すきすきだいすきライスシャワー   作:パゲ

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リリィちゃんに盛るペコ。


第26話 日本ダービーへ向けて!

 日本ダービーへ向けてライスちゃんと一緒に猛特訓中のリリィちゃんです。今私達はるるちゃんが考えたど根性特訓の真っ最中です。

 その特訓の内容はですね、階段をいっぱい登る! というものです。……普通の特訓では? と思う人もいると思います。これが何故ど根性特訓なのかというとですね……

 

「――さっきと比べてタイムが落ちてるわね。二人とも、フォームを意識してもう一度よ」

「「はいっ!!」」

 

 ……ずっと、ひたすらに階段を駆け登り続けるからど根性特訓なんです。

 日本ダービーのコースには高低差2mの坂があります。そこに対応するためにこの階段トレーニングを行なっています。

 今いる場所はトレセン学園近くの神社です。そこにあるちょー長い階段でひたすら登って登って登りまくるのですが、さすがに大変ですね。

 でもそのおかげか私もライスちゃんも皐月賞の前よりも根性が鍛えられたと思います。このトレーニングなんですけど、実は私だけ少し内容が違います。

 

「……リリィちゃん、もうソレには慣れた?」

「うん。最初は本当に大丈夫なのかな? って思ったけど、今は割と大丈夫になったよ! ……キツいのは変わらないけどね……!」

「……あはは」

 

 最初は普通にやってたんですよ? だけど私のパワーだと階段ぐらいじゃ筋肉の負荷になりませんでした。これならずっとコサックダンスをしてた方がキツイぐらいです。

 これに困ったるるちゃんが「……悟空みたいに重りつけるか」って言い出して変な重りを装着したのが今の私です。この重りは確か……アンクルウェイト? みたいな名前でした。私が今着けているのはその中でも特別製らしくて、通常のやつと比べて莫大な負荷がかかるようです。実際とってもキツいです!!

 それでこの状態で走ってみたんですけど、なんとびっくり! 普通に走れてしまったんです。それでるるちゃんが「じゃあずっとそれ着けてやるか!」って言い出して今の状況になっています。

 ライスちゃんも一回試してみたんですけどすぐにギブアップしてましたね。でもすごく効果があったとは言ってました。

 

【シロノリリィは普通に走れているが、これは彼女の強靭な筋肉と骨格があるからできているだけである。普通のウマ娘ちゃんは絶対に真似してはいけない】

 

「リリィ、身体に異常はない? もし少しでも違和感を感じたらちゃんと言うのよ?」

「大丈夫です! リリィちゃんつよい子なので!」

「そう? ならいいけど。……でもそれを着けてトレーニングができるウマ娘がいるなんて、流石にびっくりしたわ」

「それってどういう事なの、お姉さま?」

「普通のアンクルウェイトはライスでも使えたでしょ? その特別モデルを考案したのはね……『シンザン』なのよ」

「「シンザンさんっ!?」」

「まあ、正確にいうと彼女の基準に合わせたら誰も使えなかったって話なんだけどね。それを一般向けに調整したのがこっちの現在流通しているアンクルウェイトなのよ。リリィの特別モデルは半分ジョークグッズ扱いされているわ」

「「……ほえ〜」」

 

 シンザンさんは史上二人目の三冠ウマ娘さんです。私の憧れているウマ娘さんの一人でもあります。

 

「シンザンは当時トレーニング嫌いだったのよ。それも相当な、ね。それに頭を悩ませたトレーナーが考案したのがアホみたいな重さの鉄下駄と重りを仕込んだトレーニングウェアだったの。その時の経験を活かして作られたのがこのアンクルウェイトってわけ。……で、シンザン基準だと誰も使えなかったんだけど、まさかリリィが使いこなせるとはねぇ……」

「そんな逸話があったとは……リリィちゃん知りませんでした」

「ライスも知らなかった……」

「まあ、普通知らないわよこんな事。でもね、シンザンの話は続きがあってね……その鉄下駄と重りの服のせいで余計にトレーニングが嫌いになってトレーニングをしなくなっちゃったのよ。それから彼女は本番前のレースを調整に使うようになったの。当時はすごい批判されてたらしいわ」

 

