すきすきだいすきライスシャワー   作:パゲ

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第23話 皐月賞!① 始まりは雨の中で

 みなさんこんにちは。今日もかわいいリリィちゃんです。今ですね、私はなんと……インタビューを受けています! もうすぐ皐月賞なので、出走する人達がトレセン学園の広いお部屋に集まっています。カメラさんがいっぱいでちょっと緊張しちゃいますね!

 GⅠレースなどの大きなレースの前には、こんな感じでインタビューをする事があります。特に今回はクラシック三冠の内の一つ、皐月賞です。インタビューをする記者さんもとっても気合が入ってます! しかも生放送ですよ! リリィちゃんの勇姿を世界中にお届けせねばなりませんね!

 それでですね、今日のインタビューは勝負服を着てするそうです。ホープフルステークスの時はレース前に初披露しようと思っていたので制服でインタビューをしたのですが、今回はどうやら勝負服を着て受けるようですね。周りのみんなもとっても気合が入っています!

 ところでみなさん、今日の私は普段とちょっと違います。どこが違うか分かりますか? ……どうですか、わかりましたか? ……正解はお化粧をしているのです! どうですか! ちょーキレイでしょ!

 お化粧はるるちゃんがやってくれました。私とライスちゃんをお化粧してる時、るるちゃんはずっと「顔が良すぎる……死ぬっ……ひぃん……!!」と叫んでました。まぁ私はちょーかわいいしライスちゃんは世界一かわいいので当然ですね。私達がお部屋に入った時、他の人達は私のかわいさとライスちゃんのキレイさに驚いてました。ふっふーん! でもみんなもとってもキレイでした。ライスちゃんが一番ですけどね!!

 

 

 インタビューが始まりました。どういう順番なのかは分かりませんが、私やライスちゃんやブルボンちゃんは後回しのようですね。

 

 

 …………どうやら私達は最後の方ですね。私としては最後でも最初でもどちらでも構わないのですが。そして、ブルボンちゃんの番がやってきました。……とても自信に満ちた表情をしていますね。

 

「ミホノブルボンさん! 皐月賞へ向けての意気込みはありますか!?」

 

「……私の夢は三冠ウマ娘です。その夢を叶える為に、まずは皐月賞を獲らせていただきます」

 

「出走メンバーの中で注目している選手はいますか?」

 

「特に注目しているのはライスシャワーさんとシロノリリィさんです。もちろん、他の人達を軽視しているわけではありません。この皐月賞へ出走している時点で、弱い筈がありませんから」

 

 ……ブルボンちゃんは私達のことを注目しているようですね。でも、大丈夫です。……私は負けませんから。

 その後色々話して次の人に交代しました。……おっ? 次はライスちゃんのようですね。ライスちゃんがんばれー!

 

「──ライスシャワーさんが注目しているのはどの選手でしょうか?」

 

「……リリィちゃ……シロノリリィさんとミホノブルボンさんです。後はマチカネタンホイザさんも油断できないなって思ってます。でも、勝つのはライスです」

 

 ライスちゃんちょーキレイ! ……じゃなくて、ライスちゃんはなんだか自信ありってお顔ですね。ブルボンちゃんはもちろん、ライスちゃん相手でも私は負けないですよ!

 

「では、ライスシャワーさん。最後に意気込みをお願いします」

 

 「……ライスの夢は、ライスの走りでみんなを笑顔にする事です。だからその夢の為に──ライス、走るよ」

 

 ライスちゃんが微笑みました! かわいすぎますね!! あ゛ぁ゛っ!! すきっ!!!! ……興奮しすぎました。ライスちゃんの夢の話は初めて聞きました。自分のためじゃなくて、誰かのために……みんなの笑顔のために走る……。優しいライスちゃんにぴったりの素敵な夢です。……嬉しいな。私の夢も、ライスちゃんと似てて。

 

「ありがとうございました。では次に、シロノリリィさんお願いします」

 

 おっ? どうやら私の出番ですね。それでは行きましょう!

