カレンが言うアプローチを本当にしたらどうなるか   作:黒いトナカイ

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カレンが言うアプローチを本当にしたら大変なことになってきた

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Case3【お外でランチできたらいいのにな。たまには静かなところで、ぼーっと……する横顔を見せてあげたーい♪】〜実践編〜

 

 ゆるりゆるりと時間がゆっくり流れている。

 

 天気は良好。見渡す限りの美しい緑一面。その先にある池には鯉が泳いでいて、なんとも風情のある景色だ。

 

 レース中の喧騒なんて、今この時間では遠い存在のように感じる。

 

 そこはメジロ家の庭園。

 

 お嬢様にお願いし、今日1日使わせて貰う約束をしているのだ。

 

 勿論それ相応の対価をお渡ししており、貰った時には大層喜んでいた。

 まぁ今年調子良いしねあのチーム。おっと話が逸れた。

 

 むん。

 

 さて、現実逃避をしているが状況はよろしくない。

 今の状況をおさらいしよう。

 

 庭園の大きな木の影でシートを敷いて座っているが、その俺の膝の上にはウマ娘の頭が乗っている。

 

「ん……」

 

 安心し切った顔で微睡の中に身を委ねているその子の名はカレンチャン。

 

 俺が担当するウマ娘だ。

 

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 少し時間を巻き戻す。

 

 多忙で休めないカレンの為に立てた計画。

 それは誰にも邪魔されない場所で2人でゆっくりしようと言うものだ。

 

 やはり下手な場所を使おうものなら、有名であるカレンはすぐにファンに囲まれてしまう。

 そうならないために、私有地を使わせてもらう事にしたのだ。

 

 メジロの使用人の中にもファンがいるようではあるが、そこは話を通してくれたのか特に波風立つことなく来ることができた。

 

「うわー! すっごく広いねお兄ちゃん♪」

 

 のびーっと背を伸ばすカレンに、自然と顔が綻ぶ。

 あまりにも出来た子だから忘れがちだが、まだ中等部なのだ。

 もっと大人に甘えて良い存在で然るべきだ。

 

「でも大丈夫だったの? こんな大きいところ借りちゃって」

 

 まぁ当然の疑問だろう。

 今思うと良くアレくらいの対価で貸してくれたなって思うが、後に会ったライアンに聞いてみると。

 

『マックイーンはあの子のトレーナーさんと出掛ける口実が欲しかったんですよ。だからあのチケット貰えてすっごく嬉しかったんだと思いますよ』

 

 とのことだ。

 まぁ喜んで貰えたなら何よりで、まさにWinWinの関係って奴だ。

 

 しかし、そこを素直に言うつもりはない。

大人の怖さを教えてやるには良い問答なのだ。

 悪いがカレン。ここはちょっと意地悪く行くぞ?

 

「カレンを独り占めする為だ。これくらいどうって事ないさ」

 

 うげぇ……。

 マジで言ってて吐きそうになる。

 前回の時も死にかけたが、今回も中々のダメージだ。

 だがこの程度で倒れるわけにはいかん!

 

 どうだカレン!?

 大人はこんな事までするんだぞ! 少しは此れに懲りて……え?

 

 そこまで考えてカレンの方を向いた時、俺は思わず目を見開き動きを止めてしまう。

 

 そこにいたのは顔を赤らめ、どうしようもないくらい嬉しさを噛み締めたような、今までとは比べ物にならないくらい可愛い笑顔を浮かべたカレンだったから。

 

「そっか……うん……すごく……すごく嬉しい……ありがとね……お兄ちゃん♪」

 

 その向けられた笑顔に思わずドキッとしてしまう。

 あれ? えっと? どう言うことだこれ?

