すきすきだいすきライスシャワー   作:パゲ

40 / 47
夏合宿です。
タイトルが雑なのはいい感じのやつが思い浮かばなかったからです。


第32話 ライスちゃんイヤーは大きいです!

 気がつくと私は真っ白な場所にいました。空も大地も全てが真っ白な場所。ここから端は見えず、天井も見当たらない。この場所がとてつもなく広いということだけは分かりました。

 漫画とかだとよく見る光景ですね。こういう場所で必殺技とかを覚えたりします。私はBLEACHを読んでるからそういうのは知っています。理解力のあるリリィちゃんです。

 それにしても、なんだか見覚えがあるような気がします。最近こんな場所に来た記憶がありますね。どこだったでしょうか? リリィちゃんのかしこすぎる記憶力を使って思い出してみましょう!

 

「むむむぅ………………はっ! 思い出しました! 日本ダービー(あの時)に見た謎の場所ですね! さすが私です、思い出すのも早いですね!」

 

 思い出せてすっきりしました! さすがリリィちゃんです! とってもかしこいですね! …………ところで、どうして私はここにいるのでしょうか?

 

 どうやら私が眠った後、理由はさっぱりですがこの謎の場所に連れて行かれた? みたいです。私が自分の意思で行ったわけじゃないので、連れて行かれたという認識でいいでしょう。

 この空間はよく分かりませんが、焦ってはいけません。リリィちゃんはかしこいので冷静に周りを観察することができます。

 ふむふむ。パッとみた感じだと、以前来た時と変わってないですね。あの時はなぜか私に鎖が付いていたりしましたが、今回はそれもないみたいです。また巻き付いて来たとしても握りつぶすので問題ないですけどね!

 鎖といえば、あの真っ黒な扉はどこに……おっ! ありましたね! 見たことがないはずなのに、知らないはずなのになぜか『懐かしく』感じたあの扉です。ちょっと近づいて観察してみましょう。

 

 扉の前まで来た私は、じ〜っと観察します。見た目は真っ黒など○でもドアです。でも、よく見てみると色々なところがボロボロで、傷を隠すようにべったりペンキが塗られているような感じです。

 ……ふ〜む。やっぱり知らない扉ですね。アニメや漫画で見たわけでもないし、私がちっちゃい頃に見たというわけでもなさそうです。でも、やっぱりこの扉を見ていると『懐かしい』と感じます。不思議ですね。

 こういう場所にある扉は開けちゃダメな事が多いです。よく分かりませんがそういうお約束なんです。私は良い子なので開けたりはしませんが、もしもやばそうだったらぶっ壊そうと思います。リリィちゃんパンチの3倍の威力を誇る、リリィちゃんキックが火を吹きますよ!

 ……あれ? よく見てみると、なんだか違和感がありますね。なんでしょうか、なんとなく微妙に違うような気が……

 

「――わかりました! 扉に付いてる鎖が減ってるんです! 以前と比べて半分ぐらいになってますね。さすがはリリィちゃんです! とってもかしこ…………あれ?」

 

 …………なんで鎖が減ってるのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 ――自分の名前が嫌いだ。『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』という、空虚な文字の羅列が。

 

 

 

 

 

 

 ……なんだか変な夢を見た気がします。でも何も思い出せないので、特に気にする必要はないでしょう。私に予知夢の能力とかはないですし、そもそも夢というのは記憶の整理だと聞いた事があります。気にするだけ無駄なので意識からポイってしちゃいましょう。

 本当に大事な事なら、かしこいリリィちゃんが忘れるはずないですからね! ライスちゃんに関する事なら全部覚えているのがその根拠です。

 

 気を取り直して。今日から本格的な夏合宿が始まります。どんなトレーニングになるかわくわくしますね! 夏の暑さにも負けない元気なリリィちゃんです。

 先日のジャパンダートダービーは私の特訓の成果を見るためのものでもあったのですが、結果はるるちゃんも文句なしの大勝利でした。ふっふーん! いっぱい褒めてください!

 ダートと芝。今回はいつもと全然違うバ場でしたが、特に問題なく走ることができました。むしろこっちの方が走りやすかったですね。スイスイ動けましたよ!

 ライスちゃんとるるちゃんが私のグッズを着て応援してくれるのはいつもの事なのですが、今回はブルボンちゃんもお揃いの格好で応援してくれていました。ライスちゃんとお出かけした時に買ったのでしょうか? とってもうれしかったです! 今度は私も一緒に行きたいですね!

