TS娘と可愛い女の子達   作:レーズンモン

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ゆかりさんのお話

ちょっと長い


気になる隣人

私は何不自由なく生まれ育てられてきた。母親は専業主婦兼パートの掛け持ち、父親はごく普通の営業サラリーマンだ。物心ついた時から母親に抱きつかれ、父親には頭を撫でられる、少々スキンシップが激しいが私の自慢の親。

親に愛され、親を愛しているごくごく普通の家庭、そしてごく普通に生きて愛する人が出来て、結婚して子供が出来てそして寿命を全うして死ぬ...そんなごく普通の人生を送って生きるのだと漠然と思っていた、まだその時は中学生だったかな?...今考えたら中二病ですねこれ。

 

そんな色のない生活を続けていた時、携帯で何気なくでてきたゲームをプレイしながら実況をするという動画を見掛けた。あまり視聴回数が少ない動画だったけど何気なく見てみた。

私は趣味と呼べるものがなかった、強いて言うなら読書くらいなものだった。そして何気なくみた動画で私は趣味というものが出来た。

 

ゲーム実況。私はゲームをほとんどしたことがなく最初はよくわからなかったが、実況者がわかりやすく説明してくれたお陰で大体のゲームジャンルを把握できた。

色んな動画みていたらそれぞれの実況動画の良さがわかってきた。あの実況者はリアクションが面白い、あの実況者の動画の編集は丁寧だ。

など、実況力や、編集技術、動画時間の長さなど千差万別だった。

 

私はもうハマるにハマった。学校から直帰して家に帰った部屋に籠って携帯で動画を視聴。夕飯の呼び出しが母親からかかりご飯を食べながら動画を見る。両親に怒られたけど私は決してやめなかった。

そんな日々を続けていた時、動画を見ながら私はふと思った。

 

(私ならこんなリアクションをするなー、あっ私ならここに効果音入れたりするなー...)とか考えてしまっていた。

 

その時からなんの動画を見ても自分ならどうするか?自分ならこう言おう、自分ならこういう編集をする.....と完全に実況者になりきって見ていた。

 

だんだんと悶々とした感情が蓄積していき思い切って両親に頼んでみた。

 

「お父さん、お母さん、私ゲーム実況やってみたい...だから...その...パソコンとマイクが欲しい...です...」

 

そう言って懇願してみた。クリスマスでも誕生日でもなにも特別ではない日。段々と声が小さくなり、俯いてしまった私。勇気を出して言ってはいいものの初めてこんな風に物を強請ったのは初めてだったこともあり、声が出なくなってしまった。

不安で仕方なくなってしまった私に両親は笑い飛ばしながら了承してくれた。元々、誕生日にパソコンは買ってあげようと両親同士で決まっていたよだった。マイクは予想外だったみたいだが、ゲーム実況というものがやりたいならそれもついでに買ってやる、そう言われた。

私はもう喜んだ、思い出したら恥ずかしくなるぐらいに。次の休みに一緒に買いに行こうと約束し、私は部屋に戻って布団に包まった。

私の頭の中はどうやって実況とろう?てかそもそも編集ってどうやるんだ?そんなことを考え携帯で動画編集やり方で調べて、外が明るくなるまで没頭していた。

 

休日、約束どおり両親と私は電気店にパソコンとマイクを買いに出かけた。私はパソコンのスペックなどは全く調べていなかったことを今更思い出したが父親が詳しかったので助かった。あまり高すぎないパソコンを父親と相談しながら購入、当日に渡せないみたいなので後日また来訪しなければいけなかったが楽しみが後日に伸びただけなので特に不満もなかった。

マイクはちゃんと調べていたので目当ての物はすぐ見つかった。お手頃の価格で動画レビューとかをしっかりみて決めたものだった。

 

後日、電気店に再度訪れた私たちはパソコンを受け取り即帰宅(私が急かした)。部屋にそそくさと父親と一緒に運び開封。勉強机に置き、初期設定やらなんやらを設定を済まし動画編集ソフトをダウンロードした。マイクをセットし予め買っておいたゲームを起動し、動画撮影を開始した。

 

私は動画撮影をし終え、動画編集に取り掛かったが今日中に終えることが出来ないと悟った。椅子に全体重を掛けもたれかかる、実況者たちが編集は時間がかかると言っていたが今身をもって思い知った。これはつらい...

