すきすきだいすきライスシャワー   作:パゲ

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第8話 夏合宿! リリィちゃんパワーアップします!

 無事にメイクデビューに勝利したリリィちゃんです。ターフを駆け抜けるあの疾走感はたまりませんね! でもまだ1勝です、油断してはいけません。私はかしこいのでここで気を抜かずに練習に励みます。

 そしてライスちゃんも見事にデビュー戦に勝利しました! 普段のライスちゃんはとっても綺麗で可愛いのですが、レースをしている時はキリッとしててすっごくかっこいいんです! 私もついつい応援に力が入ってしまいました。あとウイニングライブで私にウインクしてくれました! こうなんというかですね、すっごく嬉しかったんだけどそれと同時になんだかいつもよりもドキドキしちゃいました。よくわかりませんがライスちゃんは綺麗で可愛くてかっこよくって最高です! ライスちゃんだいすき!

 

「ライス、リリィ、2人とも初勝利おめでとうー!」

「ありがとうお姉さま!」

「ありがとうるるちゃん!」

 

 今はライスちゃんとるるちゃんと私の3人でトレーナー室で打ち上げをしています。るるちゃんが作ってくれた特盛にんじんハンバーグをもりもり食べているのですがとっても美味しいです。

 

「るるちゃんってお料理できたんですね」

「いきなり言葉でぶん殴ってくるじゃない……。中央のライセンス持ってるトレーナーだから料理ぐらいできるわよ」

「ウマ娘の栄養管理もトレーナーさんのお仕事だもんね。いつもお仕事おつかれさま、お姉さま」

「いいのいいの、寧ろもっと頼ってちょうだい! あなた達は手がかからないからトレーナーとしてちょっと寂しいのよ……」

「私はいつも頼りにしてますよ?」

「ライスもだよ?」

「……ほんと、いい子達だわ。話は変わるんだけど、これから7月になるでしょ? だから夏合宿をしようと思うの」

「おぉー! リリィちゃんちょーパワーアップしちゃいますね! やりましょう!」

「ライスも賛成だよ! 夏のレースは暑くて大変だもんね……」

「乗り気で何よりよ。まぁ先に謝っておくけど宿はそんないいとこじゃないわ。ごめんね?」

 

 夏合宿とは、トレセン学園主導で7月〜8月にわたり、海辺近くの施設に泊まり込みで行われる合宿の事です。保健医などの学園のスタッフも帯同しているので、いざという時も安心なんですよ。

 普段とは異なる環境でトレーニングを集中的に行えるため、ほとんどのウマ娘とトレーナーさんがこの夏合宿制度を積極的に利用しています。

 るるちゃんは宿の心配をしていますが、泊まれるだけでありがたいと思います。山に放り出されてサバイバルをしろとか言われない限りは大丈夫です。私はつよいこですが、流石に大自然には敵いません。

 祝勝会兼夏合宿の打ち合わせが終わりひとまずは解散となりました。レースの後は暫くトレーニングは行いません。身体を壊してしまったらレースどころではありません。なのでライスちゃんと相談して、夏合宿の合間に遊ぶ用の水着を買いに行くことにしました。

 お店に買いに行ったのですが、最近の水着はなんかいっぱい種類があって困りますね。よくわからないからライスちゃんとお揃いのやつにしました。フリルがいっぱいついててかわいいやつです。ライスちゃんが黒で私が白です。

 夏の思い出をライスちゃんといっぱい作りたいです!

 

 

 

「と、いうわけで。やってきました! 夏合宿ぅー!」

「「きましたー!」」

「最初は宿に行って、荷物を置いてからトレーニング場の確認ね。それが終わったら早速トレーニングよ! 宿はこっちだから着いてきてね〜」

「「は〜い!」」

 

 やってきました! 夏合宿です! 真夏の太陽が私を昂らせます! わくわくしますね!

 るるちゃんが案内してくれた宿に着きましたが、思っていたよりずっときれいでした。壁が剥がれた廃屋を想像していたので寧ろ拍子抜けでした。

 

「想像してたよりもずっと綺麗ですね」

「どんなとこを想像してたか気になるわ……」

「ライスはテントだけ置いて宿と言い張ってると思ってたよ」

「流石にそれはやばいわよ……」

「私は廃屋を想像してました」

「あなた達のハードル低すぎない? そんなとこに泊めるトレーナーがいるわけないでしょ……」

 

 私の脳裏にかすかにですが廃屋みたいな宿に泊まってトレーニングをするウマ娘さん達の記憶があります。……なんでこんな事覚えてるんだろ?まあいっか!

