はじめまして、メリーさん   作:aodama

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第一話

 

 

 

メリーと邂逅した次の日、夢と思いたかった願望は壁をすり抜け部屋に入ってきたメリーと共に打ち砕かれた。まさかこんな非日常的な状況に自身が陥るとは思わず、朝から頭痛が走る。幸い土日休みだった為、“メリーさん”に関する情報を集めるのに時間を気にする必要がなかったのがせめてもの救いだった。

 

「で、私のこと調べてどうするつもりよ?」

「··········。」

「なんか言いなさいよ変態。」

「知らない怪異とは話すなって死んだばっちゃんが言ってた。」

「なんてピンポイントな人生アドバイス·····ッ!?」

 

取り憑いたはいえ直ぐには殺されないのか、至って普通に過ごすメリー。が、さすがに暇を持て余しているのか、ちょっかいをかけては直ぐに飽き、部屋の中を物色し始める。学校用具、私服、本棚、ゲーム機·····etc,キラキラと目を輝かせたと思ったらすぐに次の物品に興味を移し始める。

 

「何このベットッ! ふっかふかっ!」

 

そう言いながら俺のベットの上で飛び跳ねるメリー。この姿だけ見ると年相応の反応を示していて可愛げのあるものなのだが·····。

 

「·····って待て。お前、物に触れるのか·····?」

 

「? 当たり前でしょ? 」

 

単純な疑問に心底不思議そうに首を傾げながら、俺の言葉に肯定の意を返す。

 

「じゃあ心霊現象でよくある物が宙に浮いたりして見えるのって」

私たち(怪異)が興味を持って触っている時だったり持ち上げたりしている時じゃない?」

「宙に浮いて物が暴れ回っているのは·····?」

「大体は玩具を取り合う子供のように怨霊達が癇癪を起こしている時ね。」

「·····ポルターガイストの真理を見た気がする。」

 

そんなやり取りをしている間に集めた情報を纏め終えたので、出かける準備をする。デスクから立ち上がり、壁にかけていた鞄を肩にかけ必要最低限の持ち物を詰め込み部屋を後にする。

 

「何処に行くのよ?」

「·····心臓に悪いから壁をすり抜けて追いかけてくるのはやめてくれ。」

「先に質問に答えなさいよ。何処に行くのよ。」

「お祓い。」

 

一瞬、時が止まるーーー。

 

「·····そう。」

「? もっと物議をかましてくると思ってたんだが。」

「別に良いわよ。無駄足になると思うけど。」

 

要領を得ない物言いに首を傾げるも取り敢えず目的の神社に向かう為に2階から玄関へと向かう。途中、居間にいた婆ちゃんに出掛けてくると伝えると隣にいたメリーが百面相のように表情をころころ変えるのは見ていて面白かった。

 

「どういうことよ!? お婆さん生きてるじゃない!?」

「ばっちゃんは死んだとは言ったけど婆ちゃんが死んだとは一言も言っていない。」

「屁理屈!」

 

どうでもいい会話を道中挟みながら目的の神社へと足を進める。到着すると神社特有の肌寒い空気が身体を包み込み、もう少し上着を持ってくれば良かったなと思ってしまう。

 

「さて、巫女さんでも居ると話は早いんだが·····。」

「今どき巫女なんて居るはずないでしょ。居たとしてと殆どの子がバイトで昔みたいに神秘の力は宿してない子ばっかでしょ。」

「残念。俺は神主への案内を頼む予定なのでその予想は大ハズレだ。」

 

道中の煽りも蓄積していた事もあり、言語を忘れ「うがぁぁぁぁ!!!」叫びながら器用に空中で地団太を踏むメリー。そんなメリーとも、あと少しでお別れとなるとどこか悲しい気持ちにならないこともない。

 

「(数日しか過ごさなかったけどお前のことは忘れないぜ……。)」

 

流し目でメリーのことを見ながら心の中で呟く。そうして神主のところへと赴きすぐさま祓ってもらうように頼む。

 

「おお·····。」

 

思わず、声が漏れる。厳格な見た目に対し物腰自体は柔らかそうな印象。まさに、想像する退魔師としての姿がそこには在った。期待して依頼内容を説明すると、神主はチラリとメリーに目配せし

 

「うん。ワシにゃ無理じゃ。」

「は?」

 

ただ一言。そう告げる。

 

「なんで?」

 

思わず敬語を忘れすで聞き返してしまう。

 

「その禍々しさ、ワシの手で祓える範囲は疾うに越えとるのぉ。すまんが他をあたってくれ。」

 

超ほんわかした雰囲気で告げられる戦力外通告に冗談だと思ってしまう。が、どうやら本当に無理らしく心底申し訳なさそうな顔で頬をかいている。

 

「そこを何とかならないんですか?」

「とは言うもののぉ。変なことして機嫌損なっても怖いし、やっぱ無理じゃ。」

 

医者がさじを投げる、とはまさにこの事。望んでいた要望が出てこなかったためか、頭を抱えてしまう。

 

