GATE:MW 外伝集   作:ゼミル

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装備解説回。
話が進んでいなくて申し訳ありません…


皆様の反応・感想が作者の糧となります。


Knockin' on Warfare Gate41

 

 

 

 

 チーム・ブラボーが貨物船に乗り込みを開始するのと同じ頃――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 海上プラント制圧を担当するチーム・アルファを乗せた少数のゾディアックもまた目標の足元へと到達を果たしていた。

 

 半潜水式プラットフォームの最たる特徴である、上部構造物の土台部分と同等の長さを持つ超特大の浮力タンクに設けられた足場へと伊丹の乗るゾディアックが接舷。

 

 揺れるボート上で素早く立ち上がると、見た目の重装備とは裏腹にするりと伊丹は足場に飛び乗った。

 

 板金鎧(プレートアーマー)を彷彿とさせる伊丹の装甲戦闘服だが、メイン装甲である炎龍の鱗は重機関銃すら貫通を許さない強度を持ちながら比重は鉄よりも軽いので見た目以上に身軽に動けるのである。ヘルメット込みの全身装備ながら胴体部分のみを防護するグレードⅣクラス(大口径ライフル徹甲弾)のボディアーマーと同程度の重量といったところか。

 

 またファンタジー素材で作られ皇宮強襲(キングスレイヤー)作戦で圧倒的性能を帝都中に知らしめたこの装甲戦闘服は、一世一代のお披露目以降も主にアルヌスの職人や伊丹の現地嫁達によって更なる改良が施されている。

 

 主に脚部と腰部、そこから背骨をなぞる様に外付けのフレームと呼ぶべきパーツが追加されている。フレームの素材はやはり特地産の極めて剛性が高く、にもかかわらずこれまた極めて軽量な鋼材だ。何でも素材のレア度で言えば炎龍の鱗と同レベルに貴重なレアメタルらしい。

 

 ゾディアックから足場に降りたのは伊丹だけだ。

 

 他のメンバーにトラブルが発生した訳ではない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「それじゃあ2分後にまた会おうぜアベンジャー。精々上で待ち構えてる連中を引っ掻き回してやりな!」

 

「へいへい。そっちこそちゃんと時間通りに上陸してくれよセイバー」

 

 

 軽口を交わした後、伊丹を残して剣崎やキャクストンを乗せたゾディアックは足場から離れていく。

 

 2分後に残りのチームアルファは別の場所から海上プラントへ上陸する予定だ。上陸予定地点へと混沌の最中を掻い潜る様にゾディアックを向かわせる剣崎達自衛隊員。

 

 そんな中、初期型のM4ライフルを抱えながら波に揺られていたレイが我慢出来ないといった様子で抗議の声を発した。

 

 

「やっぱりわからん。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 本当にそれで大丈夫なのか!? この頭上で待ち構えているのは武装ヘリや核物質すらも揃え中東で実戦経験を積んだ重武装のテロリスト集団なんだぞ!?」

 

「私にも判らないな。ミスター・イタミが只者ではないのはこちらも何となく理解出来てはいるが、流石にこれは彼を捨て駒にしたとしか思えないのだが」

 

 

 剣崎達の態度が納得出来ないという態度を隠さないキャクストンとレイに対し、剣崎達が見せた反応はニヤリと口元を歪める事であった。

 

 それは心からの信頼と少しばかりの憧憬が込められた、男臭い笑みだった。

 

 

「捨て駒? ハッ、オタクらはあの野郎を知らないからそりゃ勘違いしちまうよな」

 

「勘違いだって?」

 

 

 

 

 

「戦場でのアイツは捨て駒で終わるようなタマじゃない。それどころか敵に回しちまおうもんなら相手がたとえ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()最後はアイツに戦力差をひっくり返されて負ける羽目になっちまう。

 ()()()()()()()()()()なのさ、あの男はな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にしても最近は()()()()()()()ばっかりやらされてるよなぁ。あーやだやだ、同人誌を読みながらサボってた頃が懐かしいよ、もう」

