マーヴェリックは良いぞエスコン(特に5)履修済みならもっと最高だ(ダイマ
神の炎が、進軍してきた米軍と、防衛していた中東の防衛軍ごと都市を焼き尽くした。
歴史上、極東の島国でたった2回だけ生み出されるに
新たに出現した『門』の先、『向こう側』の特地から連絡員として送り込まれた特地残留部隊の尉官は、己の世界の地球で起きた激動の戦史を語り始める。
「――2011年。中東の独裁者によってロシアから密かに首都へ持ち込まれていた核爆弾により、独裁者捕獲の為首都へ進軍した米軍に3万人の犠牲者が発生」
映像が切り替わる。
多くの利用者で混雑する空港、そこに設置された監視カメラの記録映像。
次の瞬間、どこからともなく出現した完全武装の男達が乱射した銃撃が非武装の人々を薙ぎ払う。空港施設は一瞬にして虐殺の現場と化した。
「5年後の2016年、モスクワのザカエフ国際空港に於いて銃乱射テロが発生。
この時発見された犯人グループの死体の身元がアメリカ人であった事から、当時よりロシア国内で高まっていた反米感情が爆発的に増大。
後の調査により死体となって発見されたアメリカ人は主犯であるウラジミール・R・マカロフ率いる国際的な過激派集団に潜入していたCIA工作員であり、情報漏洩により正体を把握された上で米露間の国際関係悪化を図るスケープゴートとして利用された事が判明したものの、それらが明らかにされたのは全てが手遅れになってからでした」
映像が切り替わる。
アメリカ東海岸の主要都市部。住宅街の空をロシアの軍用機とパラシュートで舞い降りるロシア兵が埋め尽くす。ワシントンDCがロシア軍の機甲部隊に蹂躙されホワイトハウスにロシア兵が立て籠もる。マンハッタンの高層ビルが巡航ミサイルで半ばからへし折られ、ニューヨーク港は艦隊の墓場と化した。
「空港でのテロ事件の報復としてロシア軍はアメリカ本土への軍事侵攻を実行。
アメリカの主要政府機関及び金融街は壊滅的な打撃を負ったものの、直後ロシア本土から発射されたとされる所属不明の核ミサイルが東海岸上空で炸裂。
「4発目の核だと」
呆然と、顔色から生気を失った
この場に集まる他の自衛官達も似たような顔色で、吐き気を堪えるかのように口元を手で押さえたり頭を抱えたりといった姿を晒している。最高階級たる陸将の狭間ですら腕組みをして顔を酷く強張らせているぐらいだ。
――――気持ちは分かるぜ、皆様方。
説明を行う男は同情を覚えると同時に微かに抱いた捻くれた愉快さを押し殺しつつ、淡々と解説を続ける。
「それから約2ヶ月後、西側陣営に属する欧州各国の首都及び政府施設が存在する都市部にて同時多発化学兵器テロが発生」
映像が切り替わる。
民間人のホームビデオだろうか。ロンドンの街並み。親子連れのはしゃぐ声。その背後にチャリティーの広告が描かれたトラックが停まったかと、思うと妙に物々しい姿の運転手が急いで離れていった。
――――爆発。毒々しい煙が親子連れを、撮影者を、通行人を……その場に居合わせた不運な人々を街ごと覆い隠していく。
別の映像では軍事回線によるビデオ通話から抜粋したのか、軍人だろう化学戦装備に身を包んだ人物が苦しげな呼吸を繰り返しながら、基地が化学攻撃を受けて壊滅し自分も毒ガスに晒されて助からないと相手へ必死に伝える姿が流れた。
「化学兵器による大規模攻撃と同時にロシア軍が行動を開始。命令系統と戦力を同時に失った欧州各国はロシア軍の電撃侵攻に全く対応出来ず、結果欧州全土がロシア軍の展開を許す事になります」
映像が切り替わる。
