すきすきだいすきライスシャワー   作:パゲ

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本作を読んでくれてありがとうございます。
評価、感想、ここ好き、おきにいり、誤字報告等全てありがたく思っております。
この話からジュニア級編が開始されますが、これからレース描写をどうすればいいかと不安で震えています。


ジュニア級編
第5話 シロノリリィ登場!


 桜が舞い散る中、少女達の希望に満ちた声が響く。今日、彼女達はここトレセン学園で新たなる夢への一歩を歩み始める。ここにいるのは「ウマ娘」と呼ばれる不思議な少女達だ。

 ウマ娘とは、人によく似た容姿をしているが人間とは異なる形状をした耳と、自在に動くしなやかな尻尾を持つ種族で、卓越した身体能力を持ち、特に走力は生物界の中でも上位に位置するという不思議な少女達の事だ。

 その中でも選ばれたエリート達が集まるのがこのトレセン学園である。

 日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称トレセン学園。ここにはウマ娘達に必要なありとあらゆる物、施設、全てが揃っている。

 日本各地から集まった生徒の数は2000弱。その中のほんの僅かな者だけが勝利と栄光を手にする事が出来る。

 今日は入学式。この中のどれだけの者が夢を掴むことが出来るのか、それは誰も知らないし分からない。だが、走らなければ未来はやってこない。勝利も、敗北も、全てを決めるのは己の脚のみなのだ。

 そんな少女達の中に一際目立つ存在がいた。白毛のウマ娘『シロノリリィ』。まぁ、目立つと言っても良い意味では無いのだが……。

 

 少女達が学園へと歩む中、大きく注目を集めている2人がいた。

 1人は黒鹿毛の小柄な少女、もう1人は白毛のさらに小柄な少女。出会った瞬間におかえり! とただいま! と言ったあたり、きっとこのトレセン学園で再会の約束をした関係なのであろうと推測できる。

 なるほど、感動の再会だ。きっとこの少女達の間にはドラマがあったに違いない。

 そう、それはいい。寧ろおめでとうと言いたいし、実際にその光景を見て涙ぐんでいる少女もいた。ウマ娘は優しくて大らかな性格の子が多くて良いですね。

 問題なのはその後だ。その問題の光景を見て、出した涙を戻したいと後悔している子がいたのは恐らく気のせいだ。

 

 

「すっき〜♪すきすきすきすきライスちゃん♪」

「すっき〜♪すきすきすきすきリリィちゃん♪」

「す〜きっ♪」

「す〜きっ♪」

「「だ〜いすきっ♪」」

 

 

 ──なんだこいつら……!?

 少女達が困惑するのも仕方がない。というかこんな小っ恥ずかしい歌を歌うな! 部屋でやれ!

 そしてさらに問題なのはその少女の容姿だ。ウマ娘は大体が見目麗しいという神秘的な種族だ。片方の黒い少女も可憐な容姿をしている。だが、その隣の白い少女はさらにヤバかった。

 ──美しい。一目見ただけで恋に落ちてしまいそうなほどに。

 タチが悪いことに、この小っ恥ずかしい珍妙な歌に釣られて振り向くと、その白い少女が目に映ってしまう。そして恋に落ちた瞬間イチャイチャを見せつけられるのだ。正に地獄だ。

 多くの少女達の脳が破壊されるなか、新たなる1日が始まりを告げた。

 

 

 

 ライスちゃんだいすきっ!! あのねあのね! ライスちゃんがすっっごく綺麗になってました! リリィちゃんびっくりです! あっ! かわいいかしこいシロノリリィです!

 約束の日から……え〜っと、7年ですね! それだけ時間が経てば綺麗にもなりますよね! まあ私の大好きなライスちゃんの事だから当然といえば当然ですね!

 ……ライスちゃんがかわいすぎて興奮しすぎてしまいました。まあリリィちゃんはちょーかわいいので問題ありませんが。

 ところで皆さん、このかわいいリリィちゃんを見て気付きませんか? ……ほらほら、もっとじっくり見ても良いんですよ?

