GATE:MW 外伝集   作:ゼミル

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今回はヒロインサイドです。


GATE 自衛隊かの地にて、平行世界と遭遇せり5

 

 

 

 

 

 

 どちらからともなくその質問が出てきたのは必然の展開だった。

 

 

 

 

 

「ねえぇ、そっちの世界のヨウジィってどんな感じなのぉ?」

 

 

 甘ったるい声に、姦しく言葉を交わしていた3対6つに余り1つ、計7人分の顔が一斉に反応した。

 

 対になった同じ顔が3種類、まったく同じタイミングで振り向いて見つめてくるという絵面は異様な迫力を漂わせていたが、発言者である『こちら側』のゴスロリ亜神もまた海千山千なだけに彼女が浮かべる小悪魔チックな薄笑いは毛ほども揺らいでいない。

 

 幕僚幹部が雁首揃えて絶賛公聴中の会議室、そのすぐ外の廊下。

 

 特地住民である彼女らは参加許可が出なかった為、暇人同士こうして平行世界の自分達と歓談で時間を潰していたのである。

 

 

「どんな感じ――って聞かれても大雑把過ぎて答えに困るんだけど」

 

 

 笹穂耳をピコピコ揺らして戸惑いを見せる『向こう側』のテュカ。

 

 この1年弱でバストとヒップが増量し、曲線が出やすいTシャツとジーンズの布地が豊かさの増した曲線にピッチリと貼り付いて、下着のシルエットすら透けて浮き出る程に彼女のボディラインを強調させている。

 

 

「一言で表すなら……凄い」

 

 

 少し考え込む素振りを見せてから端的過ぎる回答を発したのは『向こう側』のレレイだ。

 

 露出が少なくゆったりとしたデザインの導師服からは分かり辛いが、若干の成長に伴い最近ブラの着用を開始。

 

 

「うむ、我々のヨウジ殿は凄い所が多過ぎて語り切れない位に凄いお方だ」

 

 

 何度も大きく頷いて『向こう側』のヤオが同意を示す。

 

 近頃ダークエルフの民族装束であるボンテージ風衣装が胸やら尻やら太股やらにきつさを覚えおり、新調を検討中である。

 

 

「そうねぇ。もし陞神して正神の末席に名を連ねてもぉ、これを超える存在にはまず2度と出会えないと心から思える位のぉ、最高の戦士にして眷属よぉ」

 

 

 最後に『向こう側』のロゥリィがこれ以上ない位のドヤ顔で締めくくった。

 

 肉体的な成長が止まっている彼女だが、にもかかわらずその腰つきや首筋から唇に漂う気配が最近になって妙に艶めかしくなったともっぱらの評判。

 

 

「じゃあ具体的にはどう凄いの? やっぱりそっちの世界のお父さんも炎龍退治に向かって龍の巣穴で戦ったりしたんだ?」

 

 

 興味津々とばかりに身を乗り出して『こちら側』のテュカがそう訊ねれば、返ってきたのは彼女の期待とは若干違う肯定と否定が半々に入り混じる、『向こう側』のレレイによる説明だった。

 

 

「『こちら側』のヨウジも確かにテュカとダークエルフを助けるべく炎龍退治に出向きはしたし、実際に戦いもしたが場所が違う。

 戦ったのはロルドム渓谷で、炎龍を仕留めたのもまた渓谷だった」

 

「そうなのか。此の身達はテュカ殿を背負ったイタミ殿とレレイ殿にロゥリィ聖下と共にクロウやノッコ、セルマらを連れてテュパ山麓の火口にて決戦を挑んだのです」

 

「プライス殿やユーリ殿、シノ殿は一緒ではなかったのか?」

 

「プライスとユーリって誰の事? それにシノってクリバヤシの事よね?」

 

「……『こちら側』にはプライスとユーリが存在しない?」

 

 

 心から不思議そうな様子の『こちら側』のテュカの反応に、「そこから違うのか」と『向こう側』の一行は顔を見合わせた。

 

『こちら側』の少女達が知らない人々についてレレイが代表して説明してやる。プライスとユーリは『向こう側』の日本とは別の国の軍人であり、『門』が開く以前『向こう側』の地球で起きた大戦争に於いては伊丹と一緒に世界中で戦い続けた戦友達であると。

 

 また『向こう側』の炎龍を最終的に討伐したのは伊丹が龍の巣に仕掛けたC4の爆発ではなく、狙撃手であるプライスが1リーグ(1.6km)近く離れて飛ぶ炎龍に向けて放ったたった1発の魔弾(50口径焼夷徹甲弾)であったと語ると、『こちら側』のテュカとヤオは跳び上がる位驚いたしレレイとロゥリィすらも目を見開いて驚きを示した。

