GATE:MW 外伝集   作:ゼミル

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とうとうMWⅢのトレイラーもお披露目されたので初投稿です。
ところでリマスターの方のMW3は…?(震え声



皆様の反応・感想が作者の糧となります。


Knockin' on Warfare Gate36

 

 

 

 

 ――――異世界を経由して来訪した第3次大戦後の未来の自衛隊という、逝きつくところまで脳ミソがぶっ飛んだジャンキーの妄言よりも突飛な答えに今のロックが辿り着ける筈もなく。

 

 

「そういえば僕からもレヴィに聞きたい事があるんだけど」

 

 

 話題の矛先を謎の日本人部隊からレヴィへと無理矢理に転換する。

 

 

「サンカン・パレス・ホテルで最初に彼らの指揮官らしいミスター・伊丹と顔合わせをした時、何でレヴィとダッチはあんなに身構えたんだい?」

 

「いやいや、気付いてないんすかロックさん」

 

 

 真っ先に正気を疑うような声を放ったのはレヴィではなくルマジュールだ。

 

 最低限の灯りの中で驚きに隻眼を見開いている。音楽が好きと自称していながらマイケル・ジャクソンを知らないと聞かされたかのような目だった。

 

 

「そう言ってやんなルマジュール。このホワイトカラーは姐御や張の旦那のご機嫌を買える位にゃよく回るオツムと舌のお陰で生き延びちゃいるが、アタシの知る限りコイツ自身は()()()()()()って意味に限っちゃ相手の血と臓物で汚した事が無い、正真正銘のバージンなのさ」

 

「……逃亡袋(エスケープバッグ)の件といい、ロックさんってそんなんでよく今までこんな街で生きてこれたっすね。いやマジで」

 

「わ、悪かったな。荒っぽい事は苦手だし、銃撃戦の時は何時もレヴィに頼りっぱなしなのは僕だって自覚してるから、レヴィにはいつも感謝だってしてるさ。

 だけど()()が僕の質問に関係あるのかよぉ?」

 

()()()()()()()()()()()()ロック」

 

 

 レヴィの目がにわかに細まった。

 

 海上に広がる闇夜よりも昏い気配が彼女の瞳に宿る――――人殺しの目。

 

 

「銃だろうが、ナイフだろうが、野球のバットだろうが、何だったら素手だろうが得物は何だっていいし、相手もチンピラだろうが聖人だろうが誰だっていい。

 肝要なのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ホットパンツのポケットを探り、クシャクシャになったタバコの紙箱から振り出した中身を口に挟む。小さな小さなオレンジ色の灯りが新たに1つ、夜の闇の中に点る。

 

 

「1度テメェが殺った人間の血の臭いを嗅いじまうとな、最初は分からなくても次第に判別がつくようになるんだよ。

 目の前に立ってる野郎が同類の人殺しかそうじゃないのか、慣れてくりゃたかが2人か3人殺った程度の小物かそれとも血の伯爵夫人(エリザベス・バートリ)も顔負けの血の海(ブラッドバス)にどっぷり浸かってきたシリアルキラーなのかどうか、ってのを麻薬犬宜しく鼻が勝手に覚えちまうんだ」

 

 

 ダッチも。

 

 バラライカも。

 

 張も。

 

 あの猟犬メイドも。

 

 ルーマニアからやって来た血まみれの双子も。

 

 かれこれ2度もロアナプラに送り込まれる羽目になった例の米軍も。

 

 悪徳の都から死の都に変貌する瀬戸際に置かれたロアナプラの住民も。

 

 誰よりもレヴィ自身も。

 

 ()()()()()()()()()、血と臓物と昏い墓穴の奥底から滲み出るかのような死の臭いを漂わせているのだと彼女は語る。

 

 

 

 

 

 

 ……逆に言えば、ロックやベニーは(ついでにズッコケグラサン野郎ことロットンも)今まで直接血で手を汚すような真似はせずに済ませてきた人間だからこそ、伊丹の異様さを見抜けなかったのだとも。

 

 

「その臭いってのは1度浴びちまったからにはどれだけ洗い流そうとしても決して落ちねぇ。最高級のシルクに挽肉たっぷりのミートソースをぶちまけたようなもんだ。

 おまけに当然の事だがぶちまけられた量が多ければ多い程、浸された時間が長けりゃ長いだけそいつの魂の奥まで穢れ(よごれ)と臭いが染みついちまって、そこに在るだけで腐ったドリアンよりもプンプン臭いをバラ撒くようになっちまうもんなのさ」