 これからしばらく先はダートで走る予定はありませんが、スイプロちゃんともまたいつか一緒に走りたいです。しばらくというか、クラシックは全部芝になりそうなんですけど。

 そういえば昨日はスイプロちゃんもお休みだったので一緒に釣りに行ったのですが、結果はボウズでした。ちょっと残念でしたね。

 スイプロちゃんに「釣れなかった時はなんでボウズって言うの?」と聞いたら、「儲けがない……もう、毛が無い。だからボウズ。他にもあるけど、つまりハゲ」と言ってました。……容赦ないですね。

 

 

 

 今日はトレーニングを始める前にるるちゃんが今後の方針を話すそうです。

 目標を決めるのは大事ですからね。私もちっちゃい頃ライスちゃんと走りたくて、トレセン学園に入るという目標のために毎日走ってました!

 

「おはよう二人とも。今日も世界一かわいいわね。さて、リリィの今後の方針を話す前に一つだけ聞いておくわ。お姉さまから見てあなたの身体に不調は無さそうだけど、あなたから見て違和感とかはないかしら?」

「ないですよ! とっても元気です!」

「そう? それならいいけど。もし何かあったら、小さな事でも報告してね。それじゃあリリィの夏合宿の目標だけど――」

 

 るるちゃんからのお話をまとめると、大きな目標は二つ。

 まず一つ目はリリィちゃんボンバーの改良。もう一つは長距離に慣れること。この二つが大きな目標です。

 これらを目標に夏合宿用のスペシャルなトレーニングをするそうです。

 さすがるるちゃんです! 無駄がない目標ですね!

 

「――まぁ、目標としてはこんな感じね。トレーニングの内容は、午前は基礎能力を高めるためのトレーニング。午後は長距離に慣れるために色々やるって感じね。併走とか、長距離の模擬レースとかをやってくわ。じゃあ質問とかはあるかしら?」

「はい! 併走トレーニングは誰とやるんですか? 去年はアッシュちゃんとキョウちゃんが手伝ってくれましたけど、今年はいませんよね?」

「あぁ、それなら問題ないわよ」

 

 るるちゃんが、にこっと笑ってライスちゃんを見ました。ライスちゃんは小首を傾げています。

 今日もライスちゃんはかわいいです。

 

「おめぇの出番だぞ、ご飯!!」

「ライスです」

 

 ……なんでライスちゃん? るるちゃんの声真似がとっても上手です。

 

「不思議そうな顔してるけど、去年は適性が合わなかったから併走出来なかっただけでしょ? 今のリリィなら、中距離も走れるようになったあなたなら、ライスと長距離を想定した併走をしても問題ないからよ」

「……っ!! 確かにそうですね! なんの問題もなかったです!」

 

 今の私は2400でも走り切れるぐらいにスタミナがついています。3000はさすがにまだ大変かもしれませんが、スーパーリリィちゃんパワーとこれからのトレーニングで克服するから問題ないです。

 

「えへへ。トレーニングだけど、リリィちゃんといっぱい走れるね。ライス、とっても楽しみだよ」

「私もだよ! 長距離はライスちゃんの得意距離だけど、私も負けないからね!」

 

 マイラーの私と違ってライスちゃんはステイヤーです。今までのライスちゃんもとっても強かったのですが、本来の適性を発揮したライスちゃんはどれぐらい強くなってしまうのでしょうか?

 

「それじゃあ二人とも、まず午前のトレーニングなんだけどね……二人にはここで走ってもらうわ」

 

 そう言ってるるちゃんは海の方を見ました。

 綺麗な海ですね。今日は波が穏やかです。

 

「――海の上を走るのよ」

 

「「…………えっ?」」

 

 ……るるちゃんがなんか変なこと言いました。

 

 

 

 

 

「うりゃりゃー!」

「り、リリィちゃん、がんばってー!」

 

 私リリィちゃん。今海の上を走ってるの。

 信じられないかもしれませんが、私は今海の上を走っています。チャクラも気も霊圧も使わずに走っています。

 こういうのは漫画やアニメだけだと思っていましたが、実際にやれてしまうのが現実らしいですね。

 るるちゃん曰く、「ある程度の実力を持ったウマ娘ならみんなできる」らしいです。中央の過酷なレースをこなせるほどの肉体と、身体の使い方を熟知していればできる、とのことです。

