GATE:MW 外伝集   作:ゼミル

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ワイルダネス8巻無事発売を祝して初投稿です。
我々は!13年間待ったのだ!

GX今月号表紙のルマジュールも可愛い(可愛い)


皆様の反応・感想が作者の糧となります。


Knockin' on Warfare Gate16

 

 

 

 

 

「でも今回の調達でやっと物資不足が何とかなりそうで、やー良かったっすね隊長」

 

「いや、完全には無理だからな?」

 

 

 担当する車両から降りてきた倉田が発した呑気な発言を、兵員区画の座席に座った伊丹はバッサリと切って捨てた。

 

 

「げ。マジすか?」

 

「当たり前だろ。教育課程でも教えられただろそこら辺。俺らが偵察隊の任務やってた時もどれだけ大荷物用意しなきゃいけなかったのか、忘れたのか?」

 

 

 例えば現場で活動する歩兵が1日に摂取すべきと定められているエネルギー量は約3000キロカロリー。フリーズドライなどの保存技術が発達しても食事の軽量化には限界がある。

 

 最低でも2リットルから3リットルの水分補給。兵隊1人につき1日の飲食分だけで5キロ近くなる。低く見積もってこの数字だ。

 

 食事だけではない。炊事、洗濯、使用機材の洗浄――――水は様々な用途にも求められる。これらを含めた場合に必要な水の量は1日で10キロにも達する。衛生面を考えると削る事も難しい。

 

 それらを運ぶ輸送手段、車両や航空機が消費する燃料はそれ以上だ。燃料分も込みで計算すると、現代に於いて前線の兵隊を1人養う為に必要な物資の総重量は何と100キロにも及ぶ。基地の稼働に不可欠な電力を生み出す発電機にも燃料が必須だ。

 

 戦闘が任務である歩兵には武器と弾薬も必要となる。

 

 樹脂の多用によって軽量化が進んでも尚、火器というものは歩兵用のライフルでも軽く3キロ越え、ロケット砲などの銃火器ともなれば10キロ越えもザラ。それらの輸送も同時に行えば消費される燃料の桁も更に跳ね上がる。

 

 現在悪所街事務所などの人員を含め特地に取り残された自衛隊員は3000名弱。

 

 水と食料だけで30トンもの物資が毎日消費されていく計算だ。帝国を掌握したピニャ、レレイ・テュカ・ロゥリィを筆頭とした現地住民の協力を得て現地の食材を日々調達してはいるが余裕はなく、燃料や医薬品などに至っては特地での調達も不可能だ。

 

 その上『門』崩壊前後に発生したゾルザル派工作員の大規模同時攻撃によって多大な被害を受けたアルヌス駐屯地の復旧及び麓の街の復興に多大な資源と機材の投入を強いられ、酷使せざるをえなかった輸送車両や重機類の整備用機材や交換部品も払底寸前。

 

 水と並んで衛生管理に不可欠な、特地では高級品の部類だが地球ならそこいらのコンビニで容易に手に入る石鹸や洗剤等の衛生用品も、衛生面が極めて悪い特地であるが故にその消費は激しい。

 

 特地に取り残された自衛隊はあらゆる備蓄の底が見えつつあった。

 

 ()()()()()の今回の作戦だった。

 

 

「日本政府が最初に特地に俺ら(自衛隊)を派遣した時だって需品科と輸送科、民間の流通業者も全国から総動員して何週間もかけてようやく補給体制を整える事が出来たんだ。

 日本っていうインフラが整った()でそれなんだぞ? 裏で世界中に根を張ってるっていっても、マフィア1つ程度じゃ搔き集めるにも当然限界はあるさ。

 だから今回調達を依頼した分は国から普段受けてた補給分よりも量も種類もかなり削ってあるんだってさ。特地で補給出来ない、地球でしか用意出来ない品中心なんだと」

 

「あー。燃料とか弾薬とか? 車の予備部品や医薬品の備蓄も大分ヤバいって、俺も需品科の同期から聞いた覚えあるっす」

 

 

 車両の予備部品はこの世界の年代に出回る民生品の中から、特地側に存在する自衛隊車両と規格が一致するパーツを中心に発注が予定されている。

 

 航空機関係のパーツ類は流石に特殊な為、今回ロニーに依頼した中には含まれていない。

 

 

「『門』が崩壊した時のドタバタで負傷者続出な上に診療施設も襲われて、設備とかかなり被害受けてたからなぁ」

 

 

