飲まずにそのまま出て行ってしまえば良かったけど、出されたものを残していくのは気が引けたし、かと言ってあそこで砂糖とミルクを入れてから飲むのはどこか間抜けだったので強がりをしてしまった。

 

「冷静に話だけ聞いて帰ろうとか思っていたのに、あんな風に出て行ったのは十分ダサいか」

 

 歩くこと数分。自宅の近い南甲町にある公園のベンチに腰を落ち着けて、自販機で購入した乳酸菌飲料を半分位の量を口に残ったコーヒー味と共に流し込む。

 それからしばらく空を眺める。

 今頃、喫茶店では固まっているであろう立壁さんと口下手の彼から話を聞いて状況を把握しなければいけない折紙が取り残されていると思うと大変そうだ。と他人事みたいに思えた。

 折紙に一報入れるかと細い息を吐いてスマホを取り出すと、首筋に冷たくて固い感覚が走る。

 

「冷たぁっ!?」

「お疲れ様」

 

 紅茶のペットボトルを持った折紙が居た。

 大方あの態度はない。とかそういう事を言いに来たのだろう。アレがないのは俺にだってわかってる。というか若干後処理が面倒だったのか、少しだけ恨めしそうな表情をしていた。

 

「音声は聞いてなかったから、何を話してたかは分からなかったけど、手が出なかったのは良かったんじゃない」

「……半端なだけだろ」

 

 隣に座った折紙を横目に自嘲する。

 

「父親どうこうを気にする位なら、自分でちゃんとした父親をやっていて欲しかった。

 そうでなければ、何のために両親は立壁さんを助けたんだ……って言うのは俺の勝手な言い分」

「そっか。でも、それだけじゃないでしょ?」

 

 本当は一発殴りたかった。本当は人殺しと罵る位はしてもバチは当たらないと、思っていたのに。

 それが復讐なんてモノだって、考えてはいなかったけど、こんなに立壁さんの人の部分を、ただ息子とコミュニケーションを取りたそうな不器用な父親なだけの部分を見てしまったら、そんな気は失せてしまって代わりにイラついた。

 違うな、そうじゃない。

 

「やっぱり、父さんと母さんを殺したのは立壁さんとか火事じゃなくて、俺なんだ」

「それは──」

「違わない。誰かが殺意を持ってやった訳じゃないなら、それはあの日に出掛けようって言い出した俺のせい。

 それだけは絶対変わらない。俺から、俺の両親の死は奪わせない」

 

 ようやく、口に出せた。

 あの日の葬式からずっと抱えたままで、その答えも知っていた気がするけど口に出せなくて、どうにもできなくて泣くことも出来なかった。

 だけど、今日ようやく吐き出せたと思う。

 

「……そんな風に思ってたんだ」

「本当にそうだと思ったのはついさっきで、それまではよく理解してくて考えないようにしてた。

 だから、折紙には言うことがある」

 

 意外と人間の記憶力というのはバカにならないもので、過去にあった出来事が鮮明に思い出せる癖に、たった一つの一際強い記憶も同時に思い出してしまってそれに上書きされていく。

 きょとんとしている折紙の方を向いて、その時の事を言おうと思ったけど、照れ臭くなってやめた。

 

「お前、髪ボサボサなんだよ。走ってきたのバレバレ」

「なっ──!?」

 

 実は来た時から気になってた。

 くるんと輪になっている前髪を手で軽く払う。折角長くて綺麗な髪なのだから、しっかり気にしておくべき。という理屈で、そういうアレじゃない。

 

「まぁ、そんだけ心配してくれたなら……嬉しいけどさ。ありがとう」

「え、いや……あ、あ」

 

 それはそれとして、これ位は言わないと……一応色々気を遣ってくれてる相手に申し訳ない。

 良さそうな感じに前髪が整ったのを見て、手を離すと折紙は口をパクパクしながら動揺していた。流石にやり過ぎたか?

 

「連理が素直にありがとうって言ってるぅぅぅぅ!?」

「おい」

 

 またこのパターンか。

 いや、日頃の行いだとは思うけど、これはこれで何というか……うん。

 

「いやだって、年間感謝輸出量が数える程しかないあの連理だよ!?」

「年間感謝輸出量」

 

 あんまりなお言葉に、ついツッコミを忘れていたが、これはこれで懐かしい気持ちになる。

 それにしても、空間震が起きた時レベルで深刻そうな表情をしている折紙にはちょっとムカついてきた。

 

「まぁ、連理のツンデレはどうでも良いんだけど、それより立壁さんから伝言」

「……それで?」

 

 急に真面目雰囲気に戻った折紙の言葉を半分無視して耳を傾ける。

 一応ふざけて良いラインを見極めている所はあると思うので、こちらも真面目に聞く。いや、この前こいつ芋けんぴ付けながら人探ししてたのもあって微妙に俺の知らない幼馴染かもしれないから油断出来ない。

 

「ASTに入らないかって、提案しに来たのにアイスブレーキングのつもりで変な話題振りして申し訳。ってさ」

 

 折紙曰く、立壁さんは陸自の上の方の人で、空間震を起こしている存在の精霊かそれを討滅するASTを知ってしまった被害者に勧誘をしていて、何でもそう言った被害者は入隊志願をするケースが多く、狭き門を通った後はその分モチベーションも高い傾向にあるらしい。

 おおよそ、ASTの存在を聞いたから一応聞かれたのだろう。

 

「興味ない。俺は俺のことで精一杯だし、バイトも見つけないといけないし」

「……一応公務員扱いだから入隊できればお給料出るよ?」

 

 月にこれ位。と折紙がスマホに表示した給与明細を見せられて、少し心が揺れたが色んな意味で男子高校生には過ぎたる力だったので丁重にお断りしつつ、やっぱりこの女は急に無意識か何なのか分からないが真顔でマウントを取ってくるのは俺の知らない三年間で何があったのか少しだけ気になった。

 

 




ロングの折紙はこういう事言う

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