GATE:MW 外伝集   作:ゼミル

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会話多めで短い上に話が進んでいませんがキリが良い部分まで書いたら更に更新が遅れそうなので区切ります。
本当は今回の話もっとサクサク更新してく予定だったのに気が付くとブレーキ…これが老化か(遠い目

時にリアル先輩につきましてはいい加減明治~昭和の大事件を超圧縮して令和に再現するのをいい加減止めてもらえませんかねぇ!?


皆様の反応・感想が作者の糧となります。


Knockin' on Warfare Gate26

 

 

 

 

 

「――とまあ、此処までが事の経緯な訳だ」

 

 

 話が終わった時、ロアナプラ有数のスイートルームは今や異様な沈黙によって支配されていた。

 

 聞かされた側たるラグーン商会側の表情など筆舌に尽くしがたい。

 

 例えるならば自分達が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そんな顔だ。

 

 しかもその糞は1度ぶちまけられたら最後、人類が滅ぶ瞬間まで延々と毒をバラ撒き続ける災厄そのものときている。

 

 たっぷりとした沈黙を経て最初に口を開いたのは年の功というべきか、ラグーン商会の頭領たるダッチであった。

 

 

「つまり何か? そのソロモン某とやらは若気の至りで聖戦サークルに加わった挙句おっ死んじまった息子の仇討ちの為だけに()()()()()()糞の塊(ビッグシット)()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そういう話なのかい、張さんよ」

 

「簡潔にまとめるとそういう事になるな。でもってやっこさんが用意したプレゼント交換会の主賓があの件(ヒズボラ文書)の当事者であった我々三合会とオタクらラグーン商会って事になる」

 

「……この街で禄を食むようになってから色んな商品を見て来たり運んだりしてきたが、コイツは極めつけだぜ」

 

 

 頭痛薬が欲しいと言わんばかりにダッチは額に手を当てて天を仰いだ。無機質な天井が見下ろすだけだった。

 

 

「あははははは、今からジェーンに連絡して終わりを迎える(ファックされる)瞬間まで君と過ごしたい(ファックしたい)って言ったら彼女は来てくれるかなぁ?」

 

 

 乾き切った笑いを漏らして現実逃避気味にのたまうベニーの顔からは生気が失われていた。放射能で生殖機能を失う前に種を残したいという考えは生物学的本能の現われと言えるのだろうか?

 

 

「いやいやまさかこれって僕か? 僕のせいなのか? いやいや違うだろアレは逃げる為にレヴィとシェンホアさんがやったんであってだけどああなったのはそもそも僕がアイツらに捕まってレヴィ達が連中を殺したのも僕を助ける為であってうあああああああああああ」

 

 

 頭を抱えてブツブツ呻いていたロックはというと、最終的にその場にしゃがむと海老ぞりになって悶え始める。大の大人としては非常に見苦しいリアクションであった。

 

 

「ハジキだの機関銃だの日本刀(サムライソード)に戦闘ヘリだの、アタシらを殺す為に色んな奴が色んな得物を持ち出してきたが、核爆弾ってのはアタシも初めてだなぁ」

 

 

 紅一点のレヴィに至っては心底呆れかえった感想を漏らすのみ。得物の規模が一気に飛躍し過ぎて現実味が湧いていないだけなのかもしれない。

 

 

「核爆弾じゃないぞレヴィ。正確には()()()()()()()()()()()()だ」

 

「けどよ張の旦那、そいつを浴びたら蟻やらタコやらを巨大化させちまったり科学者を緑の巨人に変身させちまうようなけったいな毒をバラ撒くって意味じゃどっちも同じだろ」

 

「アメコミやレイ・ハリーハウゼンは嫌いじゃあないが、コイツは正真正銘()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って事は肝に銘じてくれ。

 だからこそ()()()()()()()()もこうしてこの場に立ち会ってるんだからな」

 

「そう、そこだぜ張の旦那」

 

 

 レヴィが指差した先にはキャクストンが立っている。()()()()()()()()()、だ。

 