死の煙が漂うパリをロシア軍の機甲部隊が闊歩する。プラハではロシア軍兵士によって現地民が次々と処刑され死体の山が積み上げられる。ドイツでは反撃に送り込まれた米軍の戦車部隊がハンブルグで目覚ましい活躍を遂げるも、ベルリンではビルを崩落させて進軍ルートを塞ぐというロシア軍の反撃によって多くの米兵が巨大なコンクリート製の墓標の下敷きにされた。
――――第3次世界大戦勃発。その規模はほんの少し前のアメリカ本土侵攻とは比べ物にならない。
聴者の間から一斉に、悍ましい物を見たと言わんばかりの呻き声が漏れた。
「この化学兵器攻撃及びヨーロッパ侵攻もまた米露間の軍事衝突を企んだマカロフ率いる過激派集団の暗躍によるものであったと後日判明。
こちらについては欧州各国の残存戦力から補助を受けたアメリカの欧州派遣軍が占領された地域の奪還が進む中、以前より米軍と欧州各国政府とは
「何という事だ。これだけの大戦を、たった1人の男が引き起こしたというのか?」
信じられないという感情がありありと伝わってくる幹部の質問を彼は無視して続けた。
「欧州派遣軍は反マカロフ勢力と合同でロシア大統領ならびにその息女の救出作戦を実行。参加者に多くの犠牲を出しつつも大統領とその家族の救出に成功しました。
ロシア大統領の証言によればマカロフからロシアに配備されている核の起爆コードを執拗に尋問されたとの事であり、マカロフのこれまでの傾向と経歴を踏まえた結果、もし救出が失敗していた場合には全面核戦争へと悪化していた事は確実だったと結論付けられています」
まさに最悪の悪夢だ。聞かされた幹部の面々は最早顔面蒼白だった。
「救出されたロシア大統領が和平条約に署名し、これによって第3次世界大戦は正式に終結を迎えます。
権力の座を追われたマカロフは後に第3次大戦終結から3ヶ月後、潜伏先のアラビア半島で潜伏していた所を暗殺部隊に襲撃され、死亡が確認されます。
先に述べた北米大陸侵攻を含めた第3次世界大戦終結までの期間は約2ヶ月、最終的な犠牲者数は軍人・民間人合わせて1億人に達しました」
「1億人だとぉ!?」
「WW2の犠牲者が多く見積もって6000万ちょっと、それも6年かけての規模だった筈だぞ!?」
「あの時代と比べて世界人口が数倍に膨れ上がっているとはいえ、たった2ヶ月で……?」
「そうだ日本は、日本はどうなったんだ!? 日本と国民は大丈夫だったのか!?」
「我々の世界の日本につきましては幸いにも
「そうか。それは良かった……」」
説明を一時中断した『向こう側』の柳田は、力無い声で口々に恐れ戦く幹部自衛官らから視線を外した。
聴衆の中には平行世界の彼、『こちら側』の柳田とデリラもまた参加していた。参加者の中で1人車椅子なのもあって、その姿は自然と目についてしまう。
もう1人の自分もまた他の幹部自衛官同様顔を蒼褪めさせ、これ以上ない位顔を強張らせていた。この場に在っても甲斐甲斐しく寄り添うデリラに至っては、世界大戦という特地の概念から遠くかけ離れるにも限度がある一大戦争の内容と被害規模を見せられて最早精神の許容範囲を超えてしまったのか半ば虚脱状態である。
(それにしても
『向こう側』の周囲―特に伊丹辺り―から性格が悪いだの捻くれ者だのと評されているし自分でも人に好かれない性分だとは自覚しているが、柳田だって人間なのである。
別世界の自分という存在が気にならない筈がない。片端者になっているとなれば尚更だ。
具体的に
(おそらくターニングポイントは――望月紀子暗殺未遂事件)
きっと『こちら側』の自分も偽指令によって望月紀子の暗殺に送り込まれたデリラに遭遇してしまったのだろう。
『向こう側』のデリラは、たまたま望月紀子と行動を共にしていた同族の説得によって殺意を失い、害を与える前に柳田へ自ら出頭した。
