GATE:MW 外伝集   作:ゼミル

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割と筆が進んだので投稿です。
原作での反応的に栗林ってこんな感じなのではないか、と思ったので。

ところで梅雨って終わった筈ですよね?(週間天気を埋める傘マーク)


GATE 自衛隊かの地にて、平行世界と遭遇せり10

 

 

 

 

 

 

 錯乱した栗林が『門』の向こうへ飛び込んでしまった――――

 

 

 

 

 

 

 その報告を当時『門』の監視を担当していた倉田から聞かされた平行世界(原作世界)の伊丹達は、栗林を追いかけて『向こう側(MW世界)』の特地へ向かうと決めた。

 

 

「隊長達まで行っちゃうんすか!?」

 

「仕方ないだろ『向こう側』に行っちゃっても走るの止めてなかったらすぐに追いかけないと、あの様子じゃそれこそ何処まで行っちまうか分かんないんだからさ!」

 

「それはそうっすけど……」

 

「ならばまず先に我々の『ムセンキ』で『向こう側』に連絡し、『こちら側』のクリバヤシを保護するよう伝えるべきではないだろうか」

 

 

 ローブの下から携帯無線機を取り出しながら『向こう側』のレレイが提案する。苛立たしげに頭を掻いてから伊丹は頷いた。

 

 

「すまないけど頼むよ。でもどちらにせよこっち側の人間の不始末を、全部が全部『向こう側』に押し付ける訳にもいかないだろ。

 それにさ考えてみなよ倉田。あそこまで錯乱した栗林が、もし『向こう側』の俺やもう1人の自分自身と遭遇した時、更に暴走しないって保証はないだろ?

 しかも『向こう側』の俺と栗林はくっついてるどころか子供まで出来ちゃってるんだぞ? そんなの見せられて冷静でいられると思うか? 下手するととち狂って襲い掛かる可能性だって……」

 

 

 軽自動車のボディにV8エンジンを積んだという表現がまさに当て嵌まる栗林が、格闘徽章すら手にする程鍛え上げたその鉄拳足刀を狂乱がままに行使しようものなら、果たして如何程の被害が出てしまうやら……

 

 最悪の想定に、脳裏に血生臭い惨劇を幻視してしまった富田や倉田やテュカ達のみならず、発言した伊丹までも顔を蒼褪めさせ、焦りに頬が引き攣った。

 

 

「大変じゃない! 早くクリバヤシを止めないと!」

 

 

 そんな訳で、『こちら側(原作世界)』の伊丹は同じ世界の3人娘にヤオ、富田とおまけに倉田も加え、今度は彼らの方から『向こう側』の特地へ向け大慌てで『門』へ突入する事と相成ったのである。

 

 平行世界の少女達もまた彼らを追って自分達の世界へと戻っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そして栗林の暴走を必ず止めようと決意を固めた彼らを待ち受けていたのは、彼らの誰もが想定していなかった予想外の光景だった。

 

 

「ひぐっ、うえっ、ぐしゅっ、うえええええええぇぇぇぇぇぇ……」

 

 

 何と。

 

 ()()栗林が!

 

 普通の女の子のように泣きじゃくっているのである!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何……だと……

 

 

 伊丹、これには驚愕。その姿、まるで大技が直撃したにもかかわらず容易く凌がれたのを見せられた、どこぞの死神代行の男子高校生が如き驚き具合である。

 

 

「俺は一生、この光景を忘れられないだろう。あの栗林二曹が泣いているぜ……」

 

 

 倉田もまた普段の口調をブン投げて愕然と呟いた。ネタへの走りっぷりという意味では上官とどっこいどっこいであった。

 

 

「よしよし。この際です、貴女がスッキリするまで遠慮なく泣いておしまいなさいな」

 

「あ、黒川二曹、こちら(MW世界)では特地に残ったのか」

 

 

 意中の男子が別の女子とお付き合いどころか婚約関係まで構築済みと知ってしまった年頃の少女のように泣きじゃくる迷彩服姿の栗林の背中を、優しく叩いて慰めている黒川を見て驚き交じりに富田が漏らす。

 

 心を千々に見出し目元を真っ赤にして嗚咽を漏らし続ける栗林のその姿に、ふと伊丹は「そういえば……」とある事を思い出す。

 

 

「富田さぁ、参考人招致に呼ばれてピニャ殿下達連れて銀座に行った時の事覚えてる?」

 

「はい。覚えておりますが」

 

「その時にさ、駒門さんが俺が(特殊作戦群)に居たって聞かされた時もクリの奴、悲鳴上げて泣き出してたよな」

 

「そういえばそうでしたね」

 

「『クルマ』の中でもクリバヤシってばしばらくの間暗い顔してブツブツ呻いてたわ」

 

 

 富田とテュカが首肯すると、伊丹は泣き止まない栗林から視線を外し、何とも微妙~そうな顔を浮かべて声を潜め、ある推論を口にした。

 

 

