渋谷で百鬼夜行が行われるジャンプの漫画に転生したんで、平安の今から準備する   作:三白めめ

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わからせ編決着です。


友達

 兵庫県■■市■区■■■町■番地■■■、■■■■マンション■階■■■号室。入居者は兄弟とその両親だった。"俺"には兄弟や姉妹はいなかったのだけど。

 

「ショッギョ・ムッジョだのアイエエエだのとネタにしていたのが嗤えてくるね」

 

 呪いが廻ることを望んでいたから、一度大切なもの(前世)を捨てた以上今世も色々と失うのは当然かもしれない。なら、何かを所有していると考えなければいいのだろうか。……どこかで聞いたような言葉だ。まるで肝心なところや図書館で逃げ続けている男の内心のような。……なんかそれはダメな気がする。

 

 ──顔が痛い。目の前には拳を振り抜いたゆらちゃん。

 ……もしかして、殴られた? ガワは女の子やぞ。

 

 カラオケで何曲も歌ったような息苦しさと爽快感に、夢を見ていたような感覚と共に今までの行動を思い出す。それと、自分の身に起きたことも。

 

「……晴明ェ! アイツ、ほんっとアイツ!」

 

 復活の方法から嫌な予感はしていたが、マジでやりやがった!髪で胸が隠れてるけど裸だし、なんか足が水分で冷える。あと股が痛い。

なんで俺がそんな状況なのにゆらちゃんは拳を構えてるんだ。

 

「にしても、『変身をあと二回も私は残している』と言えなかったのは残念かな」

「それや」

 

 とりあえず、殴るか対話するか一方に決めてほしい。音が遅れて聞こえるような拳を繰り出しながら会話を始めるのは信頼で片付けていい話じゃないと思う

 

「なんか、あんたの言葉って薄っぺらいんや。本心が見えないんよ」

「安心しなよ。別にうまく話せないわけじゃないさ。しかし、この世界の十二月に"件"の話題を出すことになるとはね」

 

 引用が多数を占めるからな。オタクは大体アニメの引用をしたがるものだ。……あと、主語も大きくなりがち。今のようにね。

 それにしても、ぬらりひょんの孫においては渋谷の百鬼夜行は件が発端になるんだったか。

 

「……色々考えたんやけどな。未来人が近いんか?」

 

 もしかして、俺のことを言ってるのか? ちょっとびっくりした。半分くらい当たってる。

 

「──超能力者や宇宙人、異世界人の可能性もあるよ」

 

 対有機生命体コンタクト用……なんだっけ。この世界の外から来たなにかしらともいえる。

 

「それはええねん。どのみち、友達には変わらへんからな」

 

 ……?

 

「それは、オレとゆらちゃんが?」

「他にここにはおらへんやろ。平安の記憶も合わせると、兄より付き合いが長いんや」

 

 友達……そんなもの、どうせ離れていくのに。過去も前世も、捨てたはずのものが追いかけてくるなら。

 

「作った物は離れていく。だから、もういい。手放すよ」

「勝手に決めんなや! それはそれで、これはこれやぞ。全部勝手に纏めて背負わんといて!」

 

 開き直りと八つ当たりだ。正当性なんてないことも分かってる。ただ、俺が正気に戻ったのにまだ殴ろうとしてくるゆらちゃんもどうかと思う。だから。こっからは喧嘩だ。

 

「さて、先ほど件の話題を出した後にこれをするのは、盗作のようで気は進まないが……まあ、仮面を着けたデビルマンモーの元ネタも似たようなことをしているし許してくれるよな!」

 

 使うのは、羽衣狐戦の備えの時についでに要請した仕掛け。京都市内のスピーカー全てから音楽を流す権利だ。流す曲はもちろん。

 

「廻廻奇譚!」

 

 独特のイントロと共に、大音量で曲が流れ出す。オープニングを流しながら、作品のヒロインと喧嘩するのは乙なものじゃないか?

