GATE:MW 外伝集   作:ゼミル

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お待たせしました。
出来ればラグーン組まで描写したかったですがどれだけかかるか分からないのでここで区切らせてもらいます。

感想・反応よろしくお願いいたします。


ところで創作で悪役が要求の脅迫に使いそうな手段をどうして一国家に実行させてるんですかリアル先輩?????(混乱



追記:遅ればせながらクロス先タグ追加


Knockin' on Warfare Gate エピローグ(上)

 

 

 

<作戦完了から3時間後>

 

 

 

「――はい、報告の通り件のテロリストどもが用意した核物質の容器の内、片方は三合会を経由してこちらへ引き渡される手筈に……

 ええ、ええ……早急にDSV(潜水調査艇)を随伴させた捜索部隊を第7艦隊(太平洋艦隊)から抽出し現場の海域へ派遣するようレヴンクロフト課長の方から手配を……

 では新たな情報が入り次第一報をお入れします。失礼」

 

 

 朝日に照らされるリップオフ教会。

 

 応接室の窓辺に立ち携帯電話を耳に当てたエダ―――――

 

 否、サングラスとウィンブル(修道女用頭巾)を外しCIAの潜入工作員であるイディス・ブラックウォーターとして、地球の裏側に居る本国の上司への報告を行っていた彼女は、電話からの声が途切れると丁寧な手つきで携帯電話を懐へと仕舞い込んだ。

 

 窓辺から離れ、豊かな金髪をウィンブルの中に収め直し、修道服の上からでも豊かに盛り上げる胸元をより強調するように絞り上げる塩梅となったショルダーホルスターのグロック17拳銃を揺らしながら、応接室の中央へ配置されたソファーへ腰を下ろす。

 

 静かに腰かけた後、胸ポケットから『エダ』のトレードマークであるフォックスフレームのサングラスを取り出して装着する。

 

 

「……ぶっふぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~」

 

 

 途端、冷徹な工作員(イディス)から悪徳の都のゴロツキ(エダ)へと意識を切り替えた彼女は、品性の欠片もないどデカい溜息を吐き出して直前までの凛とした立ち振る舞いを全力でぶん投げた。

 

 両足を投げ出し、ズルズルとそのままソファーから滑り落ちてしまいそうな位に脱力し切り、半開きの口元から白い霊魂が今にも抜け出してしまう様子すら幻視出来てしまいそうな有様である。

 

 向かい側のソファーに腰掛けていたリップオフ教会、またの名を武器密売と裏の口入れを生業とする暴力教会の主であるヨランダという名の隻眼の老修道女は、そんなエダの様子を見て愉快気に忍び笑いを漏らした。

 

「おやまぁ、流石のアンタでも今回ばかりは大層肝が潰れたみたいだねぇ」

 

「ったり前でしょうよシスター。今回と比べればメイドと狐の一件なんざトムとジェリー(カートゥーン)のドタバタ喜劇みたいなもんですよ」

 

「1歩間違えればこのロアナプラどころか本国(アメリカ)の大都市まで放射能で汚染された死の大地に変貌する寸前だった訳だからねぇ。

 今頃はラングレーに居るミスター・レヴンクロフトどころかNSAやオーバルオフィスのお歴々も、揃ってお前さんと同じようにたっぷり浮かんだ冷や汗を拭いながら今回の一件を忘れようと高い酒を呷ってる頃だろうさね」

 

「アタシだって許されるんならラフロイグ(高級ウィスキー)のビンテージを浴びるほど飲んで、ついでに色男も連れ込んで記憶がぶっ飛ぶまでファックしたい気分ですよ……」

 

「おっと姦淫するなら自分の寝床でやるこったね。くれぐれも礼拝堂で主に見守られながらの変態プレイなんざやらかすんじゃないよ」

 

 

 エダに釘を刺したヨランダはふと思いついたような素振りを見せ、

 

 

