GATE:MW 外伝集   作:ゼミル

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お待たせしました、燃え残った全てに火を点ける時が来たので初投稿です。

ビーストⅥが全くお迎え出来ず既に財布が焼け野原です(白目
ティアマトママンを石追加無しでお迎えできた反動か…
でもさ!あれだけ健気な所見せられたらさぁ!(震える手で魔法のカードに手を伸ばす


今回一部ブララグ原作でちらっと触れただけの設定を深掘りしてみましたので読者の皆さん視点の考察なんかも待ってます。



皆様の反応・感想が作者の糧となります。


11/5:哨戒艇の武装表記変更


Knockin' on Warfare Gate27

 

 

 

 

 

 

「方針が決まった所で具体的な作戦内容を詰めていこうか。兵隊さん、集めた情報を見せてくれ」

 

「現地のCIA担当官が用意してくれた資料だ。口外は慎んでもらえると助かる」

 

 

 張がパチン、と指を鳴らすとキャクストンが携えていた茶封筒の中身をテーブル上に広げた。

 

 偵察衛星による高高度からの写真。貨物船の仕様書らしき書類。放射性物質と核廃棄物の格納容器の仕様書。見慣れぬ何らかの大型構造体の青写真。

 

 イブリース作戦の情報を入手して四半時間も経っていない点を踏まえれば、むしろ短時間でこれだけの資料を用意してみせたCIA所属の某の手腕を褒めるべきだろう。

 

 ロックの脳裏にサングラスをかけた修道女の姿が一瞬通り過ぎたが、この場で口に出しても何の得もないのは明らかなので黙ってテーブルに身を乗り出すに止めた。

 

 

「作戦目標はこの街(ロアナプラ)から約75海里(138キロ)の海上に存在するこの施設だ」

 

 

 キャクストンの指が示したのは巨人用のジャングルジムを水に浮かべ、その上に箱型の施設やクレーンを乗せたような構造物の写真だ。

 

 少しばかり海やエネルギー業界に知識を持つ者であればすぐに理解するだろうその施設の正体は――――()()()()()()()()

 

 周囲の視線は水に浮かぶ巨大構造物へと集中していた為に、写真を見た瞬間ロックの目が見開かれた事に気付いた者は居なかった。

 

 

「海底採掘用の半潜水式プラットフォーム。数年前にタイの国営事業として日本のアサヒ重工との共同プロジェクトによって建造された、移動可能な海洋掘削施設だ」

 

 

 だが続けてキャクストンが告げた名詞に今度はラグーンの面子全員が反応を見せた。

 

 

「何だか今どっかで聞き覚えのある名前が出てきたな」

 

「アサヒ重工ってあれだよね、ロックが僕らの仲間になる前に所属してた――」

 

「ロックとコイツが持ってたディスクを纏めて処分しようとアタシらに戦争屋を送り込んできたホワイトカラーの親玉共じゃねぇか」

 

 

 口々に呟いたダッチとベニーとレヴィの視線がロックへと注がれると、元旭日重工のいちサラリーマンであったロックの顔に過去を思い返す者特有の眼差しを伴うシニカルな笑みが浮かんだ。

 

 

「その石油プラントについては僕もよく知ってるよ。何せ僕があの日レヴィ達が襲った船に乗ってたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「へぇ、お前さんがこの街に身を置くようになった経緯は大雑把に耳に挟んじゃいたが、コイツは中々因果を感じる展開じゃあないか」

 

 

 これには張も愉快気に口元を歪め、そこにキャクストンが続けてこう付け足す。

 

 

「ちなみにだが少し前の金融危機によりアサヒ重工が経営危機に陥った為プロジェクトは中断、少し前から施設の稼働は停止して放置状態になっていたそうだ」

 

 それを聞いた瞬間、元サラリーマンは人目も憚らず盛大にガッツポーズを取った。

 

 

「ザマァ見やがれクソ上司ども! なぁにが『重役全員葬儀には出席しよう』だ、今度はテメェの葬式でも上げろってんだ!」

 

 

