「成程、
視点を移して『
特地に残留した幕僚幹部が集結した『向こう側』のアルヌス駐屯地改め日本国アルヌス州暫定自治区・自衛隊基地の司令室にて、一旦『こちら側』の特地から帰還した柳田から彼が入手した『こちら側』の『門』を巡る結末―当然ながら
其処に至るまでの報告を聞き終えた狭間は、デスクに肘を突き口元を組んだ両手で隠すようにしながら重々しい呻き声を発した。
今の司令室に漂う空気はWW3や銀座占拠について聞かされた際の『こちら側』の幹部自衛官らと比べれば格段にマシなものの、それでもこの場の参加者が浮かべる顔色には重苦しさが漂っている。
「折衝役ご苦労だったな、柳田二尉。今回の『門』が後どれだけの時間開いた状態が維持されるか、具体的な期間は未だ定かではない。しかし繋がっている内は引き続きあちら側との我々との窓口として情報交換を継続してくれ」
「了解しました。ではそのように」
「うむ、頼むぞ」
報告を終えた柳田が退出すると、誰からともなく重い溜息が立て続けに参加者達から発せられた。
「WW3が起こらず、明確な軍事攻撃ではなく各国の政治的暗躍が齎した混乱によって『門』が失われた世界、ですか」
憤懣やるかたないといった口調で口火を切ったのは健軍であった。
自他共にある武闘派で現場主義である彼にとって、明確な方針と対策を打ち出さぬ優柔不断な
同じ感情を抱いているのは彼だけではなく、それは他の幹部自衛官も顔色や目つきを見れば明らかであった。狭間ですら、僅かながらその眉間に不快気な皴を生じさせている位なのだから。
殴られたから殴り返す。シンプルな応酬だ。
だがここに政治が絡むと、一転して自己保身と利権と
WW3がそれを変えた。
力には力を。応報には応報を。力が足りなければ国は焼かれ民は鏖殺される。
平和主義は死んだ。ペンの力など何の役にも立たなかった。戦争を止めたのは圧倒的な武の力を秘めた兵士達の献身だった。世界中がそれを思い知った。
最後に生き残った数少ない英雄の1人は、自衛隊員だった。
まず政府が、次に国民がその事を知った。
世界が変わる。日本も変わる。変化を受け入れられない、己の立場を勘違いした愚者は、これまでの愚行のツケを支払う羽目になった。
本来交わる運命に無い筈の平行線の世界は接触してしまった。
そして知ってしまったのである。
自らを縛る枷を破った側の
縛られる事に甘んじた側の
当時各々が各々の役割を全力で発揮し尽くす事が出来たと言えるのは枷を捨てた自分達の方だろうと健軍は考える。
政治家の我が身可愛さに悪意持つ第3者による干渉……どちらも現場にとっては最低最悪の理由だ。
そんなくだらない原因によって本来発揮されるべき力が発揮されぬまま事態が収拾を迎えてしまう、そのような結末を不満なく受け入れられる人物など多い筈がない。現場に近ければ近い程その数は減っていくだろう。
あの時あの場で全力で役目を果たしたからこそこうして生き延びられたと考える健軍達からしてみれば、くだらない干渉に雁字搦めにされたせいで『門』を失ってしまった平行世界の自分達に同情を抱いてしまうと同時、かのような干渉を繰り返した当時の平行世界の
銀座奪還という断固とした決断を下した
だが健軍は、同時に別の感情を抱いてしまっている己を自覚していた。
その感情の名は――――
どちらの世界が正しいのか、どちらが間違っているかまでは分からない。
だがどちらの世界が狂っているかと比するならば、それは間違いなく
確かに己が有する武力を発揮出来る出番が巡ってくるのは誉であるし、圧倒的火力で敵を薙ぎ払うのは格別の光景だが……何事も限度というものがある。
それによって膨大な無辜の人々の、しかも自国民までもが巻き込まれるとならば話は別だ。
我々の世界はあまりに多くの血を流し過ぎた。あまりに多くの死を目の当たりにし過ぎた。
その中には2度の銀座を巡る騒乱の犠牲になった自衛隊員や日本国民も多数含まれている。惨劇を生み出したのは健軍達の同類、すなわち武力を持つ軍人の一部が狂気を抱いたが故の結果だった。
『門』が開いた先の
政治によって行動を縛られはしても、そもそも民主主義国家の軍隊とはそう在って当然なのだ。シビリアンコントロールの下、最終的に流れる血の量を抑制出来たのならばそれは認めるべき功績だ。
もしピニャ達帝国講和派と日本政府が進めていた交渉がゾルザルのクーデターによって中断していなければ、特地に流れる血の量はもっと少なく済んだ筈だ。殉職した自衛隊員もより少なかった筈だ。
祖国と分断され、
それは虐殺同然の蛮行を実行した自分達に対する自己嫌悪と、それに対するある種の逃避を求めた結果の発露でもあった。
政府の方針で作戦を命じられたのならば、それによって発生した犠牲の責任も全て政府のせいだと
