悶え苦しむ彼女の中で、もう一つの戦いが始まろうとしていた…!!
魅輝の隠された一面がいま暴かれる?!!
ー夜・北の柱ー
「うがぁ?!」『あぁっ…!!』
「『うぅぅっ!!』」
悶え苦しみながら熱エネルギーを放出し続けるステラの装甲が、赤みを帯びた粒子に一旦分解され、
ものすごい勢いで渦巻き始める。アーマーの再構築が始まったのだ。
粒子はエネルギーも一緒に巻き込み、その隙間からは苦しみにあえぐ魅輝の姿が見て取れる。
まるで灼熱地獄のようだ…
…直後、魅輝の意識はホワイトアウトした。
『おぁっ… はぁああああっ!!』
粒子の渦を切り裂き、姿を表したステラの姿は、シリウス・スコーピングのそれではなく
全く別の姿になっていた。赤と白のスーツ、アーマー。複眼は赤く染まり、なおも熱が溢れでていた。
「ステラの…新しい姿……!」
オーブスを届けた東の柱の少年が、起き上がりながら言う。
直後、彼の脳裏を違和感が襲う。 なぜなら、先ほどとはステラの声が違う。
スロウから、北の柱担当は女の子(しかも、東の柱の少年好みのタイプ)だと聞いていたのだが…
あれはハッタリだったのか?
刹那、ふっとばされていた白いパッケージが一言
『兄者…! 復活なされたのですか!』
何言ってんだこいつ
少年はそう思わざるを得なかった。
だって、怪人の目の前にはステラ一人。
兄者(=自分が倒した筋骨隆々な怪人)はいない。
…もしや……?
少年の悪い予感は的中してしまった。
『心配をかけたな、リウム… 我はたった今、この小娘の体を貰い受けた。
これから我は、お前の兄者ではなく、お前の姉貴ということになるな… ふふふ……』
右腕をにぎにぎしながら、紅いステラが一言。
ああ、なんてことだ。
少年は自責の念とどうしようもない絶望の念に駆られその場に膝をついた。
自分が、自分があのオーブスをステラに渡さなければ…
「くそっ… あんなものさえ渡さなければ…」
『ははは…礼を言うぞ少年…… これほどまでに安定した、瑞々しい身体を提供してくれて…
こころばかりの謝礼として、この身体をつかって始末してやろう』
『そいつはいい、兄者。 いっちょ派手に殺ってしまえ!』
「うぅ…っ! 何も言うな…!」
…だめだ、もう何も聞こえない。
少年は耳を塞ぎ、目の前の絶望から逃げようとした。
その頃、魅輝はというと……
ー同時刻・魅輝の意識の中ー
真っ白な空間の中に、自分が浮かんでいた。
なんだここ。
あの時のホワイトアウトを思い出すようで、どことなく不安な気持ちが湧いてきた。
さっさとこの空間からおさらばしよう。
そう思ったその時、魅輝の目の前に紅いパッケージが現れる。
そのものは筋骨隆々で、どことなく新しいステラの姿に似ていた。
「お前は…」
『我はオルン。先ほど貴様を襲撃したパッケージの兄貴分だ。』
怪人は余裕綽々の態度を取り、空間にふわふわ浮かぶ魅輝を笑ってみせた。
「で、ここは?」
『お前の意識の中だ。我のエネルギーに根負けし、我が人格に上書きされるだろうと思っていたが…そのまま残るとはな』
パッケージの言葉に、魅輝は思わず眉をひそめた。
これまでいろんな文化、死生観を持った国を旅してきたが、正直やつの言っていることは全くわからない。
意識が上書き?エネルギーに根負け?
