魔剣異聞録~The Legendary Dark Slayer/Zero   作:月に吠えるもの

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Another Mission <裏切り者-Fallen knights> 31章

 

「デルフ!」

「あいよ!」

ルイズの掛け声と共にガンダールヴの魔人が背後に浮かび上がった。

既にその両手には武器を携え、右手には長槍を、左手に大剣を握っている。

ビアンコ・アンジェロ達は周囲を飛び回り様子を窺うが、アルト・アンジェロは静かに浮遊しながら見下ろしていた。

『外法を操る異教徒どもめ。教団の秘密を知った以上、帰しはせぬぞ!』

「誰が異教徒よ! あんた達こそ、ただの邪教じゃないの!」

吼えるルイズはタバサが掲げる杖に己の杖を重ねだす。

「ライトニング・クラウド!」

激しい稲妻の帯が空中で拡散し、飛び回る鎧騎士達へ殺到していく。

アルトが素早く手を振ると、三体のビアンコ達は散開しつつ上昇し、雷撃をかわす。

一行の後ろに回り込んだ一体は銃声と共に全身が雷光に包まれ、動きがピタリと止まってしまう。

スパーダが脇越しに背後へ発砲したレヴェナントのショットガンは、エレクトロハートによって付与された雷撃の散弾に続けてスラッグ弾を撃ち出し、ビアンコ・アンジェロに直撃する。

「四体四か。釣り合いが取れてちょうど良いぜ」

ビアンコ・アンジェロ達は時間差をつけて槍を突き出し突進してくるが、デルフが操るガンダールヴの魔人は剣と槍を巧みに振るって相手の槍を受け止め、時には弾いたりと次々にいなしていった。

 

「くっ……!」

一方のネロは振り下ろされたクレドの剣を右手で掴み、受け止めていた。

イクシード機構により加速された一撃がギルガメスの籠手にぶつかり、右腕の内側にも衝撃が伝わってくる。

クレドの愛剣・デュランダルはネロのレッドクイーンのような非正規の改造品ではなく、正規の武器だがカリバーンなどとは比べ物にならなかった。

「クレド……最初から全部知ってたんだな……」

デュランダルを押し返したネロは眉を顰め、体勢を整えるクレドを睨んだ。

「あの地獄門のことも……最近悪魔達が多くなったことも……何もかも……!」

ネロが戸惑いと非難の入り混じった眼差しで見つめる中、クレドは顔色一つ変えずに剣を構え直していた。

「ずっと俺やキリエを騙していたのかよ……!?」

「お前達が知る必要のないことだ」

元来、クレドという男は生真面目で堅物な人間であることを、昔からネロはよく知っている。

ネロや他の下っ端の騎士ですら知り及ぶ魔剣教団の暗部についても当然認知はしているが、決して冷酷非情な人柄でないことも承知していた。

だが、今のクレドは普段と違いネロが困惑する程、無情に過ぎる。

 

そんなネロの脳裏をよぎったのは、考えたくもないことだった。

「……まさか、あんたの両親が殺された理由も知ってるっていうのか?」

さすがに自分の身内に関する話題を出すとクレドは微かに眉を顰めはする。

「……もう言うなと言ったはずだ。教皇の目指す理想を成し遂げるため……もはや迷う訳にはいかないのだ」

言葉通りに、迷いは捨てたと言わんばかりの固い信念に包まれた表情だった。

教皇への深い忠誠心がはっきりと感じられるが、だからこそネロは訴えたかった。忠誠を誓ってはいけない相手だと。

「その教皇とアグナスが、あんたの両親を邪魔者扱いして殺したんだぞ!? それでも、あいつに従うっていうのか!」

必死にネロは真実を叫ぶが、クレドは僅かに目を細めながら静かに言う。

「確かに、私の両親は施設から脱走した被験者によって犠牲になった。だが、あれは不慮の事故だったのだ……。お前が拡大解釈をして教皇に罪を擦り付けようとするなら、私は看過できん」