 別の世界だけど。なんかもはや原作とは別物になってるけど。

 

 さて、喧嘩とは言ったものの、本気の対人戦なら晴明以外に負けることはない。

 

「──遷煙呪法」

 

 懐に忍ばせている、ダウナー系のアレを超高純度の煙として吹き付ける。分類上は毒であるから、反転術式を使うにも特殊なセンスが要求されるのだ。基本的にこれをやっていれば勝てる出し得技。

 

「っあ゛あ゛あ゛!」

 

 のはずなんだけど、ゆらちゃんはなんで普通に動けるんだ? もしかして──

 

「……回数券、何本使った?」

「いちいち覚えとらんわ!」

 

 ……ゆらちゃんが高校卒業できるか不安になってきた。寿命足りるかな。

 

 しょうがないので、いつぞやの竜二戦と同じように身体強化に全振りする。必勝パターンが効かないのが辛い。なんなら逆鉾と万里ノ鎖がゆらちゃんの手にある。

 

「この前のお返しや!」

 

 鎖が蛇のように迫ってきた。それと共にゆらちゃんは距離を詰め、背中の槍と尻尾でオールレンジ攻撃をこなす。確かに、式神の出力がゆらちゃんの術式だから、反転すれば入力できるだろうとは思ったけど……

 

「オレが言うのもなんだけど、本当に人間!?」

「失礼やな。女の子やぞ」

 

 心象を表に出せばまるで人外、物の怪みたいだ。

 尻尾に乗ったり宙返りで槍を蹴り飛ばしたりして一撃一撃を逸らすが、やけに逆鉾の扱いが上手い。尻尾の方は色々とアレだったさっきのオレを見て参考にしたにせよ、逆鉾の方は……

 

「なにせ頼光と実際に戦ったんやからな! 頭ブッ刺されたわ」

「よく生きてたな」

 

 本人登場か。それはしょうがない。おおかた口寄せで魂の情報まで引っ張られてきたとかだろう。これだから天与の暴君は。

 そうして話しながらの攻防が続く。殴り、防御し、いつの間にかゆらちゃんの極ノ番は解けていた。同時に、オレの遷煙呪法も。互いに消耗激しく、今や呪力を篭めたただの殴り合いだ。

 煙の水分が冬の冷気で雪へと変わり、この場所へと降り出す。

 

「何物にも成れないだけの屍だ、嗤えよ」

「だーかーらっ! あんたは私の友達だって言ってるやろ!」

 

 曲が静かになる。ちょうど言葉と歌詞が重なって、独創性の欠片もないと自嘲した。曇らせは好んでいたが、自分がそうなる立場になるとそうも言っていられないものだ。

 だから、目の前の彼女がひたすらに眩しくて、傍にいるには不釣り合いに思えてしまう。

 

「ずっと隠し事をしてきた!」

「千年かけて色々企んどったやつと迷惑さは同じや! やから先にあんたから殴っとる!」

 

 腹を殴られ、黒い閃光が奔る。一応女の子だぞ。怒りを乗せて同じように腹を殴れば、こちらにも黒閃が発生した。

 

あの時(玉折事変)に、誰の味方もできなかった!」

「どのみち全員纏めて殴るつもりやったから構わへんよ!」

 

 左手を折られたので、同じように左手を殴って骨を粉砕する。当然といわんばかりに、互いに打撃の瞬間は黒い光が出た。

 

「ゆらちゃんや奴良くんを巻き込んだ!」

「奴良くんは元からヤクザやろ! そのうち決めなきゃあかんことが、あの時に早まっただけや! それに私は今更やろ! 実際、強くならんと晴明の復活で全部終わっとった」

 

 そう言ってゆらちゃんは右ストレートを振りかぶる。とはいえ、オレも負けるつもりはない。前回の反省を活かして今回はカウンターだ。拳が届かない距離までバックステップし、その後一気に畳みかける。

 

「やから、あんたが未来人やろうと異星人やろうと知ったこっちゃない! ここまで墜ちてこい!」

 