「何を言ってr…」
『そのままの意味だ。 簡単にいえば、我のオーブスを使ったばかりに身体を乗っ取られたのだ…
というわけで、この身体は今後我がありがたく使わせてもらう。』
身動きも取れず、いまいち話の意味がわからない魅輝に、オルンはすべてを話した上で彼女を更にからかってみせた。
「ふざけるな… 勝手に人の体を……!」
『もう決まったことだ… ……あの時我がオーブスを使わなければよかったものを……
そこで己の愚かさを呪っておれ…』
その言葉を聞いて、魅輝は笑ってみせた。
「……愚かなのはお前だ、このバカが。」
ー同時刻・古物商ー
『なんか…変な感じ。 ミキの中に別の何かがいるみたい』
アンがココアを飲み干し、ボソッとつぶやく。
目の前に座っていたスロウは怪訝な顔つきをしながら聞く。
「一体どういうことだ? 魅輝の中にもう一人いるって…」
『なんかね、いつもはミキのことを考えると、いつものミキが頭に浮かぶんだけど、今回はいつもとは別人みたいなミキが浮かぶんだ… なんか、意地っ張りで、偉そうで、男の人みたいにガハガハ笑ってる』
「ん〜、まるで二重人格みたいだな。 不思議な娘だとは思っていたが、まさかそんな一面もあったなんて…」
スロウは角砂糖をまるまるひとつ咥え込み、なんとも見当違いな見解を述べてみせた。
アンは神妙な面持ちのまま、次の一杯を飲んだ。
(速く帰ってきてほしいなぁ… ミキ…… なんか、ゾワゾワする)
ー深夜・北の柱ー
『おい、兄者…どうしたんだ? おい!』
『…ぅ』
紅いステラの動きが鈍重になった。
どうやら魅輝の意識の中で一悶着あったのが原因のようだが…
少年はその様子を見届けると、ようやくその瞳に光を宿した。
「…中でステラがあのパッケージと戦ってる……!」
ー同時刻・魅輝の意識の中ー
『何がおかしい! それがお前の身体の主導権を握っているものに対する口の聞き方か!』
さすがに苛ついたのか、オルンが声を荒げる
それをみた魅輝が更に声を荒らげて返す
「ここは私の意識の中だ! なら、お前をここから追い出すのだって容易いはずだ…!」
オルンは飽きれざるを得なかった。 いくらここが彼女の意識の中だからといって、そんなことできるはずが……?
「とりあえず、この中からお前の存在を抹消する…」
魅輝が頭を抱えると、それまで真っ白だった空間が突然揺らぎ始める。
『なんだと?! 主導権は我が握ってる!! こんなことできるはずが……』
「可能不可能じゃなくて、するんだよ…!」
『何のために! 何がそこまでお前に無茶をさせる!!
このオーブスを使って自分から我に身体を奪われたと思えば、次は我を無理やり追い出すだなんて!』
「うるさい! 私はこの街の守護者、仮面ライダーステラとして戦うって決めた…!!
それに、スロウから角砂糖をもらった! だからだ!」
『はぁ?!!』
魅輝の発言に、オルンは素っ頓狂な声を出した。
この空間が揺らいでいることはともかく、彼女の動機がいまいちつかめないからだ。
この街を守る。それはわかる。だが、その理由の一つが解せない。
『貴様!何を言っている?! 気が狂ったのか!』
「うるさい黙れ…! スロウから『これからも戦ってくれ』ってお願いされた… それで角砂糖をもらった!
たった角砂糖一つでも、願いに報いて全力をつくすのが人間だろうが…! いいから、さっさと私から出て行け!!!」
いつもだったら絶対に聞けない、魅輝の腹の底から出た大きな声が辺りに響き、ついに白い空間(=彼女の意識)は決壊した。
ー同時刻・北の柱ー
『う、うぉぉぉあああああっ!!』
紅いステラの身体から赤黒い霧のようなものが飛び散ったかと思うと、突然ステラの変身が解け、満身創痍な魅輝がその場に倒れた
「ステラ!」
少年は慌てて魅輝に駆け寄り介抱した。
よく見ると、先ほどの熱エネルギーで服はいたるところが焼け焦げ、肌が露出している。
白い頬にもやけどができ、非常に痛々しい。 それでも彼女にかろうじて息はあり、持ち前の美しい黒髪もほとんど無事であった。
『き、貴様ら兄者をどうしたんだ?!!!』
すっかり平静を失い、同様したリウムが少年と魅輝に襲いかかってくる