 

『ふふふ……! このトレーニングは海の上を駆け抜けるためのスピード! 海に落ちないようにするためのパワー! 継続して走るためのスタミナ! 過酷な状況に抗う根性! 適切な身体の使い方を理解する賢さ! その全てを鍛えることができるパーフェクトなトレーニングなのよ!』

 

 先ほどるるちゃんが言ったように、このトレーニングは全ての能力が高い水準で求められるので、見た目以上の厳しさがあります。

 私もまっすぐ走るのは割と簡単にできたのですが、このように曲がろうとした瞬間……

 

「うにゃごぼぉっ!!」

 

「り、リリィちゃーん!!」

 

 ――ドボンです。ライスちゃんが慌てて浮き輪を投げるのが一瞬だけ見えました。

 むむむ……やっぱり曲がるのが難しいですね。身体の傾き、足が水面を蹴る角度、力の入れ具合……などなど。一瞬で切り替えなければいけないうえに、これを無意識でやらなければいけないのでとっても難しいです。

 でもやりごたえがあって楽しいです。水面を走るのは人類共通の夢ですしね! 私もちっちゃい頃は水面を走ったり、壁を走ったり、空中ジャンプをしたいと思っていました。それが実際に出来たので、夢が叶ったと言えるのではないでしょうか。

 

 このトレーニングは私とライスちゃんで交代しながらやっています。走るのと救助する人、交互にやるのが効率がいいからです。

 片方が走っている間は休憩をしながらも相手を観察することができます。自分と相手の走り方がどう違うのか、良い点を探して自分に活かすなど、『観る』ことも立派なトレーニングなのです。

 

『それじゃあ次はライスの番ね。準備はいい?』

「大丈夫だよ、お姉さま」

 

 ライスちゃんに救助されて交代しました。次は私がライスちゃんをお助けする番です!

 

「がんばって、ライスちゃん!」

「うん! じゃあ、行ってくるね!」

 

 軽やかに、そして力強く駆け出したライスちゃんは、そのまま海の上を走ります。真剣な表情のライスちゃんもかっこよくてかわいくて最高ですね!

 そういえば、るるちゃんが変なメガホンで指示を出しているのですが、このメガホンを使うと何故かトレーニング効率が良くなるらしいです。

 原理はさっぱりわからないのですが、この世界は不思議なことがいっぱいあるので気にするだけ無駄だと思います。

 

「リリィ、初めて海を走った感想はどう?」

「とっても楽しいです! でも曲がるのが難しいですね。ライスちゃんは曲がれてるようですけど、多分私は力が入りすぎてるんじゃないかな? って思います」

 

 実際に海の上を走れて、テンションが上がりすぎたのもあると思います。

 ……実はですね、るるちゃんに聞いたのですが『ウマ娘が海の上を走れる』のは割とみんなが知っている話らしいです。

 テレビではもちろん、ネットでもそういう動画などが出回っているらしいですが、私はそういうのには興味がなかったので知りませんでした。

 ちっちゃい頃の私はライスちゃんと遊ぶ方が楽しかったというのもあります。あと、ママやパパとアニメも見たりしていました。好きなアニメはドラゴンボールです! でも昔のやつは引き伸ばしが多いのが気になりましたね。

 

「ダメだったところが分かってればいいのよ。そこから直していけばいいんだからね。私はウマ娘じゃないからそういう感覚的なところは教えられないけど、他の事は教えられるからね」

「失敗ではなく、成功への一歩です! ……あっ、ライスちゃんがそろそろ限界ですね。リリィちゃんスタンバイです!」

 

 ライスちゃんが「ふえぇ〜っ!」とかわいい声をあげながらドボンしました。結構な時間走ってましたね。私はすぐに落ちてしまいましたが。

 

「リリィちゃん、行きまーす!」

「ネタが古いわよ、リリィ……」

 

 

 

 

 

 午前中のトレーニングが終わって、お昼ご飯の時間になりました。いっぱいトレーニングしたからお腹がぺこぺこです。るるちゃんとはいったんお別れです。

 ライスちゃんとお昼ご飯を食べに行く途中でキョウちゃんとブルボンちゃんを発見したので、一緒にお昼を食べに行くことにしました。

 ご飯はみんなで食べた方が美味しいですからね! アッシュちゃんはスプリンターズステークスに向けて、フラワーちゃんとバクちゃんと一緒に行動しているらしいです。

 

