突発的モチベ欠乏症に陥り、南米で勇者王を称えたりククルカン口説いたりスコップ掘って他作者様の作品読んでモチベ回復してきたので初投稿です。
今回は柳田同様、原作では日本帰還済みだけど本作では残留組のキャラがチョイ役で登場します。
感想・反応よろしくお願いします。
――――張が燃え盛る熱河電影公司ビルから脱出する数分前に交わされたある無線の通信記録。
『つまり今襲撃を受けているのは
「そういう事みたいだねぇ柳田さん。
『おいおい、独断専行が十八番のお前さんが俺に指示を仰ぐなんざ、明日の天気は核ミサイルでも降ってくるんじゃないだろうな』
「あのねぇ、柳田さんは俺の事何だと思ってるんです? あとそれ、洒落にしちゃ悪趣味過ぎますよ」
『……真面目な話、今の戦力で襲撃者に対応は可能なのか?』
「イエスかノーで答えるなら
『んじゃ
「命令を復唱する。アベンジャーはこれより正体不明の武装集団より襲撃を受けている地元勢力への救援と現地責任者との接触か救出を試みる――柳田さんにしちゃ思い切ったじゃないの」
『抜かせ。
それに
ああいう手合いの相手はお前さんの得意分野だろ? 無駄口叩いてないでさっさと向かうこった』
『接敵まで30秒!』
装甲車の車列が悪徳の街を疾走する。
揺れるブッシュマスターの車内でタブレット端末を手にした伊丹は、無人機からの中継を経由して脱出を図った張の車両が自爆バイクによって横転する一部始終を目撃した。
1キロ以上もの上空から記録を続ける無人機が足が止まった三合会車列の前後を聖戦士を満載した複数の車両が封鎖し、武装ヘリまでも降下してくる様子が克明に映し出される端末を手に無線で指示を飛ばす伊丹を、同乗したルマジュールは横目に観察する。
(空からリアルタイムの中継映像が見れる端末なんざどれだけのスペックなんだよ)
ついつい目を惹かれているのは、伊丹が扱う端末が彼女が知る代物から大いにかけ離れているからだ。ずっと大型で、ボタンらしいボタンもなく、タッチパネル方式でありながら専用のタッチペンも必要なく直感的に操作でき、にもかかわらずそこいらのテレビよりもずっと高画質の画面が表示しているのは偵察衛星か偵察機か、ともかくとても滑らかに描写されたロアナプラの航空映像である。
個々の機能に特化しているならまだしも、
そんな代物を目の前で見せつけられたとなれば、その手の知識が門外漢の輩でも興味を持ってしまっても仕方のない事で――――
伊丹から見て正面の座席に収まっていたロットンもまた身を乗り出し、伊丹の手元を覗き込んだ。
「……このサイズでウチのテレビよりずっと画質が綺麗だ。どこのメーカーの製品なのだろう」
「すまないけどこれは非売品なんですよ」
「……そうか。残念だ」
苦笑しながら伊丹に告げられたロットンの肩がしょぼんと落ちた。心底残念そうだった。
その隣ではソーヤーが相変わらず膝を抱えて縮こまった状態で座席に収まっている。
気が付いたらこの2人まで(というか、ロットンが自閉モードのソーヤーお車に押し込む形で)ちゃっかり装甲車の座席に乗り込んでいたのである。義を見てせざるはどうたらこうたらとロットンが言っていた気がするが、ルマジュールの目にはどう考えてもこの2人はお荷物にしか見えなかった。
おまけに伊丹やプライスや他に乗り込んでる面子はといえば、平然とこの変人2人の存在を受け入れていると来ている。
まるでこの手の愉快な連中が同席するのは日常茶飯事といった風情だ。ルマジュールは頭が痛くなった。
「見えてきたぞ!」
助手席の剣崎が声を上げた。車列は既に車内からでも聖戦士による封鎖線が肉眼で確認できる距離まで到達していた。
「勝本、LAMでヘリを撃ち落とせ! ブロープはどっちでもいいから今度はちゃんと狙って撃てよ!」
『分かっていますよ隊長!』
上部ハッチを押し開け、先頭を走るタイフーン装甲車の屋根から第3偵察隊時代からの伊丹の部下であり、特地に取り残された自衛隊員の1人である勝本三曹が車外へと身を乗り出す。