「もしかしてクリって、腕っぷしじゃどうにもならない話題にぶち当たってそれを頭が理解しちゃうと、受け入れられずに逃げ出して泣きだしちゃう性分だったりするんじゃないか?」

 

「子供の頃は偶に見かけましたねそういう子供……」

 

「なまじ腕っぷしが強過ぎて大抵の事は押し通れちゃう分、心が耐えられないのかもしれないっすね……」

 

 

 初めて知った部下と同僚の意外な一面に、頭を寄せ合いながら目を丸くする伊丹達であった……

 

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえずクリについては『向こう側』の黒川に任せるとするか――――ん? どうしたレレイ」

 

 

 迷彩服の袖を引っ張られる感覚に伊丹が顔を上げる。袖を細い指先で摘まんでいたレレイがどこかを指差した。

 

 

「あれを見て欲しい」

 

 

 目を見開いて何処か呆然とした様子のレレイを訝しく思いながら指差す先へ伊丹も顔を向けた。

 

 もう1人の自分、龍鱗の鎧姿からコンバットシャツと迷彩服の下という組み合わせに装いを変えたこの世界(MW世界)の伊丹と、その背後にもう1人。

 

 認識した瞬間、伊丹もまた限界まで目をかっ開いた。富田も倉田も同様だった。テュカは口元を手で押さえながらの絶句を経て、絞り出すように掠れた声で呟いた。

 

 

「ヤオが言ってたのって本当だったんだ……」

 

「や、ヤッホー?」

 

 

 見慣れぬ自衛官用の妊婦服に大きくお腹を膨らませたこの世界の栗林が、未来の旦那様の背から顔を覗かせて『あちら側(原作世界)』のテュカ達に小さく手を振っていた。

 

 機材ケースを挟んで2人と同じく様子を伺いながら佇むこの世界の富田とボーゼスらの下へと、平行世界の伊丹達は近付いた。

 

 

「こっちでは初めましてになるのかな? この世界の栗林志乃二等陸曹であります。現在妊娠中につき今は偵察隊から外れて後方での業務に就いてまっす!」

 

 

 伊丹の背中から横へ1歩離れてその全容を明らかにしたこの世界の栗林が敬礼と共に自己紹介を行うと、平行世界の上官や同僚や少女達は口々に驚嘆の呻きを発する。

 

 特にテュカとレレイの間に走った衝撃は凄まじい。よりにもよって()()栗林が、別の世界線では伊丹との子供を孕む程の深い関係に至っていたというのだから、伊丹に小さくないどころか大分重たい意味での慕情を抱いている少女達が激しく動揺するのも当然だろう。

 

 

「本当にこっちのクリバヤシ、お父さんとくっついちゃったんだ。()()クリバヤシがかぁ……」

 

「世界が違えばかのような事もあるという事か……」

 

「……驚愕に値する」

 

 

 あっちの(原作)世界の私は一体隊長にどういう接し方をしているんだ、と妊婦服姿の栗林は頬を引き攣らせた。

 

 同じ感想を抱いたらしいもう1人のテュカが率直にあちら側の栗林と伊丹はどういう関係なのかと尋ねると、

 

 

「うーん。仲が悪いとまではいかないけど、お父さんの趣味をクリバヤシが嫌ってるせいでそこまで仲が良いって感じでもないわね」

 

「上司と部下。それ以上でもそれ以下でもない範疇の関係に留まっている」

 

「別世界のクリバヤシ殿にこのような事を知らせるというのも変な気分だが……此の身らの世界のクリバヤシ殿はトミタ殿に懸想しておられていてな。

 トミタ殿は自分殿はボーゼス殿がいるからと断ったそうなのだが、クリバヤシ殿は諦めきれず横恋慕されていて我々の方のヨウジ殿らも些か心配なされておられるのだ」

 

 

 テュカ・レレイ・ヤオから別世界の自分について教えられた妊婦服姿の栗林は、「あちゃー」と呻きながら額を手で押さえて天を仰いだ。

 

 

「そうよねぇそうなるわよねぇ。うん分かるわー、耀司さんに惚れてなかったら間違いなく富田ちゃんに惚れてたわよねぇ私の事だもん。

 耀司さん以外の周りの居た男の中で、私好みの精強で果敢で一途に強さと戦いを極める男性って富田ちゃん位しか当て嵌まらないもの」

 

「精強で?」

 

「果敢で?」

 

「一途に強さと戦いを極める男性?」

 

 

 3人の瞳が妊婦服姿の栗林の隣に立つこの世界(MW世界)の伊丹を捉え、疑問符が3つ浮かんだ。

 

 柳田が―杖や車椅子を必要としない、別世界の方―自分達の世界の狭間達と情報交換をしている間、自分達ももう1人のテュカ達から炎龍やジゼルと戦った時、伊丹やその仲間がどれだけ勇猛果敢に戦いを挑んだかを丁寧に聞かされはしたものの。

 