 

 

「嘘、本当に?」

 

「1リーグも先を飛ぶ炎龍をたった1発で……?」

 

「此の身の誇りにかけて嘘偽りない事を保証しよう。如何な優れたエルフの弓の使い手やダークエルフの戦士であっても、たった一射で古代龍を射落とした彼の方の真似を出来る者は1000年経とうとも現れまい。そう断言出来る程にプライス殿の狙撃の腕はそれは見事なものだった」

 

 

 瞼を下ろしてそう語る『向こう側』のヤオの脳裏で、生まれて300年以上弓に触れてきたヤオですらも見惚れるほど芸術的な片膝を突いての射撃姿勢を取ったプライスの姿と、轟音から僅か1秒後空中で一瞬身悶えしたかと思った次の瞬間には宙から墜ちていく炎龍の姿が身を震わせる程の興奮と共に蘇った。

 

 あの瞬間はまさにダークエルフの間で子々孫々に語り継がれるに相応しい、新たな神話が生まれた瞬間であったと、改めて実感する『向こう側』のヤオ。

 

 そこへ『こちら側』のロゥリィが口を挟む。

 

 

「じゃあジゼルとアイツが連れてたぁ新生龍はどうしたのぉ? 私達(こちら側)の時はぁイタミ達が炎龍と戦ってる間に襲われたせいでぇ手古摺った所をジエイタイに助けてもらったんだけどぉ」

 

「こっちは炎龍が卵を残していないか炎龍の巣に確かめに向かったところで襲われたわねぇ。最初の奇襲で持ってきた『ぱんつぁーふぁうすと』とか『じゃべりん』とかぁ、炎龍を撃ち落とした『りんくす』まで失っちゃったからぁ、こっちもかなり手古摺らされたわねぇ」

 

 

 その際、荷役兼案内役として同行していたダークエルフもヤオを残して壊滅したと『向こう側』のロゥリィが付け加えたせいで、双方の世界のヤオは顔色を曇らせたは仕方のない事だろう。

 

 最終的に伊丹が出した作戦を元に伊丹が囮となってジゼルと新生龍×2相手の鬼ごっこで時間稼ぎをし、そのお陰で救援に来た自衛隊の力を借りずに新生龍を仲間達の力だけで撃破したと教えてやると、『こちら側』のテュカ達はこれまた驚きを露わにした。

 

 相対した時の状況がかけ離れているし、個としての戦力は炎龍の方が遥かに上だろう。炎龍の巣での激闘直後で『こちら側』の伊丹達はほぼ全ての武器を使い果たしていた事もあり、逃げる以外の選択肢が無かったというのもある。

 

 それでも新生龍を2頭率いて数と連携を駆使する空飛ぶ亜神を相手に生き延びるどころか、たった数名の戦力で勝利してしまうとは。吟遊詩人が過剰な誇張交じりに語るような英雄譚でも早々耳にすまい、炎龍討伐に匹敵する偉業だ。

 

 

「あの時は別行動を取ったからヨウジが具体的にどのようにしてジゼルと新生龍を相手取ったかは私達には知らないが、直前にロゥリィがヨウジを眷属にしていなかったら彼が命を落としていた事は間違いない。それは後日ジゼルから聞き出した当時についての内容からも明らか」

 

「いきなりロゥリィの体から血が噴き出したり、凄い音を立てて背中や手足が曲がっちゃいけない方向に折れたりした時は本当に驚いたわ……」

 

 

 当時を思い出してげんなりとした溜息が『向こう側』のテュカの唇から漏れた。やはりその時を思い出した同じ世界のヤオも引き攣った苦笑いを浮かべる。

 

 

「あの時ヨウジ殿はジゼル聖下に組打ちを挑んで、背の翼で跳び上がった聖下に空から岩へ叩きつけられたと仰ってましたね」

 

「拘束から抜け出す為に彼女ごと火薬を使って自爆したとも聞いている」

 

「あれは私ぃにも中々効いたわぁ。ま、ジゼルの方なんかぁ下半身丸々吹き飛ばされて再生まで大変だったって愚痴ってたしぃ、痛み分けよねぇ」

 

 

 

 

 

「……それって本当に同じお父さん(伊丹耀司)なの……?」

 

 

 ドン引きであった。

 

 お父さん呼びから未だ抜け出せない方のテュカが思わず発した呻き声は、『こちら側』の少女達の今の心境そのものであった。

 