彼の右肩にはLAMこと
今回は荒れた未整地ではなく舗装された直線道路なのであの時よりもずっと狙い易い。人に向かって撃つ抵抗感も特地での実戦を重ねた今ではずっと薄い。
それでも発射時のバックブラストを気にしてチラリと後方を確認してしまうのは自衛隊員としての性か。
後続を走るブッシュマスターの運転手は言われるまでもなくきっちり車間を開けていたのでバックブラストの危険圏外である。
『撃ちます!』
宣言通り勝本はあの時の様な無様な撃ち方を再現しなかった。
LAMの発射機後方から高熱のガスと反動相殺用のカウンターマスが噴き出し、前方の弾頭は射出直後にロケットモーターへ点火、急加速。
高速で飛翔した弾頭は勝本の照準通りバリケード上空でホバリングしていたMi-8の側面へ直撃した。
文字通り空飛ぶ戦車クラスの装甲を持つ異世界の炎龍から左腕を奪ったその威力は容易く大型ヘリの横っ腹を吹き飛ばし、高熱の爆風がエンジンとタンク内の燃料へと引火し、機体を紅蓮の火球へと変える。
ローターが生み出す浮力を失った残骸はあっけなく落下。燃え盛る残骸がバリケードを聖戦士ごと押し潰す。
「減速するな! そのまま突破してVIPの安全を確保するぞ!」
伊丹の意を汲んだタイフーンの運転手がアクセルを全開にし、今や区別無く周囲を焼く炎の壁と化したバリケードへぐんぐんと迫るのを見て取った勝本が「やっべ」と慌てて車内へと引っ込む。
20トンを超える鋼鉄の破城槌と化したタイフーンが燃え盛る封鎖線と激突した。
爆発と高熱で脆くなった大型ヘリの巨体は楔形のブレードによって真ん中から引き裂かれ、急速に炎に包まれつつあった車両はブレードに触れるなりあっさりと引っ繰り返りながら弾き飛ばされた。タイフーンの車体が完全に通過した頃には、後続の装甲車も楽に通過出来るだけの通り道が切り開かれていた。
味方のヘリが突然爆発して頭の上から降ってきて、何とか押し潰される事も燃える燃料の雨を浴びる事からも逃れられたと思ったら直後に謎の装甲車にあっさりとバリケードを目の前で突破され、それでも轢かれずに済んだ幸運な聖戦士の一部は続いて突破を試みようとする2台の車両を認識すると、半ば反射的に手にしたままのAKを近付いてくる車に向かって乱射した。
64式小銃にも使われる7.62ミリNATO弾の貫通を防ぐブッシュマスターの装甲はAKの銃弾を弾き、防弾ガラスの一部に蜘蛛の巣上の亀裂を刻むに止める。
3台目、ブッシュマスターの後ろに続いて燃え盛るバリケードを通過したM-ATVの無人砲塔が回転し、砲塔から延びた大小2つの筒先が聖戦士達へと向いた。
BTR-80から移し替えられたKPV重機関銃が咆哮を放つ。14.5ミリという生半可な装甲も貫通する大口径弾が直撃した聖戦士の頭部は紅の霧となって消滅した。
同軸に配置されたグレネードランチャーが放つ40ミリてき弾も射撃に加わる。1発1発が手榴弾並みの威力と殺傷範囲を持つ炸裂弾の破片が聖戦士の肉体をズタズタに引き裂く。
3台の装甲車は横転した三合会の車両の盾となる形で停車する。しっかりと踏ん張らなければ座席から振り落とされそうになるほどの急制動だ。
そうして仲間達と同じく本格的な戦闘に応じた武装を整えた伊丹は、ブッシュマスターの後部ハッチを蹴り開け、鉄火場に踏み込むのだった。
異形の大型装甲車が文字通りヘリの残骸ごと聖戦士どものバリケードを突き破ったのを皮切りに、更に2台の装甲車が張の前に出現した。
合わせて3両の装甲車は盛大なスキール音を響かせつつ、張達へ向けて放たれる聖戦士達からの銃撃をその分厚い車体で以って遮断する格好で急停止する。
1台目と3台目の装甲車上部に搭載された重機関銃が瞬く間に聖戦士達を蹂躙していく。
重機関銃クラスともなれば民間車両に機銃を載せたテクニカル程度、エンジンブロック部にでも身を隠さない限り遮蔽物としての役目など薄紙1枚程度に過ぎない。車体の後ろに布陣していた筈の聖戦士達の肉体が悉く砕かれ、抉られ、切り裂かれ、次々に狂信者から魂無き肉片へ変貌を遂げていった。
