カレンが言うアプローチを本当にしたらどうなるか   作:黒いトナカイ

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カレンが言うアプローチを本当にしたら大変なことになりそう

 Case2で大きくやらかしてしまった俺は、反省をしてもうやるまいと心に誓う……事もなく懲りずに新しい計画を練っていた。

 

 というか大人に胸を見られて笑って済ます時点で、カレンの貞操観念が更に心配になってしまったのだ。

 

 まぁ女の子はそういう視線に敏感だし、気づいても知らぬふりをしたりするのが常だと言う。だが共通するのは良い気持ちはしないとの事だ。

 

 だからこそいっそ罵ってくれた方がまだ救いはあったのだが、あの時のカレンはどこか嬉しそうに仕方ないなぁと済ませるだけだった。

 

 まるで誘ってるかのような立ち振る舞いに見えたが、そこは自惚れすぎか。

 

 むん。

 だがいかん、いかんぞカレン。お前はもっと危機感を持つべきだ。自分がどれだけ魅力的な存在なのかを理解してない。

 

 いや、理解してるだろうがそこに近づく悪意を知らない。

 

 いつか俺の手を離れた時にそんなことがあっては駄目なのだ。

 ならばこそ、それを教えてやるのはトレーナーたる俺の仕事だ。

 

 見せてやるよカレン!

 今度こそ男の本当の怖さをな!

 

 頑張るぞー! えい! えい! むん!

 

 そういえばカレンにタンホイザの真似してること伝えたら珍しく不機嫌になったんだよな。

 

 どうしてだろう?

 

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Case3【お外でランチできたらいいのにな。たまには静かなところで、ぼーっと……する横顔を見せてあげたーい♪】〜お誘い編〜

 

 突然だが、カレンチャンというウマ娘はとても多忙だ。

 

 レースの為のトレーニングもそうだが、ウマスタの更新、街中で出会ったファンとの交流、自身の可愛さの研鑽。

 

 挙げていくとキリがないが、日々それらを休むことなく続けている。

 

 普通なら倒れてしまいそうな仕事量だが、カレンは自分自身の事を無敵と言っており楽しそうに日々を過ごしている。

 

 一見、確かに問題なさそうに見える。

 

 だからといって、はいそうですか、と引き下がる訳にはいかない。

 

 一人で出来る事なんて絶対に限界がある。今は良いかもしれないけど、いつか倒れてしまう可能性だってある。

 

 それを知っていたからこそ何度も休んで欲しいと伝えたが、やんわりとかわされて今に至っている。

 

 全くもって心配で仕方がない。

 なんとしてでもカレンを休ませたくて仕方がない。

 

 しかし休むにしても、カレンは有名すぎて街中に出れば必ずファンに捕まる。でも寮にいればウマスタを更新して過ごすだろう。何せ前科が沢山ある。

 

 むーん。

 どうしたもんか。

 

 俺の目が届き、尚且つファンに邪魔されずに休めるところか……。

 

 そう考えていた時に、ふと脳内にカレンとの会話が蘇る。確か、お外でランチして……。

 

 そこまで思い出した時、俺はウマホを手に取り、あるウマ娘のトレーナーに電話を掛けていた。

 

 同時に交渉をスムーズに進める為の『限定スイーツバイキング、ペア招待券』と『ある野球チームのバックネット裏観戦ペアチケット』をカバンから机の上に並べていく。

 

 最近、福引きで当てて使い道に困っていたので丁度良い。

 

 あのウマ娘の家なら敷地も広いし、しかも私有地だから人が入って来ずにのんびり出来るはず!

 更にこれを利用すれば、俺の計画を進める事も出来て一石二鳥だ!

 

 数コールして繋がり要件を伝えると、電話越しから「トレーナーさん大丈夫ですわ! というか断ったらわかってますわよね!?」と大声が響いていたので、どうやら大丈夫のようだった。

 

 ふふふ、計画は完成した。

 

 カレン待ってろよ?

 今度こそ本当に大人の恐ろしさをたっぷりと教えてやろう!

