どうでもいいですがPS3も4も5も持ってない作者はレイヴン勢まででした。
皆様の反応・感想が作者の糧となります。
ヴィスコンティ・フーズを異様な雰囲気が包んでいた。
ロアナプラを仕切る大御所の一角たるイタリアンマフィアの本拠地の前に見慣れぬ、車体から痛そうなのを通り越して喰らったら最後バラバラに吹き飛んでしまいそうな機関砲を生やしてた装甲車が3台も―特に巨大な車両に至ってはマッドマックスも顔負けの改造トラック―停まっているのだから当然であろう。
無力(無害、ではない)なロアナプラ市民である通行人の尽くが足早に店の前を離れるか、後頭部に汗を浮かべつつ怖々と曲がり角から顔を覗かせて様子を窺うといった反応を見せている有様だ。その中にはパトロール中だったロアナプラ市警の警官も混じっているのだからさもありなん。
中にはどこかの組織のヒモ付きだろう、携帯電話を取り出して何処かへと連絡を取っている者もいる。
時折長く太い砲身が突き出た銃座が、
野次馬は自分達が居る方向へ銃口が動く度、頭を引っ込めてはおそるおそる覗かせてを繰り返す。そんな奇妙な光景がしばらくの間続く。
部外者でこれなのだから、当事者である彼ら
当然ながらいきなり店の前に完全武装の装甲車が3両も出現した時、彼らは心底ぶったまげた。
入り口に配置されていたその日の用心棒役を務める構成員など、銃を抜くどころか仲間への報告すらも頭から吹き飛んて忘我に任せるがまま立ち尽くしてしまった位だ。食事を楽しんでいた客や従業員も似たようなものである。
荒事や撃ち合いには慣れてはいたし、一定以上の兵力を持つ組織の中には4WDに機関銃を乗せたテクニカルを運用しているとはいえ……一般車両の改造車なんぞとは桁が違う、戦車と見間違いそうな砲台付き装甲車の出現は未知クラスに衝撃的だったらしい。
彼にとっての幸運は装甲車に乗ってきた面々がイタリアンマフィアとドンパチするつもりなど皆無だった事。
真ん中の車両から降りてきたスーツ姿の冴えないビジネスマン風の東洋人――――伊丹がアタッシュケース片手に入店した。
来客を知らせるドアチャイムの鈴の音が耳朶を打つに至り、ようやく用心棒の思考が再起動を果たす。
盛大に顔も声も引き攣らせた構成員の叫びが奇妙な静寂に包まれたレストランの空気を破った。
「な、何だテメェ!!?」
伊丹は腑抜けた愛想笑いを浮かべて、アタッシュケースを持たない方の手を懐に入れた。
伊丹の行動に用心棒の手も上着の下に伸びた。脇の下の拳銃を握り締めたところで用心棒の動きが止まった。
何時の間にかアサルトライフルの銃口を下にしつつ、だが瞬時に持ち上げて用心棒を
伊丹の手が懐から抜ける。彼の手に握られていたのは用心棒が予想した武器ではなかった。名刺だった。
しかもそれは、ヴィスコンティ・フーズの人間が持ち歩いている名刺だった。
「アポも無しにすいませんね。先日
ロアナプラでは絶滅危惧種クラスの馬鹿丁寧に遜った挨拶を行う伊丹の後ろで、ルマジュールが前途多難と云わんばかりに大きな溜息を吐くのだった。
「ルマジュールっつったか、テメェ、レザボアドッグス気取りの雌犬どもを売って
伊丹に続いてルマジュールが執務室に姿を現したのを捉えるなり、部屋の主であるロニーの口から容赦ない毒舌が飛び出した。
伊丹側は護衛の面子を部屋の外に残して執務室には伊丹とルマジュールの2人のみ。
ロニーの方は10名以上の配下がロニーの周囲を固め、一部は伊丹とルマジュールの背後に控えている。
分かってはいたがあからさまに警戒の構えだった。昨晩イエローフラッグで起きた襲撃によって複数の犠牲者が発生し、組織が緊張状態に陥った所へこれなのだから無理もあるまい。
「アタシは街のガイドに雇われただけ。アタシが取引や交渉に一切関わるつもりはないよ。
バラライカも承知してるし、何だったらアタシを墓穴に引きずり込もうとしたら
「そうかい、
「ボス、この客はこんなものを持っていました。昨日の夜にベニーノから渡されたと言っています」
ロニーが含みを込めて返したタイミングで、取り巻きの1人が伊丹が所持していたヴィスコンティ・フーズの名刺をロニーへ渡す。
自分の組織の名刺に目を落としたロニーの眉が僅かに皴を作った。
「
とても静かな声だった。ロニーの斜め後ろに控えていた、頭に包帯を巻いた部下の1人が目に見えて体を強張らせ、顔中に脂汗を浮かばせ始める。
尋ねられたベニーノは唇を震わせながら、何とか腹に力を入れてボスの質問に答えた。
昨晩イエローフラッグで遭遇した騒動の顛末はベニーノもこのアジトに帰ってからとっくに洗いざらい話してしまっていたし、何より呑まれて何も言えずにただ立ち尽くしていたらそれこそボスの機嫌を損ねたらどんな目に遭わされてしまうのか、そちらの方が恐ろしかった。
「い、イエスボス。確かに昨日、イエローフラッグで声をかけたこの客人に店の名刺を渡しました」
