GATE:MW 外伝集   作:ゼミル

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コロナワクチン接種5回目(6回目?)が副反応で寝込むか執筆するだけの余裕があるか分からないので次回は不明です。
喘息持ちとしては無料で受けられる限りは打っておきたいので……



皆様の反応・感想が作者の糧となります。


Knockin' on Warfare Gate30

 

 

 

 

 サンカン・パレス・ホテルのロビーの正面入り口とエレベーター、双方を視認出来る地点に在る柱に背を預けながらルマジュールは佇んでいた。

 

 一見両耳に填めたイヤホンから音楽に没頭して耳を傾けているようにしか見えないが、同時に感覚は研ぎ澄まされており、危険な気配を感じ取れば即座に懐の銃を抜けるようにしている。

 

 現在のロビーはサブマシンガンやアサルトライフルを剥き身でこれ見よがしに携えた中国人とロシア人が宿泊客やホテルの従業員よりも多く集結して厳戒態勢を敷いている有様であるのだが、ついほんの四半日前にあの三合会の支部がヘリからの空爆によって街の何処からでも目撃出来る規模のキャンプファイヤーにされるというとんでもない大事件が起きたばかりなのだから、完全武装で警戒しても尚気を緩められる筈がなかった。

 

 ルマジュールがホテル・モスクワの構成員と合流したのは半ば偶然だ。

 

 伊丹達が張との取引を終え、ホテルの客室に帰還し、その日の日当を受け取ってそのまま帰ろうとルマジュールがホテルから出たと思ったら、突然黒い車の車列が正門前に集結してさっき別れた張が今度はバラライカも加えて向こうの方から姿を現したので、流石のルマジュールも面を食らう他無かった。

 

 エレベーターの扉が開く気配を察知したルマジュールの隻眼がそちらを捉える。

 

 ロアナプラを仕切る三合会とロシアンマフィアそれぞれの親玉が、私服を着ているがどこからどう見ても叩き上げの兵隊であるアメリカ人に腕っぷしと評判ではロアナプラ随一の運び屋4人組。

 

 それからおまけに平凡過ぎて物騒な暴力稼業の集団の中では逆に浮きに浮いた、冴えないビジネスマン風の日本人を引き連れる格好でエレベーターから降り立ち、ルマジュールの目前を通過しようとする。別のエレベーターが到着するとそこから伊丹達の部下を吐き出した。

 

 

「ルマジュールは私と来い」

 

「イエス、マム」

 

 

 バラライカの命を受けイヤホンを耳から引っこ抜くと一団に合流し、張と並んで先頭を行くバラライカの斜め後ろに付いた。一瞬だけ日本の女性歌手によるロックソングがイヤホンから漏れ聞こえた。

 

 2勢力の頭目がホテルの外へ向かうに従い武装した大量の男達も動く。乗ってきた黒塗りの車に分乗し、バラライカと張は中でも一際高級な車両に分かれて乗り込む。

 

 全員が乗り終えるとすぐに車列は動き出した。伊丹達も自前の装甲車に乗り込んで後に続く。

 

 何台もの黒塗りの車両と装甲車のコンボイが向かう先は港だ。

 

 ルマジュールは本来は乗る事が許されないだろうバラライカ専用の送迎車、その後部座席にボリスとバラライカに挟まれる形で収まっていた。

 

 小柄な体躯のルマジュールに対し元軍人らしいしっかりとした体つきの2人、しかもサンドイッチしてくる相手はロシアンマフィアとその副官である。中々に肩身が狭かった。

 

 今からでも昼間の様に伊丹達の装甲車か、何だったらここより狭くても構わないから姉貴分達の乗っている車に今からでも移りたい気分だったが、ルマジュールはこのおっかない女首領に好きかって扱われても文句が言えない鉄砲玉な立場な訳で、今の彼女に出来るのはバラライカとボリスの勘気に触れないよう置物に徹する以外に選択肢が無いのが悲しい現実である。

 

 ……そう、思っていたのだが。

 

 

「ルマジュール」

 

「……何です?」

 

「あの、イタミという男についてだが」

 

 

 後部ドアに片肘を置き、軽く握った拳に頬を当てた体勢で、ルマジュールを一瞥しないままバラライカは言葉を紡ぐ。

 

 その声は平坦で、彼女が何を考えてどんな思いを抱いているのか、このやり取りだけではまだ判別出来ない。

 

 

「最初に貴様が金蔓を掴まえたと聞いて呼び出した時、貴様は私にイタミという男は『決して目覚めさせてはならないジェヴォーダンの獣だ』……と。そう言っていたな」

 

「ええ、アタシは確かにアンタにそう忠告したよ」

 

 

 肯定を示すと、半ば隠されたバラライカの口元から、獣が喉を鳴らす音に似た含み笑いが漏れた。

 

 ルマジュールから見えたもう半分のバラライカの口元は、心底愉快そうに唇の端が吊り上がっていた。

 

 

「ああ、まさに貴様が言った通りの――()()()()()()()()()()()()()()()

 

「大尉殿?」

 

 

 バラライカの態度に異質なものを感じ取ったボリスが声をかける。

 