 やはりというか何というか、話を聞き終えた直後もそうだったのだが。自分達が知る自分達の世界の伊丹の人柄がまず思い浮かんでしまうせいで、栗林の発言に対し激しい齟齬を彼女達は抱いてしまったのである。

 

 

「こっちはこっちで色々あったんだよ。()()()、さ」

 

 

 この世界の伊丹は深くを語ろうとはせず、苦笑を浮かべるにとどめた。

 

 

「そうね、本当に色々あったわ」

 

「あのような経験は2度は遠慮したい」

 

「此の身も全面的に同意だ……あのような光景、2度と御免こうむる」

 

 

 同じくこの世界のテュカ達も直面した数々の危地を思い返すと大なり小なりうんざりした表情となり、それを見た別世界の自分達の頭上に更なる疑問符を増やすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと迷彩服を着たあちら側(原作世界)の伊丹が何かに気付いた様子で周囲に視線を巡らせた。

 

 探している人物が見つからず、伊丹は皆に聞こえるようやや声を張り上げて疑問の言葉を発する。

 

 

「ところでさっきからロゥリィが居ないみたいなんだけど何処行ったか知らないか?」

 

 

 別世界の栗林が伊丹とくっつくに飽き足らず懐妊までしているという衝撃情報を巡るドタバタのせいで、何時の間にかロゥリィの姿が無い事に気付くのが遅れたのだ。

 

 

「最後尾は倉田だったな。お前は何か見てないか?」

 

「すんません。ロゥリィが俺の前を走って『門』に入っていってこっちの世界に出てくるまでは確かに見ましたけど、そっからはあそこで泣いてる栗林二曹の方に気を取られちゃいまして……」

 

 

 それは伊丹や富田達も同類なので責めはしない。困惑する彼らにこの世界(MW世界)のレレイが告げる。

 

 

そちら側(原作世界)だけではない。我々側(MW世界)のロゥリィも共に姿が見受けられない」

 

「本当だわ何時の間に!?」

 

 

 どうやらゴスロリの亜神は2人仲良く『門』が存在するこの場から離れてしまったようだ。

 

 声を張り上げてロゥリィの名前を呼んでみる。伊丹は無線を使ってこの世界の狭間達に繋ぐと、敷地内の監視カメラでロゥリィ達の姿を探してもらえないか要請した。

 

 少し経つと、狭間から基地の敷地内を移動する2人のロゥリィを発見したと連絡が入った。

 

 それからすぐに伊丹達もこちらへ向かってくるゴスロリ亜神×2の姿を発見した。やはり『門』があるドーム前を離れ基地内の何処かに2人して彷徨っていたようだ。

 

 

「心配したぞロゥリィ。2人して何処に行っていたんだ?」

 

 

 ホッと息を吐いてから声をかけたのもつかの間、ロゥリィの様子がおかしい事に迷彩服姿の伊丹は気付いた。

 

 あちら側(原作世界)のロゥリィは眉を寄せ目元を鋭く細め、好ましからざるモノを目にしたかのような不快と警戒の気配を漂わせてコンバットシャツ姿の伊丹を睨んでいた。この世界(MW世界)のロゥリィは隠し事を知られてしまって申し訳なさそうな表情で同じく伊丹を見つめていた。

 

 

()()は一体どういう事なのぉ?」

 

 

 ハルバードを突き付けるとまではいかないが、それでも苛立たしげに鋭利な石突で足元のコンクリートを削りながら剣呑なまなざしのロゥリィが詰問した。

 

 

「『あれ』って何の事なんだロゥリィ」

 

 

 情報が足りず、何がロゥリィの癇に障ったのか全く理解出来ていない迷彩服姿の伊丹は、率直に彼女へと質問した。

 

 死後の魂に深い関わりを持つ黒ゴス神官服の亜神はあっさりと、何も知らない自分と同じ世界の伊丹に教えてやる事にした。

 

 

 

 ――――それはこの世界(MW世界)の狭間達が平行世界(原作世界)の己には教えまいと隠し通す筈だった、特地に取り残されたこの世界の自衛隊にとっての最大の闇。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この砦の外にぃ、凄まじい死者の苦しみと怨念が集まってる気配を感じたのぉ。

 最初にぃアルヌスで起きたジエイタイとの戦いで散っていったぁ兵達のそれとは違う……亡くなった者達の数はそっちよりも少ないしぃ悪い影響が広がらないようにぃ処置もされてはいたけどぉ、気配の濃さと痛ましさではこっちの方がずっとずっと上でぇ、ああなったももっと最近の筈よぉ。

 ――――教えなさい。あれ程の悍ましい気配を帯びるだけの()を、貴方達ぃこの世界のジエイタイは行ったというのぉ?

 主神エムロイの使徒として嘘や誤魔化しは()()認めないんだからぁ、正直に答えなさぁい」

 

 

 

 

 




本編狭間の敗因:原作ロゥリィのオカルト能力が判定成功したせい



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