最近、私ビワハヤヒデの妹であるナリタブライアンと担当トレーナーはあんまり仲がよろしくない。
私の妹ナリタブライアンは「シャドーロールの怪物」の異名を持ち、現生徒会副会長も務める自慢の妹だ。
しかし、彼女は感情表現が上手なほうではなくいつも近寄りがたい雰囲気をいつも醸し出している上、我が妹ながら圧倒的なオーラをいつも放っているため普段から彼女と関りを持とうとする人間は少ない。
そんな彼女とフランクに関りを持っている数少ない人間がブライアンの担当トレーナーだ。ブライアンの担当トレーナーは見た目こそ平凡ではあるがレースやウマ娘に対する情熱は物凄く、初対面のブライアン相手に無視されながらもアタックし続ける彼の姿は某太陽よりも熱いテニスプレイヤーのようだった。
そして、彼の情熱にあてがわれ、半ばブライアンが折れる形で彼はブライアンの担当トレーナーになったのだ。
最初のころはトレーナーのことを鬱陶しそうにしていたブライアンだったが、トゥインクルシリーズをともに歩んでいくうちにだんだん心を開いていき姉の私からもわかるくらいに仲は良好だったのだが、そんな彼女たちの仲は最近うまくいってはいないらしい。
なぜ、そのことを知っているかというとあまり他人を頼らないブライアンが私に現状のことについての相談を持ち掛けてきたのだ。
彼女曰く、この前までは鬱陶しいくらいにしゃべりかけてきたトレーナーが自分の前では口数は少なく目もときどきにしか合わせてくれないらしい。
「なにか、心当たりなどなどはないのか? 」
質問に対してブライアンは顔を俯かせ考え込む。私は何かトレーナーとのすれ違いが原因ではないかと考えブライアンから心当たりを聞くことにしたのだが、本人の表情からは心当たりがなそうだ。
「・・・。わからん」
「本当に無いのか?ほんの些細なことでいいんだが・・・。」
「すまない。姉貴、本当に心当たりがないんだ。」
やはり、ブライアンには心当たりがないらしいがブライアンの言動や行動に問題があったのではないかと思う。そうでなければあの気さくな性格であるブライアンの担当が一、二週間も絡まないということはないだろう。
「すまない。姉貴からトレーナーにそれとなく事情を聴いてくれないか?」
ブライアンは顔は普段と変わらないのだが耳を後ろに倒して申し訳なさそうに頭を下げる。昔から耳のほうが正直なのはかわらないなぁ。
「わかった。わたしから、お前の担当トレーナーからそれとなく事情を聴いておくとしよう。」
「本当か姉貴!ありがとう。よろしく頼む。」
私が二つ返事で了承するとさきほどまで硬そうな表情をしていたのブライアンの顔は少しだけやわらかくなった気がする。
かわいい妹の頼みだ直ぐにでも事情を聴きに行くことにしよう。
ブライアンの話から三日後の放課後。授業が終わったため、私はブライアンの担当トレーナーの部屋を目指し歩いていた。今日はブライアンは生徒会の仕事(サボってたまった分の仕事)が忙しいらしく今日はトレーニングがないらしい。
歩くこと数分、ブライアンの担当トレーナーのいる部屋に着くと私はドアをノックした。
「どうぞ。」
「失礼する。」
私が部屋に入るとトレーナーは少し驚いたようなそぶりを見せた後すぐにディスプレイから目を離し私の方へと視線を移した。
「いらっしゃい。めずらしいね。君がひとりだけでこの部屋を訪れるのは。何か僕に何か用があるのかな?」
「ああ。少しブライアンのことで聞きたいことがあってね。」
「?。聞きたいこと?何かあったかな?まぁ、とりあえず、そこに座っていてよ。お茶入れてくるからさ。」
「わかった。」
普段、ブライアンの迎えなど以外ではめったに訪れない私が突然部屋を訪れたため少しだけ驚いてはいたが要件を言うと快く了承し、ソファーに座るように促す。
「少し待っていてね。お茶入れるから。」
トレーナーは慣れた手つきで給油機からポットにお湯を注ぐ。普段から、人に入れているからだろう、とても様になっている。
「めずらしいね。君がブライアンのいないときに来るなんて」
「いやなんてことはないんだけどね・・・。少し聞きたいことがあってね。」
「聞きたいこと?」
トレーナーは私の前にお茶を置くとソファーに座ると心当たりがないのか、右斜めに視線を移し考えたあとに私の顔に視線を戻す。
「最近、ブライアンがトレーナー君とうまくいっていないというものでね。ブライアンとなにかあったのかと思ってね。なにかあったのかい?」
私が質問を投げかけるとトレーナーは目に見えるくらいに頭に疑問符を浮かべている。うん?思った反応と違うぞ?なにか問題があるのではないのか?