 

 

 ならば。

 

 あのバラライカと張に一目置かせ、血と硝煙に満ちた路地裏で何十何百もの風穴を拵えてきたレヴィですら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()あの伊丹という男は。

 

 

「NYの路地裏から始まってこの糞の掃き溜めみたいな街に辿り着いてから、殺人鬼(シリアルキラー)から元兵隊(エクスミリタリー)の殺し屋まで、血反吐のシャワーを頭から浴びてドライヤーの代わりに硝煙でヘアブローをかけてるような連中まで散々拝んできたけどな……」

 

 

 長口舌から一転、ボソボソと押し殺すようにゆっくりと言葉を紡ぎ、やがて断言という形で放たれた言葉に含まれた感情は、敵愾心の皮を被った畏れであると見抜けてしまったロックは言葉を失ってしまった。

 

 

「アタシ達が薄っ昏い墳墓から出てきた死者の国の骸骨なら、あのイタミって野郎は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ」

 

 

 鉄塊の様に重たく冷たい声で断言するレヴィに、ロックはごくりと唾を飲み込んだ。

 

 

「レヴィがそこまで言う程なのか……」

 

「だがよロック。イタミとかいう野郎がヤベェのは1人で黙示録の騎士4人まとめて兼任出来そうな墳墓の主の臭いを纏わりつかせやがるからってだけじゃねぇ」

 

「他にも在るっていうのかい!?」

 

 

 悲鳴じみた驚きの声を発するロックへ見せつけるように、レヴィはタバコを挟んだ方の手の親指を立てるとトントンと目元を叩いた。

 

 

()だよ、ロック。血とはらわたの臭いってのはそいつが付けてる目ン玉にも滲んじまうもんなんだが――……」

 

 

 心持勢い良くレヴィは紫煙を吐き出した。

 

 脳裏に蘇ったサンカン・パレス・ホテルでの最初の対面時に抱いた感情を振り払おうとするかのような仕草だった。

 

 

 

 

 

 

「あの野郎が1番イカレてるのはな、この街の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()癖して、あの時ホテルの部屋に集まった誰よりも()()()()()()()()()()()()()()をしてやがったのさ。

 このクソッタレな街の歩く死人(リビングデッド)どもに誰よりも死に近い気配をしておきながら、あの野郎自身は()()()()()()()()()()()()をしてやがるときたもんだ。

 ()()()イカレてるんじゃなきゃ何だってんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

「……ホテルでの顔合わせが終わった後バラライカさんと話したんすけど、あの人も同じような事を言ってたっすよ。

 アタシらみたいな血だまりの中でしか生きられないような連中ほど、それを前にしたら恐怖で狂っちまうような化け物そのものだ、ってね」

 

「そんなバケモン相手に感謝祭のプレゼント交換会で一等賞を当てたガキよりも嬉しそうな顔をしてた姐御もとびっきりの狂人だな。

 ……今の言葉、ぜってぇ姐御達の耳に入れんじゃねぇぞ」

 

 

 吐き捨てて、レヴィは吸い止しのタバコを暗い海へと投げ捨てたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魚雷艇に乗っていた情報科の隊員達も先程迄使っていた機材を抱えて哨戒艇へと乗り移った。より大型で内部スペースにゆとりがある哨戒艇へと司令部を移すのである。

 

 動き回っているのは自衛隊員だけではない。バラライカの部下達も荷物の移動や配線の設置に手を貸し、張が集めた船乗り達はこれから自分達が扱う哨戒艇の各機関の点検に余念がない。

 

 後者に関しては張直々に釘を刺されたのみならず、ロアナプラ1おっかない女ことバラライカまでもが直接出張ってあの絶対零度の眼差しで彼らの働きぶりに目を光らせているという要因が大半を占めていたからなのだが。

 

 だから問題が発覚し、江田島へとそれが伝えられるまでの時間も極めて迅速であった。

 

 

「主砲の弾薬が無い、ですって?」

 

 

 思わぬ報告に対する江田島の声には困惑の響きが色濃く含まれていた。

 

 

「ええそうでさミスター・エダジマ。さっき見たところ、3インチ砲の弾薬庫に置いてある予備砲弾が本来積んでなきゃいけない量の半分もありゃしやせんでしたぜ」

 

 

 訛りが強い伝法な口調で、元海軍の大砲屋だった船乗りは語った。

 