 

「じゃあ今日は……いっぱいいっぱい……わたしを……独り占めさせてあげるね……♪」

 

「お、おう。今日は一緒にゆっくりしようなカレン?」

 

「……うん♪」

 スルッと手を握られ、一緒に庭園内へと足を踏み出す。

 しかもご丁寧に指と指を絡めた所謂恋人繋ぎという奴で。

 

 俺は脳内に1200個ほど『?』を浮かべながら、着いていくことになった。

 

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 あれから少しの間カレンと手を繋ぎ庭園を散歩しているが、珍しく何も話してこなかった。

 

 何だろう、凄く違和感がある。

 

 いつもなら元気にマシンガントークをかましてくるのに、今日は借りてきた猫のように大人しい。

 

 時折何かを言おうとしてる様子はあったが、結局何も話さず今に至っている。

 

 何か機嫌を損ねるような事をしたのかとすら思い尻尾を見るが、そんな事はなく安心を示すように穏やかに揺れていた。

 

 試しに繋いでる手を少し強めに握ってみるとびくんと尻尾が跳ねるが、すぐに元の動きに戻り同じように手を握り返してきた。

 

 なんだこれ? 本当になんだこれ?

 

「お兄ちゃん……あそこの……大きな木の下に行こ?」

 

 暫くして漸く口を開いたと思うと、それだけ言って俺を引っ張り進んでいく。

 

 本当にどうしたんだろう今日のカレンは。

 

 木の下にシートを敷き荷物を置くと「ランチまでは……まだ時間あるよね?」とだけ言い、俺を座らせるや否やその膝に頭を乗せて目を瞑り始めた。

 

 そして話は冒頭に戻る。

 

 むん。

 

 どうしてこうなった?

 

 今まで見た事ないカレンに戸惑うばかりだったが、ふと今日の目的自体は達成していることに気がついた。

 

 いつも頑張ってるカレンを休ませたい。

 

 それが本来の主旨だ。

 

 形はどうあれ、今彼女は間違いなく安らいでいる。

 

 まだ用意したアレコレを使ってはいないが、そこはそう大きな問題じゃない。

 

(……)

 

 さらりと軽く頭を撫でる。

 芸術品のような毛並みを崩さないように気をつけつつ、撫でるのはやめない。

 時折くすぐったそうにしてるが、嫌がってる素振りはない。

 

 こうして寝顔を見るとまだまだ幼い子なんだって感じる。

 だからこそ、いつも頑張ってるカレンに言わないといけない事があった。

 

「いつも本当にお疲れ様カレン」

 

 その言葉を聞くとカレンは嬉しそうに口角を上げ、そして少ししたのち小さな寝息が聞こえてくるのだった。

 

Case3 以前よりも更に懐いてくれた(?)

 

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 今日は待ちに待ったお兄ちゃんとデートの日。

 

 場所を聞いてなかったけど、まさかメジロ家の庭園だなんてとても驚いた。

 ほぼ貸切みたいな状態を見て、何となく今日お兄ちゃんがしたかったことが分かった。

 

 ……そんな事されちゃうと益々好きになっちゃうよ、もう。

 

 きっといつも多忙なカレンの為に用意してくれたこの時間。カレンにとってもお兄ちゃんを独り占め出来る大切な時間。

 

 しっかりと噛み締めたいなって思う。

 でも同時に気になることも出てしまう。

 

「でも大丈夫だったの? こんな大きいところ借りちゃって」

 

 マックイーンさんのトレーナーとお兄ちゃんは仲が良いのは知っている。

 だからってそう簡単にこんな大きい場所を借りるなんて出来ないはずだ。

 

 それこそ相応の対価が要求されないと割に合わない。

 カレンの為に無理してるんじゃないかって不安にもなってしまう。

 例えカレンの事を休ませてくれても、お兄ちゃんに苦労してまでして欲しくない。

 

 でもお兄ちゃんは、そんなカレンの不安を一瞬で塗りつぶす言葉を掛けてきてくれて。

 

「カレンを独り占めする為だ。これくらいどうって事ないさ」

 

 穏やかな笑みで言われたその言葉は『カレン』を『わたし』に戻すのに十分すぎるものだった。

 

 あぁ、もう。

 

 どうしてこの人はいつもこんなに『わたし』を乱すのかな。

 

 こんなこと言われたら、何にも言えなくなっちゃうよ。

 元々言うつもりなんてなかったけどさ。

 

 だから『わたし』はただ

 

