GATE:MW 外伝集   作:ゼミル

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お待たせしました。
当初予定の無かったイベントを追加してしまったら長くなったので区切らせてください(土下座


皆様からの感想・評価が原動力となりますのでよろしくお願いします。


Knockin' on Warfare Gate45

 

 

 

 

 

 

 ――――果たしてどちらが悪かったのか。

 

 

 

 

 

 核物質の格納容器に仕掛けられた爆弾を咄嗟に投げ捨てたのは伊丹だった。

 

 爆弾の起爆装置を作動させたのはタケナカだった。

 

 

 

 

 

 伊丹の判断自体は正しかったと言って良い。

 

 解体の余裕すら残されていない高性能爆薬の塊は伊丹の予想通りヘリパッドごと格納容器を破壊するには十分過ぎる量であり、剣崎達仲間が居る(加えて未だ誘爆していない多数の弾薬と燃料が残っていた)プラント中心部には断固として破棄する訳にはいかなかった以上、ヘリパッドのすぐ外に広がる海上方向へ爆弾を投じたのは当然の帰結だった。

 

 

 

 

 

 何が悪かったのかと、強いて挙げるならタイミングだったのだろう。

 

 

 

 

 

 実の所、伊丹が爆弾を破棄してからタケナカが起爆装置のスイッチを押し込むまでには十数秒間のタイムラグがあった。

 

 兵隊としては絶頂期に近い肉体に異世界の神の眷属としての加護と装甲服にも守られた伊丹と、中年を過ぎた身でヘリから振り落とされた直後にヘリパッドからも生身のまま飛び降りなければならなかったタケナカ。

 

 這う這うの体で伊丹達から逃れたタケナカは今度こそ邪魔が入らないようにする為、2度の落下のダメージに苦しむ体を鞭打ち安全な場所―この場合伊丹達の射界から外れた位置―まで逃れてから、ようやく回収した起爆装置を作動させた。

 

 爆弾側の遠隔起爆装置が信号を受診したのは上層デッキから数十メートル下の海面に没した時だった。

 

 起爆信号を受信してから信管を点火するには十分な電流が流れるまでに更に若干のタイムラグがあった。その僅かな間に爆弾は更に数メートル沈んでいた。

 

 水中での爆発は地上での爆発より威力が格段に増幅される。それは大気よりも密度が高い液体内では衝撃波の減衰率のロスが大きく軽減されるからだ。

 

 

 

 

 そして伊丹達が居る海上プラントの正式名称は半潜水式プラットフォームであり、海底に拵えた土台と会場のデッキ部分を支える脚が直結している固定式とは違い()()()()()()()()()()()()()()()()()()のである。

 

 

 

 

 もう1度言おう。

 

 ――――()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レヴィは足元に広がる血だまりを平然と踏み躙りながらソードカトラスに新しいマガジンを叩き込んだ。

 

 貨物船のエンジンルームの制圧に志願したレヴィとルマジュール、自衛隊員達は予定通り目標を完遂した。

 

 襲撃側に犠牲は負傷者を含めゼロ。死者は今彼らが立つ機関部とその隣の制御室の至る所に聖戦士やソロモンの部下といった敵のみ――――完璧な結果だ。

 

 

「満足しましたかい姐さん?」

 

 

 ルマジュールもまたロアナプラで新調した拳銃に追加の45口径弾を送り込みながら軽い口調で尋ねた。

 

 

「んー、腹7分目ってところだな。締めにデザートかバーボンの年代物が欲しい所だぜ」

 

「姐さんはグルメっすねえ。この手の宗教キチガイはどうにもワンパターンな大味過ぎて私はもうお腹いっぱいっす」

 

 

 軽口を交わしながらも両者は互いの死角を補いつつ、滑らかに死角が多いエンジンルーム内をクリアリングして回る。

 

 貨物含め数千から万トンクラスもの船体を動かす推力を絞り出す船の心臓部たるエンジンが鎮座する部屋は、船体容積の大半を占める船倉部を除けば船内区画内でも特に広い。エンジン本体が特に縦と上方向に巨大なのもあって吹き抜けの複数層構造となっている程だ。

 

 巨大なエンジンを挟んだ部屋の反対側では自衛隊員もクリアリングを行っている。天井や壁に何本ものパイプが張り巡らされている空間はそれこそ巨大生物の内臓の中に呑み込まれてしまったかのような錯覚を抱かせた。

 

 部屋の壁に沿ってぐるりと敵の生き残りが残っていないか見て回っていた彼らはやがて空間の中央部で合流した。

 

 

「こっちはクリアだ。鼻水流して隠れてたような野郎は見当たらなかったぜ」

 

「我々もクリアです。この部屋にもう敵は残っていないと考えて良いでしょう」

 

 

 レヴィの目には迷彩柄の特大コンドームじみて映る個人用防護装備を着ていても尚頑強さが伝わってくる、がっしりとした体格の自衛隊員と報告を交わし合った時だった。

 

 レヴィが身に着けていた無線機がノイズ混じりの呼び出し音を発した。ヘッドセットを耳に押し付けるが、鋼鉄製の船体の特に奥深い位置に居る影響か雑音が酷い。

 

 

…ヴィ…聞こえ……

 

「あン? ロックかオイ、何言ってるか聞こえねぇぞ」

 

マズ……きけ……早く逃げ……!

