連載消そうか結構迷ってたんですが羞恥心はまだ天元突破してないので続けてみます。
「食いすぎだろお前」
「よく言われるけどお前にだけは言われたくない」
夜兎の私はさておき、私の三分の二程度の量は遠慮なく胃袋に収めたジンという男は、自分のことを棚上げして引き気味にこっちを見てくる。言っておくが私はこれでも小食な方だ。妹なんか凄いぞ。なんせたくあんだけで五合炊きの炊飯器空にするからな。
「つーか食う割に野菜ばっかなのな」
「肉より好きなんだもん」
というか肉と魚がそこまで好きじゃない。あ、卵は好きだな。麻薬卵の在庫そろそろ切れるしまた作り置きしないと。
それにしてもこの男、折ったのが利き手じゃないとはいえ器用にご飯食べるな。荷物持ちも全然苦じゃなかったみたいだし……こいつの周りってみんなこいつみたいな感じなんかね。だとしたら怖いな異世界。
それにしても。
「なんか全然焦燥感がないけど、戻る宛があったりするわけ?」
やけにどっしりというか太々しいというか。どこぞの三文小説よろしく「異世界から来ました☆」みたいな状態なのにこいつのこの落ち着きっぷりは何なのか。普通もう少しパニクったりするもんじゃないの? 他に異世界から来た(自称)奴なんて知らないからわからんけどさ。
「あ? ンなわけねーだろ。完全に予定外の予想外だっつの」
「その割にゃ落ち着いてるね」
なんなら楽しそうだ。買い物行く道中も鼻歌交じりだったし、なんならレジ待ちの列で全然面識がなかった天人に話しかけて盛り上がってた。控えめに申し上げてコミュ力がやべえ。
「予想外で予定外だからこそだよ。そりゃ最終的に元の世界っつーか、発掘現場に戻るのが目的だ。だからこそその目的を果たすまでの道中は目いっぱい楽しまなきゃ損だろ。なんせ普通じゃ味わえねえ環境に違いねえんだからな」
明日はターミナルとやらに行ってみるわ、と続けるジンは確かにティーンの顔をしている。むしろ中坊みたいなはしゃぎっぷりと言っていい。目ぇキラッキラしてる。これで無精髭がなけりゃマジでただの学生だ。修学旅行先で木刀買って仲間内でバカ騒ぎするタイプの。
「お前職場の上司に嫌われるタイプだろ」
主に規律を乱すって意味で。そんでもって無駄に仕事の出来とコネの作り方が良くて首にできにくいタイプの。刑事もののドラマとかに出る「普段は窓際だけど推理力が一流でどこからともなく難事件を解決する」タイプ。そら手綱なんか握れるわけねーわ。
「外出は自由っつったけどネンとやらは教えて貰うかんね」
「んな約束したっけ?」
「よし次は反対側の手だな」
「冗談だっつの」
嘘つけ半分本気だったろ今。
「つーかお前、教えろったって半分くらいもう使ってたぞ今。じゃなきゃ適当とはいえガードしたオレの手がこんななるわけねーだろ」
「は?」
「やっぱ無意識かよ。まあオーラ自体は見えてねーのわかってたけどな。お前、オレを殴るときにガッツリ肩回りから腕まで強化してたぜ? へったくそな【凝】もどき、まあ【練】だけどな。それもオーラの量でごり押したタイプの」
「ビギナーにおもっくそ専門用語で喋るのやめてくれる? 説明下手な大学教授かよ」
「お前のその具体的なのか回りくどいのかわからねえたとえは何なんだよ」
はあ、と大仰にため息をつくとこ悪いけどため息つきたいのはこっちなんだよね。はっ倒してやろうか。
「念っつーのはオーラを使いこなす念能力のこと、オーラはざっくり言うと生命が持つエネルギーだ。生きてるもんならその辺の草だろうが野良犬だろうが人間だろうが持っている。これを使いこなすことで身体能力を大幅に上げたり超能力みてーな力を身に着けられる。つーかオレ達の世界じゃ超能力者イコール念能力者だ。霊能力者とか仙人とかも全部な」
「超能力ねえ」
つまりこいつら基準だと結野家みたいな陰陽師たちも念能力者ってことになるのか? あと木刀一本で真剣と張り合える銀ちゃんも自覚はさておき念使ってることになる感じ? ……思い返してもそんな風には思えないけど、でも銀ちゃんだしなァ。
「このオーラは普通の人間にゃ見えねーし垂れ流し状態になってんだが、体中の精孔を開いてオーラ自体の出力を増やしつつ、自分の周りにとどめて制御すんのが念能力者の第一歩だ。……つーわけでとっとと後ろ向け、後ろ」
「後ろ?」
「首だけじゃねえよ、体ごとあっち向けっての」
しっしっと「あっち向け」どころか「あっち行け」のジェスチャーかます無精髭に背中を向ける。一体何考えt
「どわっっ!!?」
「おー、思った通り開くの早ぇな。この程度で全開か」
待て待て待て待て待て何これナニコレナニコレ!?!?!?
毛穴よりもっと細かい小さな穴が全身に開いて、そこから湯気がもうもうと出てるといったら多少は的確になるんだろうか。温度はわからないのに熱いような冷たいような感じもするし、寧ろ痛みもないのに同じ量の血液が出てるみたいな、
「言い忘れたけど、それ早く周りにとどめねーとそのうち死ぬぞ」
やっぱりかクソが!!!!!
「殺す気かァ!!!!!!!」
「おっと」
全身全霊でひっくり返したちゃぶ台は見事によけられた。ニヤニヤ笑うその顔の憎たらしいことったらない。
「ぶっ殺す!!」
「おーおー活きのいいことで。まずは【纏】が出来るようになってから言」
「死ね!!!!!」
「嘘だろおい!!?」
フェイントもクソもないストレートパンチは皮膚一枚かするだけで終わった。このマダオの素質満点のクソ虫ぜってーそのうち泣かす。