「う~ん?心当たりはないかな~?別に普段過ごす中では特に悪い感じではないと思うよ?」
「そうなのか・・・。」
トレーナーは本当に心当たりがないらしく、頭に疑問符を浮かべながら必死になって探している。本当に心当たりがなさそうだ。
「本当かい?なにか些細な事でもいいんだ。教えてくれないか?」
「いや、本当だって。ミーティングの時だって普通だし、トレーナー室にいるときもあんまり変わったところがなんだ。」
これは困ったな。トレーナーの態度も普段とあまり変わらないところを見るにブライアンの勘違いかなにかすれ違い起きていてるのだろう。トレーナー君の態度からは感じられないが、ブライアンがとんでもないことをやらかしたのかだな・・・。後者の場合だったなら、解決することは容易ではないだろう。
「ミーティングではどんな会話するのかい?」
「う~ん。あんまり、会話することがないからな。普通に食べ物の話とかしてるぞ。あと、基本最低減のやり取りはしない感じだからな。ブライアンの気分次第で話す感じだな。あぁ、そういえば最近ブライアンから話しかけてくることが増えたな。」
「」
「なら、昼食とかは?何か変わったことはないかい?」
「ブライアンとの昼食かぁ~。たまに一緒に食べるけど」
私はトレーナー君との会話から何か得られるのではないかと考え、手当たり次第に聞いてはみるもののやはり、これといった答えは得られなかった。
バン!!!
トレーナー&ハヤヒデ「!!!????」
私が次の質問をしようとした瞬間に耳に響きわたりキーンという音とともにトレーナー室のドアが壊れる勢いで開かれた。
私とトレーナーがすぐにドアのほうに視線を移すとそこには目が血走り今にでも襲いそうなオーラを放っているブライアンがいた。
「ブライアン、どうし・・・」
私が声をかけにも反応を示さずにブライアンはまっすぐにトレーナーのもとへお距離を近づけた。
「おい、トレーナー!!本当に何が不満だっていうんだ!!私はアンタが困っているんならなんだってする!昼食の時にアンタが作るロイヤルビタージュースを飲まないからか?このぶっきらぼうな私の性格か?それとも、私の見た目か?本当にわからないんだ。教えてくれトレーナー。アンタが望むならなんだってする!!だから、何が不満なのか教えてくれ!!」
ブライアンは余裕がないのかいつも必要最低限のことは言わない寡黙でクールなブライアンが早口になり余裕のなさを表に出し、不安そうな表情を隠そうともせずにいる。
そうとう余裕がないのかもう少し近づけば某芸人の一芸のようにぶちゅっといけそうな距離まで顔を近づけていた。
目の前で起こる予想外の事柄に対して体は動かず思考だけが空回りしていく。そうやって、傍観しているうちにブライアンがだんだんとトレーナーを押し倒す勢いで距離を詰めていく。
まずい。このままではブライアンがかかるのも時間の問題だ。どうにかしなくては・・・。私は、慌てて脳をフル回転させて今の状況の打開案を導き出し動き出す。とにかくここからトレーナー君を連れ出さなければ。
私は、椅子に預けていた重心を左足に集めてトレーナー君とブライアンの間に体を挟もうと手を伸ばしながらトレーナー君の方向に視線を向ける。
そして、ブライアンが重なって見えていないかったトレーナーの顔が視線に飛び込んでくる。そして、その表情に私は唖然した。そこに映るものは乙女のような顔をしたトレーナーがいた。
私は、その空間に男は存在しないような感覚を覚えた。メスのような表情をするトレーナーは顔が赤くなりすぎており、出てもいないのに湯気が出ているような幻覚さえ見えるほどだ。
本当にどうしたんだ。トレーナー。君はそんな顔なんかしないだろう。どうして、そんな顔に・・・。
その時、ビワハヤヒデの脳に電流走る。もしかしてだが、ブライアンに対して乙女化をしていたトレーナーがブライアンとまともにやりとりができなかったためにそっけない態度になったりしたのではないだろうか?それなら、トレーナーが素っ気無いというブライアンの意見にも合点がいく。
しかし、トレーナー君どんだけブライアンのことが・・・。
「誰か・・・・助けて。もう、無理だよ~。」
私が一人考え込んでいるとおっと、ひとりで考え込んでいるうちに事態が悪化していたようだ。トレーナーがもう限界のようで、両手で顔を覆い隠し今にでも倒れそうなほどに足元がふらついている。
「トレーナー。失礼する!!」
私は、トレーナーを抱えてトレーナー室を勢いよく飛び出す。ブライアンにはあとでちゃんと説明しなければな。私はトレーナーを深く背負いこみ今後の対応のプランを組みはじめる。
「もぅ~ほんと反則だよ~。」
オルフェーヴル大好き。