もう誰にも迷惑を掛けなくなったという意味ではむしろ素晴らしい変化、否、進化と言っていいのではないだろうか? 益体もないそんな感想が、ここまで散々彼らの砲火に晒され続けた張の脳裏に浮かぶ。
「まぁああいう死に方はしたくないもんだ」
一転現在進行形で殲滅されつつある聖戦士の死に様に、張が独りごちていると2番目に突入してきた装甲車の後部ハッチが開いた。
――――最初に姿を現した人物を見据えた瞬間、ヘリの空爆にも自爆攻撃を受けても浮かぶ事のなかった冷や汗が一滴、張のこめかみから流れ落ちた事を彼自身を除き誰も気付かなかった。
迷彩服に弾で満杯の戦闘ベストを着た屈強な兵士を満載しているのが似合ういかにもな装甲車からまず出てきたのは、野暮ったい安物のスーツにこれまた野暮ったい顔立ちの東洋人の男である。
腕に抱えるは安月給のビジネスマン然とした見た目に似合わぬゴツいライフル。機関部と銃口それに装着されたマガジンの形状からM14系列のようだが、ストックから銃身周りにかけて木製だった部分が鋼鉄と樹脂製を置き換えられているのを筆頭に、銃の大部分が張の知るソレとは
腰には大の男がぶら下がっても軽々支えてくれそうな幅広のベルト。ライフル用と拳銃用の弾薬ポーチ、ナイフケース、利き腕側に拳銃用ホルスターといった戦闘に必要な諸々一式が邪魔にならない配置で提げられている。
突如現れて聖戦士から守る様に布陣した装甲車の一団に虚を突かれた三合会の構成員が反射的に身構えたが、他の装甲車からも次々と完全武装の男達が降車してくると中途半端な構えでその身を硬直させた。
こちらもまた―2名ほど白人が混ざっていたが―大部分が東洋人だ。スーツの男と比べてこっちは迷彩服を着ていなくとも纏った雰囲気とこなれた銃の扱い方から分かり易く軍人関係と分かる。それもかなりの練度だ。
彪を含め、彼らの顔には張とは比べ物にならない緊張の汗がたっぷりと浮かぶ。
プライス、ユーリ、剣崎ら護衛部隊はあからさまに警戒する三合会構成員を一瞥してから、すぐに意識を聖戦士達の方へ移して殲滅に加勢した。
きっちり装甲車を盾にし、敵への露出を最小限にした射撃姿勢を取って交代で応射を繰り返す。
軍用の装甲車は聖戦士からの銃撃から悠々とプライス達を保護し、逆に彼らが放つ正確無比な射撃はただでさえ重機関銃の掃射で戦力も盾となる車両も破壊された聖戦士達の数を更に減らしていく。時折銃撃に限界を迎えた聖戦士側の車両の爆発音が轟き、巻き込まれた者があげた悲鳴が混じる。
そんな中で安スーツの男……伊丹は張の下へ近付いて素早く彼に上から下まで視線を走らせると相好を崩した。
「三合会の張さんですね? ご無事なようで何よりです」
発した英語のイントネーションの癖から日本人だろうと張は見当をつけた。
「生憎
「
サングラスの下の瞳を細める張。伊丹は笑みを崩さない。
――――次の瞬間、銃を持つ2人の手が閃いた。
『――注意! 北西方向の路地より敵の別動隊が接近中!』
「居たぞ不信神者共だ!」
装甲車の壁がない方向に位置する路地から10名近い聖戦士が姿を現した瞬間、7.62ミリNATO弾と22口径ロングライフル弾の発射音がスカーフ頭の戦士達へ襲いかかった。
2丁拳銃が奏でるフルオートを思わせる連続発射音。2発おきに区切られた極めて速いセミオートのダブルタップが轟くこと複数回。
たった数秒、たった2人の男によって聖戦士の小集団は1発も発射する事無く、路地裏に溢れた自らの血の海に沈んだ。
生き残った三合会構成員や護衛部隊が事態に気付いて援護に加わる頃には既に事が終わっていた程の早業。
構成員は唖然となり、見事な仕事ぶりを見せられた剣崎が愉快気に短く口笛を吹いた。
生存者や新手はないと確信した伊丹はM14EBR、張は両手のベレッタM76、銃口から硝煙たなびく3丁の銃を下ろすと改めて向き直った。
