ハグレモノ共の狂騒曲   作:終日のたり

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銀魂キャラもっと出したいのにまだお登勢さんしか出てない不思議。


第7訓:若いうちの苦労なんて買ってまでするもんじゃない

「気が変わった。やっぱお前も明日来い」

 

 一人暮らしの狭い1LDKルームに突然同居人が現れて早二週間。そろそろこいつの突拍子のなさにも慣れてきたつもりだった私でさえ呆気にとられるようなことを言ったジンは、当たり前のようにもう旅支度(頑丈そうだが小汚い鞄ひとつ)を整えていた。

 

 

 

 文字通り降ってわいた同居人ジン・フリークスは、初日で私が受け取った印象以上に気ままで勝手で自由で適当だった。そのくせ妙に人懐っこいというか人たらしで、媚びを売るのとは対極的なのに気が付けば何処かで友達を作ってる。その友達に面と向かって「嫌い」と言われるのに人格や実力を認められて信頼を勝ち取る。不必要に好かれるように難しいことを当たり前みたいにやってて、ここにきて二日目には私が言い出しもしなかったスマホをゲットして(「オレらが持ってるよりだいぶ多機能だな」と喜んでいた)、日雇いか何かでお金を稼ぎ、仲良くなった誰か(恐らく天人)に持たされたであろう土産を広げて見せた。

 

「お前マジなんなの」

「さァな。おい【練】緩んでんぞ」

「へーへー」

 

 意識的に毛穴、じゃない精孔を開いてそこから汗を流すようなイメージを作り直す。見えるようになった薄桃色っぽいオーラが鋭さと厚みを増していくのはわかる。わかるんだけど慣れない。もう何分経ったんだ? これどのくらい続けりゃいいの?

 

「最低でも三十分な。速戦即決できりゃその限りじゃねーけど、そもそもお前スタミナあんだからそれに合わせて絞り出せるようにしねーと勿体ねえんだよ」

「スタミナあるかなあ? 身内が全員お化け過ぎていまいちピンとこないんだけど」

 

 一番身近なところでいうと妹の神楽。燃費は悪いけどその分元気な時はいつまでもどこまでも動ける。昔からあの子の遊びに付き合うと私の方が早くバテるのはお約束だった。よく「ねーちゃんすぐ疲れるからつまんないアル」とか無邪気に言い放たれて傷ついたっけなァ……。

 

「次もっかい緩んだら冷蔵庫のダッツはオレが食うからな」

「ふざけんな殺すぞ」

「気合入っただろ?」

「泣かすぞこのヒゲ野郎」

「あだぁ!!?」

 

 衝動のままにとりあえず目についた太い毛を引っこ抜いてやる。……ゴミ箱どこだゴミ箱。

 

「いってえなマジで抜くなよ!!」

「うるせー。テメエのヒゲ見てると近所の公園でたそがれてる長谷川さん思い出すんだよ」

「誰だよハセガワって!」

「元祖マダオだよ言わせんなもっかい抜くぞ」

「やめろ!!」

 

 勢いよく距離を取るジンは涙目になってるがまあ別にかわいくはない。ていうかお前金が出来たんなら髭剃りくらい買えよ。

 

 

「うるせーな。別に困らねえんだから良いだろ」

「現在進行形で抜かれてるのに?」

「お前が抜かなきゃいい話だろうが!! ……っと、おい時間だ。解いていいぞ」

「ういっす」

 

 はー疲れた。いやホント疲れた。ぐっと全身から力を抜いて【練】を【纏】に戻す。聞くところによると【纏】でオーラをしっかりとどめておくことで所謂アンチエイジング効果も出るらしい。まだティーンとはいえ日焼け止めしかり保湿しかり、今のうちにやっておかないと三十過ぎてからガクッとくるそうだから気を付けておくに越したことはない。

 

「しっかしアレだ。【纏】と【絶】に比べて【練】にムラがありすぎんだよなァ……最初にオレの骨折ったときみてーな爆発が常に出せてりゃ言うことねえんだが」

「そりゃ不審者という名の覗きに対する殺意を普段から出せるなら苦労しないよ」

「だから覗いてねーっつのいい加減にしろ。大体ゴリラの裸なんか見て何が面白ぶへら!?」

 

 誰がゴリラだ殴るぞ。

 

「もう殴ってんじゃねーか!!」

「喧しい。……さてアイス食べるかな」

「オレ、チョコモナカビッグな」

「自分で取れ」

 

 別にいいけど。自分用のカップアイス(抹茶)とその半分の値段のモナカアイスを取って後者を投げ渡す。あー優しいな私。こんなに優しいからこいつも日に日につけあがるんだろうなー。

 

「優しい奴はこんなすぐ手は出ねーよ……」

「なんか言った?」

「イイエナニモ」

 

 わざとらしく上擦った声で返すジンがむしゃむしゃとモナカアイスを食べつくす。早ぇなオイ。私が買ってきたやつだぞもっと味わって食え。

 

「お前だってオレが貰ってきた焼き鳥速攻で溶かしたじゃねーか」

「ゴチソウサマデシタ」

「ひっぱたくぞこの野郎」

 

 焼き鳥って普段買わないし作らないし食べないけどたまに食べるとめっちゃ美味いよね。

 

「ていうかアレどうしたの? パッケージ見たけど私でも知ってる有名店じゃん」

「あー、明日からちっとばかし長期の仕事入ってな。紹介っつーか、斡旋してくれた奴に持たせられた」

「なんで仕事斡旋する側が土産持たせんだよ」

 

 いや単に気に入られたからなんだろうけど。怖いなこの人たらし。マジで私がここに置かなくても普通に生きてけたよなこいつ。

 

「仕事って?」

「来月から開催される博物館の特別展……の、展示物の運び屋だな。盗難強盗の対策ってことで警備もかねてる。代わりに展示物をじっくり見ていいってよ」

「へえ」

 

 考古学とか一見無縁そうなものにガッツリ興味あんの不思議だわ。そういえばこっちに来る前も遺跡の発掘やってたんだっけか。

 

「何だよその興味なさそうな顔は」

「興味ないもん。で、どんくらいで戻んの?」

「期間は明日から一週間くらいだな。進捗によっては多少前後する。ってわけでオレがいなくても寂しがんなよ」

「こっちのセリフだボケ。ていうか行く前にヒゲくらい剃れ」

 

 そりゃ見る人が見れば過去の遺物だのオーパーツだのってのはロマンを感じるモンなんだろうけどさ、生憎と私にはそういう感性はほぼない。歴史的発見とか言われてもなーって感じ。せいぜい『世界ふ○ぎ発見』を画面越しに見てクイズに答えるくらいで十分だ。

 

「枯れてんなァお前。もっと楽しく生きらんねェの?」

「余計なお世話」

 

 そもそもの話、いくら楽しくても同じだけの苦しさがあるならそもそも楽しくなんてなくていい。

 

「……気が変わった」

 

 は?

 

「やっぱお前も明日来い。オレがロマンってもんを叩き込んでやる」

「は?」

「言っとくがバックレは無しだ。今すぐ話付けとくからな」

「はあ!?」

 

 意気揚々とどこかに電話を始めるジンの仕事は早かった。「四十秒で支度しな」って某ジ○リの名台詞があるけど、ジンの支度とやらはものの二十秒もかからなかった。

 …………あのヒゲ全部抜くのと顔の面積が倍になるまで殴るのとどっちが楽に済むかなァ。いっそどっちもやるか。どうしようか。

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