 

 

 


 ──コツン、コツン。小さな足音が響く。優雅に歩く白い少女は、まるで妖精のようだ。化粧のせいだろうか、いつもの可憐な少女という雰囲気とは違いその神秘的な美貌が強調されている。

 ふわりと微笑む白い少女に人々は目を奪われる。だが、こちらもプロだ。早速仕事をまっとうするために質問をした。

 

「……シロノリリィさん。今回注目している選手はいますか?」

 

「ライスちゃ……おっほん。ライスシャワーさんとミホノブルボンさんです。でも全員が強敵だと思っています」

 

 やはり、今回のレースはこの三人――ミホノブルボンとライスシャワーとシロノリリィが特に注目を浴びていると思った。ミホノブルボンは先日のスプリングステークスでの圧勝が。ライスシャワーは現在無敗でかつシロノリリィにも勝利しているところが。シロノリリィは前述した二人には勝利した事が無いが、その爆発力が期待されていると感じた。……『ライスちゃん』と言いそうになったところは微笑ましかったが。

 

「今回のレースでの意気込みをお願いします」

 

「今回はリリィちゃ……私に秘策ありです! きっとかっこいい私を見せられると思います!」

 

「そうですか、それは楽しみですね。……では、最後に何か一言お願いします」

 

「はい! ……えっと、ちょっと長くなっちゃうけど大丈夫ですか?」

 

「えぇ、大丈夫ですよ。それだけ伝えたい事があるという事なので」

 

「ありがとうございます! ……それじゃあですね──」

 

 

 白い少女は真っ直ぐにこちらを――カメラを見つめる。余すことなく思いを伝えるために。

 

「……私はこの世界がだいすきです。……やさしくて、あったかくて、きらきらしてて……とってもしあわせなの」

 

 優しい声が紡ぐ。

 

「ライスちゃんがいて、ママやパパ、るるちゃんに大切なお友達……みんながいて。……すごく、すごくしあわせなの。毎日がとっても楽しくて……だからね、私思ったの。……私のしあわせを、みんなにお裾分けしたいって」

 

 今まで受けた優しさを、温もりを……分かち合う為に心を込めて紡ぐ。

 

「私の走りで、みんなをしあわせにする事。それが私の夢です。……だから──」

 

 白い少女の無垢な願い。──ひだまりの様な温かな微笑みに魅せられる。

 

 「────見てて」

 

 

 ……嗚呼、なんて──美しいのだろうか。

 

 

 「…………でも、一番大好きなのはライスちゃんです!」

 

 

 ……ちょっとずっこけそうになった。

 

「…………ありがとうございました。では次に──」

 

 

 

 シロノリリィがインタビューを終えた。なんとなく最後っぽい感じだが、実はまだ一人インタビューが残されていた。

 

(…………まじ? この後インタビュー受けるの!?)

 

 ──彼女の名はマチカネタンホイザ。どうして自分が最後なの!? と思いつつも、それを上手く隠して笑顔で返事をした。

 

「──マチカネタンホイザさん、お願いします」

 

「……はい!!」

 

 ……若干ヤケクソである。

 

「今回注目している選手はいますか?」

 

「全員がライバルですっ!! 誰一人として油断できませんから!!」

 

「なるほど、気合が入ってますね。それでは今回の意気込みをお願いします」

 

「ブルボンさんやライスさんやリリィさん……注目されている人達全員ぶっ倒します!!」

 

「……おぉ、まだ本番前だと言うのに素晴らしい気迫です。それでは最後に一言お願いします」

 

「皐月賞がんばるぞ〜!! えいっ!! えいっ!! むんっっ!!!!」

 

「素晴らしいです。マチカネタンホイザさん、ありがとうございました」

 

 

 この後チームのみんなに「やるじゃん! タンホイザ!」と褒められた。

 

 

 


 

 無事にインタビューを終えたリリィちゃんです。なかなかいい感じだったのではないでしょうか! 今はトレーナー室で待機しています。

 こういうインタビューとかがあると、もうすぐ皐月賞が来るんだなと実感しちゃいます。トレセン学園に入ってからほぼ一年経つと考えると、あっという間に時間が過ぎているんだなぁって思いますね!

