ぽんこつサイボーグ。
皆さんこんにちは。ミホノブルボンです。現在私は、菊花賞へ向けて夏合宿の最終調整の最中です。
本日のミッションは二つ。長距離を想定した身体能力向上トレーニングと、ライスさんとリリィさんと一緒に夏祭りへ赴く事です。
非常に楽しみです。楽しみすぎてトレーニングが捗りました。
私は幼少期からトレーニング漬けの日々を送っており、このようなイベントを友人と過ごした事はありません。そもそも友達もいませんでしたが。
しかし、今の私はあの頃とは違います。ミホノブルボンver0.11だった私は、今ではミホノブルボンver2.84と大幅にバージョンアップしているのです。
どの様な状況、困難であろうとも必ず適応できるでしょう。私のアップデートに協力してくれたフラワーさん、ボーガンさん……本当にありがとうございました。
フラワーさんからいただいたデータは『花の愛で方』です。彼女のおかげで、私はライリリという至高の花を侵す事なく眺められるのです。
「間に割り込んでいるのでは?」と言われた事がありますが、その点は問題ありません。誘ってもらってるだけなのでノープロブレムです。以前ライスさんと二人でデートしましたが、これも特に問題ありません。彼女の心はリリィさんのモノなので。
ボーガンさんは私に『理不尽に対する対応、及び適応力』を授けてくれました。具体的にいうと数多のクソゲーです。このデータを分析し、レースにも見事対応してみせましょう。
正直、精神的な負荷という点ではトレーニングよりもクソゲーの方が大きいです。もう一度やれと言われたら、流石に目から透明なオイルが漏れ出してしまいます。
勘弁してください。もうクソエンカは嫌です。
さて、本日のミッション『夏祭り』において、実は一つだけ懸念点があります。それは、私が夏季専用装備『浴衣』を所持していない事です。
前述した通り、私は過去にこの類の季節系ミッションに参加した事がありません。それ故に各季節毎の専用装備を所持しておらず、汎用装備である『学園指定ジャージ』で任務に挑むことになりそうです。
ライスさんもリリィさんもきっと浴衣を装備してきます。私だけ汎用装備だと周りから浮いてしまいそうで残念です。
以前、ライスさんとデートした時に購入すればよかったのですが、楽しくてついうっかり購入するのを忘れてしまいました。
その時にゲームセンターへ行き互いのぱかプチを入手して交換したのですが、「これ、ライスだと思って大切にしてね♡」と可愛らしく言われました。
あれはずるいです反則ですかわいすぎますなんですかあの可憐さは顔も声も仕草も全てがかわいいです泣きますよ。
次はリリィさんと交換したいです。休日の予定が合えばいいのですが。
夏季専用装備『浴衣』。私の体格が近ければライスさんに貸してもらうという手がありましたが、残念ながら私とライスさんの体格には隔絶とした差があります。
特に差があるのは胸部装甲ですね。リリィさんは超軽量級です。
そういった事情もあって、今回の夏祭りは私だけ学園指定ジャージです。ですが、来年は絶対に浴衣にします。お揃いで写真を撮りたいので。
他に夏用装備として『水着』があります。こちらはソシャゲ等で特に需要があるとボーガンさんに教えてもらいました。水着は私も持っています。こっちはちゃんと買いました。
私の水着を選んでくれたのはライスさんです。私はこういうのに疎いので助かりました。ライスさんはリリィさんの服をいつも選んでいるので慣れている様子でした。とても心強いです。
……ここだけの話ですが、ライスさんとリリィさんの下着はお揃いです。フリルが付いていて可愛いのです。とても似合っていました。
あとリリィさんを着せ替え人形にしたくなる気持ちはとてもよく分かります。
ライスさんとリリィさんはお互いに似合う水着を選びあっています。それだけでもうたまらないのですが、可憐な二人が戯れる様子は最早芸術です。玉のような肌が触れ合い、やわらかにたわむ光景は至高としか言いようがないです。
そんな宝石すら霞ませる彼女達の水着姿ですが、今回はお揃いのワンピースタイプを選んだようです。
