GATE:MW 外伝集   作:ゼミル

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遅くなりました。
深夜帯に執筆する事が多いのですがここ1ヶ月急に意識を保てなくなったり、熟睡も出来ず昼間の暇な時間も眠気に襲われて執筆出来るだけの余裕が……
集中して掛けないせいで文章力も……これが老化か(遠い目

それにしてもスレッタといいグエルといいミオリネといい水星の魔女はボサボサ頭になると一気に色気増すキャラ多いと思いません?



皆様の反応・感想が作者の糧となります。


Knockin' on Warfare Gate32

 

 

 

 

 地球が丸い事など誰だって知っている。

 

 だからこの星は()でできた()と呼ばれるのだ。

 

 球形であるが故に地球上に立つ人間のちっぽけな視点の高さでは一見真っ平らな土地或いは水面上であっても、一定以上の距離を超えると地形に遮られて向こう側が見えなくなる。その距離は人が水上或いは地上から何メートルの高さに位置しているかで変動する。

 

 空との境目が溶け合う境界線を地上では地平線、水上ならば水平線と呼ぶ。

 

 人が水上から0メートルの高さに立っている場合の水平線は約4キロ。

 

 大地から100キロ以上も離れた海上となれば全周見回しても見えるのは海面と空ばかりとなる。

 

 そんなロアナプラから約75海里のタイ沖海上に1隻の軍艦が停泊していた。

 

 全長50メートル、幅7メートル、排水量250トン越えのPSMM-5型哨戒艇――――のタイ海軍によるコピー版。

 

 一国の海軍が保有する艦艇の中では小型に分類されるがそれでも立派な軍艦だ。76ミリ速射砲と40ミリ機関砲をそれぞれ船体の前後に搭載し、50名程の乗組員によって運用される。

 

 この船は海軍司令部の命令を受けて活動している()()()()()

 

 哨戒艇の主な役回りは領海内で遭難船の救援や不法に活動する密輸船や海賊船の捜索・警戒・摘発だが、この船を与えられた艦長とその部下達は本来の役割とは真逆のアルバイトに哨戒艇を利用する事にした

 

 すなわち、海上での犯罪行為を見逃し、無関係な一般船舶や血と金を嗅ぎつけた海のハイエナどもを現場から追い払う、汚れた金目当ての番犬という新たな役割に軍艦を用いたのだ。当然、司令部には黙って、だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雨季を迎えた東南アジアの海は風が吹いてもなお蒸し暑い。

 

 鋼鉄製の船体の内側で唸り声と共に熱を発する船舶用水上レーダーのディスプレイといった熱源が集中する艦橋ともなれば尚更だ。これがアメリカ辺りの最新鋭艦であれば爽やかな冷気を齎してくれるエアコンも最新モデルを完備しているのだろうが、建造から20年近く経つこの船でよりにもよって真っ先に壊れた機材こそが艦橋のエアコンであった。

 

 そのせいで操船に必要な情報を齎す航行機器やレーダーディスプレイの前で今夜の当直を押し付けられた乗員は揃って半袖の軍服の襟元を大きく緩め、汚い独り言を漏らしては己の不運を呪った。

 

 デリケートな電子機器を潮気や不意の浸水から保護する為に海上活動中は本来閉じられていなければならない艦橋の水密戸を開け放つだけでは足りず、卓上に置かれた小型扇風機の強さを最大にして少しでも涼を得ようと彼らは試みる。

 

 特に電力の消費の大きさに比例して相応の熱も帯びるレーダーの担当官に至っては、乱暴な扱いは厳禁のディスプレイに両足を筐体に乗せるどころか温くなってもまだ水滴が浮かぶビールの小瓶を何本も並べ、だらしなく椅子の背もたれにもたれ掛かりながらしきりに団扇を仰ぐ始末。

 

 そんな彼ら当直員の姿は、真面目で厳格な軍人らしさからは限りなく程遠いものなのは間違いなかった。

 

 

「チッ、クソ暑ぃぜ。艦長の野郎、何時になったら艦橋の空調の修理を手配してくれるんだか」

 