 

 

 取り残された伊丹は、愚痴りながら手にした銃の安全装置を解除した。

 

 今回持ち込んだのはH&K・M27IARである。平たく説明するなら特殊作戦軍にも採用されているHK416アサルトライフルの銃身を肉厚の延長型(ヘビーバレル)に取り換え、精度向上と長時間の連続射撃に耐えうるよう改良した支援火力重視モデルだ。

 

 銃の役割としてはHK416のような自動小銃よりも(これも自衛隊で採用されている)ミニミ軽機関銃のような分隊支援火器に近い。使用弾薬もHK416と同じ5.56ミリNATO弾を使用する。

 

 デカく重く大量の弾丸をバラ撒く大容量の火力が売りなベルトリンク式機関銃とは正反対の、軽量さがもたらす機動力と高精度の銃撃で以って敵を制圧するというコンセプトからこの銃は生み出された。

 

 それもあり基本的にM27IARは倍率付きスコープを搭載しての運用が標準だ。ただし伊丹のM27IARが機関部上部に取り付けていたのは単なるスコープではなく熱探知型の赤外線(サーマル)スコープだった。更にその上へ接近戦向けのマイクロドットサイトも追加してあるので肉眼での射撃ももちろん可能。

 

 ベルトリンク式軽機関銃と比べての欠点としては、自動小銃の延長線上で設計された存在から装弾数が少ない従来通りのマガジン式である点が在る。

 

 それを補う為に伊丹が持つM27IARには100発装填のドラムマガジンが装着してあった。装甲戦闘服の胴体面に並ぶチェストリグの弾薬ポーチに収められている予備マガジンも従来の30発用ではない、装填部から下が通常よりもひと回り太くなった60連発大容量マガジンで統一されている。これによって射撃可能時間の短さと装填回数の増大を補うのだ。

 

 他にHK416と違いを述べるならば銃剣用の着券装置が追加、いや復活している点か。伊丹もまた今回は不意の遭遇格闘戦対策に64式銃剣を装着し、姿勢安定のフォアグリップも銃身下部に追加して運用を行う。

 

 背中にもスリングで武器を携帯していた。こちらはショットガンのケルテック・KSG。

 

 世にも珍しいチューブ式マガジンが横2列並んだブルパップ型ポンプアクション機構を搭載した散弾銃の先駆けとなった事もあり、大々的な軍や法執行機関への採用は無くとも銃の知名度は高い。前述の構造によって短銃身モデル並みの短い全長ながら従来のポンプアクション式散弾銃を大きく上回る14連発の装弾数を持つ。

 

 ショットガン用の弾薬は今回左太股に配置した大型ポーチに詰め込んで持ち歩く。元々はガスマスク用のポーチだが、別に入れる物はガスマスクに限定しなくてもいいのである。中に仕切りがあるので複数種の弾丸を持ち歩く事も出来た。

 

 大部分は鹿などの大型獣用―人間も含む―12ゲージ散弾(バックショット)だ。貨物船を担当するユーリと同じくマスターキー代わりのスラッグ(一粒)弾も所持している。そして別の散弾用弾薬ポーチには念の為にと伊丹が持ちこんだ特別な弾薬が収められていた。

 

 ――――尚これらの銃器は自衛隊でも特殊作戦群でも導入されていない、例によって閉門前に伊丹の関係者(戦友)より送られてきていた彼の私物という名の員数外装備である。

 

 特地派遣部隊全体でここまで個人の私物が活用される事になるとは、送り主の某傭兵大学生もこれには予想外だったであろう。

 

 

「んじゃま行くとしますか」

 

 

 独りごちてから、伊丹は上層へ上がる階段へ向き合うと軽く膝を曲げ、体の重心を心持ち下へ落として身構える体勢を取った。

 

