GATE:MW 外伝集   作:ゼミル

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大変お待たせしました。
4月馬鹿企画にMW版ゲート0嘘予告とか書きたかったんですが時間と体力の都合でこっち優先で何とか書き上げました。


皆様の反応・感想が作者の糧となります。


Knockin' on Warfare Gate43

 

 

 

 奇襲制圧は速度こそが肝要だ。

 

 

 敵が状況把握を済ませ迎撃態勢を整えるよりも出来る限り早く奥深くへ切り込み、慌てふためく雑兵を刈り取り、心臓部に刃を突き立ててこれ以上の抵抗力を奪う。

 

 船舶にとってブリッジが頭脳なら動力部は心臓。貨物船を担当するブラボーチームの内、これらの制圧を任されたのが自衛隊から抽出した隊員を率いるプライスとユーリだった。そこに現地陣営の助っ人であるルマジュールに加え、その場の飛び入りでレヴィも参加している。

 

 船内通路への突入に真っ先に斬り込んだのは後者の2人だった。

 

 レヴィは2丁拳銃(トゥーハンド)の異名の由来であるステンレス製ベレッタのロングスライドカスタム、通称ソードカトラスを両手に。

 

 ルマジュールは45口径モデルのシグナチュア・シリーズをコンパクトな構えで通路に照準。

 

 通路にはうっすらと煙が漂っていた。開幕に艦砲射撃で吹き飛ばされた上階のブリッジから流れてきたのだろうか。

 

 

「死角に注意しろ!」

 

「言われなくても分かってるよ」

 

 

 後ろに続くプライスの警告にレヴィが吐き捨てた瞬間、戦闘服にクフィールを顔に巻いた中東系の男が飛び出してきた。手にはAK。

 

 

『敵――』

 

 

 さっぱり意味不明な言語で叫び声を発し終える前にレヴィとルマジュールの銃が吠えた。9ミリパラベラム弾と.45ACP弾に次々と胸部と腹部を穿たれた敵戦闘員が自分の血に沈む。

 

 それが合図となったかのように、通路の前方や途中の小部屋から一斉に新たな敵戦闘員や銃を握りしめた手が出現した。

 

 

『撃ち殺せ!』

 

 

 AKや拳銃が一斉に火を噴く。敵の火線は多いが正確とは言えない。鋼鉄の床や壁を走る剥き出しのパイプに銃弾が当たってそこら中で火花が散ったが、どれもが的を外してレヴィやプライス達の周囲を通り過ぎていった。

 

 ――――このアッラーの御遣い気取りどもは腰が据わっていない。身を低くして的を縮めたレヴィの口元に獣の笑みが浮かぶ。

 

 

「どこ狙ってやがる、銃ってのは()()()()()撃つんだよ!」

 

 

 ソードカトラスが立て続けに吠える。2丁拳銃を操るレヴィの射撃スタイルは軍や警察の教本からかけ離れたものにもかかわらず、荒々しい構え方ながら彼女が放つ弾丸は次々と的を捉えていく。後ろで見ていたプライスにはそれが不思議だった。

 

 彼女とは違い普通に両手で1丁の拳銃を扱うルマジュールの方は、C.A.R.システムと呼ばれる接近戦に特化した射撃法に近いスタイルだ。こちらもまた正確に標的を射貫き、数を減らしていく。

 

 ガチン、と3丁の拳銃が同時に音を立ててスライドを交代させたまま沈黙した。

 

 

「リロード!」

 

「カバー!」

 

 

 間髪入れず声を掛け合い、前衛と後衛が入れ替わった。

 

 2人の得物はプライスがMP5、ユーリがクリス・ベクター。女性陣の拳銃とは違いどちらもサイレンサーを取り付けている。

 

 本物の銃というよりも極端に出力を上げた改造エアガンのそれに似た、抑制された銃声。高速の短連射を繰り返しながらプライスとユーリは前進。戦線を押し上げ、敵側の銃火が加速度的に減少していく。

 

 イギリス人とロシア人が瞬く間に拵えた死体に目をやったレヴィは思わず口笛を吹いてしまった。

 

 どれもこれも頭部や胴体の中心部、それも全ての弾痕が拳大に纏められていたからだ。サブマシンガン特有の連射速度と2人の見事な反動制御が組み合わさった賜物だ。しかも照準から射撃までの速度も極めて短い。

 

 

「まるでとにかく速く正確に撃つようプログラムされた銃座ですね」

 

 

 ルマジュールも新しいマガジンを装填しながら、まるで初めて真のプロフェッショナルの仕事を目の当たりにした一般兵の気分で嘆息してしまう程の技量だ。

 