 

 今回当直員達が退屈しのぎの話題に選んだのは、今頃哨戒艇唯一の個人空間である艦長室でぐっすり夢の中に居るだろうこの船の艦長への愚痴だった。

 

 

「噂じゃ艦長、司令部に修理の予算を申請しておいて実際にゃ業者を手配しないで自分の懐にそっくり呑んじまってるって話だぜ?」

 

「ふざけやがってあの守銭奴野郎。ただでさえ()()で稼いだ俺達の取り分も渋ってやがるくせによぉ」

 

 

 タオルで汗を拭いながら、レーダー担当官が新たなビールを飲もうと卓上に手を伸ばした時だ。

 

 チカリ、とディスプレイに灯る光点。

 

 

「あぁん?」

 

 

 怪訝そうな声を発しながらレーダー担当官は卓上から足を下ろすと顔を画面に寄せた。

 

 船舶情報を発しない正体不明の船を水上レーダーが捉えたのだ。ディスプレイ上に表示されるレーダーの捜索範囲設定を変更。突然出現した謎の船を除けば、レーダーの索敵範囲に捉えられる存在は今回の()()の依頼人が取引場所として()()()()()()()()()海上石油プラントしか存在しない。

 

 航跡を見る限りでは哨戒艇のやや斜め後ろへ向かう形で接近するコースを取っている。反応は小さく、速度は速い。高速艇の類だろう。

 

 レーダー担当官の手がビール瓶ではなく備え付けの受話器を取り、艦尾方面の監視を担当する見張り員(ワッチ)を呼び出した。

 

 コール音が2度、3度、4度と繰り返しなり、10に達しようかというタイミングでようやく繋がる。妙に舌ったらずな男の声を耳が拾うなり、レーダー担当官のこめかみに青筋が浮かんだ。

 

 

『あぁん? もしもしぃ~?』

 

「テメェまた監視中にハッパ(大麻)キメてやがったな!? 今度やったら魚の臓物に漬け込んでからサメの群れン中に放り込むぞ!」

 

『わぁかったよぉ。そんな怒鳴るなってぇ』

 

「アホが。それより方位100、約2海里(3キロ半)先にこっちへ近付くレーダーが捉えたから、さっさとテメェのハッパ漬けの頭より高い双眼鏡でさっさと確認しやがれ!」

 

『へーへー……ああダメだわこれぇ。今日は雲が多いせいでぜーんぜん暗くて見えやしねぇぜ。船の種類は分かんねぇの?』

 

「航行情報は出しちゃいねぇ。反応は小さくて速度は速ぇ。かなりかっ飛ばしてやがる。こっちとの距離は縮んじゃいるが、このままなら交差しねぇでそのまま後ろを抜けてくコースだ」

 

『どうせラグーンの連中みたいなどっかの運び屋の船だろ。連中のこった、航行灯も消しちまってるだろうし今必要なのは骨董品の双眼鏡じゃなくて暗視装置だよ』

 

 

 見張り員の意見も尤もだったので、レーダー担当官はそれ以上騒ぐ事はなく受話器を卓上に戻した。

 

 先程自身が言った通り、高速艇の光点は哨戒艇の後方1海里強(約2キロ)の位置まで接近した後、そのまま遠ざかろうというコースを維持している。

 

 

「艦長を起こして知らせるか?」

 

 

 操舵コンソールを担当する仲間からの確認にレーダー担当官は――――首を横に振り、卓上に再び両足を乗せてだらしなく背もたれに体を預けた。

 

 

「誰がするかよ。敵襲でもねぇのに夜中に叩き起こしたせいで不興買って、ただでさえ少ない取り分を更に持ってかれるなんざ真っ平御免だ」

 

 

 興味を失い担当官はレーダーディスプレイから目を離す。

 

 哨戒艇の真後ろに到達した高速艇が2キロの感覚を維持しつつ徐々に速度を落としていた事を、レーダー担当官は見落としてしまった。

 

 それだけではない。

 

 

「んあ?」

 