 自分を切り捨てた会社の現状を聞いたロックは、珍しく口汚さ全開で快哉を発したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 閑話休題。

 

 咳払いをして参加者の意識を集め直したキャクストンが説明を再開する。

 

 

「おほん。先程放置状態にあると説明した石油プラントだが、こちらは1時間程前に撮影されたばかりの偵察衛星(KH-11)が捉えた画像だ」

 

 

 引き延ばされた白黒画像。件の偵察衛星が最新型の無線通信による画像受信可能なタイプかつ、周回軌道のタイミングがたまたま東南アジア上空に差し掛かった時だったという幸運に見舞われなければ、こうも迅速に用意出来なかっただろう。

 

 衛星軌道の高度から見下ろした石油プラントのサイズは縦横100メートル弱。海上部分の土台となるデッキ上に大型の櫓、クレーン、ヘリパッドが対角線上に2ヶ所、大型コンテナを積み上げたような居住区等が設置されているのが判別出来る。

 

 それから各所に点在する、黒い染みの様な人影も。ご丁寧に赤いペンで丸で囲ってある。

 

 2つあるヘリパッドの内の片方には葉巻型の形状をした大型ヘリコプターの機影も存在した。

 

 

「武装した正体不明の人影が複数。おそらくソロモンの手の者の歩哨だ。石油プラントは既に敵の掌握下に置かれているとみるべきだ」

 

 

 そこで、これまで黙りこくっていたバラライカもとうとう口を開いて呉越同舟の作戦会議に参加を果たした。

 

 

「……ヘリパッド上の機体は旧ソ連のMi-8(ヒップ)ね。この機体を使っている軍はこの辺りではベトナムかラオスぐらいでタイではどの軍隊も運用していない。

 この機体の航続距離なら十分海上からロアナプラ間を往復できる。張の塒を空爆した機体もこの海上プラントから飛んできたとみて間違いあるまい」

 

「想定される敵の兵力は?」

 

「石油プラントに最低でも1個小隊の戦力は配置されていると見ていいだろう。更にここに合流予定の貨物船に乗り込んでいる分も加わる事になるな」

 

「こちら側の戦力はどうなってるんですか?」

 

「現時点では私と副官のシェーン、それからミス・バラライカと彼女の部下が1個小隊参加する予定だ」

 

 

 ヒュウ、とダッチが短い口笛の音色を奏でた。

 

 

「バラライカ直々に遊撃隊(ヴィソトニキ)を率いて殴り込みとなりゃ船の1隻や2隻どころか()()丸ごと制圧出来るぜ」

 

「殴り込むならアタシも頭数に入れてくれよ姐御。イエローフラッグごとアタシのケツを吹き飛ばそうとしやがった借りを連中にきっちり返させてやんねぇと気がすまねぇ」

 

 

 レヴィが飢えた狼の様に鋭利な歯を剥き出しにし、手の平に拳を打ち付けて戦意を示すが、バラライカはレヴィのその様子を冷たく見やるばかりだ。

 

 

「生憎だがダッチ、懸念すべき脅威は他にも在るのだよ」

 

「残念ながら彼女の言う通りだ。こちらの写真も見てくれ」

 

 

 バラライカに同意しながらキャクストンが別の写真を見せる。海上に浮かぶ船の画像。

 

 ラグーン商会が運用する魚雷艇の倍はある船体。排水量は300トン近くあるだろう。魚雷艇のように魚雷管は見当たらない代わりにもっと物騒な、ラグーン商会の船が喰らえば1発でお陀仏になる事請け合いの速射砲塔を船体前部に搭載しているのが見て取れた。

 

 

 

 

 

 

 ――――それは紛う事なき()()だった。

 

 

 

 

 

 

我が軍(米軍)が昔運用していたアシュビル級をベースにタイ海軍がコピーしたPSSM(多用途哨戒艦)-5型哨戒艇だ。

 武装は船体前方に76ミリ速射砲、後部に40ミリ機関砲ほか重機関銃も複数配置されている。無論対水上艦艇用レーダーもだ。石油プラントから約10キロの海上周辺に停泊している」

 

 