「しかし不思議なものですねぇ。時代も違う、歴史も違う、『門』が出現し特地に派遣されてから直面した事態も少なくない差異が見られる上に、そもそも『門』の出現と消失までの期間すらも我々とあちらではズレがある。
にもかかわらず
類似する平行世界の間に何らかの法則でも働いているのでしょうか? 気になるところです」
妙に声を張り上げてでそのような疑問を発したのは江田島五郎二等海佐だった。
階級名から分かる通り、特地派遣部隊の中では空自以上の少数派である海上自衛隊から派遣された人物だ……が、その実態は特地における自衛隊の活動がほぼ陸地を占めていたせいで『門』開通中も崩壊後も無聊を囲うばかりの、伊丹が聞けば是非俺と代わってくれと懇願するに違いない立場だったりする。
それでも最近はピニャが女帝の座に就いた事で辺境の海洋国家相手の
会議室に充満する嫌な空気を入れ替えようという魂胆だろう江田島の言葉に健軍も乗っかった。
「もう1人の俺か……会ってみたいという気持ちはない事もないが、うーむ」
「あちらの世界でも健軍一佐は第4戦闘団の団長を務めておられるとか。逆にこちらの第1戦闘団は銀座に出撃されてそのまま加茂一佐から彼の副官でおられた柘植二佐が指揮を執られている一方、あちらの世界では引き続き加茂一佐が団長を務められているそうですねぇ」
「我々の側とは違ってあちら側で起きた閉門騒動がこちらの銀座で起こった其れよりも比較的小規模だったというのが大きいのでしょう」
「代わりにあっちじゃゾルザルが率いる敵軍相手に正規軍同士の会戦が行われ、我々自衛隊もそれに加わっていたそうじゃないか」
「向こうの加茂一佐はロシア軍の代わりにオーガーみたいな怪物相手に戦車乗って戦ったのかね?」
「あの人なら間違いなく74式で先陣切って突撃してそうだ」
「違いない」
指揮官先頭で操縦手の尻を蹴飛ばしながら帝国軍へ戦車砲をぶっ放す姿が容易に想像出来てしまうあまり、加茂の人となりを良く知る戦闘団の指揮官達は思わず苦笑を交わし合った。
「こちらが公開した情報で精神的に打ちのめされてもうたあちらの世界の我々には悪い事をしましたけど、今回こっちのレレイ氏が開いた『門』があっちの世界に繋がったのは我々にとっては望外の幸運でしたわ」
第二科の今津がそう言って報告書を広げれば、それを覗き込んだ幹部達も首肯や唸り声を発して同意を示す。
狭間ですら「全くだ」と重々しく頷いてみせる程の報告、それは――――
「
「我々の側では『門』を制御できる技術が発覚したのがあの騒ぎの真っ只中でしたからね……
もしあの事件が起きていなければ、いやせめて発生が1ヶ月ズレていれば、我々も専門家や設備を集め最低限まともな実験データを集める事が出来ていたでしょう」
当然だがこれは
「柳田二尉はよくこんな情報まで向こうの我々から引き出せたな」
「第3次大戦やら銀座占拠やら
「そりゃ詐欺師や悪徳セールスのやり口だぞオイ」
インパクトの強い話題を立て続けに並べ立て、情報の奔流に思考能力が飽和した所で勢いのまま本命を無理矢理受け入れさせる――――ありふれた手法だ。
「だがWW3すら経験していない別世界の自衛隊員には効果覿面だろうよ」
心から同情するように溜息をつく幹部達。自分も同じ立場なら、間違いなく心穏やかとかそういうレベルを通り越した有様になっていると、確信出来てしまえたが故の意見の一致であった。
それでもあくどい手段を取った柳田を責めるという流れにまでは発展しない。
彼が平行世界の自分達から入手した情報の価値はまさに値千金であり、同時にそのような手段も許容しなければならない立場であるとこの場に集まる全員が自覚しているのだから。
「しかしあちらを笑う事はできません。何せ彼らはもう1人の私達そのものなのですし、
親が子供を諭すような声色でそう言い放つ江田島に、健軍達は反論できずに閉口するのだった。
展開進まなくて申し訳ありません。
リアルの職場関係が4文字ワード連発か総統閣下シリーズ再現したくなるぐらいのWTF案件で筆を進めるだけの気力が現在枯渇気味です。
読者の皆さんも保険請求関係は国も絡むから普通の商売よりも手続き増えるので仕事で関わる時は手続き回りちゃんと調べとこうな!
お陰で土日朝から夕方まで休み潰して受ける必要ない筈だったオンライン講習受けなきゃならなくなったりその準備全部自前でやらなきゃならなくなるぞ!(ハイライトオフ
そもそもの原因は事務所移転とか言い始めたと思ったらいきなり実行してこっちが知った時には役所へ手続きまで済ませてた経営者だがな!(キレ顔
出勤したら部屋が空っぽどころか知らない人が既に物件入ってたなんてイベント、リアルに経験するとは思わなかったよ…
結論:事前の報連相と必要手続きの確認準備は大切
長々と愚痴ってお目汚し申し訳ございませんが感想・反応お待ちしております。