 部下兼嫁を助けるべく向かった診療施設の現場を目の当たりにしている伊丹は、当時を思い出してしみじみと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 医薬品の中には凍結血漿やワクチンといった、厳重な温度管理が求められる物も多い。

 

 それらを保存する冷凍庫や保管庫がダーによる破壊行為によって荒らされたり、配線を破壊されて温度管理が保たれず使用できぬまま失われてしまうという被害も少なからず発生していたのだった。

 

 燃料に関しては止むにやまれぬ事情だったとはいえ、伊丹も窮状の一端を担ってしまっている。

 

 ――――ノヴァ6の起爆に巻き込んだ万に及ぶ帝国兵の亡骸。直後の大雨によって無毒化が進んだとはいえ、生物兵器に汚染された大量の死体を焼却するのに大量の燃料が投じられたからだ。

 

 その後の皇宮強襲作戦(キングスレイヤー作戦)に於いても大量の機甲兵器を動員し、比例して燃料の消費も跳ね上がった。

 

 この影響で特地残留部隊では現在、特に燃料消費が激しいヘリや空自の航空機部隊が大幅に活動制限を受ける羽目に陥っている。

 

 活動に投入するにしても今や1度に1機か2機が精々、しかも燃料制限付き。そんな有様なのでヘリ主体の第4戦闘団を仕切る健軍一佐や神子田・久里浜の空自パイロット組はやきもきしてたりしてなかったり。

 

 今頃は前線司令部(暗号名:カルデア)の輸送科組が無人機の偵察画像で見つけた郊外のガソリンスタンドに出向いては、同行した第二科が昨日伊丹が調達した札束で店主の頬を引っ叩いて根こそぎ買い漁り、『門』からアルヌスへ運び込んでいる頃合いか。

 

 ロニーの所に依頼した品々の引き渡しが完了するまでの間、店主達に協力を依頼して今後スタンドに補給される分の燃料も自衛隊が買い占める契約も締結済みだ。ただその分の支払いに使う現金も伊丹達が追加で調達する必要がある。

 

 今度の作戦では稼働率を落としていた輸送車両も大盤振る舞いで投入されている。

 

 とはいえ自衛隊の車両を異国で走らせるのは必要最低限に止めておきたいという上の判断により、結果街で活動する伊丹達に今回与えられたのが海外製で(アメリカ製)統一された(ロシア製)これらの(オーストラリア製)車両であった。

 

 各国の諜報員も屯するロアナプラで見る者が見れば一目で判ってしまう自衛隊車両よりも、いっそこの時代では未だ開発されていない車両を走らせた方がまだ誤魔化しが効くと、司令部の幕僚らは判断したのである。

 

 

「幸い『門』の再開通の目途は立ちつつあるわけだし、最低限正式な『門』が完成するまでの期間を持ち堪えられるだけの物資を調達出来ればそれで御の字なんだよ」

 

「マジっすか。俺、久々にコメが食えると思ってすっげー楽しみにしてたんすけど!?」

 

「コメについては特地にも一応あったじゃん」

 

「向こうのと日本のとじゃ全然違うんスよ! あと味噌と醤油も!」

 

「気持ちは分かるけどさぁ……あ、でも確か注文票の中にあったぞ味噌と醤油」

 

「やったぜ」

 

 

 倉田、渾身のガッツポーズ。気持ちは分からんでもない、と伊丹も苦笑。

 

 味噌と醤油は司令部のお偉いさん方も真面目な顔で調達量を相談し合う程の重要物資として扱われていた。

 

 

「弾薬類もさっきのマフィアの人達に頼んだんすか?」

 

「いやそっちは他の品の調達だけで手一杯だから()()()()()()()()()()んで俺達の方で直接交渉してくれだって」

 

「業者って……ああ()()()っすか」

 

 

 原作履修済みのオタク2人の脳裏に浮かんだのは、グロックやらデザートイーグルやらM60機関銃をぶっ放すシスターと牧師見習いが居る教会であった。

 

 

「そう、()()()。今日中に連絡はしておいてくれるそうだから、俺達が伺うのは明日以降になるかねぇ。今度の相手はいきなり押しかけての交渉はあまり通じ無さそうだし」

 

「でも大丈夫っすかね。あそこって確か原作じゃCIAの――――」

 

「背に腹は代えられないでしょ。文字通り軍隊を賄えるだけの弾薬なんて街の密売人程度じゃあまず無理だ」

 

「ですよねー。そっちも上手くいけば取引出来たら良いですねぇ」

 

「そうだなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「昼飯買ってきたぞー」

 

 

 ユーリの声に伊丹と倉田が車の陰から顔を覗かせてみれば、大きな紙袋を抱えたロシア人とルマジュールが通りの向こうからやって来るのが見えた。

 

 昼飯を待っていた護衛役の隊員達もぞろぞろと降車して待ち構える。ファーストフード店前に並ぶ装甲車の列と完全武装の男達を、例によって店員も他の客もおっかなびっくりといった体で遠巻きに眺めていた。

 

 

「待ってました!」

 

「飲み物は皆コーラで良かったか?」

 

「久々の文明の味なんだ、皆文句はないさ」

 

 

 いそいそと紙袋の中身とストロー付きの紙コップを受け取る隊員達。

 

 包装紙を剥くと日本基準よりも一回りは大きいハンバーガー(ワッパー)が顔を覗かせた。焼き立ての肉と野菜とチーズに、特地では今や貴重品である化学調味料たっぷりのソースが混然となった匂いが途端に溢れ出し、一斉に涎が湧いた隊員達は反射的に喉を鳴らす。

 

 誰が合図するともなく男達は一斉にハンバーガーへかぶりついた。しばし咀嚼。ゴクリと呑み込む。

 

 その様子を愉しそうに緩く笑いながら見守っていた伊丹が悪戯っぽく聞いた。ユーリも自分の分を取り出しながら微笑ましげにしている。

 

 

「感想は?」

 

「……文明の味がするっす」

 

 

 倉田がホロリと涙を浮かべ、他の隊員達も揃って首肯した。

 

 そんな光景を見せられたルマジュールは、ダイエットコークのストローを銜えながら怪訝そうに首を傾げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「次に案内して欲しい場所は決まってんのかよ?」

 

「そうだねぇ、今度は服屋をお願い出来るかな。出来れば古着でもいいからまとめ買いが出来る所が良いなぁ」

 

 

 昼食を取り終えた伊丹達は次に古着屋で地元住民が好むラフなデザインの衣類を100名分ばかり購入し。

 

 男物の派手なアロハシャツやら洗いざらしのズボンやらを雑多にまとめて放り込んだ袋が装甲車へ運び込まれていく様子を横目に見ていた伊丹はふとある用事を思い出し、何故か仲間達へ聞かせまいとするかのようにルマジュールに小声で尋ねた。

 

 

「すまないけどこの街で……」

 

 

 耳打ちされた内容に、ルマジュールが見せた反応は「はぁ?」と言いたげに思い切り顔を歪める事だった。

 

 

「……アタシが知ってる店で良いなら構わないけど」

 

「よろしく頼んます!」

 

 

 伊丹は両手を合わせてルマジュールを拝んだ。

 

 購入した古着を積み終わり、装甲車の車列が移動を再開する。

 

 

「次はどういう店に行くんだ、伊丹」

 

 

 ブッシュマスターの助手席に乗り込んだ剣崎が質問すると、伊丹は少しきまりが悪そうに頭を掻いた。

 

 

「それなんだけど、次はちょっと私用で寄りたい店があってね。悪いけど皆もちょっと付き合ってくれないかなぁ」

 

「おいおい良いのかよ。今も任務中だろ一応」

 

「わーかってるって。でも此処(ロアナプラ)に居る時じゃないと買えない物を頼まれちゃっててさぁ。皆には悪いけどちょっと付き合ってくれよ、なっ」

 

『俺は別に構わないっすけど寄りたい店って何なんです? あ、アニメショップなら是非俺も同行を……』

 

『調子に乗るな馬鹿』

 

『あ痛っ』

 

 

 無線越しに助手席の仲間から小突かれる音と倉田の呻き声が聞こえ、やり取りを聞いていた他の隊員達の笑い声が通信回線に響く。

 

 

 

 

 

 

 

「――――で、寄りたい店がここか」

 

 

 到着した店の前に立ったプライスの声には大いなる呆れと、少しばかりの冷たさが篭められていた。

 

 案内人であるルマジュールの隻眼から放たれる視線も似たようなもので、2人の声と視線を浴びた伊丹は居心地悪げに苦笑いを浮かべる事しか出来ない。

 

 その店が何を売りにしているのかは、道路に面するウィンドウ内に設置されたマネキンを見れば一目瞭然だった。

 

 そこは女物の下着屋であった。それもけばけばしいネオンが並ぶ街角に立って報酬と引き換えに一時の快楽を与えてくれるお仕事の女性が着ていそうな品物も堂々と展示している類の店だった。