 全部砲塔をより高性能の速射砲に換装した後期型や、最初にアシュビル級の同型を導入し対艦ミサイルすらも搭載させた韓国軍の白鴎型ミサイル艇と比べればまだ大人しいのだが、今の彼らには何の慰めにもならない。

 

 軍艦を避けて海上プラントへアプローチを試みても、旧式とはいえ軍用の水上レーダーであれば上陸前に魚雷艇の接近を探知し、プラント上の兵隊達に警告の無線が届くであろう。

 

 

「この船を指揮している艦長は我々密輸に携わる大手の間では有名な人物でな。お国から任せられた船を使って副業に勤しんでる()()()()()ってやつさ」

 

 

 皮肉気な口調で語られる張の解説に、祖国への忠誠と正義に忠実な信念の軍人であるキャクストンの眉根が僅かながら不快そうに歪んだ。

 

 

「金さえ積めばご自慢の大砲と国軍の看板を盾に海上での取引現場に余計な客が近付かないよう睨みを利かせる、いわば大型のドーベルマン並みに役立つ番犬ってヤツさ。どうやら今回はソロモンとやらに雇われて石油プラント周辺の警備に就いてるらしいな。

 カネはかかるが、そこいらの海賊程度にゃ軍艦相手に真っ向から襲いかかろうなんて度胸も武器もそうそう持ち合わせちゃいない。だもんだから桁も規模もデカい取引や品物の載せ替えを人目に付かずやりたい時に重宝されてた連中だ」

 

「俺達の(魚雷艇)なら話は別だがな」

 

「茶化すなよダッチ。それにお前さんならコイツが本当に厄介な点も分かってるんだろう?

 この金で動く海の番犬が特に厄介なのは、やってる事はともかく所属自体は()()()()()()()()()()()()()()()事。

 何より今回最も重要なのはだ、よりにもよって()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、この一点だ。」

 

 

 つまり下手に排除を試みようものならば彼らの上……すなわち一国の軍隊そのものを敵に回しかねない。

 

 立場としては第2次メイド騒乱におけるキャクストン達(<グレイフォックス>)に近い。秘密部隊とはいえ作戦行動中の現役の軍人(しかも所属はよりにもよって世界最強の星条旗だ)がもしロアナプラ内で第3者の手に掛かって戦死したとなれば大規模な国家権力による介入を招き、この悪徳の都の繁栄に終止符が打たれる可能性が極めて高かった。

 

 故に張達黄金夜会は街の存続の為、狐達に爆弾で吹き飛ばされた主様の復讐に燃えるメイド(ロベルタ)からキャクストンらを逃がすべく組織の垣根を越えて尽力した。殺し合うならここではない場所でやってくれ、そういう訳だ。

 

 密輸事業の円滑性の観点から張やバラライカといった大手組織の多くはロアナプラ周辺各国の軍にも鼻薬を利かせてはいるが、それにも限界もある。

 

 

「その船が所属している司令部のに居る張さんのお友達に御注進を立てるなり、CIAの方から神託を下して引っ込めさせる事は出来ないのかい?」

 

「残念だが無理だ。番犬どもとそいつらが籍を置いてる司令部のオペレーターがグルでな、副業中はオペレーターが船の位置や航行記録を誤魔化して周囲に情報が漏れないようにして船の方も余計な情報が漏れないよう無線封鎖しているんだと。

 連中が無線封鎖を解いて司令部から事の真相を聞かされる頃には、怒れる父親とその兵隊どもはロアナプラに贈るプレゼントを配りに動く段階に入っちまってるだろうよ」

 

「つまり我々がソロモンを排除しヤツが計画した街に対する放射性物質の散布を阻止する為には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という事よ、ダッチ」

 

 

 現役の軍艦とその乗組員に物理的被害や多数の犠牲者が発生しようものなら、国家権力の中でも鼻薬が利かない面倒な連中がロアナプラに介入するリスクが再発しかねない。そうなれば放射能汚染を阻止出来ても街の存続が危うくなるのは変わらず無意味なのだ。

 