 みんなで席についてご飯を注文します。今日はガッツリ食べたい気分ですね。みんなも何を頼むのか決めたので、店員さんを呼んで注文をします。私はそうですね……

 

「焼きそば、からあげ、コロッケ、カレー、チャーハン、天津飯、にんじんハンバーグ、野菜炒めをお願いします。量はウマ盛りで!」

 

 多分足りないのであとで追加すると思いますが、とりあえずはこれでいいでしょう。ライスちゃんも私と同じような感じで注文しました。

 最近私とライスちゃんは食べる量が増えてきました。たぶん、以前よりも成長しているからいっぱい栄養が必要なのでしょう。それで食べる量が増えているんだと思います。

 まぁ、私もライスちゃんもちっちゃい頃からいっぱい食べる子でしたが。

 

「前々から思っていたが、君達の体のどこにそれだけの量の食事が入るのか、まるで理解ができないよ……」

「体格的にこの中で一番大きい私よりも食べますからね」

「最近は昔より食べる量が増えてきたんですよ。成長期ですね!」

「……身長は伸びてないんだけどね。ライス、もうちょっと大きくなりたいなぁ」

 

 ライスちゃんの身長は高等部になってから全く変わってないそうです。かわいいから問題ないと思います。

 私は中等部2年生ですが、これから伸びたりするのでしょうか? 今は138センチしかないので、もうちょっと大きくなりたいですね。できればライスちゃんと同じ目線ぐらいになりたいです。

 

「ウマ娘の肉体は科学じゃ解明できないことだらけだしな。そういえば、我々の名前……ワタシなら『キョウエイボーガン』だな。このウマソウル由来の名前だが、自身のヒトとしての名前と似ていない場合が多いらしいぞ」

「昔、そのような話を聞いたことがあります。ウマ娘としての名前は、三女神様から授かるものと言われていますね。私の場合は、小さい頃に突然頭の中に『ミホノブルボン』という名前が浮かんできました」

「ライスはちっちゃい頃お母さまに『あなたは今日からライスシャワーよ』って言われたの。突然言われた事だけど、それが自分の名前だって、すぐに受け入れられたよ」

「そもそもウマソウルも、ソウルってついてる割に魂とか関係ないらしいですね。私の場合は、私が生まれた時にママの頭の中に『シロノリリィ』っていう名前が突然出てきたらしいです。でも私のヒトとしての名前とウマ娘としての名前はすごく似ていますよ」

 

 ウマ娘の名前を授かるのは大体がちっちゃい頃と言われています。名前を授かるまではヒトとしての名前で生活して、授かってからはほとんどの人がウマ娘の名前で生きるそうです。

 昔テレビで見たのですが、ウマ娘名とヒト名のギャップがある人を探そうという企画がありました。そこで『キラキラプリンセス』というウマ娘さんが出てきたのですが、なんとヒト名が『七々扇 紫衣美(ななおうぎ しえみ)』という渋カッコいいやつだったんです! 見た目もカッコイイ系でしたよ。

 名前を授かるのって、不思議な話ですよね。こういうところもウマ娘がよく分からない(神秘的な)種族と言われる理由です。

 

「そうなのか? よければ教えてくれないか?」

「いいですよ! 私のヒト名は『白井 百合(しらい ゆり)』です!」

「いい名前じゃないか。君に似合っていて可憐だな」

「白井はそのまま“シロ”で、百合は英語で“リリィ”、もしくは“リリー”。そう考えると『シロノリリィ』はものすごく直球ですね」

「そういえばリリィちゃんって、初めて会った時からずっとリリィちゃんって呼ばれてたね」

 

 物心ついた時からずっと、周りからは『リリィ』と呼ばれていました。人によっては、“ちゃん”を付けて呼ばれていました。ヒト名で呼ばれた事はほとんどありません。

 『百合』という名前は、『百合の花にはたくさんの色や意味がある。だからどんな風にでも咲けますように』。という意味が込められているそうです。とっても素敵ですね!