 

 でもそれはそれとしてちゃんと休ませてやるとしよう。

 むん!

 

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「今度の休みの予定? カレンなら全然空いてるよ?♪」

 

 トレーニングが終わり、一息ついたところで予定を聞くと二つ返事で空いてると返ってきた。

 

 しかも見るからに上機嫌になり、何を言ってくれるのかなーと楽しみにしている感じだった。

 

 まぁ日頃からデートに行きたいとかよく言っていたから、誘ってくれると思ったのだろう。

 

 ふっ……まぁ大体合ってるけど甘いぞカレン。

 

 度重なる敗北を経て俺は学んだ。

 

 ありきたりな応対ではカレンのペースに呑まれてしまう。

 下手に誘ってしまった日には、予定を直ぐに組まれてしまい介入する余地すらなくなる。

 

 そうならない為にはどうすれば良いのか。

 そう、予期せぬ一撃を与えてやれば良いのだ。

 

 カレンは無敵に見えて、不意打ちに弱い一面がある。

 

 今回ばかりは俺がペースを握ってやるんだ。

 そうしないとカレンが休めないからな! あとついでに大人にペースを掴まれる怖さも教えてやる!

 

 さぁ恥ずかしくて死にそうだが喰らうが良いカレン!

 徹夜で考えた俺の渾身の一撃を!

 

「その日さ……カレンの事を独り占めしたいんだが……駄目かな?」

 

 あ、やべぇ……。

 なんか言ってて死にたくなってきた……。

 担当のウマ娘に何てこと言ってんだマジで……。

 

 言ってみると想像を遥かに超えた反動ダメージが俺に返ってきていて。

 

 今更だけどこれギャルゲーだとBAD END一直線な選択肢じゃんどう考えても。

 

 何で言うまで気が付かないんだよ俺。

 

 何で言った後に気づくんだよ俺。

 

 致命的なミスをしてしまったと思い、目を瞑り項垂れる。

 

 本当に何をしてるんですかね俺は。

 

 珍しくカレンの反応がないが、顔を見る余力など俺には残っていない。

 

 きっとドン引きしてるんだろうなと思う。

 

 流石に申し訳なく思い、聞かなかったことにしてくれって言おうとしたが。

 

「っ……次の休み! わたし! 楽しみにしてるね!!」

 

 珍しく叫ぶように声を出して走って寮へ行ってしまった。どうやら出かけること自体は大丈夫らしい。

 

 でもやってしまったなぁと、気が重くなってしまう俺だった。

 

 明日どんな顔で会えば良いんだこれ。

 

----------

 

 待って待って待って待って……。

 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿……。

 

 何してるの……? 何してるのカレン……?

 

 自分の部屋に走り込むと、『わたし』は直ぐにベッドの中に飛び込んで上から思いっきり布団を被った。

 

 興奮と後悔がグチャグチャになって『わたし』の中を駆け回る。

 あまりに乱されてしまって普通じゃいられない。

 

 つい最近もうミスはしないって誓ったばかりなのに、また逃げ出してしまった後悔がある。

 

 そしてそれ以上にお兄ちゃんが言ってくれたあの言葉が嬉しすぎて、身が千切れてしまいそうな興奮があった。

 

ーカレンの事を独り占めにしたいー

 

「うぁっ……」

 

 思い出しただけでドクンッと心臓がのたうち回り始める。顔が熱くなって今にも溶けてしまいそうだった。

 

 無理だ……。こんな幸せ、とてもじゃないけど耐えれない……。

 ずるい……。こんな不意打ち、ずるすぎるよお兄ちゃん……。

 

 その映像は勿論ウマホに残ってるけど、きっと今見てしまったら戻ってこれない。

 記憶だけでこの有様なのだから。

 

 落ち着いて。落ち着かないと駄目だよカレン。『わたし』はみんなの可愛いカレン。

 大丈夫落ち着ける……。大丈夫大丈夫……。

 

ーカレンの事を独り占めしたいー

 

「あぅっ……」

 