「クレド……」

ネロは強く唇を噛み締めた。

どれだけ真実を訴えても、クレドはまるで耳を貸そうともしない。

自分の両親の死の原因が教団の悪行であることを知っていながら、その真相までは知らずに自分の中で決着をつけてしまっている。

真相がどうあれ、自分の肉親の仇であることに変わりない教団に律儀に忠誠を誓い続けようとするその神経はまるで理解できなかった。

 

「ふざけんなあっ!!」

絶叫と共にネロはクレドに殴りかかろうとした。

衝動のままに生身の左手が突き出されるが、クレドは軽く横に動かすだけでかわしてしまう。

「エア・ハンマー!」

「うおっ!?」

「……っ!」

突如、分厚い突風が吹き荒れ、クレドとネロの体がまとめて宙を舞った。

受け身を取って着地したクレドに対し、逆さまになったネロは空中でタバサに服を掴まれ、離れた位置へと降り立つ。

今のタバサの横槍が無ければ、ネロはすれ違い様にカウンターを喰らっていたことだろう。

 

ルイズ達が相手をする鎧騎士達はビアンコが一体、魔人の剣とスパーダのショットガンの同時攻撃によって仕留められていた。

鎧自体はかなり強固な上にガーゴイルのような存在なので、完全に破壊しなければ動きは止まらないのだ。

『――来い!』

アルトが手を振り、即座に広場の外縁まで飛んで離れると残るビアンコ達も素早く集まりだす。

剣を高くかざしたアルトに続いてビアンコ達も槍先を重ねると、徐々に青黒いオーラが球状に膨れ上がっていった。

『放て!!』

アルトの号令と共にオーラの礫は一直線にルイズとスパーダ目掛けて飛んでくる。

立ち塞がるガンダールヴの魔人は剣を前にかざして盾にした。

一発、二発、三発と立て続けに魔力の弾は放たれてきたが、その全てが剣に衝突しては掻き消えていく。

「舐めんなよ。んなもん、屁でもねえ!」

「お返しよ!」

ルイズが構えたケブーリーの銃から放たれたニードル弾が次々と鎧騎士達に殺到していく。

散開してかわそうとするが、ホーミング機能を付与したニードル弾は緩やかに軌道を変えて鎧騎士達に追い縋っていった。

 

タバサは膝をつくネロを背にし、静かに歩み寄ってくるクレドと対峙する。

「どけ。子供といえど、邪魔をするなら容赦はせんぞ」

「クレド……」

「話しても無駄」

説得は無意味であることはもはや明らかだ。

相手が女子供だろうが、向こうは決して手加減などしない。

ならば、最低でも戦闘不能にしてやるしかないのだ。

「ジャベリン!」

横に走りながらタバサは氷の槍を一発飛ばした。

クレドは横転してかわすと、一気にタバサ目掛けて突っ込んでくる。

「……ウィンディ・アイシクル!」

呪文を唱えていた最中、クレドは懐から何かを取り出すのをタバサは目にしていた。

赤く輝く石のようなものを自分の胸元にかざした途端、クレドの全身を一瞬同じ色の光が包み込む。

魔法を放つと同時にタバサは目を見張った。今、クレドが使ったものがタバサの想像通りならこちらの攻撃は通じない。

 

「な……!」

ネロは目を疑った。

タバサが放った氷の矢の雨は次々とクレドに当たるも、突き刺さるどころか逆に砕け散っているのだ。無論、クレドの体には傷一つ付いていない。

(スメルオブフィアー……!)

タバサも以前、スパーダに渡されて使ったことがあるマジックアイテムは、あらゆる衝撃や肉体へのダメージを阻む結界を作り出す力を持つ。

発動する回数こそ限られるが、このマジックアイテムの効果が及ぶ間、クレドは無敵も同然だった。

「――ハアアッ!!」

魔法を物ともせずにクレドは一気に踏み込み、イクシードの唸りを上げるデュランダルを振り上げた。

「……っ!」

咄嗟に杖をかざし刃を受け止めるタバサは、思わず顔を顰める。

加速された剣の一撃は非常に重く、手が痺れる程に強烈だった。

「フンッ!!」

僅かに力が緩んだ所に、クレドは間髪入れずに追撃してくる。

器用に体を捻り、切り返したデュランダルを下から一気に振り上げてきたのだ。

イクシードの唸りを上げて振るわれた一閃は、タバサの手から杖を弾き飛ばしていた。

 