 

 

 内容自体は殆ど聞き取れなかった。それでも途切れ途切れのロックの声は、不快な電子的ノイズ越しからでもレヴィが感じ取れるだけの焦燥と緊迫感を帯びていた。

 

 同時に振動を感じた。停泊中だったのでスクリューを動かすメインのエンジンは回っていなかったが、それ以外の船内設備を動かす電力を供給する発電機は動作しており、それは甲高い作動音を伴う振動も生み出していたのだが、別種の船でも海の運び屋(兼時々海賊行為)として船乗りの経験を積んでいるレヴィの感覚は別種の震えが貨物船に生じているのを確かに感じ取っていた。

 

 

「何か異常が?」

 

「んだこの揺れは――」

 

 

 レヴィの思考を別の異変が塗り潰した。

 

 勢い余って壁にぶつかり跳ね返る位の勢いで水密扉が開け放たれる音。瞬間的にレヴィもルマジュールも自衛隊員も一斉に銃口を音の出所へ突きつけた。

 

 1つ上の階層のキャットウォーク上に異形の人影。対爆スーツを改造した防弾着に生半可な弾丸など通用しなさそうなバイザー付きのチタン製ヘルメットという出で立ちは、引き金に指をかけたまま一瞬唖然と動きを止めてしまうだけのインパクトを放っていた。

 

 グリンと勢い良くヘルメットの正面がレヴィ達へ向いた。バイザーの分厚い防弾ガラス製スリットの中で、噴火直後の活火山よりも激しく暴れ回る熱を宿した強烈な眼光が燃え盛っていた。

 

 同時に男――――ソロモンが持つM60E3機関銃の銃口もレヴィ達を見下ろした。

 

 

 

 

 

 

「俺の! 息子を! 殺したのはお前かああああああああああ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

 

 

 

 

 

クソッタ(Holy Shi)――」

 

 

 発電機の作動音すら掻き消す轟音の連打がエンジンルーム内に反響した。

 

 咄嗟に巨大なエンジンの陰へと逃げ込んだレヴィ達の周りで銃弾と火花が荒れ狂った。壁から設備に至るまで硬い金属製ばかりの空間だったせいで大部分が跳弾し、彼らの周囲で何度も不吉な飛翔音が飛び交った。

 

 その中の1発が自衛隊員を襲った。

 

 

「うっ!?」

 

 

 弾ける音を立ててレヴィと話した自衛隊員の迷彩フードの一部が千切れ飛び、ガスマスクのゴーグル型レンズに亀裂が生じた。

 

 

「富田二曹!?」

 

「だ、大丈夫だ! マスクにかすっただけだ!」

 

 

 富田は使い物にならなくなったガスマスクを自ら引っぺがすと、掠めた銃弾の余韻を振り払うかのように何度か頭を振った。

 

 耳をつんざく銃声の他に、荒々しい足音もエンジンルームに反響するようになっていた。

 

 ソロモンに続いて彼程ではないが、胴体のボディアーマーを筆頭に上から下まで如何にも防御力が高そうな装備の戦闘員が数名エンジンルーム内に姿を現していた。こちらの主武器は旧ソ連製のRPD軽機関銃で統一されている。

 

 片目と片腕だけをエンジンの陰から晒したレヴィがソードカトラスを連射。幾発かが新手の戦闘員の胴体に命中した。

 

 撃たれた敵は……倒れない。ソロモンのM60よりは細身だがそれでも火力は負けず劣らずなRPD軽機関銃をぶっ放し、数倍どころか数十倍の規模となって反撃の銃弾を放った。レヴィは慌てて頭と銃を引っ込めた。

 

 素顔を曝した富田や他の自衛隊員もサイレンサー付きのHK416アサルトライフルで応戦する。9ミリパラベラム拳銃弾よりも威力と貫通力を上回る5.56ミリNATO弾を食らうと流石に一瞬動きを止め、ボディアーマーとヘルメットに覆われていない肩に当たった者は傷を負う。