 荷物を置いて、着替えをしてからトレーニング場に行きます。砂浜で走るのはダートで走る感覚と似ています。あとここだと足の負担が少ないので、より効率よくトレーニングが行えます。

 

「それじゃあ準備運動も終わったし、今からトレーニングを開始します。まずは砂浜でダッシュよ!」

「「はい!」」

「それじゃあ準備して……よし、はじめ!」

 ───────

 ──────

 ────

 

「お魚美味しいです! ねっ! ライスちゃん!」

「うん! 美味しいね、リリィちゃん!」

「いつも思うけど、あなた達めっちゃ食べるわよね……」

「オグリ先輩よりは少ないと思いますよ?」

「オグリキャップと比較したら誰だってそうよ……」

 

 トレーニングを終えて、今は宿に戻って晩御飯を食べています。このお魚の天ぷらが絶品です!

 るるちゃんが言ってましたが、私とライスちゃんは食べる量が多いそうです。私達が食べる量は具体的に言うと0.8スペシャルウィーク先輩ぐらいだと思います。……まあつよい身体を作るにはいっぱいご飯を食べなければいけないので仕方ありません。

 スペシャルウィーク先輩はたまに太り気味になっていますが、私はいっぱい食べても太り気味になった事はありません。たぶん私がかわいいから平気なんだと思います。

 

「そうそう、明日というかこの合宿中に併走トレーニングを手伝ってもらえる事になったわ」

「おぉ〜! どんなコネを使ったんですか?」

「コネなんて無いわよ……。アッシュストーンは覚えてる? あのトレーナーが手伝ってくれる事になったのよ」

「覚えてますよ! アッシュストーンさんはとっても強かったので!」

「未勝利戦もすぐに突破してたよね。でもなんでお手伝いしてくれるのかな?」

「リリィのデータが欲しいんじゃないかしら? まあ、手伝って貰えるならなんでもいいわよ。強い娘とのトレーニングはいい刺激になるしね。……ん? スマホに連絡が。……ちょっと電話してくるわ」

「「は〜い」」

 

 るるちゃんが電話をするために席を離れました。トレーナーさんはいろいろお仕事があって大変ですね。

 

「アッシュストーンさんは確か短距離とマイルが得意な娘だったよね? ライスも併走をお願いしたいけど、得意距離が合わないからダメそうだね……」

「私もまだ中距離を走れるだけのスタミナが無いから……。ごめんねライスちゃん……」

「気にしないで? その気持ちだけでとっても嬉しいよリリィちゃん」

 

 ライスちゃんの力になれないのはすごく残念です。るるちゃんが電話を終えて戻ってきました。……なんか微妙な表情をしてますね?

 

「……2人とも、さっきアッシュストーンのトレーナーが併走トレーニングに協力してくれるって言ったわよね? そのトレーナーさんの知り合いがこっちの併走に協力してくれる事になったわ」

「……いい事ですよね? なんで変な顔してるんですか?」

「だって怪しくない? まあ使えるもんは全部使うけど……」

「いきなりだもんね。もし変な人だったらライスがすり潰すから安心してね?」

「私も捻り潰します!」

「可愛い顔して物騒な事言わないでよ……」

「ふふっ♪ もちろん冗談だよお姉さま」

 

 変な人だったらリリィちゃんパンチを食らわせてやります! ご飯を食べ終えたので暫くみんなでおしゃべりをしてからお風呂に行きました。お風呂場は結構広かったです。疲れた身体に温かいお湯が染み渡ります。明日も頑張れそうです!

 


 

「2人ともぐっすりね。……それにしても、本当にいつも一緒に寝てるのね。合宿でも一緒だとは流石に思わなかったわ……」

 

 お互いに抱きしめあいながら寝てるわ……。寝づらくないのかしら?