 ……私からすると信じられない話ですね。ライスちゃんもびっくりしてます。びっくりしたお顔もかわいいです。

 

「だからね、リリィ……嫌になったらすぐに言ってね。正直提案した私の方が怪我しないかビクビクしてるの……」

「大丈夫ですよ! ダービーはきっとみんなすごくパワーアップしてきそうだから、寧ろこれぐらいやらなきゃだめだと思います! ライスちゃんはもちろん、多分ブルボンちゃんも強くなりそうですからね!」

 

 そうそう! ブルボンちゃんの事です! 最近落ち込んでたブルボンちゃんをみんなで応援して、そのおかげか元気になったんですよ! とっても嬉しいです!

 ……なんですけど、最近は私とライスちゃんに会うと何故かハグを要求されるんですよね。別にいいんですけど。恐らく最近お誕生日を迎えて14歳になった私の大人な魅力にやられてしまったんでしょう。ライスちゃんは世界一かわいくて綺麗で優しいので魅了されるの仕方ないですが。……まあ誰にもライスちゃんは渡しませんけどね!!

 

「そっか。……それじゃあそろそろいいかしら? トレーニングを再開するわよ!」

「「はーい!」」

 

 日本ダービーは厳しいレースになると思います。でも、私は負けません。ライスちゃんにも、ブルボンちゃんにも勝ってみせます!

 

 

 

 


 

 

 ミホノブルボンです。現在はマスターと共に日本ダービーへ向けての会議中です。そして、今日は頼もしい助っ人をお呼びしました。

 

「ブルボン、今日は助っ人が来ると聞いたのだが、誰が来るんだ?」

「もうすぐです。…………どうやら到着したようです。では、この日のためにした練習の成果をお披露目します」

「……練習の成果?」

 

 失礼します! と複数人が言って部屋に入ってきました。そして各々が定位置につき、ポーズを取ります。

 

「──遥か遠くを夢に見て、いざ突き進めバクシン道ッ!!」

 

「──今はまだ蕾だけれど、花開く日を夢に見て……!!」

 

「…………邪魔な奴らはブッ潰し、切り開くは我儘に……」

 

「──通したい意地がある、刮目せよ我が生き様をっ!!」

 

「──無理不可能常識を、踏み越え乗り越え走り抜くっ!!」

 

 

「「「「「──スプリンター同盟、参上っ!!!!」」」」」

 

 

 …………決まりました。我ながら完璧だと思います。マスターも圧倒されていますね。

 

「…………助っ人は、この4人か。……そうか、そうか」

「マスター、どうでしたか? 今の口上は。みんなで一生懸命考えました」

「…………すごかったな。圧倒されてしまったぞ」

 

 やりました。練習した甲斐がありました。

 

「よし、では席に着こう。これからリリィとライス兼日本ダービーの対策会議を始めよう。トレーナーさん、今日はよろしくお願いします」

「あぁ、よろしく頼む」

 

 

 

「……では、まずは皐月賞の反省から始めよう。皐月賞は俺の見立てだと……そうだな、シロノリリィに振り回された……と感じたな」

「はい、確かにそれは感じましたね。私の嫌なところを的確に狙ってきたと感じました。レースを観戦してた皆さんから見てどう思いましたか?」

 

 これには皆さん同意のようです。一様に頷いたり肯定の意を示しています。

 

「……もしも、だ。もしもの体で聞いてほしい。……恐らくだが、リリィの作戦は雨ありきだったのではないかと思うんだ。根拠としては彼女のトレーナーのウマッターの1つの呟きなんだが……この雨乞いを皆は知っているか?」

「私は見ましたよ! お二人とも可愛らしいですよね!」

「あぁ〜……あの変なポーズか。……あれで本当に降ってきたのが笑えるよな」

「なるほど、そういう事ですねッ! あの雨乞いが……いえ、スプリングステークスでの対決が雨乞いに至ったという事でしょう!」

 

 あれはとっても可愛かったです。すぐに保存しました。

 

