渋谷で百鬼夜行が行われるジャンプの漫画に転生したんで、平安の今から準備する   作:三白めめ

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ようやくあらすじを回収できる。


終わり
特級術師オリ主


 ──葵城跡。

 ──直上、葵螺旋城。

 ──頂天、本殿にて。

 

 

 向かい合うのは二人。片方が纏うは陰陽寮の狩衣。もう一方は、現代の洋装。右目に五芒星の刻まれた男とブレザーを羽織った学生服の少女は、陰陽術という土俵で対等に渡り合っていた。周囲を見回せば外界を見下ろせるほどに見通しが良くなっており、彼らの戦いの壮絶さが伺い知れる。

 

「まあ、なんでもありとは言ったけど。正直さっきみたいなのは呪力消費がきつい。大技の迎撃が精いっぱいなんだよな」

 

「そのようだ。だが、あるのだろう?無下限の守りを抜ける術の一つや二つ」

 

「──当然!」

 

 叫ぶと共に少女のポケットより取り出された呪符から繰り出された無数の雷は、男が手を一振りするだけで水へと変じた。五行による天候の操作と、その逆工程の行使を経て宙に散ったそれら、五行のうちの水気は八つ首を持つ龍へと変じて少女へ襲い掛かる。

 4階建てのビルほどの水龍とは比べ物にならないくらいに小さい少女の体躯は、龍の顎に噛み砕かれて無数の呪符へと姿を変えた。

 簡易的な式による、本体と見分けがつかないほどの身代わり。そして、本物の少女は既に動かなくなっている十二の鎧を踏み台にして男の頭上へと跳んでいた。鎧といえど、その大きさは人をはるかに超えたものだ。巨大な蛇や人型など様々な形のそれを使い、陰陽術で強化した身体能力で足場として跳躍する。一秒後には男の頭上を取った次の瞬間──

 

急々如律令(オーダー)

 

 言葉と共に懐から宙に舞う幾百の呪符。一枚一枚が致命の一撃を放てるであろう回避不能な符の群れへ、男──安倍晴明は、ただ手を動かした。

 

「術式順転──天文操作」

 

 それだけで発動する、晴明の得意術式。すべてを押しつぶし、ひれ伏せさせる重力。陰陽術の窮極ともいえるその術式は、舞い散る呪符を一つ残らず地に落として無力化した。

 

「やっぱりズルくない? それ」

 

 同時に、水竜を回避するために跳んだ少女──呪物:契克の指の受肉体にして本人である烏崎契克にもその効力は発揮される。無防備に地に叩き落されてしまえば、敗北は必定。その状況に、契克は既に対処を完了していた。

 

「四神を以て界を分つ」

 

 跳躍と共に四方に投げていた護符で結界を構成する。並の、いや、一流の陰陽師ですら実現不可能な精度の結界は、過度にかかる重力を遮断して、契克の着地を滑らかなものとした。

 

 陰陽術の最終目標とも称される天候操作や雷撃、相手の術式を利用した強大な呪詛返しといった超高等技術がいとも容易く飛び交い、それでもなお決着のつかない生死をかけた術比べ。

 

「本命は呪いか」

 

「流石にバレるよね……」

 

 しかし、それこそがブラフ。晴明の纏う無下限の守り──自身の間に超重力で形成した無限の距離を発生させるそれだが、例えば本体に直接攻撃を発生させれば突破は可能になる。無限について理解することはできないが、似たような存在に対してどうするかはある程度知識を備えている。

 対象の脳内を起点とすれば、物理的距離による減衰や無効化が発生しない。では、その方法はどうするか。それも呪いだ。自身と相手の動きをリンクさせる、丑の刻参りなどの類感呪術。

 

「所作による錯覚……いや、(たい)なる(けい)なれば、(しか)して(しゅ)なり、か」

 

 芻霊呪法と原理自体は同じであり、呪術という親和性で消費呪力を軽減しているとはいえ、太刀で斬られたとはっきりと思い浮かばせるほどのジェスチャーの技量を引っ張ってくるのは相当に負担が大きい。

 

「そして、その付け焼刃に頼るお前じゃないだろう」

 

 故に、万里ノ鎖と天逆鉾による背後からの刺突は横に重力をかけたことによる高速移動で回避された。

 

「これも防がれるってマジ?」

 