 まるで呪いのようにあの言葉が脳裏に何度も蘇ってくる。そして思い出す度に心臓が潰れてしまいそうなくらい暴れまわってくる。

 

 でも、こんな幸せなら呪い殺されてしまっても良い。

 そう思えるくらい甘くて心地良い呪い。

 

「お兄ちゃん……お兄ちゃん……っ」

 

 『わたし』は暫くの間、その甘くて愛しい呪いに溺れる事にした。

 

----------

 

「うわぁ……全然可愛くない……」

 

 やっと落ち着いたからシャワー室に来たものの、鏡を見て思わず声をあげてしまう。

 

 そこに写っていたのはボサボサの髪に、未だに真っ赤で涙目な顔に、下着が透けてくるほど汗まみれの服を着た『誰か』だった。

 

 それは可愛い可愛い『カレン』とはとても思えない姿で。

 

「はぁ……全部お兄ちゃんのせいだもん……」

 

 誰が聞いてる訳でもないのに、子供みたいな言い訳が口から出てしまう。同室のアヤベさんが遠征中で本当に良かったと思う。こんな姿、絶対に見せれないもん。

 

「でも……次の休みかぁ……」

 

 珍しくお兄ちゃんが誘ってくれたデート。何があるのか分からないけれど、ただただ今は待ち遠しかった。

 

ーカレンの事を独り占めしたいー

 

「ひぅ……っ」

 

 そんな事を考えてると、また幸せな呪いが蘇ってきた。

 心臓が脈打ちそうになるけど、それは鏡に映った自分を見て、一瞬で何処かにいってしまった。

 

「え?」

 

 そして鏡から目が離せなくなる。

 

 信じられなくて目を見開く。

 

 だってそこに。

 

 

 今まで見た事ないくらい可愛い『わたし』がいたから。

 

 

 ボサボサの髪に真っ赤な顔で酷い状態の筈なのに、その顔は何処までも幸せそうに笑っていて。

 その顔が自分のはずなのに自分とはとても思えなくて。

 

 今まで沢山の可愛い『カレン』を見てきたはずなのに、それらが霞んでしまうような『わたし』がそこにいて。

 

 ウマ娘は恋をすると可愛くなる。

 

 言ったのは誰なのか分からないけれど、きっと本当なんだろうって確信してしまった。

 

 今まで努力してきた可愛さが負けてしまった悔しさが滲み出るけど、同時に嬉しさも込み上げてくる。

 

 あぁ、もう、全部全部お兄ちゃんのせいだ。

 『わたし』をこんなに可愛くしちゃうなんて、『カレン』が拗ねちゃうよこんなの。

 

 八つ当たり気味にウマホを取ってお兄ちゃんの番号をコールする。

 

 本当はもう少し後にするつもりだったけどやめることにした。『わたし』と『カレン』をこんなにしたお兄ちゃんが全部悪いんだ。

 

 欲しいものは絶対全部手に入れるんだから!

 

『どうしたカレン?』

 

「次の休み、一個お願いしたい事あるんだけど、良い?」

 

『ん? 別に良いぞ? なんだ?』

 

 その言葉を聞いてグッと拳を握る。

 

「外泊許可取るから、お家泊めて欲しいなって」

 

『は? え?』

 

「楽しみにしてるねお兄ちゃん♪ じゃあシャワー浴びてくるからまたねー♪」

 

 返事を聞かずにウマホを切ってベッドに放り投げる。

 流石に緊張したから心臓がバクバク言っている。

 

 でも最初に良いって言ったのはお兄ちゃんだから、別に問題ない。

 

 きっと今頃慌ててるんだろうなーって思うけど、こんなに『わたし』を惑わせたんだから仕方ないよね。

 

ーカレンの事を独り占めしたいー

 

「ふふっ♪」

 

 気がつけばそれは呪いではなく『わたし』にとって祝福になっていて、思い返せば返すほど、幸せが包んでくれる。

 

「早く、休みにならないかなー♪」

 

 きっとやってくる幸福な日常に夢を馳せて、『わたし』はにっこりと鏡の『カレン』に微笑んだ。

 

to be continued?

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