 

「どうして姐御直々にこの街から御見送りして永久出禁にされた筈の星条旗の(スターズ・アンド・)兵隊(ストライプス)野郎が、()()()()()()()姐御と一緒に此処に居やがるんだ?」

 

「それはだなレヴィ――」

 

「私がある場所での調査中に偶然遭遇した彼女とその部下達に協力を依頼したからだ」

 

 

 張が答えるよりも早く、キャクストン自らレヴィの質問に回答を行った。

 

 それに対するレヴィの反応は、

 

 

「マジかよ」

 

 

 であった。有り体に言って、その瞬間のキャクストンを見るレヴィの眼差しは正気を疑うそれであった。

 

 キャクストンは続ける。彼自身の保身の為に弁明するのではなく、そうするに値すると考えたからこそ賭けに出たのだと、無言を貫くバラライカ達の名誉を護る為に。

 

 

「あの日の彼女達の見事な戦いぶりは今も私の目に焼き付いている。

 あの悪夢の夜で唯一良き点を挙げるとするならば、それは彼女とその部下達が()()()()()()()()()()()()()だ。

 ()()()()()今回の案件には彼女達の力を借りなければ、私の祖国と君達、そしてこの街が見舞われようとしている恐ろしき厄災を阻止するのは困難だろうと私は確信している。これは上からの命令ではなく私の独断だよ」

 

「そういう事だ。残念ながら猟犬メイドから無事生き延びたこの軍人さんが我々この街の無頼漢に協力を要請しなきゃいけない程に、そしてレヴィ、お前さんが考えているよりも()()()()()()()()()()()()

 

 

 備え付けのテーブルに張が書類の束をレヴィ達へと滑らせた。四者四様の態度を見せていた運び屋一行は身を寄せ合い、書類の内容を覗き込む。

 

 『イブリース計画』、アラビア語と英語併用でタイトルが書かれていた。

 

 イブリース――――イスラム教においては楽園を追放された復讐に、アダムとその妻に禁断の果実を口にするよう唆した堕天使を指す。

 

 

「連中がパキスタンから調達した放射性物質はソロモンが所有するカバー会社所属の貨物船によって海上ルートで運ばれている最中だ。船は既にアラビア湾を抜けベンガル湾、マラッカ海峡を経由しロアナプラ近海まで辿り着いたら海上で積み荷の一部を下ろす予定になっている。

 さてそこで問題なのが、だ」

 

 

 言葉を区切った張の声色が、これから死刑判決を下す裁判長の如く張りつめたものに変わった。

 

 自らが銃火の真っ只中に晒されても飄々とした態度を崩さない筈の張のこの変化こそ、事態がどれだけ差し迫っているのかの現われだと、彼をよく知る者ほど否応なしに理解させられた。

 

 

「そこにいるアメリカの兵隊さんが聖戦士共の塒に設置された核シェルターから入手した計画表によれば、海上での放射性物質の引き渡しが行われる予定時刻は()()()()()()()

 予定表ではそれから1時間後には『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』と書いてある。

 それ以降、この街に関する内容は一切書かれていない。()()()()()()()()

 

 

 そして張が発した言葉は、文字通りロアナプラに対して下された死刑宣告そのものだったのだ。

 

 

 

 

つまり明日の日の出を迎えた時、連中はこの街(ロアナプラ)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「張さん、今日はこれでお暇させてもらっていいか? 家財道具を纏める時間が欲しいんだが」

 

 

 珍しく、非常に珍しく剃り上げた黒壇の額に冷や汗を浮かばせながらそうのたまうダッチだが、張の真顔は1ミリたりともピクリとも動かなかった。

 

 

「生憎だがダッチ、答えはNOだ。お互いこの件の元凶そのものである以上は最後まで付き合うってのが道理ってもんだろう?」

 

「でも……一体僕達は何をすれば」

 

 

 ロックもメイドの件の時の啖呵が嘘のように、ダッチの10倍は顔中に冷や汗を浮かばせてあからさまに狼狽えるばかりだ。事のスケールが大き過ぎて受け止め切れていないと見える。