 腕を高速で動かすゆらちゃん。対するオレは後ろへ跳躍し、即座に前方へ加速する準備を整えた。

 ──そして、銃声。

 

「やっと撃てたわ」

 

 ゆらちゃんの手元にある拳銃からは、硝煙が立ち昇っていた。曲が止まる。

 

「しまったなぁ……忘れてた」

 

 そうして、オレの意識は暗転する。

 

「河原の殴り合いには、締まらん決着やけどなぁ」

 

 意識を失う直前、腕を掴まれる感触と一緒にそんな声が聞こえた。

 そうだった。どうでもいいなら、さっさと結界から離れるなりすればよかったんだ。──捨てきれなかった。プライドとかじゃなくて、友情を。

 

 

 

 ──目が覚める。布の肌触りから、上下ともに服を着ていることが理解できた。

 

「冬やと風邪ひくやろ。服、スーパーから持ってきといた」

 

 周囲の光景からして、そのスーパーだろう。寝ていた木製のベンチから起き上がり、ゆらちゃんの話を聞く。

 

「なあ、考えたんやけど。この回游の黒幕引きずり出す案」

 

 起きたのなら仕事の話だと唐突に告げられたそれは、理論上可能だろうという与太話。回游の永続という条件を満たし、敵を同じ土俵に立たせることも可能な最強にして最悪の一手である。

 

「……正気? 名案だとは思うけど、オレとしてはゆらちゃんにやらせたくは……」

「アホか。烏崎契克がこれやるんはホンマにシャレならんわ!」

 

 実際に可能かどうかの検証は、破軍で呼び出した十三代目秀元と確認していたようだ。なんて言っていたか聞いたら、溜息と「三日天下かぁ」の一言だったらしい。 

 

「ポイント結構持っとるやろ? 七十点くらいくれへん?」

 

 まあ、オレがこの総則を追加すると本当に面倒なことにしかならないからいいか。……花開院の現当主がやるのも大問題だろうけど。そうだ。オレもまだ百点ちょい残っているし、総則を追加しておこう。

 

「……友達なんだ。一緒にバカやろうぜ」

 

 ポイントの譲渡手続きを終え、ゆらちゃんは自身に百と五点を所持していることを確認した。そして、コガネを通してこう告げる。

 

「総則追加。──現在発生している結界全てを統合。その規模を日本全土へ拡大」

「総則追加。泳者の現在地も開示して」

 

 そして訪れる一分ほどの沈黙。回游の永続といったルールに引っかからないかやリソースの調整などを計算しているのだろう。そして──

 

「……総則が追加されました。総則12:回游を日本全土へ拡大。総則13:泳者の現在地を開示」

 

 彼方を遮っていた結界が消え、桜島コロニーなどでなければ観測が困難になる。いや、今やコロニーという区切りすら無粋だ。泳者の一覧には、御門院天海や安倍晴明といったビッグネームが一気に追加される。そして、その現在地も。

 

「これで晴明らは全員巻き込んだ。で、誰倒せば回游は終わるんや?」

「回游の仕組みは天海が設定した。主催者が管理者になれない縛りでこの規模の結界を築いたなら、同じくらいに付き合いの長い心結心結だろうな。別に天元様云々は気にする必要もないから縛りを考慮しなくていいし」

 

 その心結心結の現在地は東京第二コロニー。そして、そこには天海もいる。

 

「これで呪詛師だと言われてもおかしくないな。オレたち」

「……当主はクビやろうな。任期半年も持たへんかったかぁ」

 

 いくら必要といえど、こうしてこの国すべてを敵に回すようなことをするとは思わなった。

 

「神様倒そうとしてんねんぞ。こんくらいなんとかするわ。……人守るんは奴良くんに任せる。従えとるんは多いし何とかなるやろ」

 

 ゆらちゃんは椅子から立ち上がる。服を整え、巨大な空飛ぶ蛇を呼び出した。

 

「──終わらせに行こか」




次回、疑似死滅回遊編最終戦。
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