今日はこれぐらいにし私は重くなった体を動かし布団にダイブしてそのまま寝てしまった。

翌日の朝から動画編集を再開し夜までぶっ通しでやり続けた。

 

やっとこさ出来た動画を見返しながら思った。これ面白いか?実況はたどたどしい、シンプルに面白くないボケ、拙い編集。もう一度見返そうかと思ったが、やめた。これをインターネットの海に放り投げるのか?きつくないか?何より私が。黒歴史確定演出入ってるよこれ。とか散々悩みながら取り合えず疲れたし風呂入って寝て明日考えよう、そうしようと思いぐっすりと眠った。

 

結局それは没にした。それで改めて新しいゲームを買い、再度挑戦してみた。前回の反省を生かしズバズバとゲームに対してツッコミを入れながら実況を撮り終えた。前回はキャラを決めていなかったせいだ思い至り毒舌キャラな実況者でやってみることにした。編集技術はまぁ...回数こなしていけば何とかなるでしょ精神で。

数日かけ前回より時間をかけた動画を見返す。うん、前回よりか遥かにいいこれなら大丈夫、きっと、メイビー...

そして私は震える指でエンターキーを押した。ここから私のゲーム実況者の始まりだった。

 

私の初動画はあまり伸びなかったが想定よりか全然伸びた。初のコメントに初の高評価初の...低評価...何もかもが初体験のゲーム実況、動画編集で何が正解か手探り状態だったけど私の動画を再生してくれてあまつさえチャンネル登録を登録してくれた視聴者までいてくれる...私は初めて感情に戸惑った確かにゲーム実況をやってみたいと思ったが、まぁちょっとみてくれるだけで満足かな?とか思っていたが...

今はもっとゲーム実況をやりたい!もっと上手く編集できるようになりたい!もっと有名になりたい!と心からそう思った。自分でもこんなに感情が高ぶったのはびっくりした、コメントを読みながらニヤニヤしている私...気持ち悪いなーと自分で思いながら思っていたがやめられない。ふむふむ...声が綺麗、可愛い...なるほどなるほど...両親や友達から褒められるとはまた違った良さがあった、顔を知らない不特性多数に褒められる...中々に快感だぁ...おっといけないトリップしていた。

 

そっからの私の快進撃は始まった。私は動画を撮り続け、編集技術を向上させながらキャラに磨きをかけ続けた。日々増える高評価コメント登録者...低評価...まぁ毒舌キャラなんで合わない人は合わないだろう、うん...悲しくないよ。

だが私の快進撃は意外なところでストップした。

 

「ゆかり、一人暮らし...してみないか?」

 

父親からそう言われた。えらく急な話で私の頭は完全ストップ、緊急停止だ。かろうじて動いた口で理由を聞いてみると

 

「ゆかりももうすぐで高校二年生だ、つまりもうすぐで大人の仲間入りなわけだ。でだ大人になにが求められると思う?そう、自立力だ!自立力を鍛えるには一人暮らしが効果的なわけだ、だから一人暮らししよう、うん、そうしよう」

 

早口でまくし立てた父親の発言になにか違和感を私は感じた。無理やり納得させようとしてるような、なにか隠してるような感じがした。つついてみよう。

 

「急な話だし、なんで今なの?中途半端な時期だよね?」

 

「そ、それは...そう!ゆかりがやっているゲーム実況にしゅ「見てないよね?」...み、見ていません...こ、コホン、趣味に集中できるんじゃないか?」

 

これは何か隠している。父親は隠し事が苦手だ、視線は泳ぐし汗はだらだら流している。

 

「まぁ確かに一人の方が集中できるけどいきなり一人暮らししろって言われて納得できるわけないよ。してほしいならちゃんと訳を言って」

 

「...そうだなお父さんが間違っていた、ちゃんとゆかりに相談せずに勝手にしてしまった」

 

「ん?どういう意味?」

 

「お父さんこの間友達と飲みに行ってな、その友達はな不動産業をしていてな持ち掛けられたんだ。その友達の娘さんがアパートに一人暮らしをはじめたらしくてな、その隣の部屋が空いてるらしくてな友達も心配らしくてな色々あったらしいから...知人の子が隣に住めば少しは安心できるって言われてな」

 

「それで?会ったこともない人の世話をしなくちゃならないの?」

 

「いや、今は大学生らしいし落ち着いたらしいから大丈夫だ、だが親からしてみれば一人娘を遠くに置いておくのは心配だったらしくてな、私も娘がいるから同情してな...酒の席でもあったからなんだ...その...勢いでな?」

 

「ぐぢぐぢ言ってないでハッキリ言って」

 