 ここまでの内容だけでもその果敢で苛烈な戦いぶりが、『こちら側』の自分達が知る伊丹耀司のイメージから激しく乖離していたからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今度はこちらが聞かせて欲しい。『こちら側』のイタミヨウジとはどのような人物?」

 

 

 そう『向こう側』のレレイに問われたので今度は『こちら側』の少女達が語る番だ。

 

 過酷な環境を避けに避け、厳しい課題や周囲からの注文にはしょっちゅうお茶を濁して誤魔化しもするせいで一見不真面目に見えがちだが、常識に囚われない意外な発想で何だかんだと事態を解決に導くし時には炎龍に関わる騒動のように男気も見せてくれる、頼りがいがあって親しみ易く薄い本を読むのが趣味な――――それが自分達の知る『こちら側』の伊丹耀司である。

 

 一通り聞き終えた『向こう側』の少女達の反応は、心からの同意を示す大きな首肯だった。

 

 

「うんうんなる程ね。こっち側のヨウジもそういう所は同じなんだ」

 

「フフッ、それでこそヨウジぃって感じよねぇ」

 

「……それには同意」

 

「あ、そういう所は『向こう側』のお父さんも変わらないのね。ちょっと安心しちゃった」

 

 

『こちら側』のテュカも安心したように小さく息を吐いた。

 

 伊丹=ちょっとだらしない折れず砕けぬスライムメンタルなオタクという認識が別世界でも健在である事に、云わば遠い異国の地で同郷の人物に出会えた時に似た安心感を覚えたテュカである。その辺りは彼女だけでなく『こちら側』のレレイとロゥリィにヤオも大なり小なり似たようなものだ。

 

 ――――伊丹耀司のそういう人間性を彼女達は好きになったのだから。

 

 

「しかしとなれば『こちら側』と『向こう側』のイタミ殿との間にある差異は、如何なる起こりにより生じたものなのだろうか?」

 

 

 ヤオの疑問に、御年962歳という常人の数倍分に匹敵する人生経験を送っているロゥリィが、年長者だからこその重みを感じさせる含蓄を交えてダークエルフに教えてやった。

 

 

「そんなの決まってるわぁ。ヒトの有り様は当人がこれまでの生に於いて積んだ経験によって形作られていくものよぉ。私だってぇ最初からエムロイの使徒としてぇ肉の躰もぉ魂もぉ完成していたわけじゃないものぉ。

 つまりぃ『こちら側』のぉヨウジィが経験していない何かをぉ『向こう側』の彼はぁ経験してぇ、それによって『こちら側』よりも()()()()()()()()()()()()()()()別の『イタミヨウジ』として育ったわけねぇ」

 

「『こちら側』とは違う経験によって戦士として……向こうの私達には心当たりはあるだろうか?」

 

 

 その問いかけに顔を見合わせる『向こう側』の女性陣。彼女達の表情はこの場で言って良いものか、と悩んでいるのが手に取るように分かる、そんな様子。

 

 それを見て『こちら側』のレレイ達も、自分達が聞きたいと強請った内容が余程の事であると理解させられた。

 

 

「……聞くべきではなかった?」

 

「そういう訳ではないが、()()()()()()()()あまり言い触らすべきではない内容であるのは認める。

 そちらが聞きたい内容は現在部屋の中で行われている『こちら側』と『向こう側』のジエイタイの責任者による情報交換に於いても触れられているだろうから、『こちら側』は『こちら側』の人間だけで改めて彼らから聞く事を提案する。チキュウで起きた出来事が深く関わる為、チキュウ側の知識と認識を理解しているジエイタイから逐一説明を補足して貰うべきであるのがその理由である」

 

「そういえば結構時間が経つけどぉ、情報交換はまだ終わらないのかしらぁ?」

 

 

 ロゥリィが情報漏洩防止の為防音性能が高く設計された―なので中で何を話しているのか外の彼女達には伝わっていない―会議室の扉を眺めながらぼやいた丁度その時、前触れもなく扉が開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――後にロゥリィはその時の事をこう語る。

 

 

 

 

「あの時は驚いたわぁ。会議室で話し合いをしてたジエイタイがぁ、レレイが流行り病で倒れた時に見かけた歩く屍よりもぉ死人みたいな顔をしてたものぉ。

 私達(『こちら側』)のヨウジぃまでそうだったしぃ、後で私達も教えて貰ったけどぉ、別の世界であっても自分が生まれ育った故郷があんな目に遭ったって教えられたらぁ、そりゃあんな顔色になってもおかしくないわよねぇ……」

 

 

 

 

 




MW伊丹「原作自衛隊サイド、死亡確認!」



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