「主神といえば、だ。今回私達を助けて下さったのは主の御導きというよりかはデ(・)ウ(・)ス(・)・(・)エ(・)ク(・)ス(・)・(・)マ(・)キ(・)ナ(・)の(・)類(・)だったそうじゃあないかい?」

 

 

 そう付け足した。

 

 エダの動きが止まる。もう1つ大きな溜息を発してから、ズレたサングラスの位置を直し、己の尻の位置も正して彼女はヨランダに改めて向き直った。

 

 そこまで見届けてからヨランダが再び口を開く。

 

 

「黄金夜会は戦力と手段が足りず、アメリカも兵や艦隊を送り込むには間に合わないタイミングって時に突然現れたかと思うと、張からの無茶な依頼をあっさりと快諾してちゃんとした軍(・)隊(・)をこの街に送り込み、正規軍でも難しい難度の共同作戦をぶっつけ本番で完璧に成功させちまうだけの練度と装備を兼ね備えた連中……

 エダ、アンタはどう見てるのさね?」

 

「……分かりません。大半は恐らく日本人、雰囲気も立ち振る舞いも正規の軍人なのは間違いないでしょう。

 だ(・)け(・)ど(・)そ(・)れ(・)以(・)外(・)が(・)全(・)く(・)分(・)か(・)ら(・)な(・)い(・)。その一言以外の表現が浮かばない、あそこまで素性も目的も得体が知れない連中なんざアタシも初めてですよ」

 

 

 夜闇に紛れて遠方から出撃前の港湾を監視をしていた時、件の部隊の指揮官らしい冴えないスーツ姿の東洋人がにこやかに手を振ってきた瞬間の事を思い出したエダは、蘇った悪寒にブルリと背筋を震わせた。

 

 工作員にとって監視中に当の監視対象から存在どころか位置まで見抜かれて目と目が合ってしまった瞬間を上回る恐怖体験は存在しまい。

 

 

「なぁるほど。だが少なくとも連中がこの街に来た目的はハッキリしてるだろう?」

 

「本当にただ単に取引がしたくてやってきただけって言うんですかシスター? お目当ての品が武器や麻薬や裏物のポルノだってんなら分かりますけど、連中が三合会やイタリアンマフィアの連中に注文した品は量を除けばウォルマートやコストコで簡単に仕入れられる普通の品物ばっかりですよ。

 なのにわざわざこんな悪党の掃き溜めに来てまで仕入れるなんて幾ら何でも――」

 

「スパイとしちゃ複雑な陰謀を疑いたくなるのも分かるがねぇ、大層に見える物事もきっかけ自体は案外単純な理由で成り立っている事だってままあるもんだよ。息(・)子(・)を(・)殺(・)さ(・)れ(・)た(・)父(・)親(・)が(・)復(・)讐(・)に(・)テ(・)ロ(・)屋(・)と(・)手(・)を(・)組(・)ん(・)で(・)街(・)ご(・)と(・)死(・)の(・)都(・)に(・)変(・)え(・)よ(・)う(・)と(・)し(・)た(・)の(・)と(・)、(・)方(・)向(・)性(・)は(・)違(・)え(・)ど(・)同(・)じ(・)事(・)さ(・)」

 

 

 謎の兵隊達が手段として用意したのが核物質の代わりにとてつもない価値の宝石類だっただけの違いなのだ、とヨランダは語る。

 

 

「まぁその辺りはまた追々時間をかけて確かめていけば良いだけの話さね。

 そこいらのスーパーマーケットで揃えられる品物ばかりとはいえ取引の規模が規模だ。張は燃やされた拠点の再建があるしロニーの所もあれだけの量を揃えて引き渡すにゃ相応の時間を掛けなきゃならん。商品が引き渡されるまでは例の連中も街に滞在してるだろうさ。

 その間じっくり、じ(・)ぃ(・)っ(・)く(・)り(・)と(・)焦らず、向こうの勘気に触れないようにしながら観察するこったね。そ(・)れ(・)が(・)お(・)前(・)さ(・)ん(・)の(・)本(・)業(・)だ(・)、だろう?」