「……どういう事だ? 偶然ってわけじゃねぇのか?」

「結論から言うと天気の件は偶然だ。アッシュ、1月頃にリリィがブルボンの情報を探り来たのを覚えているか? 恐らくあの頃からブルボンを警戒していたのだろう。わざとスプリングステークスでぶつかり、そして情報を得た。……その時に彼女は自分の重バ場への適正と、普段よりもブルボンのタイムが遅くなっている事実に気づいたのだ。だから皐月賞前日に雨乞いをしたんだ」

「……シロノリリィは頭のキレるウマ娘だと思っていたが、まさかそこまで……」

「そして天気が荒れる前提で作戦を組んだ。……恐らく荒れてなくても同じような作戦は立てたと思うがな。それが最初のロケットスタートと最後のリリィちゃんボンバーだ」

「最初のロケットスタートはブルボンさんを釣り出すためのものでしょう。バクシンの気配が無かったので」

「……リリィちゃんボンバーってなんだよ?」

「説明しましょうッ! リリィちゃんボンバーとは、リリィさんのバクシン的なパワーによる超加速の事です! 0から一瞬で100のパワーを引き出せる驚異的な技ですが、その分バクシン的にスタミナを消費してしまう技です! 名前以外は推測ですけどねッ!」

 

 あの超加速はそんな名前だったのですか。いいセンスですね。

 

「……最後のアレは領域ではないのですか。……確かに何も変化が起きませんでしたが、凄まじいパワーですね」

「多分ですけど、あれは今まで出さなかったんじゃなくて出せなかったんだと思います。スプリングステークスはブルボンさんの領域にびっくりして出せなかったのかなって思いますけど」

「……なぁ、領域とは何のことだ?」

「「「「…………えっ?」」」」

 

 気まずい沈黙が流れます。……もしかしてボーガンさんのトレーナーは教えていなかったのでしょうか?

 

「……ボー、とりあえずトレーナーに電話して聞いてくれ。オレ達から迂闊な事は言えん」

「それを普通に話したのが君達なんだが? ……まあ聞いてみるよ」

 

 ボーガンさんがスマホを取り出して通話を始めました。

 

 モシモシボー? エッ? リョウイキ? モシカシテホカノヒトカラキイチャッタ? ウ~ン、マアダイジョウブカ!

 

「…………なるほど、理解した。私の実力が足りない事をな。まあそれはどうでもいい、ありがとうトレーナー。……なに? お礼は豚の角煮が食べたい……だって? また今度作るから待っていてくれ。それじゃあ……」

 

 ボーガンさんが通話を終えました。そういえばまだ彼女は重賞に勝利していませんでしたね。領域を使うような相手と戦ったことが無いから領域について教えてもらってないのでしょう。……たぶん。

 

「……リリィちゃんボンバーについては分かりました。では、領域は使えるのか? なんですけど、皆さんはどう思いますか?」

「そうですね……私は戦ったことがないから分からないんですけど、アッシュさんとバクシンオーさんはどう思いますか?」

「分かりませんッ! でも使えそうだとは思いますよ!」

「……たぶん、ふとしたきっかけで使えるようになる……って思うぜ? 今思うとオレと戦ったデイリー杯ジュニアステークスが不完全だけど領域を使ってやがったと思う。ほら、最終直線でオレが交わしただろ? そこからのシロの追い抜きは領域を使ってたと考えられるほどだった。あの時の一戦のおかげでシロが領域を掴み始めたのかもな」

「そしたらホープフルステークスもそうなのか? ワタシは領域はよく分からんが、あのスタミナが無くなってからの伸びは通常の走りとは明らかに違っていたと思うぞ」

「多分そうだと思います。それとリリィちゃんボンバーなんですけど、ホープフルではスタミナ不足、デイリー杯はそもそも最高速度に達していたから使わなかった、他のレースは使う必要がなかったと考えられますね」

 

 皆さんのおかげで色々と情報が集まりました。

 

「……皐月賞の反省はこれぐらいにしておこう。では、これを踏まえて作戦を立てようと思う。ブルボン、お前はどうしたい?」

「……そうですね。私の作戦は……まずハナを取ります。次に誰にも抜かされないように走ります。そして最後に1着でゴールします。……完璧ですね」

「流石だブルボン、正に完璧な作戦だな。……だが、これだと皐月賞の時と同じだ」

 

 ……確かにそうですっ……! 迂闊でした。

 

