すきすきだいすきライスシャワー   作:パゲ

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今回のイベントのライスちゃんのサポカがかわいいです。



第6話 リリィちゃんパワー!

 柔らかな朝日がカーテンから漏れ出し部屋を照らす中、いつもよりほんの少し早く目を覚ましたライスシャワーは、己の腕の中で眠る少女を見つめていた。

(……夢じゃない。本物の、リリィちゃんだ)

 シロノリリィ。己が求めてやまなかった大切な友人。それが今、かわいらしい寝顔を晒しながら幸せそうにすやすやと目の前で眠っている。

(──綺麗。……本当に)

 7年前、あの幼かった少女はそれはもう美しく成長した。必要以上に他人の視線を集めてしまうぐらいに。そんな少女を眺めていたライスシャワーはほんの僅かに魔が差した。

(ちょ、ちょっとぐらいならいいよね……)

 眠る少女のウマ耳のちょうど中心あたり、起こさない様に細心の注意を払いながら顔を近づけ、眠っている事を確認して香りを堪能した。(ゆっくりと息を吸った)

(……ちょっと、癖になっちゃうかも。も、もう一回……!)

 もう一度と思ったその時、スマホのアラームが鳴り、シロノリリィが覚醒する気配を感じたライスシャワーは、衝撃を与えない様に、かつ素早く身を離した。

 すると徐々に目を覚ましたシロノリリィがアラームを止め、ぼんやりとこちらを見ながらへにゃりと笑った。

「……おあよう、らいすちゃん」

「……おはよう、リリィちゃん」

 そのへにゃへにゃな笑顔にどきりとしたが、身を起こして軽く伸びをしていると、それをぼうっと見つめていたシロノリリィがふわりと抱きつき、ライスシャワーの頬にすりすりと頬擦りをした。

「……えへへ。ほんものだぁ」

 ふ、不意打ちは心臓に悪いよっ! などと思いつつ、動揺した姿は見せずに起きる様に促した。だが、その直後にまた眠りそうになっていたのでほっぺをむにむにして無理やり起こした。

 

 

 おはようございます。昨日は寝る前にライスちゃんといっぱいお話ししちゃったからちょっぴり眠たいシロノリリィです。昨日寝たのはなんと22時30分です! ふふふ、なんだか大人っぽいですね! 今は身支度を整えて朝食を食べています。

「リリィちゃん、なんだか嬉しそう」

「えへへ。だってね、これから毎日ライスちゃんと一緒なんだもん!」

「リリィちゃん……! ライスもね、とっても嬉しいよ!」

 ライスちゃんはきょうもかわいいです。それにしても、トレセン学園のご飯は美味しくて、さらに無料でおかわり自由というのは凄いですね。ママの作ってくれたご飯の方が美味しいですけどね! トレセン学園が100点だとしたらママのご飯は120点です!

「そういえば、ねえリリィちゃん。リリィちゃんはスマホって持ってる? 昨日はずっとお話ししてて、連絡先を交換し忘れちゃったから……」

「持ってるよ! ママが買ってくれたの!」

「よかった。リリィちゃんはLANEってやってる?」

「やってない!」

「じゃあ後でやり方教えてあげるね?」

「うん! ありがとうライスちゃん!」

 SNSとかはママがダメって言ってたからやった事がありません。わたしはいいこなのでママの言う事はしっかり守ります。でも入学前にライスちゃんに教えてもらったらやってもいい、とママから許可をもらいました。確か……ねっとりなんとか……そうそうねっとりジェラシーです! それが大事だと言ってました! やっぱりリリィちゃんはかしこいです!

「リリィちゃんのスマホの壁紙、初期設定からいじってないんだ」

「うん。ライスちゃんは変えてるの?」

「変えてるよ。ライスのはね……これだよ」

「おぉー! ちっちゃい頃の私とライスちゃんだ!」

「懐かしいでしょ? リリィちゃんは、写真とか撮ったりしないの?」

「撮ろうとは思ってたけど、まだ撮ってないよ。……あのね、はじめてはライスちゃんと撮りたかったの」

「……わぁっ! いいよ、撮ろう! ライス、とっても嬉しいよ!」

 ライスちゃんが喜んでくれてます! えへへ、うれしいなぁ!

 この後一緒に写真を撮って、スマホの壁紙を更新しました。これからいっぱい思い出が増えていきそうです。とっても楽しみです!