 

 

「運び屋にやらせる仕事といえば決まってるだろう? ()()()()()()()()()()()」 

 

「荷物、というのはつまり――」

 

「私ともう1人の部下と彼女(バラライカ)、そして彼女の部下達(遊撃隊)だ」

 

 

 キャクストンが堂々と宣言した。

 

 彼の隣に並び立つバラライカは肩に羽織ったミリタリーコートの下で腕を組んだまま、先程から無言を貫いている。ロックにはそれが、内側から漏れ出そうになる何かを堪えているかのように映った。

 

 そこへ現実逃避から復帰したベニーが口を挟む。

 

 

「ちょっと待ってくれ。私ともう1人の部下って事は、アメリカ側の戦力はたったの2人だけなのかい? 以前一緒に連れてきた仲間の生き残りや新しい部下は、まさか()()()()()()()()()()!?」

 

「元々我々の今回の任務は情報収集の一環に過ぎなかったんだ。前回この街で作戦を行った時の混乱と生じた被害は母国で大いに問題視され、第56施設任務大隊(グレイフォックス)は解散させられた。

 私も訓練校の教官に島流しされた所をこの街での活動経験があるという理由で任務に就けられた。今はその程度の立場でしかないのだよ。事態がここまで進行しているとは、私も上も予想外だったのさ」

 

「栄枯衰退、たった1度のヘマでどん底まで転げ落ちるなんてのはよくある話だ。尤もそいつは今の俺達にも言える事なんだが……」

 

「今の私は若い部下達を犠牲にして生き残ってしまった挙句、完全に消え去る事も出来ず中途半端に軍にしがみついている年寄りに過ぎんよ。それでも軍人として果たすべき任務は最後までやり通してみせるとも」

 

「じゃ、じゃあ救援は? 近くの米軍基地から増援を呼べないのか!?」

 

「残念ながら不可能だ。我が国(アメリカ)とこの街が存在する国は同盟関係を結んではいるが、大規模な軍や今回の任務に最適な特殊部隊を駐留させた米軍基地は存在していないのだよ。

 仮に近場をこの地域を担当するインド(USINDO)太平洋軍(PACOM)の艦隊が通りがかっていたとしても、97年のアジア通貨危機以来我が国と関係が冷え込み、つい先日親米政権も倒れてしまった今のこの国の領海で艦隊を動かすのは政治的に極めて難しい……というのが今回我々を送り込んだCIAの担当官の言い分だ」

 

 インド太平洋軍の司令部はハワイなので今から送り込んできても到底間に合うまい。

 

 張としてもロアナプラの鼻先でよりにもよってアメリカの艦隊が動き回るような展開は、街の機密性を維持するという点において心から勘弁願いたいところだ。

 

 

「物も物だ。厳重な防護機構(フェイルセーフ)を備えている核弾頭と比べて放射性物質の容器は損壊による汚染のリスクを鑑みた方が良いだろう」

 

「つまりアメリカお得意のトマホークやハープーンや魚雷による撃沈は以ての外。となると残された手段となれば――」

 

「――()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ダッチが漏らした考えをロックの声が引き継いだ。

 

 それに対するキャクストンの反応は、首を縦に振っての肯定だった。

 

 

「ま、それ以外にクソをバラ撒かせずに済ませる手立ては思い浮かばねぇわな」

 

「なーんでぇ、とどのつまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってハラなだけかよ。アホクセぇ」

 

「ちょっ、レヴィ!」

 

「否定はしないとも。彼女の言い分は全くの事実なのだからね」

 

 

 

 

 

 

 

 女ガンマンの痛烈な皮肉を、キャクストンはほろ苦い笑みで正面から受け止めたのだった……

 

 

 




ところでスーダンの武力衝突もロシア案件かつウクライナでの戦争と関係してるそうですね。
反乱側と武器取引してるワグネルが代金の金鉱石をウクライナでの戦費に充ててるって情報に色々と考察が捗ります。
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