サイドレースアップフリルワンピースと言ってましたが、なんだか呪文みたいですね。あと透けてるトップスも着ていました。ちょっとえっちでした。
色はライスさんが紺色でリリィさんが白色。彼女達のイメージカラーですね。トップスは互いに白のシースルー。
正直、トップス越しに透けて見える華奢な肩が非常に唆ります。あと二人の小さいお尻が可愛いのです。
ライスさんのポニーテールも興奮しましたが、リリィさんのツインテールは反則級の可愛さでした。なんですかあのかわいい生き物は。
私の服は普段○まむらで買ってるので、こういうオシャレなものはデータにありません。ちなみにアッシュさんはド○キで、ボーガンさんはユ○クロです。
いっぱい写真も撮りました。随時ウマッターにアップしていく予定ですが、もちろん許可は事前に取ってあります。判断するのはライスさんで、それ以外の写真は個人で楽しむ分なら問題ないと言われました。
彼女は普段ウマッターなどのSNSはやっていません。なぜなら、そうするよりもリリィさんとの思い出を作る事が大事だからです。尊いですね。
ですから、私が彼女達の尊い写真を電子の海に放流するのです。幸せのお裾分けです。
さて、ミッション開始10分前となりました。私のトレーニングの話はどうでもいいので割愛です。
私の方は準備万端。トレーニング後にシャワーも浴びたので匂いも問題ありません。
ライスさんとリリィさんはすごくいい匂いがします。リリィさんは汗をかいてもいい匂いがするのがやばいです。
時折、ライスさんがリリィさんを膝の上に置いて抱っこしながら吸っているのが非常に羨ましいです。私の膝の上も空いてますよ。
「ブルボンさ〜ん!」
「ブルボンちゃ〜ん!」
耳に幸福を検知。ライスさんとリリィさんがやって来ました。美音のする方へ振り向くと、そこには地上に舞い降りた天使達が居たのです。
「……ブルボンさん? あ、あれ?」
「ブルボンちゃんフリーズしてるね。叩いたら直るかな?」
「機械じゃないからだめだよ。……機械もほんとは叩いちゃだめなんだけどね」
いつもと違い、髪の毛をおろさずに編み込みアップスタイルにしていたのですが、控えめに言って最高でした。早速脳内メモリに保存しました。
ライスさんは紺色に青いバラが描かれた浴衣を。リリィさんは白地に白百合が描かれた浴衣を着ていました。
そして、彼女達の右の薬指にはお揃いの指輪が煌めいています。素晴らしいですね。
可憐です、あまりにも。道行く人々は彼女達から目が離せなくなるでしょう。彼女達の美しさの前には、夜空の大輪すら霞んでしまうかもしれません。
「好きです(お二人とも、とても似合っています)」
「えへへ。ありがとう、ブルボンさん」
「えへへ! ありがとうブルボンちゃん!」
「自爆します」
「……ふえっ?」
「……えっ?」
『なんでっ!?』
「自爆シークエンス起動。爆発まで……4……3……2……1……」
……ですが。ああ、なんという事でしょう。お二人がこんなにも綺麗なのに、私は学園指定ジャージ。場違いにも程があります。
小洒落たカフェで周りが呪文のような商品を頼む中、一人だけ筑前煮を注文するかのような恥ずかしさと気まずさ。最早、生きていられません。
「──0。キュイーン……ドッカーン」
「ぶ、ブルボンさーん!?」
「ぶ、ブルボンちゃん……」
ミホノブルボン、ここに散る。死因は恥ずか死。
「……先行ってるね」
「ばいば〜い」
「やめてください泣いてしまいます」
ライリリの間に物理的に割り込みながら夏祭りの会場を目指しています。はい、
普段通り、私はお二人を見守るために一歩半ほど間隔をあけて進んでいました。この距離を私は聖なる一歩半と命名しました。
しかし、お二人はこれが不満だったようです。今日のお祭りは『3人』で楽しむためのもの。彼女達にはこの一歩半がお気に召さなかったようです。ですから、私は不意を突かれてしいました。
私がライリリウム(ライスさんとリリィさんの尊さから生成される物質。ストレスを抑える効果あり。あとガンに効きます)を摂取していた刹那……私のハイパーブルボンセンサーを掻い潜り、彼女達は懐へと潜り込んできたのです。
(──疾いっ!? 近いっ!?)
