渋谷で百鬼夜行が行われるジャンプの漫画に転生したんで、平安の今から準備する   作:三白めめ

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歴史考証を投げ捨てた話。戦国における術師の影響で、本来の歴史よりいくつかのイベントが早くなったりしています。


『伊達藩に行こう』/日本版マーリン的な

「伊達藩に行こう!」

 

 (やっこ)の数少ない友人である()()がそう提案したとき、齢を考えろと言ったのは妥当だと思う。見かけは若く保っているといえど、そろそろ寿命を迎えてもおかしくない年齢だ。旅の道中でぽっくり死んでいたなど洒落にもならない。

 芥見という名前も仮の名だと本人が言っていたからだ。彼が死ぬ前にそろそろ本名を聞きたいところだが……。そう思っていると、茶を飲んでいたもう一人が反応した。

 

「京から伊達というと、随分と遠いわ」

 

 まだ和装だった心結心結が苦言を呈する。とはいえ、彼女自身の問題ではない。実際、若くして泰山府君祭による不老の延命を会得していた彼女は、見かけより遥かに体力がある。おそらく、現在の御門院家当主である僕が京を離れて大丈夫かということだろう。

 

「この時期の伊達藩……ああ、使節か。であれば、僕は基督教に対し万全を期すための視察という名目で行けるね」

「使節……ああ、慶長遣欧使節ね。以前は面倒なことになったのだけれど……」

 

 心結心結の在位期間に派遣された天正遣欧少年使節は、基督教の布教が目的だったが故に対処せざるを得なかった。というより、特級指定相当の海外の妖を連れてきていたせいで、僕や心結心結、それと勝手に付いてきた芥見で九州まで出張ることになったのだ。新たな知見を得られたのは意義深かったが、できればこんな修羅場は避けたいところだろう。……まあ、芥見がそういった現場を調べてくるせいで、陰陽頭に就任した僕が出る案件が多くなったのだが。

 

「今回は貿易目的らしいし、前回みたいなことにはならないと思いたいね」

「私、前線で切った張ったする戦い方じゃないと何度言えば分かるのかしら……」

 

 心結心結の術式は傀儡操術で、術式の解釈を広げることで人間や妖の同士討ちや遠隔操作を行うまでに至っていた。つまり、本来は遠くから傀儡を使って戦うのが定石のはずだ。

 同じように、僕の得手は結界術であって、式神を伴って殴り合うのは得意分野じゃない。勝ち筋を作らせないよう、最低限は修めた方がいいと鍛錬した、というよりはその必要性に駆られて身についていたが、できるならやりたくはなかった。

 そうして京から伊達藩へと移動に長けた式神に乗って、それなりの時間をかけながら進む。白装──安倍姓に頼るのは恐れ多いが、雄呂血様の蛇ならすぐに着くと考えると、巨大な式神の有用性も理解できた。

 

 そして、以前の使節が持ち帰って来たもの──海外の妖怪ではなく、西洋の音楽などについて話したりしながらの道中も終わり、伊達藩へと到着する。

 

「これが、どれす……?」

「ゴスロリとも言うらしいね。ゴシックロリータだったっけ。海外の年号と服の種類らしいよ」

 

 心結心結は、持ち帰ってきた品を興味深そうに眺めていた。事前に欧州について調べていた芥見がそれぞれの解説を行い、ついでに呪詛を含んだ品を仕分けていく。結界での隔離と分析は僕の仕事だから、正体不明の物を矢継ぎ早に回されるよりはましだが、どうにも鑑賞会の片手間にやっているようにしか見えない。

 

「藩主から検品の返礼として、いくつか持って帰っていいと言われているよ」

 

 僕は海外における呪詛のデータが取れれば十分なので、おそらくは心結心結が決めることになるだろう。視線が洋服の方へ向いていることからも明らかだ。

 

「ねえ、天海。私は貴方の一代前の当主──いわば先代にして師のひとりと言っても過言ではないわ。言いたいことはわかるわネ?」

 

 随分とあのドレスが気に入ったようで、真っ先にそれの解析と解呪を済ませろとのお達しが来た。明らかに厄物というか、女の情念が絡んでいるだろう代物だ。……手間がかかることは明らかだった。

 

「芥見、他の……なんで揚げ菓子を食べてるんだ!」

「正確にはチュロスだよ。流石スペインまで行った使節だね」

 

 一応許可されているとはいえ、検品中にその報酬となるものを無断で食べているのはどうかと思う。というか、それはついさっき呪詛などが無いか確かめたばかりのものだ。いくらなんでも早すぎる。

 縛りではない約束だから問題ないと判断したのだろうが、彼が割と自由人だということを忘れていた。ともかく、芥見に他の検品を任せ、ドレスの方に着手する。

 

「基本骨子としては妖刀に近い。しかし、何をすればここまで強い呪いになるのか……。げに恐ろしきは女の情念といったところかね」

 

 過呪の怨念とも形容できるそれの解析と呪いの封印を終えて心結心結に渡すと、早速着替えてくるとこの場を去った。……まだ品を検めている途中なのだけど。未だにチュロスとやらを食べながら片手間で作業している芥見と、仕事を放棄して着替えに行った心結心結を横目に、とりあえず任せていた分以外は終わらせる。三年ほど研鑽しなければ得られないくらいの知見がこの一時で得られたのは貴重だったが、かなり疲れた。