その姿に、先ほどの余裕は一切ない。
しかし、17~8歳の人間の体を抱えたまま戦えるほど、少年は強くない。
思わず目をそらすと、あたりに斬撃音が響いた。
「っ! ……え?」
少年の目の前には、黒を貴重としたスーツに、赤、黄色、緑の三色のラインが走ったライダーがいた。
ベルトは、ステラのものとも、少年の師匠・行市のものとも違う形をしていた。
「速く、その子を連れて逃げて!」
謎のライダーが一言。
「で、でも!」
少年が一言。 謎のライダーが居るとはいえ、自分も仮面ライダーだ。ほうっておくわけには…
「…ライダーは助け合い、でしょ! だから、ここは俺に任せて!」
謎のライダーがリウムの攻撃を受け流し、少年に逃亡を促す。
「っ! 誰だかしらないけど、ありがとうございます!」
少年は魅輝をおんぶし、古物商の方向へと走っていった。
『貴様… 邪魔をしおって…!!』
怒り心頭のリウムが、謎のライダーに攻撃を加えまくる。
青白いビームと、鋭い鉤爪による切り裂き。
しかし、謎のライダーは軽くそれを交わし、逆に攻撃を叩き込んだ。
どうやらこの男、よほど戦闘に慣れているらしい。
リウムが怯んだスキに、どこからか剣を取り出し、そこに銀貨のようなものを三枚入れる。
そして剣の刃を、丸いアイテムを使って、研ぐようにスキャンする。
すると、銀色の丸が現れ、特有の電子音声がなり…
「セイヤーッ!!」
特徴的な掛け声とともにリウムの脇腹を斬ると、リウムもろとも周囲の空間が斬れ、一瞬で元に戻る。
結局リウムだけが斬られ、そこには爆炎とオーブスのみが残った。
ー朝・古物商ー
気が付くと、そこは毎日見る天井だった。
「う…??」
自分の置かれてる状況がいまいちわからず、あたりをきょろきょろと見回す。
それに追従するように首が動くが、ゴキゴキと鈍い音がなり、同時に痛みが走る。
おまけに、何か異物が貼られているように感じる。 …湿布か?
「ん… アン。 それと…… あの時の少年?」
きしむ体を起こし、すぐ横を見ると、その二人が眠りについていた。
すぐ横にある机には、あの紅いオーブスともう一つ、青白いオーブスが。
「…確か、私は砂漠でくたばったはずなんだが………」
記憶をリロードしようとする魅輝に、スロウが語りかける
「ベテルギウス・パッケージの呪縛から開放された後、君は確かに砂漠に倒れた。
そこを、アサフと、ある旅人が助けてくれたんだ。」
アサフ?旅人?
「いやぁ、気前のいい若者でね、アサフの代わりにリゲル・パッケージを倒して、そのオーブスを我々に譲ってくれた。
しかも君が眠っている間、アンやアサフと一緒に君の看病もしてくれた! いやはや、本当に好青年だった!」
いつもどおり、ハイテンションな口調でしゃべりまくるスロウ。
いつもはそんなにうるさく感じないが、今回ばかりは脳を酷使したせいかやけに頭に響く…
しかしとりあえず自分の置かれている状況は理解できた。
「…ごめん、色々と迷惑かけたね。 角砂糖、無下にしなかったよ。」
そう言って再び横になり、眠りに落ちた魅輝。
「……か、角砂糖?」
魅輝の妙な物言いに、スロウはただただ首を傾げるばかりだった。
…続く。
如何だったでしょうか?
魅輝さん、なんとか爆発せずに済みました(笑
さてさて、今回は彼女がなぜ自分を犠牲にしてまでオーブスを使おうとしたのかが描かれましたね
その理由は、まさかの角砂糖!
スロウもびっくりな理由でした
そんな魅輝さん、これからも全力で戦っていきますのでどうぞよろしくお願いします!
Tips!
・オルン
ベテルギウス・パッケージの個体名。
魅輝の深層心理内で自ら名乗ったもの。
そのあまりにも強大な力で一度は魅輝の体を乗っ取ることに成功した。
・リウム
青白い「リゲル・パッケージ」の個体名。
オルンに従順で、彼が倒されたことを察知して激昂。打倒仮面ライダーを掲げてステラに襲いかかった。
・アサフ
騎士ライダーの正体。
心優しき少年で、義理堅い。
・「気前のいい若者」
偶然ウラノメトリアに立ち寄り、魅輝達のピンチを救ってくれた青年。
彼が携える特徴的なベルトには、三枚のメダルのようなものがはめられていたという。