ハグレモノ共の狂騒曲   作:終日のたり

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去年お世話になったハッカ油を今年も買ったんですが、ハッカ油によって天下のGは避けられてももっとやばい虫を寄せることがあるらしいと聞いて世の中に万能薬なんてものはないんだなと思い知りました。つらい。

それはそれとして感想、誤字脱字報告、評価、お気に入り登録ありがとうございます。見切り発車甚だしくも頑張ります。


第9訓:報連相は大事だけど取り返しのつかない報告だけされても困る

「終わった!」

 

 埃っぽくはないけど遮光性と密閉性ばっちりな保管室からようやくオサラバ出来たとあって、顔の半分を覆ってたマスクをやっとこさっとこ取り外す。

 

 今日の今日まで知る由もなかったけど、人間の呼気や汗、果てはカメラの光でさえこういう古いものを劣化させる原因になるんだそうだ。博物館や美術館でよく撮影禁止になってるのは、門外不出のなんちゃらよりも寧ろ展示品の劣化防止の意味合いが大きいらしい。知らんかった。そりゃ迷惑系ようつーばーやらてっくとっかーやらに目くじら立てるってもんだよね。

 

「んじゃ、オレらは一旦ここでお役御免だな」

「はい。ご苦労様でした」

 

 初日を含めて三日。ジンが最初に言ってた予定の半分以下で終わった仕事の日当はまあ相応っぽい。ジンは現ナマを興味深げに取り出して「こっちの紙幣は質が良いな」と変なところで感心している。

 

「貨幣に質の差とかあんの?」

「そりゃあな。これくらい丈夫なら洗濯機で回しても原型とどめるしそのまま使えるだろ」

「使えるね」

 

 私もうっかりやったことあるからそれは身をもって知ってる。

 

「ん、まあ二人分でこんだけありゃ足りるか。よし行くぞ」

「行くって」

 

 どこに? 帰るんじゃなくて? ……っていう疑問をでかでかと顔に書いてたらしい私を、ジンのこのクソ野郎は鼻で笑ってきやがった。

 

「何言ってんだ。一週間かそれよりかかるっつったろ?」

「仕事終わったじゃん」

「オレは何も『仕事だけで一週間』とは一言も言ってねーよ」

「はあ!?」

 

 おいなんだその屁理屈ふざけんな。

 

「クソが!」

「おっと残念だったなァ、ご忠告に従って清潔感出してみちまったもんで」

「チッッッ」

 

 ニヤニヤ笑うジンがうざい。マジうざい。

 

 そうこいつ出かけるギリギリになって「おっと忘れてた」とばかりにいつの間にか買ってたらしい髭剃りできっちり無精ひげを剃ってやがったのだ。流石に仕事前だから身なりに気ぃ使ったのかと思ってたんだけどマジのマジで私対策だったらしい。

 

 いやおかしいだろ。何だその労力の使い方。

 

「むっかつく!!」

「はっはっはっは! ざまーみろ妖怪髭毟り!!」

「妖怪はテメーだろこのクソ覗き魔!」

「覗いてねえ!!」

 

 クソっ、せめてこいつの顔にこれ見よがしなホクロでもあれば銀ちゃんみたく引きちぎってやるのに……!

 

「いやホクロは引きちぎるなよ。ヒゲ抜くのと皮膚を引きちぎるのはちげーだろ」

「うるせーお通ちゃんだって脅し文句に使ってんだからうだうだ言うな」

「誰だよオツウって」

「マジかよお通ちゃん知らねーのかよお前の人生かわいそうな人生だな」

「そこまで言うか???? え、何それお前の推しアイドルかなんかか?」

「アイドルではあるけど別に推しではないかな」

「何だそりゃ」

 

 彼女推しは眼鏡に任せてるから私はそこまででもない。一応CDは買ってる。私個人の意見だからアレだけどサブスクあんま好きくないんで。

 

「お前~それでも人間か~♪ お前の母ちゃん何人だ~♪ って知らない? マジで?」

「知らねーよつかなんだその歌。マジでそれで売ってんのかそのアイドル」

「結構売れてるヨークシャー」

「急にどうした」

 

 お通語も通じねーのかよお前この街に来た二週間ちょっとの間何してたの?

 

「少なくともわけわかんねーアイドルの勉強はしてねーよ」

 

 お前それ新八の前では言うなよ絶対。

 

「誰だよシンパチ」

「銀ちゃんとこの自律型眼鏡置き」

「自律型眼鏡置き!?」

 

 まあお通ちゃんはさておき万事屋ファミリーについてはそのうち紹介する機会もあるかもな。考えてみれば神楽とも最近あんま連絡取って……そういやジンのこと誰にも言ってないな。お登勢さんがわざわざ伝えるとも思わんしていうかお登勢さんにもちゃんと紹介してないし。

 

 ……まあいいか別に。

 

「ところで帰らないんなら何処行くの?」

「今更か」

 

 うるせーバカ。ハゲ。ヒゲ。

 

「ハゲてねえやつをハゲって言うな。あとヒゲ今生えてねーだろ」

「じゃあバカハゲ」

「残ったの合体させりゃいいってもんじゃねー! あとハゲでもねー!!」

 

 ぎゃんっと喚くジンはうるさい。人生楽しそうでよかったね。

 

「で、結局何処いくの?」

 

 ものすごく恨みがましいジト目でこっちを見てくるジンに改めて問えば、ものすごく聞えよがしというかこれ見よがし? な溜息のあとに「図書館」と答える。

 

「図書館なら近所にあんじゃん。そこじゃダメなの?」

「蔵書量が全然違ェだろ。取り寄せんのも時間かかるし、あとは約束もあっからな」

「約束?」

「そのうちわかる」

 

 いやそのうちじゃなくて今言えよめんどくせーな。ていうか。

 

「私別に要らなくね?」

 

 ジン個人の調べものやら約束やらなら私いなくてもいいよねどう考えても。仕事自体は終わったし金も貰ったしぶっちゃけもう用事ないんだけど。ただでさえ普段のバイトにも穴開けちゃってるし。

 

「何言ってんだよ。お前がいなきゃ始まんねーだろ」

「はあ?」

「ロマンを教えてやるっつったろ」

「…………そうだっけ?」

「ボケたか?」

「殴るぞ」

「言ってから殴んなよ!」

 

 いやまあ覚えてたっつーか思い出しはしたけどなんかむかつくじゃん全体的に。あとヒゲは今引っこ抜けないのであとはもう拳しかないのは明白。

 

「手を出さねえって選択肢がねえあたりが野蛮なんだよ……」

「おっと手が滑った」

「いっって!!」

 

 流石に【練】ありきだとダメージよく通るな。やっぱ念って凄いわ。

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