「あのね、ブルボンさん。ライス達ね、3人で遊ぶのすっごく楽しみにしてたの。だから、いつもみたいな距離じゃなくて……」
「もっと近くがいいです!」
小さくてやわらかくて温かい手が、私の両手を包み込みました。
右手にライスさん、左手にリリィさん。突然の事態に処理落ち寸前の私に、さらなる追撃がなされました。
なんと、そのまま腕を組んで私の真横を位置取ったのです。必然、とある部位の感触が私を襲います。
π=3.141592……ライスさんの程よい大きさの胸部装甲が私に押し当てられました。彼女の小柄な体型の割に立派なそれは、艶かしさを放つ至宝。対するリリィさんの胸部装甲は、驚くほど平坦。卑しさを微塵も感じさせない清廉さは、正に聖壁と呼ぶにふさわしいでしょう。
「みぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ」
「あわわ! ど、どうしたのブルボンさん!?」
「お〜! バイブルボンちゃんです!」
──アップデートを開始します。アップデートの最中は電源を切ったりしないでください。故障の原因に……上目使いは卑怯なのですが??
「──アップデート完了。ミホノブルボンver2.85……起動します」
「おっ? 戻りましたね!」
「も、元に戻った……のかな?」
「いいえ。戻ったのではなく、進化したのです。その証拠に、今手を繋いでも平気でしょう? これが、進化した私の実力です」
バージョンアップした私に死角はありません。無敵です。
胸部装甲を押し当てられようが、上目使いをされようが最早ふふふっ可愛いですね。
あっ……リリィさん待ってください、頬ずりはいけません。まだ対応しきれて──
「みぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ」
「おっ? また震えてますね。なんででしょうか?」
「…………」
ジト目はやめてくださいライスさん。興奮します。
この後めちゃくちゃアプデしました。
ミホノブルボンver2.92です。現在、私達は屋台を巡ってエネルギーを補給しています。
実はさっきくじ引きを引いたのですが、なんと私は当たりを引きました。とても嬉しいですね。
ライスさんとリリィさんは、残念ながらはずれでした。しょんぼりしててもかわいいですね。
ですが、わくわくしている私の前に訪れた現実は非情でした。
景品はwiiとよく分からないゲームソフト3本。最新型じゃないのはまあ分かりますが、ソフトが聞いたこともないマイナーなものだったので正直困りました。
『黄金の絆』と『メジャーWii パーフェクトクローザー』と『プロゴルファー猿』。……嫌な予感がするので、あとでボーガンさんにプレゼントしましょう。彼女ならば動画のネタにしてくれるはずです。
『あっちゅっちゅ!』
──ん゛!! ……なんですかそのかわいい鳴き声は。
ギガウマ盛りのたこ焼きを頬張る二人。熱くて呂律が回ってないのが凶悪です。
近くの屋台で買い漁った様々なメニュー。それはどれもとてつもない量で、ウマ娘向けの『ウマ盛り』を超えた『メガウマ盛り』を凌駕する『ギガウマ盛り』です。
私は普通のウマ盛りですが、彼女達の小柄な体のどこに収まっているのか不思議です。
「本当に、いっぱい食べてますね。見ていて爽快です」
「ふえっ!? だ、だって、いっぱいトレーニングしたからお腹ぺこぺこで……」
「たこ焼き美味しかったぁ! 次は……焼きそばにしよっ!」
「あっ……リリィちゃん、ほっぺにソースが。動かないでね、拭いてあげるから」
「うに? ん〜」
おや? リリィさんのもちもちほっぺに、先ほどのたこ焼きのソースが付着しています。かわいいですね。
すぐにライスさんが気づいて、彼女の白魚のような指がリリィさんのぷにぷにほっぺを拭いました。
互いに寄り添うその姿は、天使の晩餐と呼ぶに相応しいです。
「よし、取れた。もう大丈夫だよリリィちゃん」
「うん! ありがとうライスちゃん!」
もっといちゃいちゃしてください。私の脳内メモリーが潤いますので。
それにしても、いっぱい食べるお二人がかわいいですね。もっといっぱい食べて大きく……ならないでください。
「ライスさんもリリィさんも、そのままでいてくださいね」
「……? ブルボンさんって、たまに変な事言うよね」
「ね〜」
全人類の総意ですが?