 

「アタシとしちゃこれ以上あんな連中と関わり合いになるのは御免なんですけどねぇ」

 

 

 

 

 後日、ロニーと張の紹介状を携えて弾薬類の取引を申し込んできた伊丹と遭遇してしまい、白目を剥いてぶっ倒れそうになる未来を知らないエダであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<3日後>

 

 

 

 

 

 

 

「かくして無事この街(ロアナプラ)を襲った危機は去り、我々もまた普段通りの商売に専念出来る日々を取り戻した訳だが――」

 

 

 彼と彼女にとっての因縁の場所である路南浦停泊場にて、張とバラライカは護衛も側近も付けることなく2人だけの会談を交わしていた。

 

 方や張は空爆に自爆攻撃と立て続けに見舞われ危うく聖戦士の手に落ちる寸前まで追い詰められた身でありながらも、負傷を愛用の高級スーツの下に隠しその飄逸とした態度には寸分の揺らぎも無く。

 

 方やバラライカは圧倒的火力で押し潰そうとしてきたソロモンとその部下から絶え間なき銃火に晒され続けた挙句、乗り込んだ貨物船が転覆しかけるという想定以上の激戦に見舞われながら、兵隊らしく伸びた背筋と鋭利な雰囲気には疲弊による曇りは一点も見受けられない。

 

 それでもホテル・モスクワ外の人間であり、かつ黄金夜会という潜在的な敵同士の寄り合いに身を置く者達の中でも、特に個人として―ただし惚れた腫れた等まずありえない―バラライカに近い人物である張だからこそ、彼女の僅かな変化を感じ取れていた。

 

 

「瀬戸際のタイミングで太歳星君(伊丹)とその愉快な仲間達(特地残留部隊)に全賭け(オールイン)した俺も俺だが、お前さんもよくもまぁ因縁あるあの美国人(アメリカンズ)の話を聞いて手を組もうなんて決断出来たもんだ」

 

 

 隣り合って紫煙が燻るロダンを銜えたまま張が質問を投げかけると、バラライカもまた愛用の葉巻の味を口の中で転がしてから空を見上げた。

 

 青空に白い雲。潮風の気流に乗ったカモメが遠くへと飛んでいく。

 

 

「……それについては私も驚いている。そもそもメイドの狐狩りを生き延びた米軍(アメリカンスキー)が再びこの地を踏んだ事すら想定の範囲外だったのだからな」

 

「現地の空気と流儀を知っている人材を動員するのは道理ではあるがな。

 で、CIAからの使命を受けたグレイ・フォックスの元隊長さんとその副官は目星を付けたヒズボラ共の塒に潜入して例の計画書を見つけたタイミングで、別口から場所の情報を手に入れて乗り込んだお前さん方とブッキングした。俺が聞いているのはそこまでだ」

 

「……米軍の部隊を率いていたあの男、キャクストン少佐はヒズボラの戦闘員を排除した我々の前へ自ら投降したのだよ。核シェルターに改造された艀で見つけた情報を携えてな」

 

「そいつぁ驚いた。メイドの飼い主だったお坊ちゃんの願いを叶える為に付き合ってやった事といい、あの隊長さんは股間にぶら下がっているのは鉄どころかタングステン製のドでかいタマに違いない」

 

「彼としては連れてきた副官に記録した情報を持たせて逃がす為の囮も兼ねていたそうだ。そうして何十丁ものAKの前へ自ら進み出た少佐は――……」

 

 

 

 

 

 

『ジェーン・ドゥ大尉。この街の路地裏で我々を追跡する猟犬(ロベルタ)から振り切る為に救援の手を差し出してくれた時、君達は死(・)人(・)で(・)あ(・)り(・)荒(・)野(・)を(・)彷(・)徨(・)う(・)亡(・)霊(・)の(・)軍(・)隊(・)で(・)あ(・)る(・)と自らを名乗ったな』

 

