GATE:MW 外伝集   作:ゼミル

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遅くなりました。
今回は前話の続きからではなくクロスオーバー編の敵勢力についての説明会になります。
肩透かしかもしれませんがお付き合いください。

今回はちらっとノベライズ版の内容も含みます。


リメイク版MW2、リメイク前と比べてシナリオの都合上流石に派手さは劣る分、演出と緊迫感があってこれはこれで良き哉。
MW3にはとうとう何処にでも出てくる憎いアンチキショウの出番なようだし、リメイク前並の派手な展開と今回の緊迫感を両立した作品となってくれるよう、今から期待してますぜIW!


感想・反応よろしくお願いします。


Knockin' on Warfare Gate8

 

 

 

 

 

 会合の後は何時も大なり小なり雰囲気を張り詰めさせている。

 

 だが今回に限っては、ホテルモスクワの首領であり我らが指揮官でもあるバラライカが纏う気配の剣呑さは殊更だと、彼女の副官として付き従うボリスは思案する。

 

 

 

 

 

 

 

 それも先程まで行われていた連絡会――――ホテルモスクワ・三合会・コーサノストラ(イタリアンマフィア)・南米カルテル、ロアナプラを仕切る主要組織の長が直接顔を合わせての会合。

 

 その場で流れた内容を考えれば当然だとも思った。副官として連絡会に同席したボリスですら、告げられた情報を聞かされた瞬間は己の表情が僅かながらにでも強張るのを自覚したのだから。

 

 この度の連絡会が開かれた元々の議題は最近ロアナプラに出回るようになった麻薬について。

 

 麻薬の存在が問題なのではない。問題なのはホテルモスクワも、三合会も、イタリア人もラテン系も心当たりのない、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が問題なのだ。

 

 それも混ぜ物だらけの低級品がグラム単位だったならばまだしも、()()()()()()()の上物が、末端のそのまた末端に過ぎない売人の―それも複数人―手元に出回っているともなれば、それは最早()()()と言えるだろう。

 

 需要と供給のバランスが整っていてこそ市場は安定した利益を商品を商う組織へ齎してくれるのであり、過剰な供給は市場を混乱させ商い元が本来得る筈の利益を損なうだけなのだから。

 

 何者かがバラ撒いた麻薬によって既に各組織にも損失が生じつつある。

 

 

『早速だが三合会の方で探りを入れてみたんだが、我々を介さずに勝手に薬屋(麻薬売買)を始めた連中の商品の出所が判明した』

 

 

 真っ先にそう切り出したのは三合会ロアナプラ支部を仕切る大哥(ボス)たる張維新(チャン・ウァイサン)だった。

 

 耳の早さと情報の出所を訝しんだコーサノストラ代表のロニー・ザ・ジョーズが耳障りなジョーク交じりに訝しむ一幕があったが、記憶する価値もないと脳裏から切り捨て、張が齎した情報を再生する。

 

 張は、バラライカを名指しした上でこう告げたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()だよ、()()()()()

 我々黄金夜会を介する事無く今この街に流れ込んでいる麻薬は黄金の三日月地帯、砂と荒野とムジャヒディン(聖戦士)の国で生産された代物なのさ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 アフガニスタン。

 

 ホテルモスクワ……否、バラライカやボリス達アフガン帰還兵にとっての因縁の地。軍を追われ破落戸に堕ちても尚、彼女達の魂を縛り続けるかつての戦場。

 

 アフガニスタン、パキスタン、イラン、それぞれの国境が接する地域は黄金の三日月地帯と称される、ミャンマー奥地はメコン川沿いに広がる悪名高い黄金の三角地帯に匹敵する麻薬密造の一大地域だ。

 

 出所を聞かされた当初、バラライカが真っ先に極寒の視線を向けた先はロニーだった。

 

 アフガニスタン産の麻薬の半分以上は周辺国で消費され、残りの主な消費先は欧州だ。欧州に出回る麻薬の大半をアフガニスタン産が占めるとされている。

 

 陸路・海路を経て運ばれたアフガン産の麻薬を扱う欧州系組織は数多い。その中にはロシアンマフィアは勿論、イタリアンマフィアも含まれていた。(一方、黄金の三角地帯産麻薬は三合会が取り扱っている)。

 

 特にロニー達シチリアマフィアは最近になってイスラム系住民が大半を占めるアルバニア・マフィアとも関係を深めている。その事をバラライカも把握していたが故の反応だった。

 