 

「この辺りで活動する軍の艦艇は規定数以下の弾薬量で作戦行動するのは認められているのですか?」

 

「ここいらじゃぁ珍しかねぇですぜ。補給部で弾薬発注を担当する書類屋が、船の責任者と発注先の担当者とグルんなって書類にゃ実際の補給分より嵩増しした弾薬代を書き込んでその差額をテメェの懐に呑んじまったり、武器屋に捌く伝手がある艦長と乗組員が使わない砲弾を売っぱらっちまったりなんてぇ話はね」

 

 

 訳知り顔でそう解説してくる元軍艦乗りに―或いは彼自身、その手の不正をやっていた口なのかもしれない―江田島は彼にしては珍しく眉間に皴を寄せ、頭痛に襲われたかのように手を当てた。

 

 堂々とそのような不正が横行している様を語られた上、江田島達はこれからその砲弾を何発も必要としているというのに、よもやこのような形でとばっちりを食らう羽目になるとは……

 

 そんな江田島の内心が、同座する伊丹も手に取るように分かるようだ。伊丹自身も乾いた笑みを引き攣らせて「マジかぁ」と天を仰ぎたい心境である。

 

 

「こうなりますと乗り込み部隊発進時に行う砲撃支援は本来の予定より限定的にせざるをえません」

 

「流石に今から76ミリ砲弾の手配と輸送は間に合いそうにないですもんねぇ」

 

 

 特地派遣部隊に護衛艦隊が配備されていない以上、『門』経由の調達も不可能である。

 

 

「どうやら旦那方の所は()()()()()()()だったようで」

 

 

 泣く子も黙る三合会の親玉が細心の配慮を払い、()()バラライカと肩を並べて()()()()()()()()()()()()()という、何者かはサッパリ不明だが只者ではないのは間違いない兵隊達を仕切っている人物がこうも分かり易く困惑している様に、堪らずといった風情で元大砲屋の船乗りは下品に顔を歪めた。煙草のヤニで黄色く汚れた歯が剥き出しになった。

 

 

「艦後部の40ミリ砲の方はどうなのです?」

 

「そっちも似たようなもんでさ。大砲よりも使い勝手が良い重機関銃の方はたっぷり保管してありましたぜ」

 

 

 日本ではない文化圏の住人らしく、元大砲屋は両手を肩の高さまで上げて大袈裟に肩を竦めた。江田島の口から小さい溜息が漏れた。

 

 単なる佐官では異世界への派遣任務という前代未聞の命を選出される筈もなく、狭間や各戦闘団の指揮官に負けず劣らぬ優れた能力と経歴の持ち主だろう江田島も、ギンバイとかそういうレベルではない不正(それも艦の上から下まで真っ黒ときた)に直面するのは初めてだったのだ。

 

 そりゃそうだろうなぁ、と江田島の珍しい反応を横目に見ながら苦笑いする伊丹である。

 

 自衛隊だって不正が存在しないとは口が裂けても言えない。幸い伊丹が現場に直面した事は無いが、悪質ないじめやセクハラ案件は度々世間を騒がせているし、表沙汰になった案件は氷山の一角に過ぎないだろうとも察している。

 

 が、それらはあくまで個人もしくは小規模な集団の範疇の周囲の目を盗んでの行為であり、よもや艦の乗員全体がグルになって犯罪の片棒を担ぐという事例は自衛隊でも類を見ない。

 

 伊丹が一時期戦場を駆け巡ったアフリカは世界でも屈指の貧困蔓延る発展途上国が集合していたから、土地柄上その手の不正など全く珍しくなかったから、この手の話題には耐性があった。

 

 それどころか当時は伊丹達も脛に疵を持つ立場だった関係でまともな補給ルートを持っていなかった為、逆にそうして流れてきた横流し品(及び、それらを調達してきたニコライ)には多分に世話になった身ですらある。故に江田島ほど困惑を表に出す事無く伊丹は悠然としていられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こういう時は逆に考えるんですよ江田島さん。『1発も撃つ弾がないよりはずっと良い』ってね」

 

 

 江田島の肩を軽く叩いて気遣う伊丹であった……

 

 

 

 

 




戦争吹っ掛けたら予想以上に苦戦して前線に戦車足りなくなったんで追加送り込もうとしたらエンジンごと横流しされてたせいで補給が滞った軍隊がつい最近居たしこれぐらいの表現なら許されるよね!()
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