 すっごい幸せそうな顔しちゃって……。いつものイチャイチャだと糖分過剰だけど、今ぐらいなら眺めるのに支障は無いわ。

 ……でもお風呂場でのイチャイチャは凄かったわね……。髪をお互いに洗うのは予想できてたし、寧ろ眼福だったわ。身体を洗いあうのもね。……だけど真正面から向き合って、密着しながら手で洗いあうのは流石にアレね……アウトよ……。

 いつもそうやってるの? って聞いたら「最初はこうじゃなかったんですよ? でもライスちゃんからこうやりたいって言われたからやり始めました!」なんて言われて思わずライスの方を見ちゃったわ……。あの娘、最近行動が大胆になりすぎよ。……そういうのは2人っきりの時だけにしておきなさい。

 

「ふぅ……私も寝るか。……おやすみなさい」

 


 

 おはようございます! 今日も元気なリリィちゃんです。今日は併走トレーニングをメインにやっていくみたいです。

 

「というわけで……今日私達に協力してくれる人達を紹介するわね。アッシュストーンとそのトレーナーの中村さん。こっちはその知り合いのキョウエイボーガンとトレーナーの本田さんよ」

「アッシュストーンのトレーナーの中村です。本日はよろしくお願いします。ほら、アッシュも挨拶して」

「……よお」

「よお、じゃないよ。……すみませんうちのアッシュが」

 

 アッシュストーンさんは前見た時よりちょっと雰囲気が柔らかくなってますね。トレーナーさんはなんかアッシュストーンさんに振り回されていそうな感じです。

 

「やあやあ、私はボー……じゃなくて、キョウエイボーガンのトレーナーの本田だよ。今日はよろしくね」

「……ワタシはキョウエイボーガンだ。よろしく」

 

 こっちの人達はマイペースな感じですね。アッシュストーンさんのお知り合いなのかな?

 

「私はシロノリリィです。ライスちゃんが大好きです! 今日はよろしくお願いします!」

「ライスはライスシャワーです。リリィちゃんのことが大好きです。こちらこそよろしくお願いします」

「この子達のトレーナーをしている青路瑠流です。こちらこそよろしくお願いします。顔合わせも済んだところで、今日の併走なんだけどリリィがアッシュストーンと、ライスがキョウエイボーガンとする事にしたわ」

 

 なんだかアッシュストーンさんとキョウエイボーガンさんの顔が引き攣ってますが大丈夫でしょうか?

 

「……オレの距離適正が短距離とマイル、ボーがマイルと中距離だからだな。シロノリリィ……長ぇからシロでいいか? 併走とはいえ手加減なんてしねぇからな?」

「いいですよ! じゃあ私はアッシュちゃんって呼びますね! アッシュちゃんは強いから手加減なんて考えてませんよ?」

「いや、アッシュちゃんはやめろ……」

「や」

「即答すんなよっ!?」

「……君がライスシャワーか。併走相手を探しているとアッシュちゃんに聞いて、ワタシとしても強い君との併走は良い経験になると思ってトレーニングに参加しようと思ったのだ。距離適正的に長距離は厳しいが中距離なら相手をやれるから、これからよろしく頼む」

「ライスも中距離の併走相手が欲しかったからありがたいです。お互い良い経験になるように頑張りましょう」

「おい! ボーまでオレの事アッシュちゃんって呼ぶんじゃねぇよ!」

「「「まぁまぁアッシュちゃん、落ち着いて?」」」

「なんなんだよお前らっ!?」

 

 アッシュちゃんはノリがいいですね! それは置いといて、こうして併走トレーニングができるのはありがたいですね。夏合宿中はレースに出る予定は無いのでこういうところでレース勘を補えるのは嬉しいです。

 

「併走トレーニングは午前と午後でそれぞれ行うわ。あまり多くやりすぎないように注意してね? それ以外は通常通りトレーニングをしていきます。……あっ、トレーニング内容は打ち合わせしてあるから心配しないでね?」

「青路トレーナーは新人と聞いていたけど優秀だから特に口出しする事が無かったよ。一応先輩だからなんかアドバイスしようかな〜と思っていたけど何も言うことがなかったねぇ……」

「俺も新人トレーナーだけど見習いたいところが沢山あったよ。こっちとしても良い経験になりそうで助かります」

「照れるからあんまり褒めないでくれます?」

 

 るるちゃんが照れてますね! とりあえず午前は私とアッシュちゃん、午後からライスちゃんとボーガンさんで並走する事にしました。充実した練習になりそうです。がんばるぞー、おー!

