「お疲れ様で~す」
「お疲れさ~ん。明日のほうももよろしくね。」
「はい!では、また明日。」
バイトも終わって日付が明日へと切り替わろうとしている時間帯に私は帰宅するため駅を目指し歩く。駅に着くと電光掲示板などで母がプロデュースしているブランドの広告が目に入り心に曇りがさす。
「はあ~・・・。なんで私こんなことになったんだろう」
2年前まで私はトレセン学園に通うウマ娘だった。学生の頃の私は日々のトレーニングの甲斐もありURAファイナルズを制した後にドリームトロフィーに挑戦し目覚ましい結果を残し充実した学園生活を送っていた。
ドリームトロフィーに挑戦して2年と半年が過ぎ卒業も目前というところで突然母が学園へと訪れた。
「お久しぶりですわ。お母様」
「久しぶりね。URAファイナルズ優勝おめでとう。私も誇らしいわ。」
「ありがとうございます。それで今日はどういったご用件で?」
私はどうせURAファイナルズを制した自分に新作のモデルをやってもらおうと直接頼みに来たのだろうと考えていた。しかし、母からの頼みは私の予想とは全く違ったものだった。
「あなたの縁談が決まったわ。」
「え?」
私は突然、言われた母からの縁談話を理解出来ずにいた。
「お母さま今、なんと仰いましたの?」
「だから、あなたの縁談が決まったのよ。良かったじゃない。私もうれしいわ。」
あっけにとられている私を置いてけぼりにして母は縁談の内容を話し出した。相手は有名な財閥の一人息子らしい。
母が主催したパーティーで話のウマが合い、話していくうちに話題が私の話になりそこから縁談の話に発展したらしい。
「急に言われて困ります!それに私はまだ学生なのですよ!」
「そうね。でもそこは安心して頂戴。籍を入れるのはあなたが学園を卒業してからだから。」
母が言うには、すぐに籍を入れるのではなく籍は私が成人してから入れるとのこと。そんな問題ではないのだが…。
そして今週の土曜日に顔合わせも兼ねて両家で食事会を行うらしいのだ。
「そんなもの絶対、お断りですわ!」
自分の知らないところで勝手に決まっていく縁談に怒りを抑えられず母からの縁談を前のめりになりながら拒否した。
「はあ~あなたも大人になって頂戴。これはあなたの将来のためを思ってのことなのよ。」
「私は別にお母さまに将来を心配されなくても大丈夫です!」
「あなたのために私がどれだけ頑張っと思ているのよ!」
「私のためじゃなくお母さまのためでしょ!」
今まで親らしいこともしないで、今更なんだというのだろうか。私はソファーに座り直し自分自身を落ち着かせる。
「とにかく、私は縁談を受ける気はありません!お母さまも早く帰ってください!」
「いいえ。あなたには縁談を受けてもらうわ。それにこの縁談に賛成なのは私だけじゃないのよ。」
「誰が賛成しているというのですか?」
「あなたのトレーナーよ。」
「え?」
私はお母さまに言われた言葉に頭が真っ白になる。理解することを本能が拒絶したのだ。
「噓ですよね?お母さま。トレーナーが賛成するわけないわ!」
「本当よ。トレーナーさんもそこに立ってないで入ってきて頂戴。」
トレーナー室の扉が開き申し訳なさそうな顔でトレーナーが入ってくる。
「すまない。キング、僕も縁談には賛成なんだ。」
「トレーナーどうして・・・。」
「キングにはやっぱり一流の暮らしをしてほしいと思ったんだ。だから、この縁談は君の将来のためになると考えたんだ。」
トレーナーはそう言うと俯き私とは目を合わせずに黙ってしまった。そんなトレーナーの顔を私は見るがすぐに目線を彼から視線を外す。