 

「いや、な、軍曹。国も忠義も捨てた亡国の兵隊の成れ果てと化して尚現世に留まる様になって早幾年、よもやあのような()()()()()()()()()とお目に掛かれるとは私も想像だにしていなかったものでな。少しばかり昂っているようだ。

 何時の間にか張とも関係を構築していた事に関しては私も驚かされたよ」

 

「後ろの装甲車に乗った東洋人の男の事、ですか?」

 

「気をつけろよ軍曹。あの男の見た目と態度に油断すると……

 違うな。ヤツは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 バラライカが断言するとボリスの喉がゴクリと音を立てて動き、顔を斜めに横断する創傷が恐ろし気な強面の副官は視線を反射的に車列の最後尾付近を走る装甲車へと向けた。

 

 

「大尉の様に間近で捉えた訳ではありません。一目見た限りあの男は明らかに街の外の堅気の人間と自分は判断しました。

 ……ですが自分は同時にヒトの形をした別の存在、()()()()()()()()()()()()()、恐ろしい気配を自分はあの男に感じてしまったのです」

 

「貴様のその感覚は正しいぞ軍曹。アレは我々やこの街の人間の様な、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に近い人間にほど恐怖と狂気を齎すアイギスの鏡のようなものだ」

 

 

 滔々と語るバラライカの声はとても、とても愉しそうで、とても熱を帯びていて、とびっきりのクリスマスプレゼントを前にした子供を思わせる期待感にも満ちていて。

 

 

「間近であのイタミという男と対面して分かった事がある。

 あの男は間違いなく我々アフガンの亡霊やアメリカ人(キャクストン)と同じか、或いは()()()()()火薬と血と屍に魂を染め上げられた兵隊の中の兵隊だ。

 にもかかわらず、あの男の佇まいは入隊したての新兵よりも兵隊らしさに劣り、確固たる信念の下に戦場に身を置き続け汚濁に堕ちる事無く栄光を手にしたアメリカ人とも違う、糞溜めや死者の墳墓に頭の先まで浸らねば纏えぬ死の芳香を魂に纏わりつかせていながら、あの男の目は()()()()()()()()()()()()()()宿()()()()()ときている。

 ()()()()()()()

 

 

 ――――その声の奥底に在ったのは、とても、とても、どうしようもない程の羨望感だった。

 

 

 

 

 

 

「アレはな軍曹。黒い神(チェルノボーグ)の化身と成り果てて尚、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶうぇくちくしょーい!!」

 

 

 車内を震わせる騒々しい駆動音を一瞬塗り潰す程に盛大なくしゃみが伊丹から飛び出した。

 

 

「ずずっ……誰かが俺の噂でもしてんのかな……じゃあまず今回の件に対する狭間司令からの方針を皆に伝えておくぞ。

 『今回の作戦に対し()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』だってさ」

 

 

 自衛隊の通信システムによる双方向回線を用い、他の車両に分乗している隊員を含めた仲間達へ伊丹がサンカン・パレス・ホテルを出発する前に司令部から受け取った通信内容を伝えると、複数の嘆息が入り混じった「了解」という返答が伊丹の耳朶を打った。

 

 彼らの返答はあからさまに残念そうではあったが、同時に諦めと納得の感情も含んだ、どこか複雑な声色だった。

 

 

向こう(特地)の魔法やロゥリィが参加してくれたら百人力だったんすけどねぇ』

 

 

 伊丹の元直接の部下且つオタク仲間という立場から、階級に厳しい隊内に在って伊丹相手だといささか気安過ぎる態度を取る倉田が、護衛部隊全員が耳を傾けている通信回線なのもお構いなしに司令部が下した決定へ愚痴を発す。

 

 伊丹も伊丹で内心同意はしつつも部下を嗜めた。

 

 

「気持ちは分かるけど仕方ないさ。彼女達は皆()()()()()()()()()()()()であって()()()()()()()()()()()()()()で関わらせるのはお門違いだからね」

 

 

 言いながら伊丹は背伸びをし、万歳した両腕をそのまま頭の後ろに持っていって後頭部の後ろで手を組む。

 

 

「それに俺達が今使ってる銃や今乗ってる車みたいなこの街に持ち込んだ装備はこの世界でもあと10年か15年したら開発される、云わばこの世界の時代に存在する品物の延長線上に位置する代物だから、まだそこまでの違和感や不信感をこの街の人達からは抱かれずに済んでる訳だ。

 自分達が理解出来る、()()()()()()()()()()な訳だからな」

 

 

 伊丹が愛用するM14EBRも、今乗っているタイフーン装甲車や倉田が運転するM-ATVも、これから更に数年から十数年を経た時代のニーズに合わせて改良及び発展によって誕生した代物であって、原形となった銃器・兵器はこの世界(『ブラックラグーン』)の設定年代の時点で既に存在している。

 

 ロアナプラ上空を徘徊する無人偵察機やそこからの情報をリアルタイムで受け取るタブレット端末の類も、90年代後半には原形となるタッチパネル式のPDA(携帯情報端末)が既に販売されていたし、無人機に至ってはWW2(第2次大戦)どころかWW1(第1次大戦)の段階で概念自体は誕生していた。