対して『こちら側』のデリラは止まれなかったのか、止めてもらえなかったのかは分からないが、一線を越えてしまい1人の片端者を生み出す結果に終わってしまったのだろう。
(その違いを生み出す結果になったのは……きっとアイツのせいなんだろうな)
説明の場の末席へ視線を移すと、全く違う格好だが冴えない顔つきは一卵性双生児よりも似ている男が2人、横に並んで座っていた。
柳田と同じ
『こちら側』の伊丹と見分けを着ける為に幕僚権限で柳田がその格好を維持しろと
『向こう側』と『こちら側』の伊丹、2人同時に目が合った。
前者は真面目な表情でただまっすぐ目を逸らす事無く、『向こう側』で起きた戦火の記録を見届けていた。
後者は同じ『こちら側』の幹部らほど取り乱してはいないが、やはり衝撃は凄まじかったのか現実味の薄い茫洋とした表情で固まっていた。
それに関しては本来幹部自衛官に限定しての情報共有の場であるにもかかわらず、何故か参加を命じられた伊丹の部下である『こちら側』の富田と栗林も、正直似たり寄ったりな反応なのだが。
柳田は長々と語り続けたせいで舌が渇き回りが悪くなった口を手元の水で潤すと、ここまで無貌の仮面の如く固定されていた表情をおもむろに崩し、愉悦含みのあくどい笑みを浮かべた。
「さて、ここからが本題になります」
「まだあるのか!?」
これ以上は勘弁してくれとばかりの悲鳴が上がった。
油と刺激物の塊じみた重く衝撃的な情報で集まった幹部自衛官全員が胃もたれを起こさんばかりの心境であろう事は柳田にも分かる。よーく分かる。何故なら柳田も通った道だから。
……でも今までが前振り、もしくは予め知っておいて欲しい基礎知識でしかなく、ここからが本題なのもまた事実なのである。
第3次世界大戦を奇跡的に当事者とならずやり過ごせた筈の日本が前代未聞の運命に翻弄されるのはこれからなのだから。
「先程の説明に出てきた反マカロフ勢力。これは元々マカロフ排除を作戦目的としたアメリカを中心とした西側諸国の特殊部隊より選抜した精鋭中の精鋭のみで編成された
「待ってくれ。生存者が反マカロフ勢力を結成したというが、その統合部隊自体はどうなったんだ?」
「部隊を分けた上でマカロフの隠れ家と思われる施設を同時に襲撃した際、情報漏れにより敵の待ち伏せを受け、北米大陸侵攻による混乱も重なった結果統合部隊は事実上壊滅しております。
生存者は部外協力者も含めて4名――その中には我が国の特殊作戦群からスカウトを受けた自衛隊員が1名含まれていました」
映像が切り替わる。
参加者の反応は劇的だった。
「はっ?」
「何ぃ!?」
「オイオイオイオイオイオイちょっと待てちょっと待て!?」
「ええっ!?」
「うっそぉ!!?」
映し出された画像を見た瞬間に目を見開き、驚愕の叫びを発して顎も外れんばかりに大口を開いて固まり、中には椅子を蹴飛ばして立ち上がるものまで出たかと思うと、最後はその場の自衛官全員が一斉に同じ方向へと振り返った。富田と栗林も同様だった
最も驚いたのは視線の集中砲火を浴びた張本人だった。
今度こそ呆然自失、何を見ているのか理解出来ないといった表情で、『こちら側』の伊丹はパイプ椅子の上で石像と化した。
「いやあそんなに見られると照れるなぁ。あ、アハハ」
画面に大写しにされた張本人――――『向こう側』の伊丹は居心地悪そうに頬を引き攣らせて頭を掻いたのだった……
原作自衛隊組、SAN値チェックはいりまーす。
なお本題以降は強制減少不可避の模様。
MW時空のWW3犠牲者1億人については本編28話のあとがき参照。
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