PPはやっぱり狡朱しか勝たん(確信
でもギノ霜も好きです。あるシーンでの反則レベルのギノ霜に爆笑しました。
だから狡朱主人公復帰で4期はよ(迫真
皆様の反応・感想が作者の糧となります。
何時もより短めです。
向かいのスイートルームに入ってしばらく後、戻ってきた張が連れてきた彼曰くの助っ人とやらは、ロックが想像していたようなロアナプラの裏町で長く生きてきた古強者のイメージとは真反対の身なりをしていた。
「こちらが今回の案件に助っ人として加わってくれる事になったミスター・伊丹とその愉快な仲間達だ。外から来たばかりの人物だから皆は直接の面識が無い人物ではあるが、彼らの立場と実力はこの俺が保証しよう」
「ど、どうもー。いきなりで何ですけど今回はよろしくお願いしますね。アハ、アハハ」
安っぽいスーツに、アルカイックスマイルと呼ぶにはいささか脱力気味の笑い顔で頭を掻きながら、空笑いを漏らしてペコリと頭を下げるその姿。
ロックは一瞬、己が岡島六郎に戻ったかのような錯覚を覚えた。イタミ――――伊丹と紹介された日本人は何というか、悪徳の都のホテルのスイートルームにて香港マフィアの首領から紹介に預かるよりも、新宿辺りの赤提灯で酔っ払った中年上司からの絡み酒の対処に四苦八苦している姿の方がよっぽど似合っていそうと思ってしまうぐらいには冴えない雰囲気の持ち主だったからだ。
イエローフラッグで聖戦士から襲撃を受けた晩にチラリと見かけた顔と同一人物なのは間違いない。
だが仕事の売り上げや契約数よりも如何に効率良くサボって定時退社するかを重要視する三流サラリーマンを彷彿とさせる今の伊丹の姿を見ていると、昨晩目撃した光景も実は見間違いだったのではないかと錯覚しそうになってくる。
尤もただの日本の安サラリーマンが当たり前のように硝煙と銃のオイルと迷彩ペイント用の顔料の匂いが今にも漂ってきそうな、根っからの兵隊にしか見えない屈強な男達を伴っている筈もない。
内2人、鷹か剣を思わせる鋭利な気配の日本人と、この場で最も年嵩だろう髭面に室内でもブッシュハットを外そうとしないイギリス系男性も微かに見覚えがあった。やはりあの晩酒場で聖戦主義者の団体を瞬く間に殲滅した3人組なのは記憶違いではなさそうだ。
それでもこうして並び立たれると落差というかミスマッチ感甚だしい。
それ程までにロックの目から見た伊丹という人物は、悪徳と鉄火の都には全く相応しくない
どう反応したものか分からずにロックが立ち尽くしていると、脇腹を誰かに突かれる感触。
軽く肘打ちを食らわせてきたベニーがロックに耳打ちした。
「ねえロック。もしかして彼らが昨日イエローフラッグで君とレヴィが遭遇したっていう人達だったりするのかい?」
「その通りだよベニー。確かにイエローフラッグを襲ったソロモンの手下達をたった3人であっさりと片付けたのは彼らで間違いない」
「……何ていうか、後ろに居る護衛っぽい人達は納得出来るけど、イタミって張さんが呼んだ人はそこまで腕っぷしに自信があるようには見えないけどねぇ。ああでも何となーく僕と気が合いそうな感じはするかな?」
海外産
ともかくベニーの感覚でも伊丹という人物は、鉄火場には不似合いな外の世界の平凡な一般人に見える様子だ。
「なぁレヴィ――」
だったらと相棒の女ガンマンに意識を移したロックは気付いた。
レヴィは三白眼を見開いて固まっていた。凍りついていると言っても良い。まるで
驚きなのはレヴィだけでなく、あのダッチでさえも呆然とした姿を晒している事だ。
それどころか2人は伊丹に視線を釘付けにしたまま、額にじっとりと冷や汗すら浮かばせていた。ラグーンのメンバーでも飛び切りクールなこの2人が、だ。
「レヴィ!? ダッチ!? どうしたんだよ大丈夫かい!?」
「……ロック。それからベニー。
一瞬で口の中が干上がったらしい。掠れた声をダッチが漏らす中、少し離れた位置に立っていたキャクストンもまた鋭く目を細めて伊丹達を捉え、それから、
「やはり彼ら、か」
と、それだけ呟くと目を閉じる。最早成り行きのまま全てを受け入れる覚悟をした者の態度だった。
そして最後の1人――――
「…………………」
ラグーンや米軍とは違い唯一無表情を貫いて佇んでいたバラライカは、おもむろにハイヒールを履いた足を1歩踏み出した。1歩また1歩と伊丹との距離を縮めていく。
バラライカの行動に護衛役のプライスや剣崎達が身構えるが、伊丹が振り向かずに手だけ挙げて仲間達を制した。
距離が詰まる。伊丹は動かない。
更に詰まる。伊丹はやはり動かない。
手を伸ばせば伊丹に届く距離まで近付いても、バラライカは歩みを止めなかった。
伊丹もまたその場に留まり続けはしたが、態度はといえば明らかに腰が引けた様子で顔も困惑でどことなく引き攣り気味だ。
(現実に見てみると原作以上に美人だけどすっげぇおっかねぇ! でもこの状況で流石に逃げるのは不味いだろうしなぁ)
顔の右半分を火傷の古傷が覆っていても尚壮絶なまでの美貌を持つ女がおっかない気配プンプンで近付いてきて平然としていられる男が居るだろうか?