 

 つまり過剰発達した未来アイテムに怪訝な顔はされつつも、この世界の住民が理解し受け入れる土台自体は最初から構築されていたのだ。

 

 

「でもそこにいきなり魔法だとかエルフだとか神様みたいなファンタジー全開の存在を放り込んでみろ。もしこの街を住民ごと壊滅させる計画を無事阻止出来たとしても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 倉田ぁ。お前がその関係者への説明役とその他諸々の始末をやってくれるっていうんなら、司令部にレレイ達の増援要請を具申しても構わないんだけど、代わりにやってくれんのお前?」

 

『うわぁ勘弁して下さいよ。どう考えても面倒な展開待ったなしじゃないっすかぁ』

 

 

 心底嫌そうな若い部下の声が回線を震わせ、誰かの忍び笑いがそこに加わった。

 

 

「そういうこった。別の世界線であっても同じ地球産の装備だからまだ誤魔化しは利くけど、正真正銘ファンタジーな異世界の存在を下手に見せられちゃ、今協力してくれる原作キャラだってどう反応するか分かったもんじゃないぞ。

 理解出来ない存在を前にすると()()()()()()()()()()()()()()()()。人間ってのは()()()()()()なんだよ、倉田。上もそう考えたんだろうさ」

 

 

 場所が装甲車の車内でなければ休憩中のサラリーマンにしか見えない様子とは裏腹に、伊丹の口から語られる文言は限りなくドライだ。

 

 が、そこに茶々を入れる者も居た。ニヤニヤ笑いを顔に貼り付けた剣崎だ。

 

 

「その割には嬢ちゃん手製の御守りはしっかり活用してたじゃないか。ええっ伊丹よぉ?」

 

「それはそれこれはこれ!

 ……ってつもりじゃないけど、アレはまだ誤魔化しが効くからともかく、魔法少女やエルフが呪文唱えて魔法使ったり、撃たれてもすぐに再生するゴスロリ着た神様が大の男よりもデカくて重たいハルバード振り回すの見られちゃ誤魔化しようがないでしょーが」

 

「お前に読まされた原作とやらの内容通りならさして問題なさそうな気もするがな」

 

「爺さんまでそんな事言わないでくれよぉ。大体この決定を下したのは俺じゃなくて狭間陸将達だから! 俺にばっかり言わないでくれぇの」

 

 

 プライスにまで指摘を受けた伊丹の口から泣き言と溜息が零れ落ちる。

 

 

「まぁ俺としてもよっぽど差し迫ってるんでもなければ、可愛い嫁さん達や世話になってる連中を彼女達にとっては無関係な住民の為に危険な場所へ引っ張り出して被曝させるかもしれない作戦に参加させたいとは思っちゃいないよ」

 

『それは俺も隊長に同意っす。もしペルシアさんが似たような事案に巻き込まれたら俺でも抗議しますよ』

 

「狭間司令達も特地の住民を戦力として投入する事は認めなかったが、()()()()()()()()()()()()()()()に関しては使える物はどれでも使っていいって許可が下りた。司令部も使()()()()()()()()使()()方向で作戦計画を立案してるよ」

 

「まだ詳しく聞かされていないんだが、司令部が立てた作戦の具体的なプランは?」

 

 

 ユーリの疑問は護衛部隊に加わっている隊員達全員の意見の代弁でもあった。

 

 

「それなんだけどね、張さんから渡された情報じゃ今回襲撃する敵の合流地点付近を金で雇われた地元海軍の軍艦が警備してるそうなんだけど……」

 

 

 今伊丹達が運用している改造装甲車を手掛けた整備部隊のみならず、武器科・航空科・通信科といった武器と電子技術に明るく(かつ物資不足と活動縮小により無聊を囲っていた)腕に覚えがある各方面の隊員達が寄ってたかって拵えた特地改修(魔改造)装備の中から役立ちそうな代物を今作戦に投入するという。

 

 

「で、軍艦を無力化しても使わずに放置するのも()()()()って話になってね」

 

 

 特知用改修装備を用いた作戦計画を立案し、且つ先日アルヌスにて大々的に繰り広げられた一大イベントの音頭を取った人物でもある、陸上自衛隊所属が大半を占めていた特地派遣部隊に於いて1%に満たない別組織の所属……

 

 伊丹とは別方向で掴みどころがない変人と評判のとある佐官が説明した奇想天外な作戦計画を思い返しながら、回線の先で楽しそうに笑顔を浮かべていただろう上官を真似て、伊丹もまた悪戯っぽく口元を歪めて仲間達へとこう言い放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――『どうせなのでこの船、()()()()()()使()()()()()()()()()()()』だってさ

 

 

 

 




今回のクロスネタは初期の段階で『門』以外のファンタジー要素は最低限でその分MW要素はマシマシで行くと決定してました。
特地組の活躍を期待していた皆様には冨岡義勇が腹を切ってお詫び致します(責任転嫁



伊丹は多分原作の時点でニーチェ曰くの超人の亜種的存在だと思うんですよ。
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