私はトレーナーのことが好きだった。トレーナーも一緒だと思っていった。だからトレーナーが母の縁談に賛成したのがとてもショックだった。それと同時に私の中で何かが崩れる音がした。
「いいわ。お母さまその縁談受けましょう。」
「わかってくれて嬉しいわキング。今週、準備していて頂戴ね。」
トレーナー室から出ていくお母さまの後ろ姿を睨むが本人はそんな視線など気にせずとても嬉しそうにトレーナー室から出ていくのであった。
その後、婚約まで話がスムーズに進んだ。相手の男性はモデルをやっているらしい。正直トレーナーよりもイケメンだった。
世の女性の理想を詰め込んだ男性だったのだが私は少しも魅力的とは思わなかった。やはり、どんなにイケメンで気遣い上手でも私の中ではまだトレーナーが一番だったのだ。
その後縁談は上手くいき婚約も交わして、卒業後に結婚することが決まったのだが結婚が決まってからの私は心ここにあらずという生活を送り大好きなレースからも次第に離れていった。
そして、時は過ぎトレセン学園を卒業した私に結婚式の日が近づいていた。しかし、結婚式前夜というのに私の心は一向に晴れなかった。
そして悩み続けた私は結婚一週間前に婚約破棄を婚約者に申し出たのだ。私はこの苦しみに耐えられなかったのだ。
婚約相手は了承してくれたのだが、当然、相手の母親とお母さまは大激怒。
「あなたはここまできてどういうつもり!?」
「申し訳ございません。お母さま。でも私には無理なのよ。」
「あなたのために婚約相手を探してきたのに!あんな人もう来ないのよ!もういいです!あなたにはここを出て行ってもらいます!」
こうしてお母さまの逆鱗に触れた私は勘当されたのだった。あんなに満ち溢れた自分は何処へやら酷くやつれていて見る影もない。
こんな姿をかつての同期やトレーナーに見られるのが怖くて家を追い出された私は一人ひっそり生きていくと決意したのだった。
そして時が過ぎ今に至る。わたしは今アルバイトを何個か掛け持ちして生計を立て何とか生活出来ている。
勘当されてすぐのころの私は右も左もわからず失敗ばかりの毎日だった。だってしょうがないじゃない!洗濯機に洗剤を入れないとただ水洗いするだけなんて知るわけないじゃない!
今日もコンビニバイトを終えた私は売れ残った弁当を手にぶら下げながら帰宅中だ。
夜中に若い娘が一人で歩くのは危ないがこの暮らしをしていく中で夜中帰宅なんて慣れっこだった。
夜道はか弱い少女が歩いてい時間帯ではないので私は足早に自分の住んでいるアパートへ向かう。
しかし、私の足は止まってしまった。夜中には珍しく空いているスーパーの目の前で。
だめよ!キング!先月、自分にご褒美ばっかりで給料日一週間前に給料が底ついちゃって最後の一週間水だけで断食地獄に陥った記憶を思い出すのよ!逃げるのよキング!
私は煩悩を払い即座にスーパーの目の前を移動しようとする。その時私は見てしまったのだ。缶ビールの半額セールの張り紙を。
「今日は、食事代が浮いたから少しぐらいいいわよね。」
私は誰に言い訳してるのかもわからない言い訳を述べ、自分の欲望を受け入れることだけを考え明日のことは忘れることにした。
自分が住んでいる築40年のボロアパートに着くと二階にある自分の部屋と歩を進める。
階段からはぎぃーぎぃーと階段から鳴ってはいけない音が響いているがそんなことに文句は言ってられない。住める場所があるだけありがたいのだ。
「ただいま戻りました。」
一人暮らしで誰もいない部屋のはずなのに小さいころからの癖で帰宅の挨拶をしてしまう。
返事が返ってこないことに少し寂しくなりながらも変装で身に着けていた伊達メガネを外して玄関の傍にある戸棚において部屋着に着替える。