 だがバラライカの反応を見た張は首を横に振って彼女を止めに入る。

 

 

『おっと、早合点しなさんな火傷顔(フライフェイス)。生憎この件に関しちゃロニー達はシロだ。

 でなけりゃ間抜け面晒してノコノコ会合になんか出席しちゃいないさ。だろう?』

 

『当ったり前だろうが張。高級な品物ってのはそれに釣り合う格の人間が捌いてこそ相応の値札が着くってもんだ。

 誰とも知れねぇ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()にアタッシュケース一杯の上物を進呈するなんざ、それこそシベリアの田舎でウォッカ漬けになるだけじゃ飽き足らず()()()()()()()()()()()()()()()()()そこのロシア人共の方がやりかねないってのが俺の意見だが、()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 アフガニスタン侵攻以後、地元の利とアメリカから新型SAM(携行式対空兵器)といった最新兵器の支援を受けたムジャヒディン相手の終わらぬ戦いに疲弊したアフガン帰還兵の中には、現地産のアヘンに手を出してしまい麻薬中毒者として撤退以降も苦しむ者も少なからず出現した。

 

 その中にはバラライカの部下だった者も、いた。

 

 今はもう、いない。バラライカ自ら囚われた魂を解放してやった。

 

 

『…………中々面白い意見じゃないか。なぁ、ロニー』

 

『よせロニー。折角人が潔白だと言ってやってるんだから無闇に煽らないでくれ』

 

 

 ともかく、と話を進めようと試みる張。

 

 

『売人共から聞き出した話じゃあ、ブツを流した連中はこの街に以前からシノギを置く主だった中東系組織の構成員とも違うアラブ人を引き連れていたそうだ。

 ま、尤もそいつらは自分のオフクロの顔と尻の区別もつかないような連中ばかりだから、どこまで当てになるかは怪しいもんだが……』

 

 

 一旦区切り、顔を上げた張は更なる弁舌を振るっていく。

 

 

『ただ近頃はフィリピンやインドネシアに多く存在するイスラム信者の中でも物騒な連中が集まって作った過激派組織が大分きな臭くなっている。

 特にムジャヒディン上がりが結成したアブ・サヤフなんぞは98年に当局によって指導者を失ってから、本来の主張だったイスラム社会の独立運動から身代金目当ての誘拐や強盗稼業に精を出すゴロツキ共になりつつある有様だ』

 

『民衆の解放なんて大義を掲げた者共が実際にはそこいらの犯罪者以上のロクデナシだった事など珍しくないのは歴史が証明している。コロンビアの連中が組んでいたFARC(コロンビア革命軍)も、その収入源は誘拐の身代金とコカイン畑の番犬よ』

 

『ま、もっと遡れば国そのものがアヘン畑を運営してあっちこっちに売り捌いてた時代だってあったわけだからな。酒と一緒で麻薬(ヤク)も人間の歴史とは切っても切り離せない、長年のお友達というわけさ』

 

『張よ、歴史の講釈はここまでにして話を戻してくれねぇか? 俺達は立派な大人のビジネスマンだ、小学校(エレメンタリー)のガキじゃない』

 

『失敬ロニー、確かにその通りだ。

 ともかくフィリピンに独自のイスラム派の聖地を生み出そうと活動していたアブ・サヤフは指導者を失って以降、構成員の多くは別組織に鞍替えし、残りの連中も大儀を失った犯罪者の集団になり果てた。

 だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 グラスに注いだ酒を呷り、舌と喉を潤す張。

 

 

『麻薬取引を活動の主体に切り替えた連中が頼ったのが、亡き指導者が過去に加わり組織立ち上げの後ろ盾にもなってくれたムジャヒディンだかタリバンだかを名乗るアフガニスタンの聖戦士どもだ。

 それ以上の詳しい情報はまだ調べ切れていないが、連中見た目はターバン頭の民兵揃いではあるが中には他国の王族や石油王の跡取りといった()()()()()()()()()()も加わっていたってのが厄介なところでね』

 

『ハッ! 俺には理解出来ないね。物好きな連中も居たもんだ』

 

『チェ・ゲバラの御同類みたいなもんさ。ともかくアブ・サヤフの設立者のようにアフガンで聖戦士の仲間入りをしたそいつらはやがてソ連軍撤退後、母国に戻った連中の多くが自前の組織の旗揚げや構築したコネクションを使って志を共にする同胞達の支援を始めた。