「そっか……うん……すごく……すごく嬉しい……ありがとね……お兄ちゃん♪」

 

 と『わたし』に出来る精一杯の笑みをお兄ちゃんに向けるのだった。

 心なしか顔が赤くなってる気がしたけど、きっと気のせいじゃない。

 

「じゃあ今日は……いっぱいいっぱい……わたしを……独り占めさせてあげるね……♪」

 

 そう言って手を繋いで、お兄ちゃんと庭園に歩き出した。

 

 夢に見た恋人繋ぎ。

 お兄ちゃんってやっぱ手大きいなぁと、場違いな事を考えながらその感触を楽しんだ。

 

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 そして歩き出して暫くした時、『わたし』は窮地に立たされていた。

 

(あれ……? いつもみたいに上手く話せない……? どうしよう……なんで……?)

 

 何かを言おうとしても、それは虚空に吸い込まれるばかりで上手く出てこない。

 

 握った手から体温が伝わってくるだけで、心臓がドキドキして止まらない。

 今日の為に沢山話題を用意してきたはずなのに、それも何処かにいってしまった。

 

 適当に庭園をぶらぶらしてるけど、正直景色も全く頭に入ってこない。

 

 何でなんだろう。

 『カレン』ならいつも自分から話題を出せるはずなのに、今の『わたし』は全く駄目だ。

 

 好きな人とは上手く話せないって事を、今になって理解させられるなんて思いもよらなかった。

 きっとお兄ちゃんも何も喋らないわたしに困惑してるに違いない。

 

 どうしようどうしようと思ってると、不意にお兄ちゃんから手を少し強く握られた。

 まるで、大丈夫だよって言ってくれてるみたいに。

 

(あっ……)

 

 ドキドキしてた胸が、また違ったドキドキに変わってくる。

 知らないドキドキに困惑するけど、それは『わたし』にとってとてもとても心地良いもので。

 

 どうしようもないくらいに、安らぎがわたしを包んできてくれて。

 

(…………)

 

 あぁなんて……なんて愛しい人なんだろう……。

 

 こんな時間が永遠に続けば良いのにって思う。

 初恋の人と再会して、今こうして手を繋いで歩いてる。『カレン』のことを理解して支えてくれて、『わたし』のことをこれでもかと幸せにしてくれる人。

 

 甘えたい。もっと甘えたい。

 この人に『わたし』の全てを捧げたい。

 

 そんな考えすら出てきてしまうくらいに、『わたし』はもう彼に堕ちてしまっていた。

 

「お兄ちゃん……あそこの……大きな木の下に行こ?」

 

 ふと目についた大きな木の下に向かうとお兄ちゃんに座るように促して、『わたし』はその膝の上に頭を乗せる。

 

 所謂膝枕。普通は逆なんだけどね。

 

 お兄ちゃんはいきなりのことにちょっと驚いてるみたいだった。

 

(ごめんねお兄ちゃん?)

 

 心の中で謝りつつも、今はただお兄ちゃんに甘えたかった。

 

 昔から甘えるっていうのがよく分かってなかったけど、今ならわかる。

 

 こうやって自分を曝け出すことが、本当の意味で甘えるってことなんだろうって。

 だから今、『わたし』は普段絶対に見せない姿をお兄ちゃんに見せていた。

 

 ただ同時に少し怖くなってくるの確かだった。こうして見せてしまって幻滅とかされてないかなって。

 そんなことする人じゃないって知っていても、どうしても不安になる。

 

 そうしているとお兄ちゃんが優しく頭を撫で始めてくれた。安心させてくれるように。

 その毛並みを大事にする手つきにすら、どうしようもなく幸せを感じてしまう。

 

(あぁ……やっぱりわかってくれてるんだ……嬉しい……本当に嬉しいな……)

 

「いつも本当にお疲れ様カレン」

 

 微睡に沈む間際に聞こえたその言葉は、今の『わたし』を間違いなく肯定してくれるもので。

 何も不安になる事なく、『わたし』は夢の中へと旅立っていった。

 

Case3 カレンは心から甘える事を覚えた

 

to be continue?

 

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