 目前に迫った地獄か、未来に訪れる破滅か。

 

 二律背反の選択をこの街の住人達は迫られていた。

 

 この場で唯一ロアナプラの住民でないキャクストンは黙ってダッチ達の選択を見守るにとどめる。任務が終わればこの街から消える身である彼に口を挟める権利はない。

 

 

「……別に私としては金の亡者共の船を中身ごと岩礁に変えてしまっても()()()()()()構わんのだがな」

 

「オイオイ勘弁してくれ。俺だって本当だったら自慢のペントハウスごとキャンプファイヤーをしてくれたターバン頭共に与してるあの船も沈めてやりたいところを堪えてるんだ。時間がないってのに誘惑で余計な時間を割かさせないでくれよ」

 

「軍艦相手じゃあそこいらの貨物船みたく鼻先に1発ぶち込んでホールドアップ、なんて訳にはいかねぇからなぁ。ったくクソ面倒な」

 

「今回はレヴィ、お前さんに同感だがクソみたいな問題を解決する為に別のクソッタレなトラブルを増やす訳にもいかねぇのさ」

 

「要はミス・バラライカの兵隊とそこに居る合衆国の軍人さんが核物質を運んでくる貨物船と石油プラントを制圧する邪魔をさせないように出来れば良いんだろ?

 だったら水中で動ける誰かに潜水工作員(フロッグマン)をやってもらって軍艦のスクリューなりに細工をして動きを封じるってのはどうだろう?」

 

「ダメだ。艦艇の位置からでは石油プラント周辺も主砲の射程圏内に含まれてしまう。

 何も知らない艦艇の乗組員が砲撃を開始して放射性廃棄物の容器が破壊されてしまうリスクは可能な限り排除しておきたい。動きを封じるだけでは不十分だ。主砲のスクリューだけでなく火器管制なりそれらを運用する要員なりも無力化しておくべきだ」

 

「艦も沈めず乗組員もしなせず軍艦を完全に無力化……できるのかそんなの?」

 

 

 ロックの困り果てた声色の呟きは、この場に集まった面々の心中を代弁していた。

 

 

「もし仮に何の不測の事態もなく軍艦を制圧出来たとしても、やるだけやって見張りも付けず放置という訳にもいかんだろうしな。

 バラライカの所以外に軍隊相手でも()れる度胸を持った、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんざ、流石にウチの組織でもすぐに用意は――」

 

 

 そこまで滑らかに動いていた張の舌が唐突に止まった。

 

 

 

 

 

 

 ――――()()()()()

 

 

 

 

 

 

 口元に手を当てて黙り込み、考え込む素振りを見せたかと思うと、おもむろに張はソファーから立ち上がる。

 

 

「何か案が浮かんだのかミスター張?」

 

「案なんて大層なもんじゃないさ少佐。

 こいつはそう……しくじったら最悪聖戦狂いの手にかかる前に破滅を迎えるかもしれない特大の爆弾だが、上手くすれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に心当たりがある。それを手札に引き込めるかどうかチョイとばかり試してみようと思ってね」

 

 

 そのまま張は無造作にスイートルームの扉を開けて廊下へと出てしまった。慌ててラグーン商会やキャクストンも張の後を追う。

 

 

「世界の終わりが目の前に迫って来てるって最中に悲壮な顔を浮かべて神様にお祈りしながら、ただ審判の時を迎えるまで待つってのは性に合わなくてね。何もしないで全てを失うのが解ってるなら、いっそ一発逆転の大当たり(ジャックポット)を狙って手持ちのチップを賭けてみるのもまた一興さ」

 

 

 それに、と付け加える張の口元は、まるで今から行われるサーカスの開幕を楽しみに待ち侘びる子供のように笑っていた。

 

 

 

「予想が正しければ俺達の様な無頼漢(ギャングスタ)よりも、多分アンタやバラライカみたいな兵隊(ソルジャー)の方が連中の事を気に入るんじゃあないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして張はすぐに足を止めると――――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を叩いたのである。

 

 




現在タイの海上プラント建造は中国企業も大分食い込んでいるそうで。
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