変装は大変だがもしも私の現役時代ファンがいたりしたら今の自分をファンに見られるよりはマシだからだ。
部屋着は昔から使っているものだ。今の私の給料の2ヶ月分ほどの値段がするものだ。
これを売れば生活の足しになるだろうがなんやかんや理由をつけてそれが出来ないままでいる。
部屋着に着替えた私はバイト先の店長から譲ってもらったテレビを点け冷蔵庫から缶ビールを取り出してちゃぶ台に置き座る。
勘当されるまで私はレースがすべてだったため深夜帯の番組を見たことがなかった。深夜帯に放送される初めて見たとき衝撃的だった。
「今日は月曜だからよ〇かしよね。あのリアルなインタビューの回答がリアルでいいのよね。」
お気に入りの番組にチャンネルを合した私は缶ビールを開けて一気に喉を潤す。この瞬間が毎日バイト疲れしている私の至福の時間だ。
「ぷはぁ~。やっぱり仕事終わりの一杯は最高ね!この一杯のために生きてるのよ!」
ここ最近の私は淑女らしからぬおっさんっぽい行動が増えていた。トレセン時代では一流を心がけていたからか何も縛るものがないと人間、堕落してしまう。
仕事終わりには楽しく飲まなきゃ明日の仕事に支障を来してしまうのでこれは仕方ないことなのよ。本当仕方ないことだわ。
「ぷぅふぅ!あははははっ!!!その体の何処からドラ〇もんの声が出てくるっていうのよ!!」
弁当を完食しコンビニで頂いたピーナッツをつまみに私は一人晩酌しながらテレビを見て爆笑していた。この時間が私にとって一番の幸せなのだ。
見ていた番組も終わり就寝時間も迫っているころ私は部屋の隅に飾ってあるトレセン学園に居た頃に同期とトレーナーと一緒に撮った写真がふと目に映る。
「懐かしいわね。みんなは今頃どうしてるのかしら。」
写真を見ながらトレセン学園過での思い出にふける。同期たちと駆け抜けたレースや同室の子へお節介を焼いたりする日々そして何よりも自分の思い人と二人三脚で歩んだ選手生活。
辛いこともあったが楽しいこともたくさんあった。もう一度だけでいいからあの日常に戻りたい。しかしもうあの日には戻れないのだろう。
「はあ~。もう寝て忘れましょう・・・。明日もバイトあるんだし。」
しかし、布団に入るが一向に眠ることが出来ない。眠りたいのに何かモヤモヤして頭の中で先ほどのことを考え続けてしまう。
やっぱり結婚していたらこんなことにはならなかったのではないかと悪い方向に考えてしまうのだ。
このままでは埒が明かないと考えた私は外の空気を吸って心を落ち着かることにした。
思い至った私は部屋着のまま部屋を出て夜の街へ一人散歩するのであった。
バイト帰りはいつも夜中なのだがこんな夜更けに出かけることは酒の買い足し以外ないため少し緊張していた。
数十分ほど夜道を歩いていると家の近くにある公園が見えてきたのでそこで一休みすることにした。
自販機でホットココアを買った私は公園のベンチに向かっていたのだがベンチに人が気持ちよさそうに眠っていたためベンチに座ることを諦め公園のブランコに腰掛ける。
昼間には子供たちが楽しそうに遊んでいて人で賑わっている公園だが夜の公園はあんまり人がいないため私だけの独り占めのような感じで少し心地よい。
ベンチに人がいるから私だけってことではないけど・・・。
私は先ほど買ったホットココアを開けて一口啜る。おいしい。ココアは本当にいい飲み物だ。私の辛い心に甘さを届けて心を癒してくれる。
先ほどまで過去の辛い出来事が徐々に無くなっていく。
昔のような日々を送ることはもう出来ないのかもしれないが今、私はこうやって生活出来ている。それだけで幸せではないののだろうか?
