宇宙駆けるは暁光の浮舟   作:☆しょ〜の☆

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「オーラム」

「宇宙」という空間をどう認識しているだろうか。「星や銀河が煌めく宝石箱」?それとも「いろいろな発見があるビックリ箱」?もちろん宇宙には神秘や驚きがある。しかしそれと同時に、宇宙は人類にとって血みどろの戦場にもなる。

 

 宇宙へ進出した文明にとって、宇宙は控えめに言ってもいつ、何処だろうが死の危険が迫っている空間だと言える。ほんの数cmのスペースデブリ1つで、長さ数mmの傷で、容易に人の命が奪われる。

 

……そんな世界に、私は「AI」として転生してしまったらしい。

 

 

 

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 私は突出した何か技能もなければ知識もない、ただの普通の人間だった。中堅どころの大学に入学し、星の数ほどある中小企業に入社。平均的な給料を得て、マンションで一人暮らし。世の中に掃いて捨てるほどいる、普通の人間だった。

 

 そんなモブAだった私だったが、一つだけ誇れることがある。私が趣味で書いていた評価まあまあなSF小説。一話1000文字前後だが、毎日投稿を心がけていたし、唯一の趣味と言っても過言……かもしれないけど、まあ過言ではない…と思う。

 

 昨日は仕事が珍しく遅くなり、うとうとしながら小説を書いていたはずだ。まずい。データが消えていたら毎日投稿が切れてしまう。勢いよく顔をあげると…

 

「はいぃ?」

 

 液晶、いやコンソールが浮かんでいた。眠ってる間に部屋が改装でもされたのだろうか?いや、ないな。では、ここは何処だろうか。コンソールの近くにはマザーボード。部屋には観葉植物や空調のような機械、見ただけで高価だと分かるソファーやベッドもある。それに、六畳間のパソコン部屋よりも大きい。大体十畳間くらいありそうだ。明らかに自分の部屋ではない。

 

 ならば誘拐か?そんなわけない。いや、断言はできないが玄関、窓、すべて鍵をかけていたし、わざわざ私を誘拐したところで何かメリットがあるわけでもない。

 

 ふとコンソールが目に入る。「ルークス級総指揮艦 オーラム」そこにはこう書かれていた。

 

「総指揮艦」この単語には心当たりがある。私の小説は反乱を起こしたAI艦隊と戦い、人類の平和を守るという何番煎じかも分からないようなベタなストーリーだ。この話では、AI艦隊の司令官に相当する艦を「前線指揮艦」、司令長官に相当する艦を「総指揮艦」と設定していた。「オーラム」という艦は設定した覚えはない。しかし「AI艦隊の反乱を起こした張本人…張本艦?」として「ルークス」の設定、そしてデータは制作していた。

 

「総指揮艦」というラスボス的立ち位置につけるためと、深夜テンションのせいで、主人公が操る艦を確実に撃沈できるような重武装艦に仕上がってしまった。さすがに強力すぎる武装のせいでボツになったが、まさか本当に「総指揮艦」なのだろうか。…とか思っていたら艦のデータが映し出された。これ、私が考えるだけで動くのか?もしそうだとしたらすごい装置だ。さて、なになに?

 

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「ルークス級総指揮艦」

全長:490m

 

最大幅:70m

 

機関:大型縮退炉…4基

常温核融合炉…4基

 

対物装甲:

通常…200~450mm

防郭部…700mm

電脳付近…950mm

 

対光装甲:

通常…対8inch~12inch砲

防郭部…対20inch砲

電脳付近…対30inch砲

 

武装:

L50/25inch単装熱核光線砲5基

 

L60/8inch多銃身両用重高射砲12基

 

L88/1.2inch多銃身光線機関砲10基

 

21inch多目的発射管64門

 

その他:

多目的製造工廠1基

 

S-130偵察機4機

 

内火艇

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……うん。私が作った設定と完全に一致している。

 

 もともと私が創作していた艦は、光線などの指向兵器はエネルギーをバカ喰いすると言う設定で、あっても2、3基にしており、どうしても死角があった。そこをこの艦は主機関を4基にすると言う力技で解決している。

 

 質量兵器に関しても現実のCIWSのように多銃身化することによって発射速度を高めているし、その砲弾は内部に存在する製造工廠により材料があればすぐ作れるし、なんなら撃ち落とした航空機やら、撃沈した敵艦を再利用することだってできる。

 

 自分で言ってもなんだが、某イスカンダルまで行った宇宙戦艦とタメ張れるくらいの性能はあると思う。

 

……でも、ルークスは完全無人で運用されている…設定にしてるはずだ。ならこの部屋は?明らかに人間が生活する前提で作られた部屋だが…?

 

……ああダメだダメだ。パニックになるとどうも視野が狭くなってしまう。一回冷静になろう。もう一回周りを見渡す。扉は2箇所、大きめで少し装飾が施されている扉と、質素で磨りガラスの小窓がついている扉の二つだ。窓はない。大きい方が出入り口かな?

 

 まずは小さい方の扉を開けてみる。扉は案外軽く、整備もされているのか滑らかに空いた。見たところトイレとシャワーが両方ついてるユニットバスだった。学生の頃に家賃の安さで選び、2年程度住んでいたマンションもこの方法だったからか、何処か懐かしさを感じる。

 

 じゃあ、次は大きい方の扉を……開けられない。まず、取っ手がない。自動ドアっぽいけどセンサーが反応しない。どうすればいいんだ?……もしかしたら、さっきみたいに考えれば開くかもしれない。

 

〈うおぉぉ。扉よ開け〜!〉

 

……ウィーン……

 

 扉の先にあったのは二進法で構成されたデータの世界。意を決して一歩踏み出せば、私の体も0と1の数字になってしまった。

 

 しかし、意識すればどのプログラムがどんな情報を表しているかが分かる。私が見つけたのは「ソフトウェア&ハード」という項目。

 

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ソフトウェア

試製S型凡庸AI

説明:

人類の叡智を結集させて制作したA型凡庸AIに、人類の「感情」を学習させた新たなAI。

▽スペック

 

ハード

ルークス級総指揮艦

説明:

軍事の無人化を目指し、初めて建造された完全無人化された戦闘艦。

▽スペック

ーーーーーーーー

 

 嘘…私はまさかAIなのか?人間ではないのは、二進法のプログラムの世界に入ることができた時点でわかっていた。でも、この感情は私のものだ。さっきまで部屋にいた姿だって私だし、ここに来るまでに私は何をしていたかも覚えている。

 

 あれ?私の名前ってなんだっけ…

 

 何だろう。私、私と言っているけど、自分に名前が思い浮かばない。その部分だけ、霧がかかったかのようだ。

 

 いや、私だけじゃない。何という会社で働いていたのか、パソコンの機種は?家の住所、住んでいた県は?今使っている言語は何語?固有名詞全てが思い出せない。

 

 私は「〜〜」と言い、「〜〜」会社で働いていて、父母の「〜〜」と「〜〜」はまだ生きており、「〜〜」にある「〜〜」マンションに1人で住んでいた。「〜〜」の場所はいくら頑張ろうとも思い出せない。

 

 もしかしたら、この記憶も全て「作られたもの」なのかもしれない。自分が自分ではない感覚。とても怖い。…でも、もしかしたらこの感情すらも作り物かもしれない。

 

……そうか。「〜〜」という人格は、すでにないんだろう。今、私が持っているのは、「〜〜」の感情や記憶を元に学習した、「私」という人格なんだ。もう、私は「〜〜」ではない。「ルークス級総指揮艦 オーラム」だ。




多分続かない
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