 


 

 オレは強い。ガキの頃から誰もオレに敵わなかった。生意気な同級生も、偉そうな態度の先輩も、地元のヤツらは俺の敵じゃなかった。

 オレは強い。トレセン学園に入ってからもそれは変わらなかった。模擬レースも、選抜レースも、オレがぶっちぎりで勝った。中央っていっても大した事ねぇなんて思っていた。

 ──だけど負けた。眼中にない、白くて小さいウマ娘に。

 はじめてだった、誰かに負けるのは。ムカついて、イラついて、でも悔しくて。同室のキョウエイボーガンに「やっと負けたのか? ざまあみろ」なんて煽られてクッソイライラしたが、思えばあの時はじめてあいつの事を意識したな。

 それからはアイツをボーなんて呼ぶぐらいには話すようになった。ルームメイトなのに今までほとんど話したことがなかった事に気づいたんだがアイツは「そんな事にも気付かなかったのか? 傲慢な獣め。だから足を掬われるんだぞ?」とかなんとか。いちいち煽らないと喋れないのかよボーのやつ……。まぁ、傲慢ってとこは認めるよ。直す気は無いけどな。

 未勝利戦はさくっと突破してトレーニングをしていたんだが、どうも白チビ達は夏合宿で並走相手がいないらしいって噂を聞いた。だからトレーナーにオレが並走相手になれるように頼んだ。……オレに勝ったくせにそれが理由で勝てませんでした。なんて言われたらムカつくからな。

 その事をボーのやつにも話したんだが、なんかワタシも連れてけなんて言い出したんだよな。やたらソワソワしてたけどもしかしてあれか? ソッチの趣味でもあるのか?

 白チビに惚れてんのか? って聞いたらやたら慌てて否定しやがったから面白かったぜ。……ライスシャワーとデキてるって噂があったけど、あいつ知らねえのかな?……まぁオレには関係ねぇけど。

 この夏合宿でオレはアイツの強さを超えてやる。次のレースはオレが勝つから覚悟しとけよ?

 

 


 

 

 

 あれから毎日のようにトレーニングをしました。併走をして、巨大なタイヤを引いたり早押しクイズをしたりビーチバレーをしたり……でも毎日トレーニングだけをしていると疲れが溜まってしまうので適度にお休みも挟みました。

 みんなでバーベキューをしたり海で泳いだり……他にもいっぱい。そうそう! キョウエイボーガンさんとも仲良くなれました! 今はキョウちゃんって呼んでます! みんなとLANEも交換しました。連絡先が増えて嬉しいです!

 そして今日は最終日です。そういえばるるちゃんが近所で夏祭りをやってるって言ってましたね。今日の練習が終わったらライスちゃん達を誘ってみるのもいいかもしれませんね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇリリィちゃん、ライスとデートしよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………でーと?」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 リリィちゃんとお別れした前日のあの夏祭りの日。お母さまが教えてくれた「あなたが大好きな人ともっと仲良くなれるおまじない」をライスは今でも覚えている。本当は別の意味があるけれどあえてそれを隠してたのも今なら分かるよ。

 リリィちゃんとお別れが決まった日から、ずっとライスは泣いていた。リリィちゃんは綺麗で、誰よりも優しくて……だから、お別れした先ですぐにお友達ができて、きっとライスの事なんて忘れちゃうんだって思ってた。

 でも違った、すぐに気づけたの……リリィちゃんも泣いていたから。あぁ、同じ気持ちなんだ……ライスもリリィちゃんも同じなんだって。

 あの頃のライスは小さな子どもで何もできなかった。でも、ほんの少しでもいいから2人の証を残したかったの。だからお母さまにどうすればいいか聞いてみて、それで教えてもらったのがあのおまじない。

 夏祭りの当日にライスはとっても暗い気持ちだった。明日が来たら、リリィちゃんと離れ離れになっちゃうって。でもリリィちゃんは違ったの。ずっと、ずっと考えていたの。2人でいられる方法を。

 「トレセン学園に行ったら、ターフの上でなら一緒に居られる」。小さな子どもの大きな目標。確かにこれなら一緒に居られるなって、ライスすっごくびっくりしちゃった。……普通なら無茶だって言われるんだろうなって思った。でも、不思議と出来るって思ったの。