 これを身軽な格好どころか、ハロウィンの幽霊の仮想じみた防護服にガスマスクまでつけた上でこなしているのだからまたとんでもない。おまけにどちらもルマジュールの父親でもおかしくない歳でこれなのだから。

 

 イギリス人とロシア人の後に続く自衛隊員が2人の背中を守る。撃ち倒した敵戦闘員の傍らを通り過ぎる間際、頭部へ1発お見舞いしてきっちりととどめを刺しておく事も忘れない。

 

 

 

 

 

 

 死体を量産しながら船内を進む彼らはそれほど時間を掛けず上下へ向かう階段に到達した。

 

 

「俺達はブリッジの確保に向かう。2人付いてこい。残りはエンジンルームの制圧に向かえ」

 

「姐さん、私達はどっちにします?」

 

「まだ撃ち足りねぇ。上に居た連中の大体は艦砲射撃でカッ飛んじまっただろうから、まだまだお楽しみが残ってそうなのは下の方だな」

 

「りょーかいっす。んじゃ私も姐さんとおんなじで」

 

 

 更に部隊を分け、プライスとユーリは自衛隊員を引き連れて上への階段に足をかけた。

 

 レヴィの予想は正しかった。待ち伏せを警戒し、危険な気配を感じる場所ではスタングレネードを予め投げ込みつつ進んだプライス達が遭遇した戦闘可能な敵兵は片手に足りる数だった。

 

 一層、また一層とブリッジに近付くにつれ、煙は濃くなり通路に転がる死体も増えていく。

 

 やがてブリッジ――――今やブリッジの残骸と呼ぶべきに到達した。

 

 

「クリア」

 

「クリアと言えばクリアではあるな。ここに無事なものなど何も残っちゃいない」

 

 

 かつては貨物船の制御を担う場所だった空間は、一目でその役目を果たせないと見て取れる有様と化していた。

 

 操船装置から通信設備まであらゆる機材が複数発直撃した砲弾が解放した破壊力により、完全に原形を失った鉄屑へと果てている――――そこに居た不運な人間ごと。

 

 高性能爆薬がたっぷり詰まった、直撃すれば小型船程度なら一撃で爆散させられる76ミリ砲弾を立て続けに受けたのだ。着弾した部分から最早鋼鉄の外壁ごとブリッジに面する全ての窓が消滅してしまったお陰で、ブリッジだった空間は覿面に見晴らしも風通しも良くなってしまっていた。

 

 きっと彼らの多くは何が起きたのかも分からぬまま、超音速の爆風か砲弾の破片でバラバラに吹き飛んで即死したに違いない。

 

 ……それでも一応、首や胴体が半ばから無くなっていない、四肢がまだくっついている者については念の為頭部を撃って回っておいた。数秒後には息絶えるのだとしても、引き金を引くだけの余力や手榴弾を起爆させられる可能性は削っておいてしかるべきだ。

 

 設備ごと消失してしまったとなれば兵員を残して確保し続ける事すら不要だろう。

 

 艦尾よりに位置し、今や過剰な程見晴らしが良くなった()ブリッジからは貨物船の甲板がほぼ一望出来た。

 

 核物質を運んできたこの貨物船は甲板上の巨大な観音扉方式のハッチが展開される事で船体の大部分を占める船倉が露出し、クレーンを使って貨物の積み下ろしを行う仕組みだ。

 

 プライス達は海上プラントに寄り添う形で停泊しての積み下ろし作業中のタイミングを狙って奇襲をかけた。結果、全開のまま操作されなかった船首よりの船倉のハッチよりバラライカ達遊撃隊が相互に火力支援を行い、頭上から船倉内の敵にAKの雨を浴びせつつ、ロープを使って船倉内へと次々に突入していくのがハッキリと見えた。

 

 遠目からでも見事な戦闘行動を取っているのが伝わってくる。装備は(プライス達が元々居た時代を考えれば当然なのだが)時代遅れでも個々の練度は勿論、特殊部隊の始祖と呼ばれる英国SASを長年率いてきたプライスも思わず唸り声が漏れそうになる位極めて優れているのが隊員間のチームワークだった。指揮官によって完璧に統率された1つの『個』としての群体の見本をプライスは目の当たりにしていた。

 

 加えて士気の高さも尋常ではない。仮に敵として相対していたならば、未来装備(一部ファンタジー要素含む)の性能差をフルに活用して本格的に対応される前に圧し潰す事が出来なければ我々であってもかなり手古摺らされただろうと、プライスは冷徹な分析の下にそう結論付けた。

 

 それはユーリも同様の考えだったようだ。

 

 

「兵隊もそれを率いる指揮官も、どちらもとても優秀だ。こんな場末の港町のマフィアをさせておくには勿体なさ過ぎる、そう思うよ」

 