(マジかぁ。こっちと違って上空から監視してる味方から警告された訳でもないのにあの早撃ち。しかも2丁拳銃であれだけ正確に撃てるって流石原作でも凄腕のガンマンなだけあるわ)
伊丹は伊丹で、張に撃たれた死体がどれも胴体のバイタルパートや頭部を射貫かれているのを見て戦慄した。
幾ら反動が少ない小口径でも左右同時に急所を正確に当てるとなれば極めて難しい。戦闘での非常時に伊丹も何度か2丁拳銃を実行した事があるので、尚更難易度とそれを容易く実行した張の腕前が理解できてしまう。
そうこうしている間に次第に銃声は減っていき、やがて銃声の出所が装甲車近辺のみとなるに至り、三合会構成員と護衛部隊もまた発砲を止めた。
装甲車のエンジン音を除けば、今や聞こえてくるのは炎上する車両やヘリから発せられるパチパチという音だけだ。
『カルデアよりアベンジャーへ。武装集団側の全ての攻撃対象の沈黙を確認した。健在の標的は残っていない。繰り返す、健在の標的は既に存在していない』
無人機で周辺を監視中の司令部からも報告が来たが、プライス達は新しいフル装填のマガジンと交換し、未だ警戒を緩めない。
張に並び立つ伊丹だけはM14系統(正確には前身のM1ガーランドより引き継がれた)特有の、トリガーガード前部に配置された安全装置を操作して銃を下ろし、敵意が無い事を改めて強調した。
山場を越えた安堵に再びにへらと気が抜ける笑みを作った伊丹を見据え続ける張の表情は真剣なままだ。
「とりあえず邪魔者は居なくなったようですので、
「話し合い、話し合いときたか」
張の視線が周囲を一瞥する。
兵の頭数は向こうが上、火力も上、もっと大事な兵隊の練度もこちらが劣っているのは明らかな上に、本拠地を空爆しここまで執拗に追い詰めてきた聖戦士共を赤子の手をひねるよりもあっさりと鎧袖一触した正体不明の兵士達の強さを見せつけられ、生き残った張の配下の大半が呑まれているのが見て取れた。
(まいったな。ここまで相手の風下に立たなきゃならない立場に回ったのは何年ぶりかね)
そして張もまた両手の愛銃をホルスターに戻すと、襟元を正して張りつめた表情を一転、楽し気で期待に満ちた笑みを形作った。
「自慢の酒の1杯ぐらいは奢りたかったんだが、生憎ついさっき事務所を焼け出されてしまった身なもんでね。
身を寄せる予定だった場所にそちらの口に合う銘柄が有るかは怪しいが、茶の1杯ぐらいは出せるだろう。その時で構わないかな、
「ええ勿論構いませんよ。そちらの行き先まで送りますよ。どうぞ乗って下さい」
伊丹が手で装甲車へ促すと、入れ替わりに彪が張に囁く。
「大兄、本当にこいつらを受け入れるんですか?」
「連中の目的がどうあれ、俺達が聖戦狂い共が俺達を放り込もうと掘った墓穴からこの兵隊連れの日本人に助けられたのは事実だ。ここで余計なお世話と噛みついたって何の得もねぇよ」
此処に至り大上段に構えた態度を取るなど百害あって一利なし。マフィアというのはビジネスマンなのだ。一文の得にもならない選択を張は嫌う。
それに事情や思惑は分からずとも、目の前の安スーツの男とその仲間が張の危地を救った恩人であるのは紛れもない事実。
借りを返さず、手を振り払い
「ここまで流れちまった以上はこの状況を楽しめよ、彪」
張は無事だった煙草を口に銜えると、引っ繰り返った高級車の車体で燻ぶる炎へ顔を近付け、火を灯す。
「案外あの客人も、
紫煙を薫らせながら、張はそう言って不敵な笑みを腹心に見せつけたのだった――――
「で、お前さん方は何がどうしてそんな愉快な事になってるんだ?」
「……シートベルトをしていなくて、座席から振り落とされたんだ」←1人筋肉ドライバー状態
「…………」←膝を抱えたままルマジュールの頭を尻に敷いている
「テメェスカシ野郎後で絶対ぶっ殺す……!」←2人の下敷き
ブッシュマスターの乗員区画で珍妙なオブジェと化した見覚えのある面子に出くわし、笑いを噛み殺す張であった。
ロットンならこのオチもきっと許される…!