 ……ふふん♪ 分かりましたね? そうです! リリィちゃんはトレセン学園に入学しました! ねっねっ! ほめてほめて!

 リリィちゃんはかわいくてかしこくてつよいこなうえにいっぱい頑張ったから、まあ当然の結果ですね! ……でもでも、ほめてくれていいんですよ?

 今はライスちゃんと別れて教室に向かっています。この後色々案内してくれるって言ってました。わくわくです! 確かこの後教室で待機して、入学式が終わったら教室に戻ってレクリエーションをして、その後寮の部屋割りを確認してルームメイトさんと挨拶をして、後は各自で施設の確認とかそんな感じでしたね。

 ルームメイトさんが誰になるか気になるなぁってライスちゃんに話したら「ライスだよ」って言ってました。ライスちゃんもまだ誰が来るか聞いてないのになんでわかるの? って聞いたら「リリィちゃんとライスの部屋が違うわけないよ」って言ってました。確かにそうですね! ライスちゃんかしこいです!

 なので今のリリィちゃんはちょーゴキゲンだから自然と鼻歌も出ちゃいます!

 ふふん♪ ふふん♪ ふふふふふ〜ん♪ ……あっ! 教室が見えて来ました! リリィ、いきまーす!

 ……あれ?なんか静かですね。……ふむふむ、なるほど、わかりました。

 リリィちゃんがかわいすぎてみんな言葉を失ってますね! かわいすぎるのも考えものです。かわいいは正義と言いますが、かわいすぎると罪になるのは世の中の不条理と言えますね。とりあえず席に座って入学式が始まるまで待っておきます!

 

 

 入学式が始まり、シンボリルドルフ会長のありがたい話やらなんやらが終わって教室に再び戻って来ました。なんだか難しい事ばかり言ってましたが、要するに元気もりもりでいっぱいレースしよう! って事ですね! さすがリリィちゃんかしこいです! 翻訳家になれますよ!

 今は教室で自己紹介とかをしてます。……ふむふむ、みんないろんな目標があるんですね。ダービーウマ娘になりたい、クラシック三冠を目指す、トリプルティアラ、目標が高いのはいいことですね!

 おっ?私の番ですね。最初の印象が大事だと言いますから、ここはビシッと決めましょう!

「かわいくてかしこくてつよいこなシロノリリィです! ライスちゃんが大好きです! クラシック三冠を目指しています! 皆さんこれからよろしくお願いします!」

 ふふーん♪ 完璧な自己紹介ですね! 皆さん私に圧倒されています! これで第一印象は最強です! さて、それでは私のライバルになりそうな子達を見ていきましょう。リリィちゃんアイはとってもかわいいだけじゃ無くて観察にも非常に優れた能力を発揮するんです! ……ふむふむ、よくわかりません! みんな強そうです! まあ私が1番ですけどね!

 ……大体自己紹介が終わりましたね。これからどんな生活が待っているのか、とってもわくわくします!

 

 

 私リリィちゃん、今は美浦寮の前にいます。そして聞いてください! なんと私とライスちゃんが同じ部屋だったんです! まあ当然ですね! リリィちゃんは毎日頑張って来ましたから! ……これから毎日ライスちゃんと一緒です。ずっと、ずっとこの日を待ってました。……えへへ、うれしいなぁ!

 いっぱい、いっっぱい話したいことがあるけど、まずはライスちゃんが施設の案内とトレーナーさんを紹介してくれるそうです。これからはずっと一緒だから、時間はいっぱいあります。かしこいリリィちゃんは慌てません!

 トレセン学園の施設がどんなところかとっても楽しみです!