 

 

「ねぇねぇライスちゃん。さっきのインタビューで言ってたライスちゃんの夢、私初めて聞いたよ!」

「えっ? あれ? ……ライス、言ったこと無かった?」

「うん。でもとっても素敵だなって思ったの! 優しいライスちゃんにぴったりだって思った! それでね、私の夢もライスちゃんの夢と似てるなぁって嬉しくなっちゃった!」

「えへへ……。ありがとう、リリィちゃん! ライスもね、リリィちゃんの夢が、リリィちゃんにぴったりの素敵な夢だって思ったよ!」

「えへへ! ありがとうライスちゃん! ……ライスちゃん、あのね……ライスちゃんに言い忘れてた事があったなって思ったの……聞いてくれる?」

「……? なぁに、リリィちゃん?」

 

 私はライスちゃんと目を合わせます。

 

「……世界で一番だいすきな私のお友達。……だけどね、今一番勝ちたい人はライスちゃんなの」

「……リリィちゃん」

「ブルボンちゃんよりも、誰よりも……ライスちゃんに勝ちたいの。とっても大事で特別な、私のライバル。……だから、皐月賞……私が勝つよ」

 

 私の特別、私だけの特別な人。世界で一番だいすきな私のライバル。

 

「……もう。今そんな事言われたら、ライスの体、火照っちゃうよ……」

「……んふふ。ブルボンちゃんもライスちゃんも、私が倒しちゃうからね!」 

 

 ふっふーん! かっこよくライバル宣言できました! あっ……そういえばライスちゃんにもう一つ聞きたいことがあったんでした。うっかリリィちゃんです!

 

「ねぇねぇライスちゃん! 雨乞いってどうやるの?」

「…………えっ? ……雨乞い? ……う〜んとね……海が関係する生き物のポーズをするとか、どうかな? お魚のポーズとか……。でもなんで雨乞いするの、リリィちゃん?」

「おぉ! それは確かに効きそうですね! 早速試してみます! 雨乞いをする理由はですね、皐月賞の秘策の一つだからです!」

「……そういうのはバラしちゃだめだよ?」

「…………えっと、内緒にしてくれる?」

「……うん」

 

 ……秘策がバレてしまいました。で、でも大丈夫です! 他にもあるから平気です! ……本当ですよ? リリィちゃんの作戦はいっぱいあるんです!!

 とりあえず今はライスちゃんと雨乞いをします。るるちゃんが戻ってくるまで暇というのもありますが。

 

 

 

「ただいま〜。……って、何してるの二人とも?」

 

「さ、さかなー! あっ、おかえりお姉さま!」

「ちんあなごー! あっ! おかえりるるちゃん!」

 

「……よく分かんないけどかわいいから写真撮っていい?」

 

「……えぇっ!?」

「いいよー!」

 

 

 

 

 

 

 私達が最後のトレーニングを終え、いよいよ皐月賞の日がやってきました。……遂に、この日が来ました。

 どうやらお天気は雨で、私の雨乞いが通用したようです。ライスちゃんも「本当に雨……降っちゃった……」ってびっくりしていました。私の秘策……『リリィちゃんスペシャル』をご覧あれです!

 

 


 遂に迎えた皐月賞当日、リリィとライスの調子は絶好調。私が……というよりあの子達が頑張ったから当然バッチリに調整したわ。パドックでは、ミホノブルボンと共にその鍛えられた肉体を周りへと晒し、注目を集めた。まあ、二人ともかわいいから注目されるのは当然なんだけどね。

 そんな私の周りには、本田さんと中村さんと4人のウマ娘が集まっていた。

 

「やあ青路くん。リリィちゃんとライスちゃんの調子はどうだい?」

「本田さん……。えぇ、バッチリですよ。ミホノブルボンだってぶっ倒しますから。優勝はうちの子達が頂きますよ」

「それは心強いね。……ふふっ、ちょっと緊張しているね?」

「……そりゃあ緊張しますよ。だって皐月賞ですよ? 新人トレーナーの自分がこんな大舞台に立てるなんて、昔は思ってもいませんでしたから。私と比べてあの子達は全然緊張してませんけど……」