 

 だが止まらない。小口径とはいえライフル弾すら防具に阻まれ、守られていない部分に被弾しても痛みを感じていないかのように血を流しながら銃を撃つ手を緩めはしない。

 

 コンバットハイが生み出す自前の脳内麻薬か、それとも痛覚を麻痺させる本物の麻薬でも使っているのか。

 

 ベルト式機関銃の火力は10丁のアサルトライフルに匹敵する。富田達が撃った分の何十倍もの銃弾が彼らが盾にするエンジンへと撃ち込まれた。下手な車よりも大型な鋼鉄の塊であるエンジンは決して貫通を許さないが心臓にはとても悪かった。

 

 

「ふざっけんな! 一体全体あのバンク・オブ・アメリカ(ノースハリウッド銀行強盗事件)襲ったターミネーターもどきの団体はどっから湧いて出てきやがった!?」

 

「連中の装備はライフル対応だ! 1発や2発当てた程度じゃ無力化出来ないぞ!」

 

「ありゃ旧ソ連軍のAltynヘルメットですよ! スペツナズも使っていた()()()()のヤツです!」

 

「カトラスの9ミリパラや私の45口径じゃ歯が立ちませんよ姐さん! 火力も耐久力も桁が違い過ぎる! ここは退かないと鉛玉でしこたま嵩増しさせられる羽目になっちまう!」

 

 

 レヴィ達が隠れている場所は袋小路に当たる。エンジンルームを出る通路の水密扉へ辿り着く為には、上から撃ち下ろされるど真ん中を突破する以外の道は無い。

 

 耳をつんざく銃声と間近で連打される甲高い着弾音に顔を顰めながら、レヴィはほんの少しだけエンジンの陰から顔を覗かせ、そしてすぐに引っ込めた。

 

 彼女の顔があった場所を銃弾が通過していったが、ほんの数瞬の間にレヴィはお目当ての物を見つけるという目的を果たしていた。

 

 

「それ借りるぞ兵隊(ソルジャー)

 

 

 問答無用で自衛隊員が身に着けたポーチから中身――――スタングレネードを抜き取ったレヴィは「耳塞げ!」と警告するや下手投げで投じた。

 

 上層のキャットウォークの高さまで到達したスタングレネードが銃声以上の轟音を閃光と共にエンジンルーム中を震わせた。面食らったソロモンと部下の射撃の手が止まる。

 

 予め耳を塞いでいても尚鼓膜を突き刺すような残響を無視してレヴィは2丁拳銃を構えた。狙うは動きを止めた装甲兵の団体ではなく、その頭上。

 

 レヴィが放った銃弾がキャットウォークの上を走るパイプへ立て続けに突き刺さった。

 

 破損したパイプから猛烈な勢いで白い蒸気が噴き出した。真下に居たソロモン達の姿が完全に覆い隠される程の勢いと濃度。悪態と混乱の喚き声が聞こえてくる。

 

 

「今だ行け、さっさとバックレんぞ! ルマジュールお前が先導しろ!」

 

「了解!」

 

 

 追撃のカトラスの銃声を背にルマジュールがまず飛び出し、その後を富田達自衛隊員が続く。

 

 新調した45口径の拳銃を片手に構えながらルマジュールの左手が水密扉に掛けられようとした瞬間、触れてもいない水密扉が勝手に開いた。

 

 

 

 

 

 

 扉の先、3メートルと離れていない距離に別動隊のソロモンの戦闘員が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「「っ!!?」」

 

 

 ()()()()()()()()()()

 

 悪態を吐く猶予すらない、最悪の距離とタイミングだった。

 

 水密扉を開けた戦闘員は腰だめにRPDを乱射し、ルマジュールは伸ばしていた左手を咄嗟に折り畳んで盾のように頭部を庇いながら、右手を突き出して拳銃を発砲した。

 

 両者の銃弾は同時に着弾を繰り返した。

 

 ルマジュールが放った45口径弾は戦闘員の顔面まで隠すヘルメットの表面に着弾しては火花が散り、スリットの防弾ガラスへ亀裂を生み出し、殺し切れない衝撃で戦闘員の頭部を揺さぶった。

 

 戦闘員がバラまいた7.62ミリロシアンショート弾の多くがルマジュールの着るスーツ越しに脇腹に胸や肩、そして掲げられた左腕へと突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルマジュール!!

 

 

 

 至近距離で機関銃の乱射を食らう度にガクガクと不気味に全身を揺らしながら仰け反って倒れていくルマジュールの姿が、レヴィや富田達の目にはスローモーションで映ったのであった。

 

 

 

 

 




ネクストヒント:C O D の お 約 束
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