 どちらの名前も私は大好きです! 私のために、私の事を想って付けてくれたとっても大切な名前ですから。

 この後みんなのヒト名を聞いたのですが、ウマ娘名と全然関係ない名前ばかりでした。ライスちゃんのヒト名は昔聞いたから知っていましたけどね。

 

 

 ご飯を食べ終えて、私達がやっていたトレーニングが話題になりました。どうやら私とライスちゃんが海の上を走っていたのをみんなに見られていたらしいです。まぁ、隠すようなことではありませんが。

 

「誰が走っているのか確認して、それが君達だと気付いて驚いたよ。思わず二度見してしまったね」

「楽しそうでしたね。私も後で、マスターに許可を取ってやってみたいと思います」

 

 そんな事を話していたら、外が騒がしくなっていることに気がつきました。みんなでそちらを見ると……

 

「あれは……リギルとスピカか?」

「どうやら海の上を走っているようです。見てください、重心にブレがありません。凄まじいですね」

 

 全員が当たり前のように海の上を走る姿は、ドリームシリーズに所属するウマ娘にふさわしい貫禄がありました。スピカの人達はイメージ通りなのですが、リギルの人達も走っているのはちょっと驚きましたね。

 マルゼンスキーさんが前傾姿勢で腕を組みながら走っています。たしか、十傑集走りというやつですね。キョウちゃんから教えてもらいました。

 ゴールドシップさんは海の上でコサックダンスをしていたのですが、沈む事なくその姿勢のまま縦横無尽に動いていました。なんで沈まないのでしょうか? これが不沈艦とよばれる由来ですね、きっと。

 シンボリルドルフさんもすごくいい笑顔で走ってます。とても綺麗なフォームのバック走で走るその姿は、さすがは無敗の三冠ウマ娘にして生徒会長を務めるウマ娘です。とても洗練された動きです。私もあんな感じで走れるようになりたいですね!

 

「ライスちゃんみてみて! バック走で爆走してる!」

「ふわぁ……すごいね」

 

「ブフォッ!?」

 

 ん? 近くにいたウマ娘さんが咽せてしまったようですね。飲み物が変なところに入ってしまったのでしょうか?

 あの人は……ナイスネイチャさんですね。カノープスに所属するウマ娘さんで、私と同期のマチカネタンホイザさんの先輩です。

 私はあまり接点がない人ですが、今回の合宿でキョウちゃんとカノープス――タンホイザさんが合同で練習をしているので、少しだけ話す機会がありました。そしたらなぜかスルメをもらいました。おいしかったんですけど、なんでスルメを持ち歩いていたのでしょうか?

 

 

 

 

 

「んにゃあ〜! にゃにゃにゃにゃあ〜!」

「ふふっ。お疲れ、リリィちゃん」

 

 午後のトレーニングを終えたリリィちゃんです。とっても疲れました! お風呂入ってご飯食べて寝たいです!! 

 ライスちゃんと併走したり、3000で模擬レースをしたり、とっても大変でしたがいい経験になりました。模擬レースの方はボッコボコに負けてしまいましたが、ライスちゃんの走り――長距離の走り方を観察できたのが今日の成果です。まあ、見ただけで実践できるようなものじゃありませんけどね。

 

「やっぱりライスちゃんは強いね! さすがライスちゃん! かわいい! すき! だいすき!!」

「えへへ。長距離は、ライスの得意距離だから。リリィちゃんにも負けないよ!」

 

 最初の3000は31バ身も差をつけられてしまいました。ガンガンにマークされてゴリゴリにスタミナを削られてしまったというのもありますが、単純に私のスタミナ不足も理由の一つです。

 私の前でも後ろでも横でも、どこにいてもスタミナを削る技術は驚異としか言いようがないです。さすが私のライスちゃんです! ……でもですね、そのせいで今の私はへろへろリリィちゃんです。

 だけど、本番までまだ時間はあります。その時までに強くなって、みんなに勝ってみせますよ! 毎日コツコツトレーニングです!