「そうですか……分かりました。他を当たってみます·····。」

「力になれなくてすまなんだ……。代わりと言ってはなんだがウチの参拝客にならんか?」

「突然脈略もなく来たな。」

「今ならご利益付き。」

「商売魂凄いなオイ」

 

頼りにしていた神社が駄目だとわかると先ほどまで憤怒していたメリーさんは一変してニヤニヤとした顔を見せつけてくる。

 

「(ぐっ……まさか神社でのお祓いを断られると思ってなかった。だが他に手がないわけではないっ! 保険というのはちゃんと用意してあるさっ!)」

 

まだ諦める訳にはいかない。決して……決してニヤついたメリーがうざかった訳ではない。

 

「(兎に角、次の手を打たなければ……。)」

 

こうして保険としていた場所。“教会”へと足早に向かっていく。

 

「おお……神よ……。これ程の試練をこの少年にお与えになるとは……。(※意訳;私には祓えません。)」

 

次に到着した教会で今度は祓魔師(エクソシスト)にお願いしようと来たわけだが、相談して早々この反応。もうダメな気しかしないが一応聞いてみる。

 

「あの……。お祓いって出来たりしませんかね……?」

「ですがご安心をッ!罪深き貴方にも必ず神はお救いになりますッ!」

「え、あの、話聞いてます?」

「此方の神聖な壺をお買い上げくだされば必ず貴方の助けになりましょうッ!」

「あ、結構です。お邪魔しました。」

「通常価格40万円のところを今ならなんと半額の20万円で買えますッ!」

「通販みたいになってきたな」

「今ならなんとセットで神聖な聖書もついてきますッ!」

「マジで通販じゃねぇか。」

 

お祓いを頼みに来たはずが祓魔師(エクソシスト)の目が妖しく光り、雲行きが怪しくなってきたので退散を図る。

 

「お願いだからぁ! 買っていってぇぇぇ!!!」

「だぁぁぁッ! うるッせェェェッ!!!」

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

「くっそ。まさか2箇所ともお祓い拒否になるとは誰が予想できるんだっての。」

「だから言ったでしょ? どうせ無駄になるって。」

 

―――――

 

諸悪の根源(メリー)を引きはがす為に用意した手段全てが徒労に終わり、項垂れながら家へと向かう。失敗に終わった俺を馬鹿にするように笑みを浮かべながら煽ってくるメリー。今までの鬱憤を晴らすが如くここぞとばかりに俺を囃し立てる。

 

―――――

 

「今までもそうだったのよ。私を見てお祓いを頼み、無理とわかったら絶望する。その姿があんまりにも可哀そうだったから離れてあげたに過ぎないわ。あ、あそこって動物園? 私遊びに行ってみたいんだけど。」

「じゃあ俺の場合も離れてくれたり?」

「するわけないじゃん馬ー鹿っ! アンタは一生取り憑くって決めたんだから諦めなさい♪ む、遊園地も捨てがたいわね……。」

「ここぞとばかりに愉悦に浸りやがって。」

「恨むんだったら過去の自分を恨みなさい。水族館も良いわね!」

「あれは誰だってああいう反応になるだろうが……。てかさっきから何なんだ? 行かねーぞ。」

 

―――――

 

「いいのかぁ? アタシにそういう態度をとってぇ? 呪っちゃうぞぉ?」

「呪い、か……。穏やかじゃねぇな。」

「足の小指をタンスにぶつける呪いとか出先で腹痛に見舞われる呪いとか。」

「地味だけど嫌な奴じゃん。」

「効果は100%のお墨付き!」

「もっと嫌だわ。」

 

―――――ァ

 

「ッ、?」

 

微かな、しかししっかりと耳に届く声。背筋を走る悪寒に勢いよく振り返る。日は殆ど沈み、街灯が本格的に仕事をしだす時間帯。住宅街ということで特に変わった様子は見受けられない。振り返った先に見える()()()()()()()()()()()()さえなければ。

 

 

 

ーーーなんだアレは?

およそこの世のものとは思えぬ醜悪さ。

ーーーなんだアレは?

まるでそこだけ世界から切り取ったかのような違和感の塊。

ーーーなんだアレは?

魅入られたかのように目を離すことが出来なくなる。

───ぁぁぁ、うるさい。

 

どこからか、聞き覚えのない声が脳裏を掠める。

 

『どうせお前なんて』

『気持ち悪い』

『消えろ』

 

聞いた事の無い声。知らない人達の顔。突如脳裏によぎる描写は妙に具体的で、生々しい。

 

胸の奥がざらつく。

 

――――なんだ、これ。

 

胃の中から込み上げてくるものを押しとどめようと無意識に手を口元へと持ち上げる。

 

「あぁ~あ。()いて来ちゃったか。」

「ッ!? な、にを……?」

 

思考の水底に沈んでいた意識をメリーの声で掬い上げる。此方を馬鹿にしていた人物と同じ人物なのか疑ってしまう程、纏う雰囲気が変質している。先程までの子供っぽい無邪気さは鳴りを潜め、見た目に似合わぬ大人のような雰囲気を漂わせる。

 

()()()()()。」

 

メリーのその言葉を聞いた俺は反射的に()()から逃げ出すのであった。

 

 

 

 

 

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