 一手も違わぬが故に拮抗している彼らは、ついに互いが誇る最強の術──極の番同士での決着へと移行する。

 

「最後の最後でゴリラ廻戦というのも、どうかと思うけどね」

 

 其は、技術の粋。死滅回游及び渋谷事変で集まった畏と呪力を解放し、今まで展開していなかった四本の狐尾を展開する。選択する戦術は、単純な突撃。そのために身体機能を全力で強化した。同時に遷煙呪法を使用。高温の煙を纏い、多少なりとも自身の位置をずらす。装束による科学的及び呪術的支援、純粋な身体能力強化といった技術を集め、天逆鉾による必殺を狙う。時代は変われど、烏崎契克の戦い方はそれに集束した。

 

 対するは、その名も高き陰陽師。橙の髪に白の衣は、一目見た者に畏怖を抱かせる。天曺地府祭を執り行い、天皇が只人に堕ち空位となった現人神の座へと至った彼はまさしく最強の陰陽師といえよう。

 その彼の誇る唯一の式神である十二天将は、しかし動けずに今や砕け散っていた。それも仕方ない事だろう。相手はかの烏崎契克。最新の技術を取り込み続けて絶えず進歩を重ねる、あらゆる技は初見にして必殺を徹底する彼が相手ではいかなる式神であろうとも荷が重い。たとえそれが、陰陽道における最強の式神たる十二天将すべてであろうと。

 故に、唯一彼もしくは彼女に勝ちうるその主が取る手段は一つ。

 

「励起せよ、十二天将。これなる陰陽師。謹んで泰山府君、冥道の諸神に申し上げ奉る。返魂。式神融合・天将の鬼纏──十二単。永劫輪廻」

 

 泰山府君祭。死者を蘇らせるその術理をして、十二天将を強制的に再起動させる。自らの式たる仏神十二体の力を全て自らの元へと集約するそれが、鵺であり安倍晴明である彼の持つ、正真正銘の”最強の姿”だった。人界と妖、正しく陰陽を司る新たなる闇の主の鬼纏は、ついに十二の神すら自らの眷属、百鬼とみなしたのだ。そうして繰り出される極ノ番。順転と反転を衝突させることによって作り出したのは、局所的な時間異常。当たればその場所が消滅するそれを至近距離で放つのは、さもないと相手は確実に生き残るという確信があったからか。

 

「バン、ウン、タラク、キリク、アク」

 

 晴明が五芒星(セーマン)を描く。自らの名を冠したそれから繰り出されるのは、間違いなく必殺の一撃。契克も同じタイミングで最高速度に到達。助走距離を取らず、瞬間的に全力に到達するのは純粋な歩法も合わさったものだ。

 

「「滅」」

 

 禹歩を交えながら駆けることで、合間に挟む致命にして牽制の術式は当然のごとくお互いから逸れていく。飛び交う五行の力は相克し合い、駆け抜ける二人の周囲を彩るように弾けて消滅する。

 狙うは、最大の威力をぶつける交差の瞬間。

 限界まで堆積した呪いの一蹴りと、時空すら歪ませる重力の奔流がここに相対した。現代における、安倍晴明と烏崎契克の術比べ。闇の覇権も永遠の秩序も関係ない、どちらが上かだけを求めた戦いの、その決着は──

 

 

 

「だから、言ったんだ。君は最強になれるってさ」

 

 最強だと信じ、持ちうる知識を託した彼が勝利した。一点突破によって致命の一歩手前の深手を負い、片腕を失い脇腹に大きな欠落が生まれてなお、晴明は立っている。

 それは、眼前の友人から託された願い(呪い)のため。

 

「ああ、勝つさ。これ(最強)は、お前から貰ったのだから」

 

 最大にして最強の一撃を受けた契克の体は、もはや死の間際にある。だから、彼が死ぬその瞬間こそが──

 

「勝負はこれからやろ」

 

 彼ら(契克とゆら)にとっての勝機だった。極ノ番を使用したゆらの突貫。晴明も深手を負っていて、既に無限の距離を用いた守りは消散している。しかし、それでも届かない。

 ──これは別の未来の話ではあるが、晴明とゆらが戦った場合、晴明に軍配が上がる。そして、占術──星を読むことのできる晴明にとってそれは既知のことで。再度撃ち放った永劫輪廻がゆらの胸から下を吹き飛ばして、契克の残骸ごと彼女を城の外へと落下させた。狙い通りに。