 

 

 

「今日は噂のリリィちゃんが来る日か〜」

 そう呟くのは、ライスシャワーのトレーナーである自称お姉さまこと青路瑠流である。

 今はライスシャワーがシロノリリィを連れて施設を案内している途中だが、今日は何やら学園内で妙な噂が流れていた。「この世の者とは思えないほど可憐なウマ娘がいる」と。

 この自称お姉さまはトレーナーとしては新人だが、妙に勘が働くところがあった。

「……ライスが言ってた通りなら、この噂の張本人はシロノリリィということになるけど、まさかね……」

 流石にそんな事は無いだろうと思いつつも、まあ本当なら拝んでみたいなぁと、なかなか欲望に正直な女だった。

「ライスが私のこと紹介するって言ってたけど、良さげな子ならスカウトしてみたいなぁ。……と、噂をすればなんとやらね」

 こちらに近付いてくる気配から、己の愛バであるライスシャワーともう1人の少女の気配を察知する。

「ライス、今まで聞いた事ないくらい上機嫌な声してるわね……」

 彼女曰く、7年も離れ離れだったらしい。それなら納得としか言いようがない。

「さ〜てさて、噂のリリィちゃんはどんな子かしら……」

 目を凝らすと、そこに居たのは例の噂になっているシロノリリィ本人だった。

 ──……えっ? 天使? ……あたし、もしかして死んだの?

 きらきらと太陽の光を反射しながら、白い穢れ1つ無い絹の様な髪が風に揺れていて、その髪と同じ色をした耳がまるで天使の羽のようにそこに在る。その白い肌はシミひとつ無く、顔を見れば作り物の様に整いすぎている。まるで雪が乗っているような純白の睫毛は、その形の良い綺麗な瞳をより美しく強調している。上品な砂金色の瞳は、最上級の宝石が引き立て役にしかならない程の煌めきを放っている。小ぶりな鼻と極上の果実の様な唇は、整い過ぎた人形の様な顔に対して、それを和らげるが如く可憐な印象を与えている。

 ──圧倒されていた、その美貌に。

「あっ! お姉さま!」

 己の愛バの声すら耳を通り抜けてしまうほどに呆けていた。

 ──ちょっと、衝撃的すぎてヤヴァイ……。

 瀕死の脳を落ち着かせる為に視線を下に逸らしたが、おててを仲良く恋人繋ぎしているのを見て、お姉さまは死んだ。

「お、お姉さまー!?」

「うに?」

 

 

 

「ふぅ……。かわいいって人を殺せるのね……」

「かわいすぎてごめんなさい……」

 シロノリリィの美貌になんとか耐えられる様になったトレーナーは、改めて自己紹介を始めた。

「……よし! じゃあ改めまして。はじめまして、私の名前は青路瑠流。ライスシャワーのトレーナーです。よろしくね! ライスからは私のこと何か聞いてるかしら?」

「かわいいかしこいシロノリリィですっ! ライスちゃんが大好きです! トレーナーさんの事は自分の事をお姉さまって呼ばせる人だけど、とっても頼りになる人だって聞いてます!」

 ──突然の、と言ってもシロノリリィにとっては最早呼吸と同じ「ライスちゃん大好き!」でまたもや瀕死になりかけていた。

(……なんだこの愛おしい生き物はっ!? 自分でかわいいかしこいってなんだよ!? かわいいは事実だけどっ!! あといきなり『ライスちゃん大好き!』は反則だろっ! くそっ! 死ぬ!! あっ……ライスが私の事頼りになるって言ってくれてる。……嬉しい……すき……やっぱり死ぬ……)

 一瞬白目になりかけたが、気合いでなんとか持ち直した。

「そっかそっかー……。ねぇライス、この子かわいすぎない?」

「リリィちゃんだもん。当然だよ、お姉さま」

「ふふん♪ もっと褒めてくれてもいいんですよ?」

 ほっぺむにむにしてぇ……。などと思いつつ、当初聞こうと思っていた事をシロノリリィに訊ねた。

「えっと……リリィって呼んでいい? あなたはどこのチームに入りたいとか、何か希望ってあるのかしら?」

「いいですよ! チームはライスちゃんと一緒のチームがいいです!」

 よしきた! と心の中でガッツポーズを決めた。

 かわいい……死ぬ……。などと考えながら、トレーナーとしての観察眼は冷静にこの少女の事を観察していた。

(恐らくこの子はマイルの特にダートを得意としているわね……。そしてパワーが非常に優れている。なにより注目したいところは、徹底的に走り抜いて鍛えられたトモよ。……一目見ただけで分かるほどに、ね。この子ならダート路線で王者にだってなれるわ……。芝と中距離、特に長距離は苦手そうだから三冠路線は厳しそうだけどね……)