 

 

「いやそのあはは、実は志乃が前々からブラのサイズが合わなくなっちゃったってボヤいててさ。しばらくは我慢して使ってたらしいんだけど、ついこないだホックがとうとう耐え切れずに壊れちゃったらしくてね」

 

「え、嘘でしょ。まだ成長してるんすか!? あれで!?」

 

 

 一時期同じ隊だったので栗林の()()の戦闘力をよく知る倉田は驚きの声を上げた。

 

 

「志乃って誰だよ」

 

 

 そのすぐ横でルマジュールが白けた顔で誰に向けるまでもなく疑問を呟いた。彼女の問いをプライスが拾った。

 

 

コイツ(伊丹)の嫁だ」

 

「所帯持ちだったのか……」

 

「それも2人目だ」

 

「おまけにバツイチかよ」

 

 

 どんな奇特な女がこんな()()()()()()()()()()()()とデキたんだか、というのがルマジュールの率直な感想だった。

 

 嫁以外にも異世界の魔法少女にエルフにダークエルフに本物の神様と実質一夫多妻関係を結んでいる事など、想像のしようがなかった。

 

 

「とにかくすぐに戻るから待っててくんない? ああでも流石にここだとお店に迷惑だから、其処の角の所に車を移動させといてくれ」

 

 

 ヴィスコンティ・フーズの時は示威目的だったから敢えてそうしたが、流石に伊丹も女物の下着屋の前に仰々しい装甲車の群れを屯させるのは如何なものかと感じるだけの気遣いはあった。

 

 

「で、誰が伊丹に付いてく?」

 

「……」

 

 

 護衛要員の間に沈黙が広がった。

 

 伊丹が護衛対象と設定されている以上、1人だけ行かせるのは(例え当人がこの中の誰よりもキルスコア(直接殺害数)が高い半不死身の死神であったとしても)問題だが、さりとて非常時でもないのにあの空間へ男だけで入っていくのは何だかなぁと彼らが躊躇ってしまうのも仕方のない事ではあった。

 

 微妙な空気を破ったのは手を掲げた倉田だった。

 

 

「んじゃ俺が隊長に付いてくっすよ」

 

 

 第3偵察隊時代からの付き合いである倉田は派遣部隊の中でも若手かつケモナーだが、炎龍との初遭遇戦を筆頭に第2次アルヌス攻防戦や皇宮強襲作戦にも何だかんだで最前線で参加し。

 

 帝国掌握後も混乱する特地での反抗勢力討伐作戦で場数を重ねるなど、栗林や富田には及ばずとも若さの割に場慣れした、充分に猛者と呼べるだけの経験と胆力を持つ隊員なのである。

 

 でなければ今回の護衛部隊にも選抜はされていまい。

 

 

「おう、頼むわ倉田。でも装備目立たないのに換えてけよ。TPOはわきまえないとな」

 

「ういっす」

 

 

 特戦群組が所持していたMP7と中身をMP7用のマガジンに入れ替えた弾薬ポーチの上から、古着屋で調達したばかりの衣類の中から適当に選んだ派手な柄のアロハシャツを羽織って隠す。海外規格のサイズは日本人からしてみれば大柄なので丁度良かった。

 

 店へ案内したルマジュールも同行する。

 

 

「この際だから俺もペルシアへのお土産此処で買ってって良いっすかね?」

 

「別に構わないけどちゃんと自腹で買えよ? 俺だってそのつもりなんだからな」

 

「分かってますって」

 

 

 3人の姿が下着店の中に消えると、装甲車も移動を開始した。と言っても数十メートルと走らずに角を曲がった所ですぐにまた停車し、伊丹達が買い物を終えるのを待つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 車列が下着店の前から去ってから十数秒後。

 

 

「さーて次は其処の下着屋寄るねー」

 

「……まだ寄るのか……」

 

……シェんふぉ、ア、の、買い・モノ・は……いつも・なが・い……

 

「ロットンは私の世話なてる極潰し()から家主の私の荷物持ちする義務当然よ。ソーヤーはゴスこだわるなら下着ももとこだわるいいね」

 

 

 

 

 チャイナドレスの美女と黒コートの青年とゴスパンクファッションの女性が連れたって下着店に入っていくのを、隊員達は見逃してしまったのだった。

 

 




悪徳の都にも出店してるバーガーキ〇グがあの世界ではファーストフード界の覇権握ってる説。
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