否、居ない。きっとそうに違いないと、誰に向けての弁明か定かではない考えを巡らせる伊丹は半ば現実逃避気味だ。ロゥリィとかテュカとかレレイとか栗林とか黒川とか、怒ったらおっかない女性というのは伊丹の周囲にも多かったが、彼女達の大半はどちらかといえば可愛らしい顔立ちという点もあり、バラライカが醸し出すそれは伊丹も慣れていない類の威圧感だったのだ。
ようやくバラライカが足を止めた時、彼女と伊丹との距離は鼻先が触れ合いそうな程の近さまで縮んでいた。彼女が愛煙する葉巻と、硝煙と、脂が乗った女としての体臭がミックスした残り香が、伊丹の鼻先を擽った。
バラライカも微かに鼻を鳴らす。自らの手で銃を扱う者特有の肌と衣服に纏わりついた火薬と燃える油の臭いだけではない。肉体ではなく魂に染みついた香りを、確かにバラライカは嗅ぎとった。
それはどこまでも濃密で果てしなく冷え冷えとした――――死の芳香だ。
あまりに近過ぎてお互いの瞳しか見えないような距離。
伊丹は、夜の砂漠の砂の様に暗く乾き切った光を宿したバラライカの瞳に、世界を焼き尽くそうとした
バラライカはいっそ
「クフッ」
最初にそれを耳にして、それがバラライカの喉から漏れたものであると気付けたのは文字通り目と鼻の先の距離に立っていた伊丹だけだった。
微かに噴き出した吐息同然だったバラライカの笑い声はどんどんと音量を増し、やがて背が大きく逆反る程に盛大な、スイートルーム中の空気を震わせる腹の底からの呵々大笑に変貌していく。
「ははは、はははは。ははははははははははははははははははははははハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」
心底楽しそうな笑い声。東京の地下駐車場で銃を突き付けられた時以来か、もしくはあの時以上に愉快気なバラライカの様子にロックも呆然と眺めるばかりだ。永遠に続くかと思われたバラライカの哄笑もやがて少しずつ収まっていく。
ラグーンの一行は更なる驚くべき光景を目の当たりにする形になった――――バラライカの目の端に光るものが浮かんでいたのだ。
「成程、成程。ああ張、確かに貴様の言った通りだ。彼ら、いいや
「……気に入って頂けたようで光栄です」
様々な理由からくる戸惑いを多分に含んだ微妙な愛想笑いを浮かべる伊丹の姿に、目尻に浮かんだ水滴を指で拭うバラライカの喉から再び含み笑いが漏れた。ご馳走で満腹になって上機嫌の肉食獣を彷彿とさせる笑い声だった。
「なあ張さんよ。アンタが連れてきた助っ人とかいうこの御客人方は
一気に機嫌を良くしたバラライカと対照的に、シリアスな気配を全身から発しながら疑問を投げかけるのはダッチだ。
今にも腰にぶら下げた銃へ手が伸びる3歩手前といったレベルまで神経を張り詰めさせている。レヴィに至っては2歩どころか1歩半といった塩梅の剣呑さだ。伊丹から見た2人の態度は、下着屋で突発的遭遇をした時はシェンホアを彷彿とさせた。
(俺って此処の
(知らんし興味も無い)
思わず目線でプライスに尋ねてみるが、老兵の返事はにべもなかった。伊丹は泣きたくなった。
「端的に言えば取引相手兼恩人ってヤツさ。おまけにマザー・テレサや仏様も真っ青のとびっきりのお人好しと来てる。まっ少なくとも練度と兵力に装備の優秀さ、
「……信用して良いんだな?」
「あのなぁダッチ。
三合会ロアナプラ支部の頭目に相応しい、眼前に突きつけられた銃口が如く重々しく冷たい威圧感を言葉に乗せる張と、それを浴びせられたダッチの視線がそれぞれ着用するサングラス越しにしばしの間ぶつかり合う。
小さく息を吐いて折れたのはダッチの方だ。
「分かったよ、張さんが責任を持つってんなら俺達も受け入れるさ」
「それでいい。バラライカとミスター・キャクストンも構わないな?」
「構わないわ。少なくともそこの3人の腕に関しては私もイエローフラッグでの件でバオから話は聞いてるもの」
微笑みすら湛えてバラライカは即座に同意した。張とバラライカの視線がキャクストンへと向く。
「……確認をしておきたい。ミスター・イタミ、貴官或いは君の部下達で
作戦に従事する人員が特殊状況下での専門的訓練を履修しているか否か、この点だけで作戦の難易度と成功率は飛躍的に激変する。
この場限りとはいえ戦場で共闘する相手だ。伊丹はキャクストンからの質問をはぐらかさずに答えた。
「えーっと、俺とこの場に居ない面子を含めて以前の
「実戦で?」
「ええ、実戦で」
「……分かった。私は合衆国陸軍のシェーン・J・キャクストン少佐だ。短い間の付き合いになるだろうが、貴官らの協力に感謝する」
「いえいえこちらこそ」
「自己紹介は終わったかな?
――よろしい。それでは大まかではあるが聖戦主義者連中が準備しているサプライズパーティーを阻止する為の計画もミスター・イタミの上司達が立ててくれた。ここから先は現場に居る我々の意見を聞きながら内容を詰めていく手筈になっているから、さっさと作戦会議を進めるとしよう」
張の音頭の下、各陣営の代表者が頭を突き合わせてのミーティングが始まるのだった。
犯罪係数で例えるなら本作の伊丹はどんな戦場でも少し休めば即色相がクリアに戻るオリハルコン製メタルスライムみたいなメンタルです(Not免罪体質