いくらか声のトーンを落として言った。

 

「私の娘を隣に住ませよう。いずれゆかりも独り立ちしなければならないから私も知人の子がいれば安心だ!って言ってしまってな...そっからはもうトントン拍子、入居することに決まってしまった。っはっはっは!酒は怖い!」

 

「怖いじゃないよ!なに酒の席で決めてんの!信じられない」

 

怒る私と宥める父、それをニコニコと笑顔の母。カオスな状況だった。

しばらくたって怒りの収まった私、ふと冷静になってみたら意外といいかもしれない。ゲーム実況には没頭できるし、一人暮らしはやってみたいとは思っていた。高校から少し遠くなるし、ゲーム実況は引っ越しが落ち着くまでできないけど好奇心の方が勝った。

父親には仕送りは多めにしてもらい、一人暮らしを了承した。

 

引っ越しの準備がはじまり段ボールに家具や服、電気機器を両親と詰めていった。そこまで量は多くないので家の車で引っ越し先のアパートに向かった。未だに実感が湧かなかった。

 

引っ越し先のアパートに着き、私の家の中に一足先に入る。前の私の部屋よりか少し広い、畳の部屋が二部屋寝室と居間、台所にトイレとお風呂。実家に比べたらどれもこれも狭いけど私の部屋、私だけの家。これで好きなだけ趣味に没頭できる...むふふ

 

そんなこと部屋の真ん中で考えていたらドアの方から話し声が聞こえる。両親の声と女の人の声...女の人にしては声は低かった、もしかしたら父親が言っていた隣の人かも。今日から暮らしていくのだから挨拶しとかないと思いドアを開けた。

 

ドアを開けたらその人はいた。女の人にしては身長が高く、ショートカットで切れ目でかっこいいよりの女の人だった。その人は両親と話していたけど私に気づいてこっちを見た。

 

「雨野ちゃんこの子が私たちの一人娘のゆかりって言うのよかったら仲良くしてくない?」

 

「は、初めまして、結月ゆかりっていいます。高校二年生です、よろしくお願いします」

 

「うん、よろしく。私は雨野日比、大学生だよよろしくね?」

 

長身で声が低く、年上なこともありキョドってしまったが笑顔で対応してくれた雨野さん。その不意な笑顔にドキリとした...この人きっとモテモテなんじゃないかな?女の人に。

 

その後は軽い会話を終え挨拶を済まし、荷物を運びこんだ。家具や服、電気機器を大まかに設置し終え両親が引っ越し祝いに外食に連れて行ってくれた。新しい家に送ってもらい両親は車で去っていった。それを不思議な気持ちで見送って新しい家に帰った。部屋に入り、辺りを見回す...っよし!頑張ろう!そう思い気合をいれ頬を叩く...痛い...

 

激動の一日から既に数日が経った...私の胸に秘めている感情...それは...寂しい、そう寂しいのである。帰ってきたら母親がお帰りと言っていれてご飯を用意してくれる。父親が帰ってきて学校の様子を聞いてくる...そんな当たり前の生活が当たり前じゃなくなり私は絶賛ホームシック中であった。だからあの時油断していた。

 

学校が終わりトボトボと歩いて帰っていた。その日は先生に頼まれ事をされたため少し遅くなった。辺りは暗くなってきていて電柱の明かりがつきはじめた。いつもは通らないがアパートまでの近道を通ろうと思った。その道は狭く、日が上にあっても暗いそんな道だった。さっさと通って帰ろう、そう思い早足で歩いていたら前から人が歩いてきただけど様子がおかしい。ふらふら千鳥足で歩いていて不気味だった、その時なぜ引き返さなかったかわからないが私はさっさと横を通り過ぎようとした。だが、

 

「お嬢ちゃ~ん...ヒック、どこ行くの~?」

 

横を通ろうとしたら手を広げられ防がれた。その人はスーツを着崩した酔っぱらいのおじさんだった。その人が口を開くたびにアルコールの匂いがした、思わず後ずさり鼻を抑える。

 

「お嬢ちゃん一人?おじさんの家に来ない?一人で寂しくて~」

 

そんなことを宣う酔っぱらい。私は初めて男の人に絡まれて恐怖心で体が硬直して動けなくなってしまった、その様子を見た酔っぱらいは同意とみたのかノロノロと近づいてくる。近づくたびにアルコールの匂いと加齢臭が襲ってきた。私は酔っぱらいから目が離せず寄ってくる酔っぱらいを見ていることしか出来なかった。心臓が高鳴り冷や汗が流れ呼吸が浅くなる、どうする?どうしよう、助けを呼ばないと...こ、声を出さないと....