「違いない。だが生憎世の中ってのは優秀な兵士程貧乏くじを引かされるものだ」

 

「俺達のように、か?」

 

「そんなところだ……む?」

 

 

 眼下の光景を睥睨していたプライスは変化に気付く。

 

 

 

 

 ――――海上プラントのクレーンが可動し、吊り下げられたコンテナが貨物船上に向けて下ろされようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クレーンが動いている事はプライス以外の兵隊達も察知していた。

 

 部下達が船倉内へとロープ降下していくのを援護していたバラライカとボリスの頭上をワイヤーとフックで吊られたコンテナが通過していく。ブリッジが存在する船尾構造物と遊撃隊が突入しつつある船首側船倉の中間に下ろそうとしているのは明らかだ。

 

 

「大尉殿!」

 

「分かっている軍曹。十中八九プラント側から増援を送り込もうという腹だろう」

 

 

 コンテナは20フィート(約6メートル)クラスの中型コンテナ。1個小隊程なら収納出来るサイズだ。

 

 

「コンテナを撃て! カラシニコフの弾なら容易く中身まで通る!」

 

 

 バラライカの命令を受けて随伴していた遊撃隊がAKを発砲した。

 

 薄い鉄板で構成されたコンテナの表面で火花が散り、彼女の言葉通り次々と穴が穿たれていく。

 

 同時にコンテナ両端に備え付けられたドアが内側から開け放たれた。開口部に立つ人型のシルエットに、絶好の機会だと火線が集中した。5.45ミリと7.62ミリ口径のライフル弾が立て続けに着弾する度に人影が細かく震えた。

 

 瞬間、射撃を命じたバラライカが真っ先に背筋を貫く悪寒に襲われた。それはアフガンの荒涼とした渓谷地帯で敵の待ち伏せを受けた時に何度も味わってきた、久方ぶりに覚えた感覚だった。

 

 

「射撃待て! 総員警戒を厳にせよ!」

 

 

 指揮官の声を聞き逃す者など遊撃隊にはいない。すぐに射撃が止まりマガジンを交換。次の指示と状況の変化に備える。

 

 コンテナ内から姿を現した影は確かに人のシルエットではあったが、同時に普通からはかけ離れていた。極度の肥満体系を思わせる輪郭がやがて未だ水平線近くに位置する陽光を浴びて詳細が明らかとなった。

 

 自衛隊員達が纏う化学防護装備よりも一回り以上分厚い防護繊維を用い、更に表面へ装甲板を追加した改造対爆スーツ。チタンと極厚の防弾ガラスを組み合わせたバイザー付きの、バラライカ達からしてみれば見慣れた顔面まで防護する旧ソ連軍の防弾ヘルメット。大量の弾薬類と手には大口径のM60E3・ベルト給弾式機関銃。

 

 バラライカ達が放った銃撃が全身を覆う過剰なまでの防弾装備によって無効化されたのは明白だった。

 

 もしプライスとユーリ、そして伊丹が()()を目の当たりしたならば、血相を変え警告の意味を込めてその名を叫んでいたであろう。

 

 

 

 

 

 

 ――――重火力装甲兵(ジャガーノート)と。

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()に着替えて仁王立ちになったソロモン・ハキマンは機関銃を持っていない手をポーチへ突っ込んだ。

 

 本来弾薬を収める為のポーチの1つは直接無造作に詰め込まれた白い粉末で膨らんでいた。鷲掴みにした粉を顔へ持っていくと思い切り鼻から吸い込む。ただでさえ憤怒と憎悪で血走っていたソロモンの目が、瞬時に効果を発揮した高純度のアッパー系麻薬によって一層狂気を帯びた。

 

 

 彼が入ったコンテナには配下の麻薬組織の中でも選りすぐりの精鋭も乗っている。改造対爆スーツを着たソロモン程ではないが旧ソ連軍の横流し品であるチタン製ボディアーマーを筆頭に手足も防弾繊維製の戦闘服で保護し、これもやはり旧ソ連製のRPD軽機関銃で武装。

 

 

 コンテナに満載した生半可な火力では通用しない重武装の部下を率い、リミッターを無理矢理解除された膂力で以って何キロもある銃火器を枯れ枝よろしく振り回しながら息子の仇を求める怒れる父親は絶叫した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の! 息子を! 殺した奴はどこだ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遊撃隊の火力を遥かに超越する弾幕がバラライカ達へと降り注いだ――――

 

 




ラスボス(MW仕様ジャガーノート×1、BOCW仕様装甲兵×30)がポップしました。

やっぱり武闘派ネームドがタッグ組んでるなら敵も盛らないとね?
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