 

 

 ライスちゃんと別れて、今は教室で授業を受けています。トレセン学園はただレースの練習をするだけの場所ではありません。私達は競技者ですが、それ以前にまだ学生なのです。だからこそ勉強をおろそかにしてはいけません。

 トレセン学園のカリキュラムは、午前が一般的な学校と同じ一般教養の学習で、午後からはレース座学、ウイニングライブ、スポーツ栄養学、基礎トレーニングなど、レースを中心とした授業が組まれています。

 午後からのトレーニングで、まだ担当トレーナーさんが付いていないウマ娘は教官達がグループごとに分かれて指導を行っています。私は担当トレーナーさんがいるので、この時間はトレーナーさんの元でトレーニングが行えます。こんなにすぐ担当契約が出来るとは思ってなかったのでとてもありがたいです。この時期に担当契約している人はそうそういないので、これは明確なアドバンテージと言えます。

 本来の流れとしては、こうして練習を重ねて「選抜レース」に参加をし、そこで目に留まった子がトレーナーさんにスカウトされる。という感じです。

 選抜レースとは、チームに所属もしくは担当契約をしていないウマ娘だけが参加できるレースのことです。機会は年に4回。ここで結果を出せば、多くのトレーナーさんからスカウトされるでしょう。私は担当契約をしているので、もう参加できないのが少し残念です。

 この選抜レースで結果を出せず、そのまま学園を去る人もいます。トレセン学園に入学すること自体が難しいのですが、そこから更に勝ち残るのはもっと難しいことなんです。勝負の世界は厳しいです。ですが、だからこそレースの勝利には価値があると言えるのです。

 トレーナーさんと契約したウマ娘ははじめてのレースである『メイクデビュー』を目指してトレーニングをします。

 メイクデビューの時期は大体6月の後半ぐらいです。このメイクデビューに出る基準として、『本格化』というものがあります。

 本格化とは、そのウマ娘が持つ能力が開花し、競技者としてのピークを迎える時期に入った事を指す言葉です。

 前兆として身体の急成長や、身体能力の急激な上昇などがあり、大体10代半ばで本格化を迎えます。ちなみに本人にはなんとなく本格化が来たと感覚でわかります。理解すると書いて、わかると読むあれですね。

 人によって変化が大きく、普通の小学生体型の子が急に大人顔負けのつよつよボディになったりします。私は見た目の変化が無く、身体能力が上昇したパターンですね。

 さっき言っちゃいましたが、私とライスちゃんにも本格化が来ました。入学式で再会した時にビビッと来たので確実です。

 話を戻しますが、先ほど話したメイクデビューの基準と本格化の関係についてです。

 まず、メイクデビューの前提として本格化があります。これは、本格化する前と後で能力に隔絶した違いがあるからです。ゴリラと人間ぐらいに差があります。

 なので本格化する前にレースをするのはとっても危ないので、基本的には本格化前にはデビューしません。中には本格化前でも本格化したウマ娘と戦えるような子もいますが、それは例外中の例外です。

 本格化が遅れてやってきた子はデビュー時期を遅らせたりしますが、こういう子はそんなに多くありません。

 メイクデビューの時期がなぜ6月後半なのかというと、これは本格化した身体に慣れる為というのがあります。

 急激な身体の変化、身体能力の上昇などによって、力のコントロールが効かなくなったりするので、それを慣らすための期間が必要という事です。

 ウマ娘のパワーは人間よりも遥かに高く、本格化すると更に高くなるので慣らさないととっても危ないのです。

 私は本格化前からコンクリートをパンチで砕けましたが、今は握り潰せる様になりました。ライダーキックもできますよ!

 

 

 午後のトレーニングが始まりました。今日はるるちゃんが私の正確なデータを知る為に色々と調べるそうです。まずはダートと芝の適性、次に距離適性を確認するそうです。私の今まで走ってきた成果を見せる時が来ましたね! がんばるぞー、おー!

 

 

(……妙ね。この子はダートが得意で芝が不得意なはずなのに……)

 まだ本格化が始まったばかりなので、体力的に中距離と長距離は走らせずに1600mのマイルでタイムを測定したのだが、少々おかしい結果となった。

(ダートと芝でタイムに差がない…。普通、不得意なバ場で走るとタイムが遅くなる筈なのに……)

 どういう事だと思いつつ、シロノリリィの方を見ると芝とダートで走った後のある違いを発見した。

(……ダートの時は走り終わった後割と余裕があったけど、芝で走った後は明らかに疲れていた。……もしかして)