「じゃあ私のスカウトを受ける気はない? 私がライスの担当だし、ちょうどいいと思うの」

「……入学初日でスカウトっていいんですか?」

「いいのいいの! あなたが有望そうなのは見ただけで分かるわ。なにより私が気に入ったのは、走って走って、走り続けたであろうその脚よ」

「じゃあお願いします。これからよろしくお願いします、トレーナーさん」

 あっさりとスカウトを受け、少々驚いたトレーナーは思わず聞き返した。

「……えっ? 本当にいいの? 今更言うのもなんだけど、私、実績なんて何も無い新人トレーナーよ?」

 トレーナーの瞳を真っ直ぐに見つめながら答える。

「いいんです。……ライスちゃんが信用してる人で、私の頑張りをちゃんと見てくれているから、信用できると思いました」

「……嬉しいこと言ってくれるじゃない。あなたの期待に応えてみせるわ。じゃあリリィ、これからよろしくね! ……それと、もうちょっと気安く呼んでくれていいわよ?」

 差し出された右手を取り、しっかりと握りしめる。

「こちらこそよろしくお願いします!……えっと……じゃあ、るるちゃんって呼びますね!」

「お姉さまがスカウトしてくれなかったらどうしようかと思ってたけど、リリィちゃん、これから同じチームで一緒に頑張ろうね!」

 もちろんです! がんばるぞー、おー! とお互いにはしゃぐ少女を見ながら、トレーナーは決意した。

(この子達の為に、私にできる事を全力でやらなきゃね…)

 これから先、きっと困難があるだろう。だが、この少女達と一緒なら乗り越えられる。そう感じるトレーナーなのであった。

 

 

 

「トレセン学園はとっても広いねっ! 私、迷子にならないか心配です……」

「大丈夫だよ、リリィちゃん。迷子になったら、ライスに連絡してくれればいいし、もしライスと連絡ができなくてもここの人達はみんな親切だから、聞けば教えてくれるよ」

「おぉー! それなら安心ですっ!」

 時刻は夜。今は施設案内を終え、部屋へと戻って来たところだ。

 トレセン学園は広い。はじめて訪れた人なら確実に迷ってしまうほどだ。それ故に、午前中に始めた案内が夜までかかってしまうのも仕方がないと言える。

 行く先々でイチャイチャして時間がかかったのもあるが、それだけこの学園の広さを示しているとも言える。

 2000人弱のウマ娘達が練習をするのだ。これぐらいの広さはあって当然とも言うべきか。

「……あのね、本当は私、とっても寂しかったの……」

 ポツリと、隠していた本音が漏れる。

「……リリィちゃん」

「ママもパパもいた。……だけどね、私の日常にはいつもライスちゃんがいたの。……離れ離れになるなんて、想像できなかったくらいに」

「……ライスもね、あの日からずっと寂しくて仕方なかったの。……ずっと走って、走って、レースの勉強をして、この寂しさを無理やり抑え込んでいたぐらいに」

 ベッドに腰掛けるシロノリリィの隣へと移動し、そっと抱きしめた。

「……ずっと、この温もりが欲しかったの。あの時から、一度も忘れた事が無い、この温もりが」

「……あったかいね」

「……ライス、本当は今日からライバルだね。なんて言おうと思ってたの。……でも、今はただリリィちゃんをこうして抱きしめていたいの。……格好つけるのも忘れるぐらい」

「……私もだよ、ライスちゃん。……ねぇ、話したいことがいっぱいあるの。だから、いっぱいお話ししようよ」

「ライスも、お話ししたいこといっぱいあるんだ。……ねぇ、リリィちゃん……大好き。……これからは、ずっと一緒だよ」

「うん! ずっと一緒だよ。……私もライスちゃんのことだいすきだよ!」

 少女達の夜はまだまだ終わらない。今までの寂しさを埋めるには時間がかかるだろう。だが、これからは幸福な日々が続いていくだろう。二人が一緒なら、ずっと。

 




ジュニア級編はゆるふわでいきたいと思います。
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