 

「うんうん。やる気があってなによりよ。お姉さまとっても嬉しいわ。……でもね、体力を使い果たして動けなくなるのはダメよ?」

「ふふーん! リリィちゃんとってもがんばりました! 今日は体力の配分を間違えてしまいましたが、明日からはきっと大丈夫です。リリィちゃんはとってもかしこいので!」

「もう……仕方ないわねぇ」

 

 そうは言ってますが、るるちゃんは優しく微笑んでいます。

 確かに今の私は動けませんが、問題ありません。なぜならライスちゃんがいるからです。

 

「ライスちゃん! だっこ!」

「うん、いいよ」

 

「あっ……待って、ライスもそろそろ限界――」

 

 るるちゃんが言った通り、体力の限界だったのでしょう。ライスちゃんが私を抱き上げた瞬間に全身の力が抜けてしまい、「ふにゃっ?」っとかわいい鳴き声をあげて二人とも倒れそうになりました。

 いけませんね。このままでは二人とも倒れてしまいます。ライスちゃんに抱きついた瞬間に少しだけですが体力を回復できたので、それを振り絞って奮起し、ウマ尻尾を地面に突き刺して私とライスちゃんが完全に倒れてしまうのを防ぎました。

 

「あわわっ! ……ごめんねリリィちゃん」

「大丈夫だよ! ライスちゃんこそ大丈夫?」

「えっ? 尻尾、地面に刺さって……えっ?」

 

 なぜかるるちゃんが地面を凝視していますが、ライスちゃんに怪我がなくて一安心です。でも移動する体力が無くなってしまいました。

 ライスちゃんも私と同じで体力切れなのでしょうか? 私の胸に顔を埋めてぐりぐりしています。

 

「えへへ。リリィちゃんすき」

「えへへへ。……るるちゃんるるちゃん、リリィちゃんそろそろ倒れちゃいそうです」

「体ぷるぷるだけどお顔ゆるゆるね。それじゃあ、お姉さまは百合の間に割り込み隊長させてもらうわ」

 

 るるちゃんが私とライスちゃんをそれぞれ片手に抱き抱えて持ち上げました。おお〜! るるちゃん力持ちですね!

 

「ライス達、重くない?」

「私はお姉さまよ? 愛バの二人ぐらいどうって事ないわ」

「るるちゃんすご〜い!」

「ふふふっ! もっと褒めていいわよ! 二人を抱えて、まさに“両手に花”ってとこかしら」

「ライス達のこと、落とさないでね?」

「落とすわけないでしょ。私はお姉さまよ? 全身全霊、魂を込めてお姉さまを遂行す……──ひゃわわ!?」

「えへへ。るるちゃんすきっ!」

「あっ……リリィちゃんのほっぺすりすりで、お姉さますごい顔になってる……」

 

 るるちゃんに抱きついてる時も私は安心します。一番がライスちゃんで、ママとパパが二番。るるちゃんは三番目ですけどね!

 

「はわわ! ふぐっ……! 耐えて、みせるわ……! 私は……お姉さまよ!!」

「ライスもするね。えいっ」

「えっ!? ライスも!?!? あっ♡ ちょっと死ぬ……♡」

 

 

 

 私達を抱えたるるちゃんがなんだかすごいことになっていますが、この後無事に戻る事ができました。

 夏合宿はまだ始まったばかりです。いっぱいトレーニングして、もっと強くなります! 菊花賞に向けてがんばるぞ、おー!




リリィちゃんのスキル解説です。
前回のジャパンダートダービーでスキルがパワーアップしました。

スーパーリリィちゃんパワー(レアスキル)
苦手なバ場でも距離でも私のスーパーパワーで捻り潰します! 得意なとこだとなんかいい感じになります!

・バ場適正と距離適性がAに満たない場合、適正Aと同じになるように補正される。この時Aから離れているほどレース中の持久力の消費が少し増える。
・適性がA以上の場合、バ場ならパワーが、距離ならスピードが少し増える。Sなら更に上昇する。

以前のスキルはこんな感じです。

リリィちゃんパワー(ノーマルスキル)
苦手なバ場でも距離でも私のパワーで捻り潰します!
・バ場適正と距離適性がAに満たない場合、適正Aと同じになるように補正される。この時Aから離れているほど持久力の消費が増える。
※このスキルは最初から習得済みで育成が開始される。

おまけ

「ライスちゃんみてみて! バック走で爆走してる!」
 
「──ッ!」
 
シンボリルドルフの賢さが更なる高みを目指して2上がった
シンボリルドルフのスキルポイントが30上がった
シンボリルドルフとの絆ゲージが15上がった
 
「ブフォッ!?」
 
ナイスネイチャの賢さが5上がった
ナイスネイチャのスキルポイントが30上がった
ナイスネイチャとの絆ゲージが15上がった
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。