 ある可能性に思い至り、考察を開始する。

(この子には規格外のパワーがある。それを利用して無理やりダートで走るスピードで芝を走っているのかも……。その分リスクとして、スタミナの消費の激増が考えられる……。これは先ほどのダートで走り終わった時と芝で走り終わった時のリリィの疲労状態から考えてほぼ確定と見てもいい。……そして、これは恐らくだけど距離が中距離、長距離と伸びる毎に更にスタミナの消費が増えると考えられる)

 こんなウマ娘は今まで見たことがない。そう思いつつ、ふと聞き忘れていた事をシロノリリィに聞いた。今はライスシャワーからドリンクを貰い休憩をしている。

「ねぇリリィ、あなたは目標レースとかはあるの?」

 息を整えたシロノリリィがこちらを向きにこにこしながら告げた。

「ライスちゃんと同じ三冠路線を走ります!」

 ──マジか……。だいぶ茨の道だぞと思いつつ顔には出さなかった。

「そっかぁ。お姉さまとしてはダート路線をお勧めしたいんだけど……」

「や」

「ふわわっ。……即答されちゃった」

 どうしても? と聞いたら「やー!」と言われ、ちょっと母性を刺激されたが決意する。……かわいいなこいつ。

「……うん、わかったわ。目指すわよ、三冠路線!」

「……ありがとるるちゃん! ……でも、いいんですか?」

「担当の願いを叶えるのがトレーナーの仕事よ。ただし、めっちゃくちゃ厳しいわよ? あなたの適性だと中距離ですら厳しいんだからね? 長距離なんてそりゃもうやっばいわよ……」

「大丈夫です! 私はつよいこなので絶対に諦めないのです!」

 胸を張り腰に手を当てドヤ顔をするシロノリリィを見て、思わず笑ってしまったが、これからのトレーニング予定を2人に伝えた。

「まずはリリィね。ジュニア級はスタミナを徹底的に鍛えていくわ。サブとして賢さとスピードも並行して。逆にパワーはまず無視よ」

「えっ? いいんですか?」

「うん。まあ不安になるわよね? でも大丈夫よ。その理由はあなたのパワーがジュニア級という基準だと突出しているからよ。自覚がないのかもしれないけれど、正直に言うなら、パワーだけならシニア級でも余裕で通じるわ」

 ほぇ〜。とかわいらしい声を漏らしたのを見て吹き出しそうになったが続ける。

「スタミナを鍛えるのはもちろん、クラシックを見据えて中距離と長距離でも走れる様にする為よ。これは私の推測だけど、今のあなたは苦手な芝を走る為にスタミナを犠牲に無理やりパワーでスピードを引き出していると考えられるの。さっき芝とダートを走った後に明らかにレース後の疲労が違ったでしょう? 距離が伸びればさらにスタミナ消費が増えると予想出来るから、ここは徹底的に、ね。次に賢さなんだけど、これはレース時の位置どりを有利にする事でスタミナ消費を抑える目的と、身体の使い方を勉強して効率の良いパワーの出し方を覚えて余分なパワーを抑え、スタミナを節約できる様にする事よ。スピードは勿論、速くなきゃ勝てないっていう単純な理由よ」

「るるちゃんなんかかしこそうですね!」

「中央のライセンスは伊達じゃないのよ? 次はライス。あなたの場合はリリィとは違って、ジュニア級はスタミナは伸ばさないでパワーとスピードをメインにして、サブとして賢さを伸ばすわ」

「ライスはステイヤーで、今でも3000mは走れるし、今のところはスタミナには余裕があるからだよね。ジュニア級には長距離レースが無くて、短距離から中距離がメインで、ステイヤーの欠点であるパワーとスピードを伸ばしていくんだね。勿論レース時の位置どりも大事だから、賢さトレーニングも忘れないように。だよねお姉さま?」

 言おうと思っていた事を言われ思わず感心してしまった。

「正解よライス! 言おうとしてた事全部言われちゃったわ! とりあえずはこんな感じでトレーニングして行くからね!」

 はい! と元気よく返事をし、3人でがんばるぞー、おー! と気合を入れた。

 ひとまずはこのトレーニングをこなし、メイクデビューを勝たねばならない。未来への一歩の為に着実にトレーニングをこなしていくのだ。

 




のんびり更新します。
用語解説
LANE…ウマ娘世界のLINE。
存在してた事を知りませんでした。不勉強で申し訳ない。
※名称を公式のものに変更しました。
作者は友達と連絡を取る為のLINEしかやっておらず、数ヶ月に一度ぐらいしか使わない。なのでSNSはかなりエアプ。
※距離を間違えていたので修正しました。私の頭もリリィちゃんなりつつあります。1400→1600
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