 意識するのは足の裏、普段は意識しないような部分の筋肉をピンポイントに動かす。そんなイメージを伴いながら、伊丹は決定的な単語を唱えた。

 

 

 

 

 

「――()()()()

 

 

 

 

 

 

 次の瞬間である。

 

 全身装甲の戦闘服と武器弾薬諸々で目方3割以上は重量が増している筈の伊丹の体が、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 地面を蹴って()()()のではない。装甲服の足底部分から爆発的に発生した推進力による()()

 

 踊り場の手すりを超える高さまで到達した伊丹が姿勢と向きを瞬時に微調整した上で再び「ブースト!」と短く発すると、今度は背中から発生した噴射が伊丹の体を斜め上へ向けて射出し、更に途中の踊り場を飛び越える形で吹き抜けになった中間層へと一瞬で到達を果たした。

 

 中間層の足場へ着地。噴射の慣性の名残に背を押されるがまま早足に数歩駆ける間に素早く見回し、より上の階層への通路を見つけると発動ワードを唱えれば、再度伊丹の体が見えない力に押されて()()。途中にある通路の手すりや放置された機材といった障害物などその上をひとっ飛びだ。

 

 通路の途中には本来海上プラントの作業員が利用するのであっただろう部屋の扉が在った。

 

 突然扉が開き、数名の武装した男達が通路へ出てきた。丁度伊丹の進路上へ立ち塞がる形である。

 

 本来は海上プラントへの制圧に下から上がってくる伊丹達を迎撃しようという魂胆だったのだろう。彼らの誤算は伊丹がよりにもよって単騎で、しかも何と階段を使わず飛んできたので、男達が予想していたよりずっと早く彼らの敵がこの階層へ到達してきた事だった。

 

 SFかファンタジーの登場人物にしか見えない赤と黒の装甲で全身を纏った存在が、彼らめがけて砲弾よろしく宙を飛んで突っ込んでくるなど、もっと予想していなかった筈だ。

 

 

「飛び入り失礼するよ!」

 

 

 伊丹の発言は文字通りそのままの意味だった。

 

 瞬時の判断と訓練による反射でM27IARのグリップをしっかりと握り締めながら腰溜め気味に体の前へ突き出し、そのまま伊丹は驚愕に目を見開く先頭の男めがけてノーブレーキで飛び込んだ。

 

 装着した銃剣によって強化樹脂と鋼鉄製の槍と化したライフルが男の胸部へ突き刺さる。伊丹自身の体重に猛烈な加速が加わった事で刀身が柄の部分へ達する程に深々と埋まり、64式銃剣が元々長い刀身だったのもあって鋭利な切っ先が肋骨ごと心臓と重要な血管を貫いた上で背中から飛び出す。

 

 串刺しにされた男の背後には更に数名の男達が続いていた。不意を突かれてまだ構えられてはいなくとも、AKや旧式のM16などで武装している危険な敵に変わりはない。

 

 伊丹は躊躇いなく男に突き刺したままのM27IARを発砲した。

 

 貫通力が高い5.56ミリ弾は容易く即死した男の死体を貫き、後続の男達にも命中した。銃口も男の死体に密着していたせいで発射音は重くくぐもっていた。

 

 腕力ではなく、体全体の捻りが生み出す力を使ってライフルを振り、刺突と射撃で胴体が血まみれの男の死体から引き抜くと、滑らかな動きでストックを肩付けし、接近戦用の小型ドットサイトを使って照準を行い改めて他の敵のバイタルパートへ弾丸を叩き込んだ。相手に反撃を許さない早業だった。

 

 伊丹のすぐ真横に位置する部屋にはまだ通路に出てきていなかった敵が残っていた。

 

 

الكافرون(不信神者め!)!」

 

 

 伊丹に理解出来ない悪態を喚きながら拳銃を引き抜いて伊丹に向けている。

 

 銃を払いのけるには微妙に離れ過ぎていて、ライフルを向けて撃つのは間に合わないタイミング。だが、

 

 