「『昔は』……ねぇ。まぁ、頼もしくていいじゃないか。緊張してガッチガチとかよりは全然いいよ」

 

 とりあえずやれるだけやってきたけど、やっぱり緊張するわね……。どうして走る本人よりも見守ってるだけの私の方が緊張するのかしら。……あぁ、そっか……

 

「……見守ることしかできない、からなのかなぁ……」

「いつの時代も、トレーナーとはそう言うものさ。……ところで中村くんは今日のレース、君はどう見るのかな?」

「……いきなりですね。……そうですね、ミホノブルボンの逃げをどうにかしないと話にならないかな、と思います。俺の考えだと今回はライスさんがマークして、リリィさんは脚を温存するんじゃないかなって思いますね」

 

 中村さんの意見に私も同意ね。ただ、リリィが『雨が降ったら私のリリィちゃんスペシャルが炸裂します!』って言ってたのがちょっとだけ気になるのよね。……ところで、この子達は何をしているのかしら?

 

「……ミホが勝つににんじんゼリー1個」

「ならワタシはリリィの勝利に花京院の魂を賭ける」

「もう! アッシュさん、ボーガンさん! そういうのはよくないです!」

「そうですッ! 学級委員長の目が黒い内は、賭け事などさせませんよ!」

 

 ……いや、本当に何してるのよ……。

 

「賭け? いやいや、これは勝者に対する祝いの品を事前に申告しているだけだよ。だから断じて賭け事では無いよ、バクシンオー」

「ややっ!? 確かに、言われてみればそうですね! これはいけません、早とちりしてしまいました! 申し訳ありません!!」

「……多分騙されていると思います」

「こらこら君達……」

 

 本田さんが注意してくれるようね。なら私は何も言うことがないわね。

 

「私はライスちゃんが勝つにショートケーキ1個で」

 

 ……ダメだったようね。

 

「……じゃあ私はライスにモンブラン1個とリリィにチョコケーキ1個ね」

「青路さんっ!?」

「なに!? 2人選ぶのはずるいんじゃないのかな!」

「私の可愛い愛バ達だからセーフですぅ! ……私はあの子達のトレーナーですから」

 

 ……信じてるからね。ライス、リリィ。

 

 

 

 


 

 ファンファーレが鳴り響く。シロノリリィとライスシャワーとミホノブルボンの最初の対決が始まる。

 

『足元悪い雨の中、中山レース場芝2000。18人のウマ娘達が挑むのは、最も『はやい』ウマ娘が勝つという皐月賞! 成長を見せつけるのは誰だ! 3番人気にはシロノリリィ。この評価は少し不満か? 2番人気はこの娘、ライスシャワー。スタンドに押しかけたファンの期待を一身に背負って1番人気ミホノブルボン!』

『火花散らすデッドヒートに期待しましょう』

『ゲートイン完了。出走の準備が整いました』

 

 ザーザーと降る雨がウマ娘達を濡らす。

 

『──スタートです!』

『各ウマ娘、きれいなスタートを切りました』

『みんな集中してましたね。これは好レースが期待できそうですよ』

『先行争いはミホノブルボ……いやっ、シロノリリィだ!? 凄まじいスタートダッシュを決めたシロノリリィが逃げを選んだ?! これはいつもと違う展開だ! 果たしてこれは、彼女の作戦なのでしょうか!?』

 

 

「……は?」

「……まじかよ」

「……むむっ? これは……」

「……リリィさん」

 

 奇策か、それとも作戦か……。シロノリリィの皐月賞が幕を上げた。




皐月賞の後半は今週中に投稿予定です。月曜日は(間に合えば)掲示板回の予定です。
自分の小説を見直して文体がお堅いと感じたので、皐月賞と掲示板回を投稿し終えたらクラシック級の話とジュニア級の一部をゆるふわに修正します。
最近は投稿頻度が下がっていたので、これからは無理のない範囲で投稿を増やしたいと思います。目標は10月で菊花賞まで書くことです。


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