「たーまやー」
『にゃー!』
心とお腹のエネルギーを補給し、私達は本日のメインミッション『花火』を観ています。
夜空に咲く光の大輪。
とても綺麗ですが、咲くのは一瞬だけ。美しくも儚い、夏の風物詩です。
「ここは、花火がよく見えますね。確か、穴場なんでしたっけ?」
「うん、そうなの。去年もね、リリィちゃんと一緒に観たんだ」
「去年はライスちゃんと二人っきりでした。今年はブルボンちゃんも一緒で嬉しいです!」
「はい。私も、とても嬉しいです」
今この場所で、この三人だからでしょうか。今まで見てきたどんな映像よりも鮮明で、鮮烈に感じています。
あと、私の両隣でりんご飴をぺろぺろするお二人がかわいくて泣きそうです。
「……綺麗だなぁ」
「……うん。とってもきれい」
彼女達の言葉に、私は黙して首肯しました。
光の種子が
「……もうすぐ、夏が終わります」
この花火が終われば、私達の夏は終了です。
ほとんどトレーニングに消えた時間ですが、私にとってはとても大切な思い出。
「分かっている事ですが、少しだけ寂しいです」
この時間が名残惜しい。
寄りかかってくる温もりが心地よい。
「……でも、それ以上に楽しみなのです。皆さんと進む未来が」
『おんなじだね』
二人同時に、そう言って。金と紫の瞳が私を見据えた。
「ライスもね、とっても楽しかった。美味しいものを食べて、いろんな屋台を見て。ブルボンさんの知らなかった一面を見れて、もっともっと好きになれて。今日が終わるのはとっても寂しいよ。だけどね、大丈夫だよ」
私の手を優しく包み込み、月明かりのように優しく微笑った。
「──明日はもっと、楽しくなるから」
「みんなと過ごした日々が、私の宝物なの」
微笑みながら手を取る、白くて小さな少女。
「私の始まりはママとパパの笑顔だった」
だけど、その心は誰よりも大きくて。きれいで優しい。
「ママとパパが私を愛してくれた。ライスちゃんは私に光をくれた。るるちゃんが私達の手を取ってくれて、それからたくさんのお友達ができて、こうして隣にいられる。私ね、みんながだいすきなの。一緒にいると楽しくて、嬉しくて、とってもしあわせ」
彼女の言葉から、今までの思い出全てを愛おしく思っているのが伝わってきた。
ピョンと軽やかにベンチから離れて、くるりとこちらに振り返る。そして、夜空と星と大輪を背景にして、白百合が咲き誇った。
「──私はね、みんなに逢うために生まれてきたの!」
……ああ、眩しい。
無垢で、純粋で。温かくて、やわらかい。
穢れを知らぬ、満開の
私のそばの、太陽と月。
世界一素敵な白と黒。
「……綺麗ですね」
「……ふふっ。リリィちゃん、初めて会った時みたいな事言ってる」
……なんですか、それは……?!
「詳しくお願いします」
「リリィちゃんがお引越しの挨拶にきたときに『……あのねっ、わたしはねっ……あなたにあうために、うまれてきたの……』って言ってくれたの」
「ライスちゃんに逢えたのが嬉しすぎたせいですね!」
──プロポーズでは? プロポーズですよ? プロポーズですよね!?
「結婚式の友人スピーチは任せてください。完璧にオーダーをこなしてみせましょう」
「ま、まだ早いから……」
「トゥインクルシリーズは走り切りたいですよね!」
いつの間にか花火は終わっていて、それでも私達は喋り続けていました。
帰りが遅い私達を皆さんが心配して迎えにきてくれて、おしゃべりに夢中だった私達は呆れられて。でも、その表情は優しくて。
私達の夏は、これでおしまい。
本日のメインミッション達成。ミホノブルボン、これより帰投します。
次は掲示板回です。