 

「……芥見、それ一本くれないか?」

「ん」

 

 終わらせた報酬として食べるチュロスは思ったよりも甘くて、酷使した頭にはありがたかったが、水が欲しくなる。

 

「私にもひとついただくわ」

 

 それなりに苦戦して着替えたのだろう。複雑な構造の洋服を着た心結心結もやっと戻ってきた。伊達藩は京より気温が低いためか、夏場でも汗をかいている様子はない。

 三人で、洋菓子を食べる。全ての品を検め終わり、後は適当に話しつつ帰る支度をするだけだ。

 

「気になったのだけど、あの馬は何だったの?」

 

 芥見は伊達藩に来た時、謎の馬を藩主である伊達政宗に譲渡していた。なにやら胴に鉄の筒を取り付け、手綱の代わりに龍の角のようなものが後ろに二つ、持ち手のようについている奇妙な馬だ。

 

「馬イクだよ。せっかく伊達政宗に会えるんだ。それくらいはしてもいいと思ってね」

「ばいく……?」

 

 そういえば、この男は偶に突拍子もないことをやる。特にまだ乱世だった頃はそれが顕著で、ようやくなりを潜めたと思ったのだが……。そういえば、あの奇妙な馬の他に、荷重を軽減する籠手も送っていた気がする。あと、それなりの等級の日本刀を六本。まさか、六刀流でもさせようとしたのだろうか。指の間に挟むくらいしか方法としてはないと思うが。

 思えば、戦国では領域展開の他に、火縄銃二丁を持って敵陣に突っ込むような男だ。遷煙呪法が火縄銃と相性がいいとはいえ、それを高威力の誘導付きで連射するような真似をする馬鹿でもある。それでいて戦国武将なら防げるはずだと妙な期待をしていたあたり、大将を張る人間は自分と互角くらいの実力とでも思っていたのだろうか。それができる可能性があるのは音に聞く本多忠勝くらいだ。

 

 そもそも、芥見のやっていることの目的が分からない。豊臣に処刑されかけた伊達政宗に呪具や馬を与えたかと思えば、豊臣側である石田三成に一級相当の呪具──振るうほどに自身の速度が増す長刀を対価無しに渡したりする。武器商人と呼ぶには商いをしておらず、乱世を望むには秩序側に立っている在り方は、長年の付き合いがある僕からしても些かに不気味だった。

 

「まあ、何にせよやることは変わらないか」

 

 術の研鑽という点で、芥見は極めて有為な人物だ。彼が死ぬまでは、友達を続けてもいいだろう。……今まで散々修羅場に連れていかれた恨みがあるから、死んだら大喜びしてやるけれど。

 

 


 

 

 戦国時代何もわからない……。俺はフィーリングで日本史をやっている。

 せっかく呪術廻戦で術式バトルができるなら、BASARAするのもやぶさかではない。そう思って戦国時代はだいぶ暴れまわったのだが、いかんせん俺と他の戦国武将では強さの格が違った。ホンダム……本多忠勝は相応の強さだったが、他があんまり……

 なので、関ヶ原に向けて有名な戦国武将に武器を配ることにした。平安の時に作るだけ作って使わない呪具があるので、それをこの機会に放出しよう。やっぱり塩漬けは勿体ない。

 ……関ヶ原には体の寿命が持たないのが残念だったが、いい感じになるだろう。あと、本来の歴史より使節の時期が早かったりするので、洋菓子を目当てに伊達藩まで行った。伊達政宗といえば有名な武将だ。とはいえ独眼竜が有名で、武器自体はさほど高名なものじゃなかったはずだ。なので六爪流と馬イクでいい感じにパーリーしてほしいという願いを込めて渡しに行くことにする。

 一人じゃなんか寂しいというか、せっかく人脈を作ったのだから皆で旅行に行こうと天海や心結心結を誘ったら、快諾してくれたのには助かった。一人旅は平成になって新幹線ができてからでないと暇でしょうがない。

 

「将来的には俺が美少女キャラとしてガチャから出る……ってコト!?」

 

 戦国武将が美少女化する平成だ。二丁の火縄銃で前線に出る凸砂的な立ち回りをした記録を残している俺が美少女化されてもおかしくない。なんなら、平安の陰陽師としての俺──烏崎契克も同じ可能性を持っている。……CVはだれになるだろう。

 前世では"自分を美少女化してみた"とか"自分をアニメキャラ化してみた"的な診断がネットに存在した記憶があるが、俺はアニメキャラ化することが内定しているようなものだ。それも、アニメの題材としてはもってこいの戦国や平安の有名人物となれば、大御所や有名声優がつくだろう。

 

 そういえば、古典というか平安以後の俺の評価だが。日本版マーリンというか、晴明を始めとして頼光とかの英雄に対する助言者としての立場になっていた。平安の物語で困ったら俺を出しておけというか、晴明を正義の陰陽師として語る都合上、悪の立場になる道満の功績のいくつかが俺の逸話と統合された感じだ。

 

 平安の当時は想定していなかった、後世の評価という楽しみが増えている中、伊達藩から京へ帰る。現在の寿命は近いが、受肉先の家系も決まったことだし、後は流れに任せるだけだ。次の受肉は平成。ついに望んでいた原作がやってくる。

 

「楽しみだ。本当に」

 




アニメやゲームより先に、自分自身が女体化して受肉した。
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