バイト先の店長は優しいし大家さんには家を追い出されて間もないころ右も左もわからない私を支えてもらった。こんな私でも今こうやって生活して周りにも恵まれている。
これでよいではないか。現状に甘んじることは駄目なことだが求めすぎるのもいけないことだ。
「そうよ!こうやって暮らしができてるだけでもありがたいことなんだからこれ以上望むのは欲張りよね!キングは幸せに優劣なんてつけないわ!オーホホホホッ!」
気持ちが晴れて気分がとても良くなり悩みも解消できた。明日からまた頑張れそうだ。気持ちの切り替えを終えた私は家に戻ることにした。
持っていたココアを公園のスチール缶ゴミ箱に入れて帰路に着く。
「え?キング?」
帰って早く眠りたいと足早に公園から出ようとしていた私に聞き覚えのある声が聞こえる。私は内心冷や汗をかきながら声のする方向へ振り替える。
「トレーナー!?」
そこにいたのはかつての私の担当トレーナーが立っていた。どうして、こんなところにトレーナーが?
トレセン学園のトレーナーはトレーナー寮に住んでいてここよりも遠い場所にいるはずなのに。
「どうして!トレーナーがここにいるのよ~!!」
私は思わぬ形でかつての思い人と再会するのであった。
「久しぶりだねキング。二年ぶりになるのかな?」
「久しぶりね。ええ、そうね二年ぶりねトレーナー。」
私は再開も早々そそくさと逃げようとしたのだが久しぶりに再開したのだから少し話をしようとトレーナーに誘われたため先ほどまで座っていたブランコに戻り腰掛けながらトレーナーと話すことになった。今日は厄日ね本当に。
「たまたまここを通ったらキングの声がしてまさかと思って来たらキングが居てビックリしたよ。キングは少し雰囲気変わったね。昔よりも少し大人っぽくなったみたいだ。」
「トレーナーはあんまり変わらないわね。あの時のまんま。」
いや、結構変わったと思うわよ!自分で言うのもあれだけど!でもトレーナーはあんまり変わってなくて少し安心したわ。
「でも、こんな夜更けにひとりさんぽだなんてどうしたんだい?」
「ちょっと眠れなくてね。少し気分転換に散歩してたのよ。」
「へえ~。昔のキングなら考えられないなあ~。こんな夜遅くにお出かけなんて。夏合宿お化けを怖がって一人でトイレ行けなかったのに。あのキングがなぁ~。」
「私も大人になったのよ!いつの話をしてるのかしら!?」
懐かしいやりとり。本当にあの時のまんまだ。何も変わらない。最初はトレーナーに今の自分を見られて少し焦ってしまったが今は純粋にトレーナーに再会できて嬉しい。
「本当に懐かしいな。トレセン学園のころを思い出すよ。あの頃のキングは本当凄かった。」
「もう~あんまり昔の話をしないで頂戴。恥ずかしいじゃない。」
「いいじゃないか恥ずかしがらなくても。担当して始めのころは大変だったなあ。僕も初めての担当で毎日手探り状態だったよ。」
「そうね。始めは意見が合わなくて喧嘩ばかりっだたわね。でもあなた口喧嘩弱いからすぐ拗ねちゃってたわね。」
「あはは・・君には叶わなかったよ。」
何気ない会話が終わり私は一つ気になることを聞いてみることにした。
「そういえば、なんでトレーナーはこんなところにいたのかしら?」
「知らないのかい?今日はセイウンスカイとスカイトレーナーの結婚式じゃないか。」
「ええ!!?スカイさんが結婚!!そうだったの!?」
トレーナーから聞いたことに自分の耳を疑った。噓でしょ?あの奥手だったスカイさんが結婚だなんて・・・。同じウマ娘としてなんか悔しいわ。
「知らなかったんだね・・・。てっきりキングは何か予定があって来ていないかと思ってたよ。」
「いえ知らなかったわ。トレセン学園を卒業してから誰とも連絡を取ってなかったから。まさかあのスカイさんが結婚だなんて・・・スカイさん頑張ったわね。」
「そうっだたんだね。あのカップルふたりとも奥手すぎて全然進展しないから痺れを切らした周りのみんなに背中を押されてゴールインって感じみたいだよ。」
「ふふふ。でしょうねふたりともヘタレだもの。他のみんなはどんな感じなの?」
「ウララ夫婦は今日、赤ちゃんを抱っこしながら結婚式参加してたよ。次は二人目に挑戦中らしいよ。」
「ウララさんママになったのね。結婚までしちゃってるし・・・。私が連絡しない間にみんな家庭を持っているのね。」
「そうだね。キングも今は奥さんだろ?旦那さんとはどうなの?」
私はトレーナーからの質問に言葉が詰まる。トレーナーに本当のことを言おうか迷ってしまう。もし本当のことを言ったらトレーナーは失望するのではないだろうか?