「今度は何だよ」

 

「……いや、何でもねぇ。ただの誤作動だろ」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()にもごく小さな反応が一瞬だけ生じた事を、レーダー担当官は見過ごしてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブツリと途切れた艦内電話の受話器をぼんやりとした目で元の場所に戻した艦尾甲板上の見張り員は、艦内から持ってきたパイプ椅子へと腰を下ろし直すと、後部砲塔根元の段差に無造作に置いた灰皿で燻ぶっていた大麻煙草を改めて堪能し始めた。

 

 甲板上で小さくタバコの火が瞬いては、甘ったるい紫煙と潮気の入り混じった奇妙な臭いが風に吹かれて掻き消されていく。

 

 最早到底見張り員としての役割など到底果たせそうにない蕩けきった目で、真っ暗な海をぼんやりと眺めながら、吹き付ける潮風と船体にぶつかる波の音に揺られていた時だった。

 

 

「んぁあん? 誰だぁ~こんな夜中に芝刈りなんてしてんなぁ?」

 

 

 それは何かが激しく空気を叩いて掻き乱すような音と、哨戒艇のガスタービンエンジンを一気に出力全開にした時の回転音が一緒くたになったような音だった。

 

 ヘリコプターの様なプロペラを持つ航空機の駆動音に近くはあるが、何メートルものプロペラが高速回転している音よりと比べるとかなり大人しい。

 

 見張り員はトロンとした目を細めて首を巡らせる。相変わらず黒い海面と闇夜の空ばかりが広がったままだ。雨季に入ったとあって空には雲も多く星明りも多くが遮られている。

 

 ……音は聞こえど姿は見えず。そもそもヘリコプターが接近しているなら、見張り員の耳が接近音を拾うよりずっと前に対空レーダーが探知していなければならない。だが艦橋の当直員から報告はない。

 

 つまりはそういう事なのだろう、と甘ったるい煙で目も頭も蕩けた見張り員はパイプ椅子にだらしなく身を預け直した。

 

 その間にも何かの駆動音は次第に接近しているのだがそんな事お構いなしといった態度だ。

 

 大体、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()鹿()()()()()()()()()()

 

 

「報告がねぇ~んなら問題らいよなぁ~」

 

 

 最早呂律も怪しくなるぐらいトリップした見張り員は半分以上灰になったマリファナタバコの煙を深く吸い込むと、頭部が隠れてしまう程の甘い煙を顔中の穴という穴から噴き出させた。

 

 

 

 

 

 ――――にわかに赤い光線が2本、煙の中に浮かび上がった。

 

 

 

 

 

「あ――?」

 

 

 グズグズに蕩けた思考が僅かに息を吹き返し、焦点を合わせて赤い光線を目で追いかけると、光線は艦尾方向の真っ暗な海上から伸びているのを視界に捉える。

 

 何だあれは、と目を凝らす。その時星と月の灯りを隠していた上空の雲がにわかに薄れ、夜の海上を柔らかな光が少しばかり照らし出した。

 

 マリファナ漬けになった見張り員の頭が、ようやく哨戒艇のほんの数十メートル後方に浮かんでいる物体を認識した。

 

 僅かな星明りが戻っても尚暗い夜の海上では大まかな形状しか認識出来なかったが、それでも上部で何かを高速回転させて宙に浮かぶ流線形に近いシルエットが確かにそこには在った。2本の紅い光線の出所は宙に浮かぶシルエットの両側面からだった。

 

 

「んだぁありゃ……」

 

 

 宙に浮かぶ物体は細かく空中で揺れて姿勢の微調整を繰り返し、その度に光線も右へ左へと揺れる。

 

 その光線の照射先は見張り員の胴体だった。2本の光線が揺れる度、見張り員の胴体の表面に浮かんだ光点も併せて動いた。

 

 自身の体へと据えられた光線の照準に目を落とした見張り員の、マリファナの効果で手当たり次第に鍋に放り込まれてグチャグチャにかき混ぜられたシチューの具材よろしくグチャグチャになった思考と記憶の中で不意に浮上したのは、出航数日前に兵舎のテレビで見た人間狩りの宇宙人を巡る映画と人類抹殺を目論む殺人マシーンが登場するとあるSF映画だ。

