ハグレモノ共の狂騒曲   作:終日のたり

1 / 10
天人が一発で変換出たのに夜兎も荼吉尼も出てこないのホント謎。


■■ハグレモノ in かぶき町■■
第1訓:性犯罪者に慈悲は持つな


 宇宙最強といえば、荼吉尼、辰羅、そして夜兎。

 

 戦闘力において甲乙はなかなか付けづらいと思うけど、最も攻撃的な外見をしていない(要するにぱっと見弱そうな)夜兎は何処の星に行っても比較的溶け込みやすい。何せ鋭い爪も牙もなければ、体格だってそこまで大きくはならない。勿論個体差はあるけども、宇宙一のえいりあんハンターなんて呼ばれてるうちの父はまあ普通くらいの体格だし、うん年ぶりに再開した不良のバカ兄もまた然り。妹なんて年相応に小柄な方で、地球人の女の子と一見して全く変わらない。でも膂力や胃袋の容量は地球人の平均のウン十倍になるんだから、彼らからすると私たちってのは恐ろしく外見詐欺に感じられるようだ。

 

 まあそれは良いとして。

 

 つまり私が何を言いたいかっていうと、基本的な身体スペックが下から数えたほうが早い地球人の町で暮らす場合、何だかんだで地球人ぽい見た目であることはアドバンテージだってこと。晴れだろうと雷だろうと決して手放さない番傘を見て正体に気づく人はたまにはいるけど多くないし、気づいた人は大体逃げていくから揉め事にも殆どならない。あとはそこそこに品行方正に過ごしておけばご近所のおぼえもめでたくなるし、ちょっと親切にしておけば向こうからお返しがやってくる。これが荼吉尼みたいな外見だったらこの関係を築くのにはもう少し時間がかかるだろう。

 

 ……ええと、結局何が言いたいんだっけ?

 

 とにかく、そんなこんなで故郷の星を飛び出して数年。私は地球のハブステーションにあたるかぶき町でそれなりに楽しくやっている。ていうか実家もう誰も住んでないしね。お母さん亡くなったし親父は放浪してるし兄は海賊やってるし妹は……妹は働いてるって言っていいのかな。ほぼ給料もらってないけど住み込みで三食貰ってるらしいし、夜兎の底なし胃袋を満たしてくれてるんだからまあ多少のことは仕方ない。本人も何だかんだ雇い主に懐いてるし。

 

 それにしても妹よ。家出は良いとしてお前無酸素・無防備状態でシャトルにしがみついたまま無断渡航とか本当に無茶やったな。私どころかあの無鉄砲クソバーサーカーの兄もやらなかったよそんなこと。せめてもっと頻繁に手紙でも出してれば家出前に連絡くらいくれたんだろうけど、あの頃は私もあっちこっち点々としてたからなあ……届かなかった手紙も多分あったろうし、そりゃ神楽も私に頼ろうとは思わんだろうな。ダメな姉ちゃんでごめんねホント。再会早々「クソ姉貴」とか、神威みたいに呼び捨てか呼ばれなかったのが奇跡だね。

 

 ……違う違う、今は懺悔したいわけでもなくて。

 

 まあとにかく、私たち夜兎ってのは基本的に見た目詐欺だ。地球人とそっくりな外見、といえば地球人を知ってる天人からすると「うっわよわそ」ってなる。実際は筋骨密度から内臓の強さからそこから来る膂力は地球人とは比較にならないんだけど、とにかく見た目はそんなもん。あと美醜の感覚も地球人に近い。名前に【夜】がつくところからもわかる通り日光っていうか紫外線に強くないから夏とかは天敵なんだけど、ぶっちゃけそれ以外に弱点らしいものはない。しいて言うなら基本的に戦うの大好き殺し合い大好きで自分から滅亡に向かって突っ走りがちなのが最悪の弱点。だからもう数殆どいないしね。

 

 で、この見た目はさっきも言った通り他の惑星、特に地球に溶け込むにはとってもアドバンテージが高いんだけど、逆を言うと普通の地球人にしか見えないからろくでもない奴らに目を付けられることも多い。いやホントに。自分で言うのもなんだけど私は(というか私たちは)絶世の美女だった母親譲りの顔をしてるし、見た目詐欺が働いてて全く力自慢にも頑丈そうにも見えない。

 ただの華奢なチャイナ服の小娘と思われて痴漢や変質者や露出狂に遭遇したり、銀行強盗に出くわして人質に指名されたりすることもそこそこある。どっかの日本のヨハネスブルクみたいな治安と言うなかれ、かぶき町は基本的に何でもありで治安が悪いんだ。むしろ二年前と比べればかなりマシになった方。テロが減ったからね、テロが。

 

 まあ私だって腐っても夜兎の一員、人質取られようが人質になろうがちょっと武装した程度のいきり犯罪者どもに負けることはない。でもだからといって、そういったことに巻き込まれることに辟易しない、というわけではない。外見で舐め腐られるのは普通に腹立つし、時間と労力を浪費させられるってのは不毛すぎて毎度うんざりする。

 

 ……とまァ。前置きが長くなったけど、要するに私が言いたいのは

 

「懺悔はしなくていい。黙ってテメエの罪を数えろ」

 

 どんな手品を使ったのかはこの際どうでもいい。風呂上りのタイミングで突然脱衣所に現れた浮浪者にかける慈悲はないってこと。

 

「ちょ、待」

「死ね」

 

 地球人の来てる着物に袴みたいな服装にターバンぽいものを頭に巻いた変質者の首目掛け、私は愛用の傘を薙ぎ払った。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。