「ブースト!」

 

 

 瞬間的に背中のあまり自覚して動かさない部分の筋肉を意識する感覚をイメージしながら発動。

 

 それに反応するのは炎龍の鱗の装甲服へ追加された、名刺大の水晶板に特地の魔法プログラム的言語が精緻に刻まれた呪符である。

 

 原理と構造はテュカとレレイとロゥリィが伊丹の為に用意した盗人対策の呪符と同じだ。

 

 ただしこちらの開発にロゥリィは関わっておらず、主にレレイが魔法術式のプログラムを構築し、アルヌス在住の魔法的要素に関する細工が得意なドワーフの手で呪符が作成された。

 

 エルフが用いる精霊の力を借りて発動する精霊魔法の術式も組み込む事で、大気中の精霊の力を自動的に吸収して魔法発動に必要なエネルギーを供給する作動方式となり繰り返しの発動も可能となった。これはレレイのような長年に渡り魔導の研究と鍛錬を積んだ才能持つ者でなくとも、発動イメージのコツさえ掴めば短期間の訓練期間で済ませられるという副次的効果も齎した。

 

 噴射の反動で本来装着者へ襲い掛かる負荷は新たに外付けしたフレームに組み込み、直接装着者の肉体へ伝わらない構造にした事で最小限に抑えている。

 

 背部だけでなく足底部にも呪符が組み込んである。魔法は発動時のイメージが反映され易いのもあって噴射の出力や方向をある程度装着者で制御可能だ。

 

 伊丹の思考と発動ワードを読み取った呪符は人間大の重量物を容易く射出してしまえる程の推進力を放出する魔法を発動する――――これこそが伊丹が手にした人外の機動力の正体だった。

 

 

 

 

 

 

 ちなみにこのような機能が開発されたのは、『門』の研究の息抜きに伊丹がレレイを誘って鑑賞した作品の中に天才科学者が空飛ぶ装甲スーツを作ってテロリストに戦いを挑む映画が大きく関わっているのかもしれないし、そうではないのかもしれない。

 

 実戦運用に必要な訓練もこの世界へ試作型『門』が繋がる以前から繰り返し(テスターを)行っていた(強制させられた)ので、運用する伊丹の方も慣れたものだ。

 

 

「うう、幼稚園の時のトラウマが」

 

 

 ……ヘリや飛行機に乗っているのでもない生身の状態で勢い良く宙高く飛び上がる度、主に股間辺りへ急激な重力加速度の変化を覚えるその都度、生来の高所恐怖症が頭をもたげそうになる彼の心境を除きさえすればの話だが。

 

 色々あって過去のトラウマを嫁達に告白した直後からしばらくの間、トラウマ治療と称して嫁達との営みに少々倒錯的な(バブみ)プレイが加わったのも、きっと関係のない話題である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔法エネルギーの噴射により伊丹は再び人間砲弾へと変貌する。

 

 常識を超えた瞬間機動に敵が撃った拳銃の弾丸は的を外す。逆に砲弾と化した伊丹の体は敵に真正面から直撃した。

 

 けたたましい激突音を発して伊丹諸共に敵の肉体は背後にあったロッカーへ大きくめり込んだ。ロッカー自体が激しくひしゃげる程の衝撃だ。相手の体から歯や骨が何本も砕ける感触を伊丹も確かに感じた。

 

 血反吐を吐いて崩れ落ちる敵に、きっちりとどめの銃弾を頭にお見舞いしてから部屋を飛び出し、改めて上を目指す。

 

 飛んで、跳ねて、舞い上がって。

 

 

『アベンジャー、その階段を上がった先が敵戦力が集結している最上層部だ』

 

『セイバーだ。予定の上陸地点で待機中。後はお前さんの合図待ちだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして仲間の無線を受け取りながら、伊丹はタケナカ達の前へ姿を現したのだ。

 

 

 

 




実は序盤登場のお守りはこの為の伏線でした(適当
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