「タバサ!」

ハッとしてルイズは思わず声を上げた。

タバサの杖は広場の端で転がっているものの、クレドに蹴りを叩き込まれた本人の体は広場の外まで吹き飛んでいたのだ。

杖を手放している以上、フライの魔法を唱えることすら叶わない。

「危ねえっ!」

ネロは慌てて右腕を覆うギルガメスの籠手を外し、タバサにその手を伸ばした。

10メートルは離れているので当然、届く訳が無いが青白く光る別の腕が一気に伸び、タバサの足を掴み取る。

ギルガメスの籠手を装着していると、悪魔の腕のパワーも相まって破壊力は増すのだが、何故だか魔力の腕が伸ばせなくなってしまう。故に、その力を使うには籠手を一度外すしかない。

それがネロにとってはどれだけ不都合なことになるか承知はしているものの、そんなことを気に掛ける暇などなかった。

「……おっと!」

タバサの体を引き戻し、そのまま右腕で抱きかかえてキャッチしたネロは勢いあまって後ろによろめきだす。

「……大丈夫か?」

「平気」

タバサの小さな体を降ろすネロは細く吐息を漏らして安堵したが、同時に顔を顰めていた。

 

「その腕……悪魔に取り憑かれたか……」

クレドは一層厳しい表情でネロを睨んでいた。

その視線は露わになった右腕へと注がれている。

普通の人間ではあり得ない異形の腕をネロは脇に隠そうとする。

ギルガメスの籠手は凄まじいパワーを発揮できるだけでなく、ネロにとってはこの異形の腕を隠してくれるという意味合いもあった。

それが台無しになった以上、もはや隠しても意味はない。

『アグナス殿の言ったことは本当だったのだな……』

残り一体のビアンコ・アンジェロを従えるアルト・アンジェロもクレドの隣に着地すると、ネロをじっと睨みつけている。

その鎧の下の顔がどんな表情になっているかは、悪魔を憎む魔剣教団の騎士である以上は考えるまでもないだろう。

 

案の定、アルトは剣をネロに向けて突きつけていた。

『我らをずっと謀っていたのか、悪魔め!』

はっきりぶつけられた罵倒にネロは何も言い返せなかった。

予想はしていたとはいえ、いざ堂々とそんな言葉を吐かれるのはショックだった。

(悪魔、ね……)

副長とは別に仲が良い訳ではなかったし、銃を扱うネロのことも〝邪道〟だの〝外道〟と常々、罵っていた程だ。

そんな相手に何を言われても聞き流してきたネロだったが、気が激しく滅入るのはこれが初めてだった。

 

「黙りなさい!」

そこへルイズが大声で怒鳴りつけていた。

ネロはハッとしてルイズの方を見やる。

「あんた達こそ何なのよ! ネロが今までどんな気持ちでいたのか、あんた達に分かるっていうの!?」

『悪魔に取り憑かれた者に、情けなど必要ない』

冷酷なアルトの反論にルイズはおろかタバサまでもがはっきり嫌悪に顔を顰めていた。

「そうかよ……」

力なくネロは俯いた。

好いていなかったとはいえ同胞だった相手にここまで拒絶されるのは、かなり堪えるものだった。

それが親しい相手だったら尚更だろう。

 

「ネロ……。アグナスからは、お前が悪魔の力をその腕に宿していると聞いていた」

ずっと沈黙していたクレドは厳かに切り出し始める。

「私も信じたくはなかった。……だが、今となっては私も遠慮なくこの力を使わせてもらうぞ……」

そう呟くクレドの体を光が包み込み始める。

ネロとルイズ達が驚き目を見張る中、スパーダは冷たい視線をクレドに浴びせていた。

「Foolishness.(馬鹿が)」

 

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  • 世界観
  • 読みやすさ
  • 話の展開
  • 戦闘シーン
  • 主人公の描写・設定
  • 悪魔の描写
  • 脚色したオリジナル描写・設定
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