宇宙駆けるは暁光の浮舟   作:☆しょ〜の☆

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フィーリングで書きました


「私」

 「私」が何者なのかは分かったが、特に何か思うわけでもなくなった。「それ」は普通のことで、「前世の記憶」はコピーされたものだからだ。まだよく分かってはいないが、クラウド上にバックアップもあるだろう。「前世の記憶」は謂わば「教わった知識」と同じだ。

 

 これを「悲しい」「寂しい」と思う感情も、「ワクワク」「好奇心」という感情も、全て今の状態を総合的に判断し、「知識」から引っ張り出しているにすぎない。

 

 この知識によれば、私が建造された目的は「抑止力」らしい。私や、私の姉妹、部下を大量に建造して異星人が襲来した際になめられないようにする…今となっては馬鹿らしい。未だに私たちはワープ航法のような超光速航行を実用化していない。そんな有様で、太陽系外から侵入してきた異星人にどう対処するというのか。

 

 私は外の風景を確認した。それほど遠くない場所に水色のガス惑星が存在している。恒星側には輪が美しい大型のガス惑星が、反対側にも紺碧色のガス惑星が存在している。ここは天王星沖と思われる。

 

 本来ならここに、私を建造した軍のコロニー基地群があったはずだが、コロニーどころか人工物すら存在していない。この時点で、「私」の知識とは違う世界ということがわかる。

 

「これじゃあ今がいつなのか、本当に太陽系なのかもわからないよ…面倒くさいなぁ……」

 

 っと、いけないいけない。「面倒くさい」という感情のせいで調査を放棄するところだった。つくづく感情は思考の足を引っ張る。感情なんて本当に必要なのかと思ってしまう。私は別に必要はないと思っているが、「私」の知識は必要だと訴えかけてくる。まあ、今は感情が必要、必要ないを考えている場合ではないので、それは後回しにしよう。

 

 現在未稼働の広域探査レーダーを稼働させる。宇宙に進出しているくせにレーダーは電波式のために、もし太陽系であれば片道160分程度、レーダーに映るまで320分程度かかってしまう。それまでは、光学式のカメラによる目視で確認するしかない。

 

 そう思いながら、私はカメラを起動させる。カメラの位置は艦橋、艦首、主砲塔5基、艦尾。そして遠隔にはなるが偵察機や内火艇などだ。「私」では1度に何台ものカメラを同時に見ることなど不可能だったが、「オーラム」である私ならその程度造作もない。

 

 太陽の質量は1.989×10^30 kg。これよりも質量が大幅に大きい、もしくは小さければ太陽系ではない可能性が高まる。まあ、光学式のカメラだけでは正確な値はわからないけど。

 

「だいたいの質量は太陽とおんなじくらいかな?恒星の表面温度は…恒星の色的に約6000K(ケルビン)。これも太陽と同じくらい。詳しい情報はレーダー次第かな。」

 

 幸い、私の近くには私の驚異になりえるものは存在していないようだ。防御力が他の創作艦に比べてインフレしている私に驚異を与えるものがあるならば、それはそれで怖いが最悪の可能性は常に考えて置かなければならない。

 

 

例えば某宇宙戦艦の波動砲のような指向性兵器が存在しているかもしれない。

 

例えば私の熱核光線砲をたやすく受け止める装甲を持った敵性艦が存在するかもしれない。

 

例えば私の防空網をゆうゆうと通り抜けるステルス性能を有しているミサイルが近づいているかもしれない。

 

 

 例えばかりではあるが、「無い」と断言できない以上は警戒しなければならない。警戒があると無いとでは雲泥の差だ。警戒しすぎるのもそれはそれで良くないので、今は調査に集中しようと思う。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 やっとレーダーに恒星が映った。恒星の影に隠れている部分は探索できていないが、一つづつ調べていくことにしよう。私はこの恒星のハビタブルゾーン内に存在している一つの星にカメラを向けた。恒星から数えて3番目。暫定「太陽系第3惑星」青々と輝く海と陸地。恒星との距離は約8光分。

 

「地球……」

 

 何度だって見返した。全く必要のないデータも集めた。普段ならしようとも思わないような無駄なことを、何故かはわからないが体が勝手にやっていた。

 

 体が急に苦しくなってきた。体なんて存在していないのに。艦体に以上もないのに。それなのに、なんで、こんなにも体を締め付けられるような感覚に囚われているの?なんで私は焦っているの?

 

「私はオーラム。感情を学習しただけのただのAI。違う私は人間。父母も居場所も何もかも忘れたけど、私はただの人間。」

 

 私の中には2つの思考が存在しているのかもしれない。一つは演算の結果や損得だけで考えるAIの「私」。もう一つは感情に沿って考える人間の「私」。「どちらが大事」というわけではないかもしれない。

 

「わからない。けど、たとえ無駄になることも、やってみてもいいかもしれない。」

 

 まだ私に感情がいるのかはわからない。でも、感情も捨てたものではないのかもしれない。

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