もう、昔みたいな関係に戻れなくなってしまうのではないだろうか?そんなことばかり考えてしまう。
「キングどうしたの?何か言いにくいことがあったりする?」
黙ったままだった私を心配されてしまった。やっぱり言いましょう。トレーナーには嘘はつけないわ。
例え失望されるよりも心配してくれているトレーナーに嘘をつくわけにはいかない。
「トレーナーには黙っていたんだけど・・・わたし婚約破棄をして家を勘当されたの」
「嘘だろ!?キング!!じゃあ、今君はどうやって生活しているんだい?」
「バイトを掛け持ちしてアパート暮らしをしているわよ。何とか食べていけてるわ。」
「」
トレーナーは私の言葉を聞いてとても驚いていた。そしてだんまりしてしまう。昔の担当が将来有望な男性と婚約破棄をし勘当されたことがとても信じられないのだろう。
そして、バイトをしてその日暮らしをしている私に失望してしまったのだろう。はあ~何で言ってしまったんだろう。もういっそ消えてしまいたい。
先ほどまで心地良いと感じていたのに今すぐにでも離れたい。
「トレーナー・・・ごめんなさいんね。情けない担当で。婚約破棄をしなければこんなみじめな姿にならなかったのに、自ら棒に振るようなことをして滑稽でしょ?こんなみじめな私を笑って頂戴。」
あぁ~。これで私の人生何もかも終りね。これから思い人からも見放されてしまう。私って本当におバカね。私は公園から出ようと立ち上がり歩き出す。
「何を言っているんだい?キング?そんなはずないだろう。」
「え?」
私の体は公園の外に出ることは無く、トレーナーに手を捕まれ私はこの場に留まることになる。
「君の行動は間違ってなんかいないよ。悪いのは僕なんだよキング・・・。君の気持ちを何も考えずにキングの幸せを自分たいで決めつけてそれを押し付けた僕たち大人が悪いんだ。」
「何を言っているのよ。トレーナー。全部私の自業自得じゃない!大人になれない子供のままだった私が悪いに決まっているじゃない。あなたのせいでじゃないわ!」
「いいや、キング僕が悪いんだよ。キングの婚約だって僕が弱かったからなんだよ。」
トレーナーはそういうと顔を地面に向け私と顔を合わせないように俯く。
「トレーナー何があったの?」
私は深呼吸をし自らを落ち着かせ理由を訊ねる。トレーナーぽろぽろと話し始めた。
「実はね。僕は・・・君の担当時代からずっと君のことが好きだったんだ。」
「え?」
・・・ん?意味が分からない。トレーナーが私を?私たちって両想いだったの?私は嬉しいという気持ちになるが同時にならどうしてあの時婚約に同意したのか気になった。
「なら、どうして?婚約に賛成だったのよ。」
「それはね。自信が無かったんだよ自分に。キングと僕では釣り合わない。キングは一流のウマ娘。それに比べての僕は平凡なトレーナー。僕じゃ君には釣り合わないずっとそう思ってたんだ」
「何よそれ。そんなはずないわ!あなただって一流よ。」
「キングはそうでも僕は僕を認められなかったんだよ。そしてね、僕がそう考えていた時にキングのお母様からキングの婚約の説得を手伝ってほしいと頼まれたんだ。だから僕は君の幸せを決めつけて協力することにしたんだよ。」
理由を聞いて正直、何よそれって感じだった。なんであなたは変なところでいつも素直じゃないのよ。
「でも僕は間違っていたんだキングの幸せを第一に考えるフリをして本当は君に気持ちを伝えるのが怖かったんだ。」
そして、トレーナーはさっきとは打って変わり私の目を正面からみる。
「謝ってももう、許されることではないけどどうか謝らせてくれキング。本当にすまなかった。本当に僕って気持ち悪い男だよね。トレーナーなのに担当を好きになってそして自分のエゴでキングに望まない結婚までさせようとして・・・。文句を言われるのは僕のほうなんだよキング。」
「なんで、今なのよ・・・」
「すまない。いやキングヘイローさん本当にすみませんでした。」
「そうか・・・僕に出来ることなら何でも言ってくれキング。」
「」
そういうとトレーナーは深々と頭を私に下げてくる。私は混乱していた。私はトレーナーに謝ってほしかったんじゃない。トレーナーにこんな形で告白されたかったんじゃない。私が本当に欲しかったものは・・・なんなの?