「……ミホは逃げ以外にやらねぇのか? デビュー戦は追い込みで勝っただろ?」

「…………逃げ以外だと掛かってしまうんです。デビュー戦は出遅れてしまったので。……あの追い込みはシービーさんを思い出してやっただけなんです。……でも、逃げにこだわるのは理由があります。それは、シービーさんのように一つの作戦だけで勝った方がかっこいいからです。これは譲れません」

「……おう」

 

 そういえば、アッシュさんに聞きたいことがありました。丁度いいですし聞いてみましょう。

 

「アッシュさん、あなたはあのときどうして私の事を励ましてくれたのですか? 失礼ですが、そういうタイプに見えなかったので」

「なんだよいきなり? ……まぁ、大した理由じゃねぇぞ? それでもいいなら話すが……」

「はい、聞かせてください」

「…………オレと同じだったからだ。ずっと勝ち続けてきて、初めて負けたあの時のお前が、オレと重なって見えた」

 

 アッシュさんはぽつりと呟きます。

 

「オレには夢が無い。走る理由もテキトーで、なんとなくでここに来た。……シロに負けるまでは、誰にも負けたことが無かった。でも、負けちまって……すっげぇ辛かった。……で、だ。こんな薄っぺらいオレでも辛えのに、オレと比べ物にならないぐらい重い理由で走ってるお前が負けちまったら……多分、オレには分からねえぐらい苦しんでるんだと思った」

 

 私の目を真っ直ぐに見つめるアッシュさんは、とても穏やかな顔をしています。

 

「だからお前を助けたいと思った。……ほら、大した理由じゃねぇだろ? ……それと、まだお前に勝ってないからな。シロもお前も勝ち逃げなんてさせねぇからな?」

 

 ケラケラと笑うアッシュさんに釣られて、私も笑ってしまいました。

 

「……アッシュ、君は本当に変わったなぁ……あんなにわがままだった君が、こんなにも立派になって……!」

「揶揄うなら尻尾引きちぎるぞ。で、どうよミホ。満足したか?」

「……えぇ、とても。私はいい友人に恵まれました」

「…………ハッ!! 閃いてしまいましたッ!! バクシン的な作戦をッ!!!!」

 

 どうやらバクシンオーさんが何か閃いたようです。

 

「バクシンオーさん、どんな作戦ですか?」

「ハイッ! 説明しましょうッ!! 作戦はですね──」

 

 

 

 

 

 

 

 …………確かに、この作戦が成功すればリリィさんどころかライスさんも倒せます……!

 

「…………なるほど、確かにこれは……!」

「……アホみてぇだが、成功すれば確かに勝てるかもしれん」

「確かにこれなら、リリィさんのリリィちゃんボンバーもなんとかなりますね……!」

 

 マスターも驚愕しています。ですが、今の私だと正直厳しいです。

 

「……ブルボン。お前はこの作戦をどう思う?」

「はい、マスター。私はこの作戦がいいです」

「そうか。なら、この作戦を前提にメニュー組む。……そうだな、このトレーニング名は……『ド根性作戦』、と言ったところか」

「……いいですね。私に相応しい名前です。バクシンオーさん、ありがとうございます」

「いえいえ! 学級委員長として当然の事をしたまでです!」

 

 リリィさん、ライスさん……待っていてください。必ずあなた達に追いついてみせます。

 

 




アンクルを盛るペコ。
クライマックスでお馴染みのアンクルウェイト君の登場です。リリィちゃんが実際にいたらクライマックス適正抜群ですね。

リリィちゃんボンバー(ノーマルスキル)
レースの最後の方でズドーンっ! って加速します! でもすっごく疲れるから体力が少ないと使えません!
(レース終盤で持久力をすごく消費し、すごく加速する。発動した際に周りのウマ娘をわずかに萎縮させる。このスキルは自分のスタミナが発動基準に満たないと発動できない)

リリィちゃんパワー(ノーマルスキル)
苦手なバ場でも距離でも私のパワーで捻り潰します!
(バ場適正と距離適性がAに満たない場合、適正Aと同じになるように補正される。この時Aから離れているほどスタミナの消費が増える)
※このスキルは最初から習得済みで育成が開始される。
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