 

 此処に至りとうとう見張り員の意識が異常を認識した。それでもマリファナに炙られた思考が弾き出した結論と彼の口から飛び出した内容は明らかに錯乱していたのだが。

 

 

「う、宇宙人が送り込んだ殺人ロボットだぁあぉぁあ!?」

 

 

 

 

 次の瞬間、紅い光線――――可視光モードのレーザーサイトに平行して延びる銃口から発射された銃弾が次々と見張り員の胴体に命中。

 

 見張り員は激痛にのたうち回りながら後部甲板に崩れ落ちる羽目になったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今何か変な声が聞こえなかったか?」

 

「あん? 何も聞こえねぇけど」

 

「それに声以外にもさっきから妙に変な音が外から――」

 

 

 レーダー担当官が首を傾げて開けっ放しの水密扉へ目を向けた時、煙の尾を引いた何かがかなりの飛翔速度で艦橋内へと飛び込んできた。更にもう1つ、2つと続く。

 

 飛び込んできた缶状の物体は艦橋の床でバウンドすると更に大量の白煙を放出し、後に続いて放り込まれた物体も同様だった為、狭い艦橋はあっという間に煙に包まれた。

 

 ただの煙ではないと、艦橋に居た者達はすぐに理解させられた。目と鼻にタバスコをブチ撒けられたかのような苦痛を彼らは味わう羽目になったのだ。

 

 

「ぶぇっほゲホゲホっ!!」

 

「さ、催涙弾じゃねぇか!?」

 

 

 目と鼻と喉を襲う刺すような苦痛に堪らず艦橋に居た者は全員外の通路へと転げ出た。

 

 残念ながら艦橋を離れる前に、メーデーや艦内に警報を鳴らす余裕や冷静さを保っていた者は1人としていなかった。

 

 艦橋を離れた当直の乗組員達は這う這うの体でレーダーマスト根元のデッキへと何とか逃れると、必死に目元を擦って涙で滲む視界から復活しようと試みる。

 

 そんな彼らに更なる追撃が襲いかかった。

 

 強烈な炭酸飲料の蓋を一斉に開けたかのような連続した音が頭上から生じ、同時に催涙ガスの効果から抜け切れず苦しむ乗組員達の体中を衝撃と激痛が次々と襲った。骨や内臓に響いて倒れ伏し、動けなくなる位の威力だった。

 

 

「な、何が起きてやがんだ……」

 

 

 化学物質の反応のみならず、骨にヒビか折れていてもおかしくないような苦痛のせいで耐え切れず涙を浮かべながら、デッキ上に転がって呻く事しか出来ない有様になったレーダー担当官は、歪む視界の中で微かな月明りを背負って宙を舞う何かを見つけた。

 

 上部で回転するローターに流線型の機体。両側面から延びた短翼(スタブウイング)には、ドラムマガジンとグレネードランチャーと照準用のレーザーサイトを取り付けた大型のライフルを搭載。

 

 更にもう1機、こちらは左右の短翼にアサルトライフルではなく6連発の歩兵用グレネードランチャーが搭載され、遠隔操作で発射する為の機構が引き金周りに追加されていた。

 

 有り体に言ってしまえば武装を乗せた超大型のラジコンヘリ(ドローン)にしか見えない機体が2機、哨戒艇の周囲を飛び回りながら苦痛に呻く乗組員達を見下ろしていたのである。

 

 信じられないと、愕然とレーダー担当官は唸り声を発する事しか出来なかった。

 

 

「あんっなオモチャにやられたってのかよ……!?」

 

 

 

 

 

 

 ラジコンヘリの音に混じり、高速で水上を滑走する船のエンジン音も急速に接近しつつあった……

 

 

 

 

 




この当時だと余程の軍事通でもなければドローンとか無人機じゃなくラジコンで一緒くたに認識されてたんだろうなと思います、
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