この二年間の中で私がは誰かに謝って欲しかったんじゃない。私の生活を誰かに見てもらって情けをかけてもらいたかったのでもない。
私が欲しかったものはそんなものじゃない。私が欲しかったもの。私が欲しかったものは。
考えるのよ。私が欲しいのは謝罪でもお金でも生活でもないもっと形ではない。あの頃よ私はあの頃に戻りたい。
そうよ私が欲しかったものなんて一つじゃない。
「トレーナー頭を上げて頂戴。私はトレーナーからの謝罪が欲しいんじゃないの。」
トレーナーが身構える。私が例え無茶難題を突き付けようと彼にはやり遂げる覚悟なのだろう。
「私もあなたが好きだった。いえ、今も変わらず好きよ。」
「え!?」
トレーナーは驚いているが、気にせず続ける。
「でもね。私はあなたをこれからも許すことは出来ないし。私もあの頃に戻りたいってずっと後悔してる。だけど、あのころには戻れない。だから・・・」
私は深く息を吸い肺の空気を一気に新しくする。
「あなたともう一度やり直させる権利を私に頂戴。」
「へ?」
トレーナーは豆鉄砲を食らった鳩のような顔になる。
「どういうことだい?君はこんな僕を許すと言うのかい?」
「そういうことじゃないわ。私は許すことが出来ないのよ。トレーナーも私のことも。だからねもう一度あなたとやり直して一緒に自分もトレーナーもゆっくり許していきたいの。」
「キング・・・。」
私はトレーナーに手を差し述べる。契約を結んだ日と同じようにいや、次はこちらからスカウトする。
「だからね、あなたにもう一度キングと歩む権利をあげる!だから私にあなたと歩む権利が欲しいの。」
「喜んであげるよキング。」
そういうとトレーナーは私の手を取る。私たちは間違った。だけど、私たちなら何度だってやり直していこう。
「それでねキング。同棲からはじめないか?」
「へ?」
トレーナーは何言っているのかしら。私は理解できずにトレーナーに聞き返す。
「何言ってるの?トレーナー。」
「何ってまずは同棲から始めないとなあと思ってね。それにキングは一人暮らしなんだろう?同棲したほうが家賃も浮く「そこじゃないわ!」
私はさっきからおかしいトレーナーからの提案に待ったをかける。
「さっきからなんで同棲のはなしになってるって言ってるのよ?」
「へ?だから君との結婚を前提に付き合ために真剣に考えているんじゃないか。」
「え?」
「キングが僕と歩んで許しあっていきたいってプロポーズしてきたんだろう。」
先ほど自分が言ったことを思い出す。確かにプロポーズに聞こえなくはない。ええ!!?
私、プロポーズしてたの!?うそでしょ!!私は顔に一気に熱くなり顔が赤くなっていくのを感じる。
「忘れなさい!!今すぐに!!!」
「ええぇ。無理だよぉそんなこと言われたって。」
「いいから!忘れなさいって!!」
あの頃に戻るってこういうのじゃないわよ!!
その後、彼らが皆に祝福されお転婆お嬢様なウマ娘と三人で末永く暮らしたとかしなかったとか。
読んでくださりありがとうございます。感想などを送って頂けると作者喜びます。