 ……たった一言。これだけでライスの暗い気持ちなんて無くなっちゃった。……リリィちゃんは本当にすごいなぁって。……だからライスはあの時決めたの。あのおまじないを暗い気持ちでなんてやらない。本気の本気でリリィちゃんと再会する為の約束にするって。……その時、胸の奥がとっても熱くなって、ドキドキが止まらなかったなぁ。……あの時は分からなかったけど、今ならこの気持ちが何なのか分かるよ。

 それからライスは前を向いて毎日走り続けたの。リリィちゃんの隣にいる為に、リリィちゃんと笑って再会できるように。

 リリィちゃんとトレセン学園で再会した時、もう言葉に表せないぐらい嬉しくて、……それから毎日一緒でとっても幸せだったんだけど、ライスはね、もっとリリィちゃんと仲良くなりたいって思っちゃったの。

 


 

 夏祭りの会場から少し離れた場所で2人は花火を眺めていた。この場所は人があまり来なくて花火がよく見える所謂穴場と呼ばれている場所である。

 

「ねぇリリィちゃん、ライスたちが『約束』をした日の事覚えてる?」

「……うん。覚えてるよ。場所は違うけど夏祭りの日だったよね?」

「……あの後はリリィちゃんがいなくなっちゃったけど、今は違う。明日も、明後日も、その先もずっとずっとリリィちゃんがいる。……嬉しいなぁ本当に」

「私も同じ気持ちだよライスちゃん。……あの日見た花火は綺麗だったけどすごく儚く見えたの。……だけど今日の花火はすっごくキラキラしてて希望に満ちてるの」

「……そうだねリリィちゃん。……でもね、あの時とはちょっと違う気持ちもあるの。ねぇ、リリィちゃん……」

「……なぁにライスちゃん?」

 

 ライスシャワーはシロノリリィの頬に己の両の手を添え、その綺麗な瞳を見つめた。心なしかシロノリリィの頬が赤くなっているが、それが夏の暑さのせいなのかそれとも照れのせいなのかは分からない。

 

「え、えっと……ライスちゃん?」

「ライスはリリィちゃんともっと仲良くなりたいの」

「もっとって……どれぐらい?」

「2人でドロドロに溶け合うぐらい」

「よ、よくわかんないよ。……あとお顔近いよ」

「わざとだよ? ……ねぇリリィちゃん、このまま近づいたらどうなると思う?」

「……唇が触れちゃいます」

 

 今にも唇が触れてしまいそうな至近距離でお互いの吐息がかかる。ドクン、ドクンと、どちらのものなのか分からないほど心臓の音が響いている。

 甘い匂いでくらくらしそうになりながら、どれ程の時間が経ったのか分からないほど見つめあっていたが、沈黙を破るようにライスシャワーが口を開いた。

 

「……ライスの仲良くなりたいってのはこういう事。……リリィちゃんはどう?」

 

「……よくわかんないです」

 

「…………ねぇ、嫌?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………いやじゃないよ

 

 

 

 

 

 

 

 手のひらからジワリと汗が湧いて、心臓が壊れたかのように早鐘を鳴らす。最早誤魔化す事もできない程お互いに真っ赤になって、その瞳はうるうるとしている。お互いに見つめあい、永遠に続くかの様な沈黙の後シロノリリィがほんの僅かに斜め下に視線を逸らし、ゆっくりと瞼を閉じた。

 ごくりと喉を鳴らし、ゆっくり、ゆっくりと唇を近づけ、そして────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何やってるのよ、あなた達……」

 

 

 

 

 

 

 

──トレーナー(お姉さま)に見つかった。

 

 

 

 

 

 

 

お、お、お、ぉおねおねお姉さまっ!?!?!?

る、る、るるるるちゃんっ!?!?!?!?

 

「……ごめんね邪魔して。……焼き鳥そこに置いておくから食べていいわよ」

「ま、待ってお姉さま! 違うの! 合ってるけど違うの!!」

「あわわわわ! あばばあばばばあばばばばっ!!」

「……リリィが壊れちゃった。……遅くならない様に気をつけるのよ?」

「待って! 待って!? お姉さまぁー!!」

「ぴゃぴゃう! ぴぃっーー!!」

 

 祭りの喧騒よりも賑やかな少女達の叫びが辺りに響き渡った。この後他のトレーナー達と合流したが、その真っ赤な顔だけは元に戻らなかった。

 中村は苦笑し、本田はめちゃくちゃにやにやし、アッシュストーンは呆れた目で見て、キョウエイボーガンは訝しんだ。

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