 

「無策で来たわけでもあるまい。魅せてみろ、お前たちの総てを!」

 

 

 

 落ちる。墜ちる。腕も足も心臓も失って、葵螺旋城から地上へと一直線へ落下した。

 衝撃で体は襤褸のようになって、今にも意識を失いそうだ。そのまま近くを手放せば楽になれるのだろう。ただ──

 

「(あと数秒、気張れ……っ)」

 

 大きく口を開ける。予め投げておいた最後の切り札が落ちてくる瞬間まで、死ぬわけにはいかない。

 それは、薬指くらいの大きさだった。正確には、薬指そのもの。先ほど消し飛んだ契克の残骸にして、彼もしくは彼女が最期まで遺そうと庇っていた部位。

 

「最、期の……!」

 

 天海や心結心結が珱姫の体に仕込んだのと同じ、呪物と化した烏崎契克だ。自身の指一本を呪物に加工したのは、先ほどの交叉が終わってからゆらが来るまでの瞬間まで。その時間で成し遂げる技術力こそが、契克の本懐であった。

 

「最後の!」

 

 指定された言葉を叫ぶ。本当に必要かは分からないがと訝しみつつ。そして──

 

「変身!」

 

 それを飲み込む。頭と襤褸切れのような胴体しか残っていないが、それでも魂は健在だ。呪物そのものに宿っていた呪力をリソースに、反転術式を使って体を修復する。呪物の元の人格に死にかけの身体が引っ張られ、ゆらの髪からは色が抜ける。片目が空色に変わり、銀色となった髪は風に靡いていた。ふたり合わせた総呪力量は今や晴明と並ぶほど。本来の世界(ぬらりひょんの孫)の異物にして、最強と並ぶ存在。銀髪オッドアイの彼女は──

 

『特級術師オリ主フォームとでも名付けようか?』

「ダサいわ」

『しょうがないだろう。前前前世からの夢だったんだから』

 

 ──千年後に受肉した、特級術師オリ主だった。

 

 城からの落下を終え、地面へと着地する。帳は降りておらず、先ほどからの攻防は外からよく見えるだろう。もはやこの東京に夜はなく、喧騒は既に止んでいる。晴明以外の御門院や安倍姓は、悔いなく死んだか今も戦っているのだろう。

 

「一撃。それ以外は持たん」

『上等。どのみち最高火力の勝負になるな』

 

 ゆらは再び極ノ番を使用。飛行する彼女を撃ち落とそうとする晴明だが、呪力を篭めた煙幕でその動きを感知することができない。もとよりこれくらいなら突破できるだろうと超高重力の負荷によって周囲一帯を叩き落そうとするが、契克とゆらの二人分の呪力によって力技で飛翔が継続される。

 再び螺旋城の頂上へ舞い戻ったゆらは、全呪力を使った虚式を構える。

 

「なるほど。ならば全力で受けてたとう」

 

 この一撃ですべてが終わる。そのことへの名残惜しさと全力の術比べという高揚感を抱き、二人──いや、三人は最後の術式行使を準備した。

 

「なあ、契克。最期にもう一度、力を貸して」

『呪力の制限解除か。縛りは』

「未来全部。心も、身体も全部持ってけ」

『オレ一人じゃ体乗っ取っても命が持たないさ。──だから、オレの分も追加だ』

「……心中相手としては最悪や」

『あなたで満ちれば後悔はないくらいは言って欲しかったんだけど』

 

 狐の特級呪霊を従え、今からうずまきを撃とうとする最強オリ主たち(ゆら)。対するは無下限の守りを持った原作最強の陰陽師(晴明)

 

「完全な世界ならば、道満の掲げた大義もまた叶うだろう。お前たちは何故、そうまでして私を阻むか!」

 

 晴明は声を張り上げる。それに対して、ゆらと契克はただ笑った。

 

「失礼やな」

 

 それは、単純に。

 

「友情だよ」「友情や」

 

 こいつには負けたくないという、意地。

 

「──ならばこちらも友情だ」

 

 それもそうだと晴明は納得して、ゆらと同じ高さまで飛ぶ。回避は不可能、いや、はじめからその気もない至近距離。

 

「虚式・うずまき」

「畏砲・永劫輪廻」

 

 互いが無邪気に笑い、全力で攻撃を放った──




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