 武器・資金・人員・情報――そのネットワークは急速に拡大を続けている。地続きのヨーロッパや以前からイスラム教徒が多かったここ東南アジアどころか、海の向こうの美国(アメリカ)にまで浸透しつつあるらしいが……流石にこれは今は関係無いな。

 要点はだ。今回我々の目を掻い潜ってアフガン産のヤクをこの街に持ち込んだ最有力容疑者は街の外からやってきた聖戦主義者(ジハーディスト)どもって事になる』

 

 

 真正面からバラライカとロニーを……いや、バラライカを確りと見据えながら、話を締めくくりに入った。

 

 

『我々連絡会は連携を取りながら仁義を通さず市場を荒らす外部勢力に対し()()()()()()を取る――

 宜しいかな、御二方?』

 

『こっちはオーケイだ。張、おめぇの話に乗ってやる。

 ウチ(コーサノストラ)のルートはコーラン狂いの連中が捌いてるのとは違う()()()()()()から仕入れてるんだ。パレルモとバチカンとマリア様には俺達の商売の邪魔をしてきたターバン野郎の首を献上してやらなきゃな』

 

『珍しくやる気を見せてくれて嬉しいよ。バラライカ、アンタもそれで良いな?』

 

『……ええ。だが分かっていると思うが――』

 

『我々は我々のやり方でやらせてもらう、だろ? 今回は相手が相手だ、この街ごと燃やし尽くそうとするんでもなければやり方は任せよう。オタクらならそいつらの相手も手慣れたものだろうからな』

 

 

 

 

 

『だが気を付けろ。そいつらはもしかすると、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()で噛みついてくるかもしれないぞ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 車の防弾ガラスへ顔を向けたバラライカは外の街並みを眺めているように見えるが、実際の彼女の瞳はもっと遠い場所……砂塵の過去へ向けられているのだとボリスには手に取るように理解出来た。

 

 わざわざ指摘するような野暮などせず、黙って控えているとボリスの胸元で不意に電子音が鳴り響いた。音の出所、折り畳み式の携帯電話を取り出す。

 

 

「私だ――――何だと? 詳しい状況は…………分かった。大尉殿には私から伝えておく。引き続き情報収集を」

 

 

 電話を切る。顔を上げると上官の瞳が窓の外からボリスへと対象を転じていた。

 

 

「喫緊の事態でも起きたのか軍曹」

 

「市警の無線の監視班からの連絡です。約15分前、イエローフラッグ前にて自動車爆弾が爆発後、複数名の武装集団によって店に居た客達が襲撃されたそうです。例によって店主は無傷で生存が確認されているそうですが」

 

「毎度の事だ。バオには同情するがな……しかし、自動車爆弾か。あの酒場にしては珍しいな。襲撃犯についての情報は?」

 

「は。バオの証言によれば襲撃犯の規模は最低でも20名以上。うち半数以上が爆発を生き延びた客の反撃を受け死亡、駆け付けた市警も死体を確認しておりますので正しい情報かと。

 ただその襲撃者の死体なのですが、ある共通した特徴が見受けられているようです」

 

「特徴?」

 

「はい」

 

 

 右額から左顎にかけて斜めに走る傷跡が目立つ厳めしい顔をより険しく歪ませながら、ボリスは上官へ報告する。

 

 

「襲撃者どもは全員頭部にクーフィーヤを巻き付けて顔を隠しており、バオによれば自動車爆弾を起爆後、襲撃者は『神は偉大なり』と叫びながら店内へ踏み込んで銃を撃ち始めた――と」

 

「…………………」

 

 

 バラライカの目元もまたボリスと同じように、或いはボリスよりも更に険しく、冷え冷えとした鋭さを湛える程に細められた。

 

 連絡会でアフガン産の麻薬が議題に上がった直後にこれだ。イエローフラッグでの出来事をこの街の恒例行事、と流すにしては些かキナ臭過ぎた。

 

 更にボリスはこうも付け加える。

 

 

 

 

 

 

「また現場検証中の官警からの報告では、襲撃犯の死体の中には()()()()()()()()()()()()、とも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今走っている場所からイエローフラッグは然程離れていなかったな」

 

「我々もイエローフラッグへ?」

 

「バオからより詳しい情報を聞き出しておきたい。たまには私自らバオに顔を見せておいても損はないでしょうし、ね?」

 

 

 

 




Wikiなどで調べてるとムジャヒディン絡みのテロ組織の多さとか国際性とかアフガンの麻薬事情とか見つける度「うわぁ…(ドン引き)」ってなりますよ(死んだ目
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