 

「た、たす...けて....」

 

かすれたような声しか出せない。自分でもギリギリ聞こえたような声、そんな声に反応して助けに来てくれる人がいるはずもなくいつの間にか目の前におじさんが来ていた。

 

ゆっくりと伸ばされる手...やけにスローモーションにみえた。ゆっくりとおじさんの手が伸びてきて私の腕を捕まえる...その瞬間

 

「俺の連れに何の用だ?」

 

私の腕に伸ばされていたおじさんの腕が私に触れる直前に私の後ろから伸びてきた腕によって止められた。その腕を辿って目線をあげれば私よりか二十センチは高い身長でその人はおじさんの腕を掴んで睨んでいた。

 

「もう一度言うぞおっさん、俺の連れに何の用だ?」

 

声が低く威圧的に言い放ちおじさんを睨んでいた、その人は帽子をかぶっていて髪の隙間から見えた目を私は見た。その目と横顔を私は今の状況を忘れて見入っていた、整った顔立ちに鋭い目つき...そしていつの間にか腰に回されていた手。まるでヒロインが主人公に助けられるような状況...私の心臓はさっきとは違う鼓動...張り裂けそうだ。思わず胸に手で抑えようとするが全く意味がない、顔が熱い...すごく...あつい....

 

いつの間にかおじさんはいなくなっていた。私はいまだ心臓の鼓動と戦っていた、中々収まらない...そりゃそうだ、まだあの人が目の前にいる。俯いている私を屈んで顔を覗き込まれているのだから。

 

「大丈夫?え~っと確か...そう!結月さんだ。変なことされてない?」

 

「はっはい、だ、大丈夫です!なにもされていません...」

 

「よかった。私もこの道よく通ってるからさ、そしたらびっくり、見覚えのある子が絡まれてるからさ」

 

「ありがとうございます。雨野さん、助かりました」

 

「......」

 

やっと心臓が落ち着き顔を上げると真剣な顔をした雨野さんにドキリとし、また心臓がうるさくなってきた時に雨野さんが柔らかい口調で言った。

 

「大丈夫、大丈夫だよ....」

 

雨野さんは私の手を取って両手で包み込んできた。私は今はじめて自分の手が震えていることに気づいた、雨野さんの体温が伝わってきて段々と手の震えが落ち着いてきた。が、恐怖心が徐々に蘇ってきて呼吸が浅くなってきたときに雨野さんが優しく私を抱きしめてくれた。母親とは違う...安心するような全てこの人に預けなくなるような包容力と力強さを感じた。私はゆっくりと雨野さんの背中に手を伸ばして抱きしめた...

 

しばらく抱きしめあった後今更ながら恥ずかしくなって腕をほどいた、雨野さんも気づいたのかゆっくりと腕をほどいた。

 

「もう大丈夫そう?」

 

「はっはい、ありがとうございます。さっきまで怖かったですけど今はもう大丈夫です」

 

「よしよし!それなら一緒に帰ろっか」

 

「そういえば隣同士でしたね、すいません引っ越しの挨拶だけで」

 

「何言ってるの、私も挨拶しかしてなかったしね。でもこれで縁ができたね」

 

そういって笑顔を向けてくる雨野さん、助けてくれた時のあの怖かった表情とギャップがあってまたもドキリとした...ふぅ、深呼吸深呼吸...

 

「では一緒に帰りましょう、雨野さん」

 

私たちは横に並んでアパートへと歩いてゆく、雨野さんの隣を歩いていると安心感があった。もう大丈夫、そんな確信めいた感じがあった。それはそうと帰ってから布団で悶えたのは言うまでもない...

 

その日から私はお隣さんの雨野さんと交流をするようになった。朝の挨拶からちょっとした会話、作ったご飯の余りをおすそ分けしたり、されたり....そんな些細な交流からいつの間にかお互いの家に入り浸りするような親密な関係になっていた。....雨野さんのお風呂上りにすごいドキドキしたりするけどいつの間にかホームシックを感じなくなっていた。これが自立かぁ...とか思ったけど一人じゃなかった、今は雨野さんがいる。

そして今、雨野さんに幾度といってきたセリフをいう。

 

「雨野さん!今日はこのゲームしましょう!」

 

 

 

 

 

 




ゆかりさんらしさ出てるかな

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