「成程。つまりこの東洋人――――テメェ、国は何処だ。中国? 台湾? 日本?」
「生まれは日本です」
「この日本人が爆弾好きのターバン野郎に殺されかけたお前を救った
こいつはめでてぇ。感謝するぜ。何ならハグして歓迎会を開いてやりたいところだが、生憎今は忙しい上にお祝い用のキャンドルが品切れなもんでな。そいつはまた今度、だ」
「いやぁお構いなく」
軽口を叩きながらもロニーの灰色の脳細胞は猛烈に稼働を行っている。
当時の顛末の一部始終を目撃したベニーノの話が全て正しいならば。
この伊丹
(デカい車に乗って街に現れて値打ち物の美術品を売りに持ち込んだ事も耳に入れちゃあいたが、戦車モドキが3台に増えてるなんざ聞いてねえぞ)
ロアナプラ支部を任されてそう長いわけではないが、こうも堂々と軍隊クラスの装甲車を転がして真正面から乗り込んでくるような規格外の馬鹿を相手にするのは、流石のロニーも初めてだった。
これが殴り込みなら、シンプルに暴力で以って応じればいいだけの話で済んだのだが。
「それで? 大層なオモチャと兵隊を引き連れて俺のオフィスに乗り込んできた理由を教えちゃくれねぇか」
「そりゃあ勿論、
「……あー……
「勿論
まさかとは思ったが。伊丹や部下の前でなければ、頭痛を堪えて額に手を当てている所だ。同じく伊丹の発言を耳にしたロニーの部下達も困惑を露わにしている。
突然店に押し掛け、怯える店主に暴力をあからさまにチラつかせ、ビビった所へ甘い言葉を囁いて取引やら業務提携を持ち掛ける。
そうして口当たりの良い様々な名目の下にみかじめ料をせしめる。
とどのつまり
ふざけんじゃねぇ、とお気に入りのデスクに拳を振り下ろして怒鳴りつけてやりたいのをロニーはグッと呑み込む。
部下の方は我慢出来なかったようだ。
「ふざけんじゃねぇ! 兵隊引き連れて
「いやぁでも本当なんですって。本当はこちらとしてもここまで大袈裟に護衛を揃えるつもりはなかったんですけど、ほら昨晩も爆弾騒ぎがあったでしょ?
滞在中にまたああいった事に遭遇するかもしれない訳ですし、
剣呑な男達の怒声にこれっぽちも縮み上がる風でもなく、伊丹はヘラヘラとした笑みを崩さなかった。
もっと危険で血生臭い存在に相対し慣れた者特有の図太さだった。
ざわめく部下どもに苛立ちを押し殺しながら、ロニーは冷静に現状や伊丹の発言内容を分析する。
(
これだけの戦力を街の噂の『う』にすら上がらぬ間にこのロアナプラへ持ち込んで秘匿するなど至難の業だ。最低でも黄金夜会の面子クラスの組織力が必要になる。
(昨日ワトサップの手下共がこの野郎の仲間が乗った装甲車を
総合するとこうなる。
伊丹が言う上の人間、つまり本隊は街の外で伊丹と連絡が取れる距離にて陣を構えている。そいつらは最低でも装甲車を複数台に積み荷である兵隊を気軽に送り込めるだけの戦力を有している。
具体的な兵隊の頭数は不明だが保有火力は軍隊クラス。兵隊個人の戦力としては――――特殊部隊クラスの能力が最低でも3名。力が抜ける笑みを張り付けた、一見ふざけた目の前の男こそその中の1人に含まれる。
もしこの場が鉄火場と化したならば部屋の外や店の外で待つ伊丹の護衛が一斉に突入してくるのだろう。
(厄介だ。この場の頭数は俺らが上でも兵隊1人1人の強さと火力はおそらく連中の方が間違いなく上だ)
ロニー配下のイタリアンマフィアはロアナプラ支部の本拠地であるヴィスコンティ・フーズ以外にも散らばっているし、武器だってロケット砲クラスをも何丁も揃えてはいるが、
おまけに不意を突かれたせいでよりにもよって本拠地の中心まで入り込ませてしまったのが痛い。
撃退態勢が整い、散らばった構成員が集結する前に、合図を受けた伊丹の護衛達と店の外に停まった装甲車に搭載された大砲が、ヴィスコンティ・フーズを瓦礫の山に変えてしまう方が速いだろう。
それにロニー・ザ・シャークを若くしてイタリアンマフィアの幹部まで引っ張り上げた才能――――血と金の臭いを
(もしこの場を御破算にしたとして、
ロニーが感じ取った伊丹の放つ血の臭い、或いは死の臭いはあまりにも濃かった。
濃密過ぎて感じ取ったロニーの嗅覚が麻痺してしまう程に。
たった3人でAKと爆弾で武装したアラブ人十数人を皆殺しとかそういう範疇を超えていた。
護衛よりも、大砲付きの装甲車よりも、
ロニーは考えた。
考えた。
そして。
「……俺らと商売をしたけりゃまずそっちの品物から見せやがれ」
「ボス!?」
「黙れナルティーゾ。俺のオフィスで商談をするかしないか、
ロニーの言葉に、伊丹は笑みを深めながら手にしたアタッシュケースを持ち上げたのだった。
ところで自衛隊の新型装甲車の正式採用についてなんですけどね。
「時間かけて1から揃えるよりも今間に合う物を優先した結果」なんて意見があったのってそれってつまり…アッ(察し&白目