『今(・)の(・)私(・)も(・)同(・)じ(・)な(・)の(・)だ(・)よ(・)、大尉。部下を死なせ兵士としての立場も失い、上層部から軍の汚点として封じられ、そ(・)の(・)ま(・)ま(・)老(・)兵(・)と(・)し(・)て(・)消(・)え(・)去(・)る(・)事(・)を(・)望(・)ま(・)れ(・)て(・)も(・)尚(・)軍(・)隊(・)に(・)し(・)が(・)み(・)つ(・)こ(・)う(・)と(・)す(・)る(・)、(・)往(・)生(・)際(・)の(・)悪(・)い(・)呪(・)縛(・)霊(・)み(・)た(・)い(・)な(・)も(・)の(・)だ(・)』

 

『……そ(・)れ(・)で(・)も(・)、失(・)敗(・)を(・)犯(・)し(・)た(・)亡(・)霊(・)で(・)あ(・)る(・)か(・)ら(・)こ(・)そ(・)出(・)来(・)る(・)事(・)が(・)ま(・)だ(・)残(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)と(・)信(・)じ(・)て(・)い(・)る(・)。私の場合は未来ある若者達に私のような同じ失敗を繰り返させない為の礎になる位が関の山だがね』

 

『これだけは君達には伝えておきたい。君(・)達(・)も(・)、(・)我(・)々(・)も(・)、(・)こ(・)の(・)街(・)も(・)、(・)残(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)時(・)間(・)は(・)最(・)早(・)限(・)り(・)な(・)く(・)少(・)な(・)い(・)の(・)だ(・)』

 

『そして提案させて欲しい。貴官とその部下達は生者である事を捨て、亡霊と化しても尚兵士であるというのであれば――今1度兵士としての本分の下(Call of Duty)に我(・)々(・)は(・)手(・)を(・)取(・)り(・)合(・)え(・)る(・)筈(・)だ(・)』

 

『君達はこの街を守りたい。私は祖国と、この土地に住まう何(・)も(・)知(・)ら(・)ぬ(・)人(・)々(・)が無残な死に見舞われるのを防ぎたい。少なくとも利害は一致している。そうだろう?』

 

 

 

 

 

 

 

 

『それに――私は何時だって貴官達のような優れた指揮官に率いられた精鋭揃いの部隊とは砲火を交えるよりも、肩(・)を(・)並(・)べ(・)て(・)背(・)中(・)を(・)預(・)け(・)合(・)え(・)る(・)関(・)係(・)で(・)あ(・)り(・)た(・)い(・)と思っているよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

「成程、そうして口説かれたお前さんは美国人と手を組んでワイルドハント(亡霊の軍隊)結成と洒落込んだ訳か。元隊長の少佐とやらも中々情熱的じゃあないか」

 

 

 煙草片手にしばらく愉快気に喉を鳴らした張は、笑い声を途切れさせてからも口元には笑みを残したまま、

 

 

「で、ご感想は? ――なんて聞くのは野暮ってもんか」

 

 

 張からしてみれば今のバラライカは、長年腹の中で溜まりに溜まった便秘の親玉を思いがけずひり出す事に成功した後のような爽快感か。

 

 もしくは行きたくて仕方なかった遊園地を、念願叶って疲れ果てるまで満喫し終えて帰る子供のような満足感に包まれているかのように見受けられた。

 

 

「そうだな、貴様がチェルノボーグとその軍勢を即興で引き込んだお陰もあって、久方ぶりに満足な時間を味わう事ができた」

 

 

 そうしてバラライカもまた、傍目から見ても分かる程度にハッキリと―彼女にしては非常に稀な―穏やかな微笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ――本当に、ま(・)る(・)で(・)夢(・)の(・)様(・)な(・)一(・)時(・)だ(・)っ(・)た(・)よ(・)」

 




要約:キャクストン、説得判定ダイスでクリティカル

あとがきで今後執筆予定のオリジナル作品についての意見募集を行いたいと思っておりますのでそちらもどうかよろしくお願いします。
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