渋谷で百鬼夜行が行われるジャンプの漫画に転生したんで、平安の今から準備する   作:三白めめ

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実は色々と考えていた話。


『勝利条件』/AAでよく目にしていた

 まず動いたのは、雄呂血だった。天逆鉾の実物を今まで見たことはなかったが、当たった時点で術式が解けるものと推測。呼び出した"実体のある"式神に対してどうなるかの検証も兼ねて巨大な大蛇を呼び出した。

 ゆらは回避を選択。蛇の頭に乗り、呪力で形成した薙刀をその目に突き刺す。薙刀を放置して飛び降りれば、先ほどまでゆらのいた空間を無数の鷹が突進していた。

 飛び降りると共に、廉貞と融合させた禄存の角を呼び出す。両足をつけて上に乗り、ウォータースライダーのように滑って移動する。

 向かう先は、居合の構えを取る男。彼──長親は、自らの視界を2.5メートルに制限することで、その範囲内を一切の区別なく切り刻む術式を持つ。

 対するは、シン・陰流──抜刀の構えを取るゆら。花開院と御門院の抜刀術、その最速を競う戦いは、ゆらが動きながら抜刀を使用することが可能になったことで優位に立っていた。

 長親の持つ刀を砕き、その勢いで首を斬り落とす。七対一。噴出した血がゆらの服や、足元の水を赤く染めた。

 

「雲よ、矢を放て」

 

 長親の術式は強力だったが、無差別故に援護は不可能となっていた。よって、彼が死んだ直後、想定通りに足場が狙われる。正確には、水を流しているところに雷が落ちることによって。吉平による天候操作の術式。雨乞いに代表されるそれは古来より世界各地で見られるものであり、だからこそ基礎を突き詰めることで強大な威力を誇る術式となっていた。

 ゆらは角で形成した足場を消去。飛び散った水飛沫が雷によって電気を無差別に振り撒く。

 

「螺旋蟲!」

 

 即座に、天海が蝸牛の粘液を展開して雷を抑え込む。そして、ゆらはその隙を逃さない。式神で対処したその瞬間に呪力で強化した蹴りを放った。

 

()ったと思ったのだけど……入れ替わり、既に経験済みだったか」

 

 それは粘液で作られた擬態だったが。ゆらは絡めとろうとするそれを、すぐさま飛び退くことで回避した。ゆらの兄が契克と戦っていた時に披露していたが故に、その対策も既に想定できていたのだ。

 

「……方違(かたたがえ)

 

 そして、そこに設置される禁忌の方角。敵味方問わず、その場でその方向に行った者に災いを起こすその術は、ゆらの動きを一時的に止めることに成功した。呪力の放出で即座に破壊されるそれらだが、短期決戦を取らなければならないゆらにとって、呪力量の損失は厳しいものとなっている。

 

「すでに死んでいるなら、なにも気にすることはないわね」

 

 そして、動きが止まったのなら必殺の一撃が投射される。死体である水蛭子を、心結心結は強制的に動かした。方違や呪力の衝撃で死したその体が崩れていくのも厭わず、ゆらの至近距離まで辿り着かせる。そして──

 

五蘊皆球(ごうんかいきゅう)──でしたか」

 

 相剋関係となっている五行を強制的に融合させることにより、純粋なエネルギーを取り出す。当然、それを制御する人格のない現在はただの大規模な自爆にしかならないが、死体を利用するのであればそれで十分だった。

 

「ちっ!貪狼!」

 

 対抗するため、ゆらは自らの出せる最大威力である獣の顎──貪狼でエネルギーごと死体を砕こうとする。自壊を続ける水蛭子は容易くその形を跡形も残さず滅することができたが、大規模な破壊の渦動は別だ。

 爆風が周囲に吹き荒ぶ。晴明に付いてきた妖の中でも比較的弱い者や、研鑽を怠っていた御門院の陰陽師が巻き添えに死んでいく中、直撃したゆらは肉と腸が抉れる痛みを覚え、即座にそれが反転術式で治癒されることを知覚した。止まれば即座に死ぬだろう。そんな暴威の中、ゆらは攻勢を続けていた。守りに回った瞬間に、反転術式があっても追いつかなくなる──極ノ番の継続時間も限界に近いこともあって、攻め続けるしかないということを考慮しても異常なほどの、それこそ一人でも多く屠ることを目的とする動き。

 

「……哀れだな」

 

 晴明は呟く。いくら道満の記憶と経験を追体験したといえど、あまりにも無謀な八対一。現在は六対一にまでもつれ込んでいるが、晴明自身が出れば、数の差も相まって敗北は確実だろう。晴明以外の御門院や安倍姓と渡り合えているだけであって、晴明の参戦でその均衡は崩れる。それを理解した上で彼女はこの無謀な賭けをしていた……?

 

「いや、自覚的な自棄だと……?」

 

 晴明にはその理由が理解できない。生来の強者であり、在りし日を目指すものとして定めて客観的に見ることのできない彼は、()()()()()()()を解することが不可能だった。

 目的は察することができないが、重力の檻などいくらでもやりようがあると考えてゆらを捕らえる晴明は、そのゆら自身が懐から拳銃を取り出したことに珍しく驚愕の表情を浮かべた。その銃口が向いている先は、烏崎契克だったのだから。

 不意打ちを、この現状で唯一の味方に向けて使う。確かに契克は羽衣狐を孕んでいるが故にその判断も間違っていないが……

 晴明は自らの直感に従い、再び空間を繋ぐ門を形成。引き金に指をかけたゆらを葵螺旋城の外へと転移させた。

「──!まだ終わってへん!……晴明!」

「刺し違えてでも、という意図ではないだろう。ならば、何故だ」

 

 ともかく。そう考えて晴明は意識を失っている契克を離宮へ連れていく。万が一意識を取り戻したとき、さきほどのゆらのように大立ち回りで生き残っている当主が減らされるのは面倒だった。

 

「身重で身体能力が落ちていれば、十分に止めることが可能だろう」

 

 契克がこちらに付かなかったとしても、事実上の封印が可能というメリットがある。そう想定して実行した珱姫の体に受肉させて孕ませるという手段は、正しく成立していた。

 

 


 

 この世界、ぬらりひょんの孫だった。やることもなく離宮に閉じ込められている現在、ふと気が付いたのだ。原作完結が10年ほど前だったことから思い至らなかったが、道理で羽衣狐に見覚えがあると思った。やる夫スレのAAでよく目にしていたのだ。AAの都合上カラーではなかったので、黒と白だけとはいえイメージと合致するには時間がかかっていたが。

 

「道理で呪霊はいないし、畏なんて言葉があると思った」

 

 なら、ゆらちゃんが無謀な突撃をしてきたことにも理由が存在しているかもしれない。とはいえ、あれは特攻に近いだろう。幸いにもどこかに飛ばされたが、去り際に見たゆらちゃんの目は、死ぬ覚悟も宿していたそれだった。つまり、ゆらちゃんが死んでも目的は達成できる……正確には、俺とゆらちゃんが死ぬのも勝利条件の一つだった……?

 

「──そっか」

 

 考えてみれば簡単な話だ。なんてことはない。結局のところ、晴明は晴明だからこそ最強なのであって、最強だから安倍晴明というわけではないのだ。

 

「……結局聞く羽目になったね」

 

 何を託されたのか。部品として必要だから死ぬというのであれば、それでも構わない。それもまた生き方の一つで、"熱"の有無はともかく否定する権利は誰にもないと俺は思う。ただ、それが考えた末の答えなのかどうかくらいは、確かめるべきだ。俺と、ゆらちゃん自身の最期のために。

 

 ……そろそろ目を逸らすのは止めにしよう。俺の自意識が男だから、男と恋愛するのは生理的に無理だったが。まさか処女懐胎とは……。成長が早いからか、十月十日もかからないだろうが、本当に複雑な気分になる。確かに理にかなってはいる。理論上は、そうするのが最適だと言うのも理解できた。

 ──虎杖の母親が判明した時の気持ちが何倍にもなった気分だ。

 

「囚われのヒロインなんて柄じゃないけどね」

 

 五条先生ポジションを狙っていたとはいえ、事実上の封印みたいなことになるとは思わなかった。死滅回游開催前に封印されるところまでそっくりだとは。そういう点では、ゆらちゃんの成長は俺のおかげと言えるかもしれない。なにせ俺は実質五条先生ポジションだったのだから。

 

「……十年前かぁ」

 

 呪術廻戦の十年くらい前。一巻発売は2008年だ。源氏物語は週間連載ではないのでそれほど意識していない平安や戦国と違って、平成の今は娯楽が多い。十数年の重みは相当に深かったのだ。受肉によって百と数十年生きた人間の言うことではないが、2008年のアニメといえばとらドラ!や黒執事、とある魔術の禁書目録。十年前ならガルパンやトータルイクリプス(TE勢)というように具体例で考えると、意外と精神にキた。光どころか眩い闇にゴーウィゴーウィしてしまっているのが晴明だが。

 

「まあ、なんとかなるか」

 

 身体が重い。記憶は既にあいまいだが、小学校だかで妊婦の体験だかをしていなければ動くのも苦労しただろう。……吐き気してきた。




ようやく勘違いに気付く。
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