魔剣異聞録~The Legendary Dark Slayer/Zero   作:月に吠えるもの

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Another Mission <帰天、再び-Shameless> 32章

「クレド……」

光が収まり、ネロは戸惑いの声を漏らしていた。

アルト・アンジェロと共に宙に浮かぶ異形の魔人は金色の翼を広げている。

それは、今目の前でクレドが己の姿を変貌させたものだった。

「あれって……ワルド……!?」

ネロと同じく困惑するルイズはクレドの姿に既視感を覚えていた。

まるで猛禽類を彷彿とさせる翼人の悪魔……それはかつてルイズ達を裏切った魔法衛士隊の男が、レコン・キスタに魂を売り渡して得た姿に瓜二つだった。

「微妙に違うけどな」

デルフの言うように、シルエットはほぼ同じだが細部は異なっている。

悪魔化したワルドは黒かったがこちらは白いし、背中の翼は右だけの隻翼だ。

左腕に盾を備えているのは同じだが、手にする武器は違った。

あちらは槍のように巨大化したレイピアだったが、こちらは金色の大剣である。

『これこそ、〝神〟に選ばれし者のみが辿り着ける境地! 人間を超越した存在への進化! 〝天使〟の力だ!』

高らかに叫ぶアンジェロ・クレドにルイズは顔を嫌悪に歪めた。

 

――偉大なる始祖に選ばれし者のみが人を超え、生まれ変わるのだ。天使としてな!!

 

言い回しこそ違うが、クレドの言い様は自分に酔ったワルドのものと同じなのだ。

「恥知らず……!」

躊躇なくルイズは異形の悪魔に身を落とした騎士団長を吐き捨てた。

その力の正体が何であるか知っているくせに、人間であることを辞めるばかりか、自らを美化しようとするのはあのレコン・キスタの連中と全く同じである。

そんなのは人でなし以外の何者でもない。

「ま、こっちの方が天使っぽくはあるなぁ」

皮肉を込めてデルフは笑った。

言われてみればワルドの方は悪魔としての威圧感しかなかったが、クレドの方は色が白いからか神々しい天使のような荘厳さがあった。

ワルドと違い、頭頂部に生えた小さな角は天使の輪のようになっているのも悪魔としての印象を薄めている気がしないでもない。

 

「違う……クレド……」

ネロは悲しげに悪魔と化したクレドを見上げている。

「それは……天使なんかじゃない。悪魔なんだ……!」

フォルトゥナ城であの銀髪のデビルハンターに見せてもらったアグナスの資料を読んでいた時、ネロは信じたくないと思った。

アグナスや教皇はまだしも、クレドまでもが悪魔の力をその身に宿すなどという外法に手を染めたなど何かの間違いだと心の底で否定したのだ。

誰よりも悪魔を憎み、フォルトゥナの民のために戦ってきた男がよりによって悪魔の力を受け入れるなど、皮肉でしかない。

 

『黙れ! 我らの神聖なる力を愚弄するか! この悪魔が!!』

クレドの横に浮かぶアルト・アンジェロは剣を突きつけて威圧した。

「それはこっちの言うセリフよ! この恥知らずのうつけ者!」

唇を噛み締めるネロに代わってルイズが食って掛かった。

自分達自身が悪魔の力を宿していることを知りながら、それを棚に上げてネロを悪魔呼ばわりする資格などないはずである。厚顔無恥の極みだ。

「こいつら、今の自分の顔を鏡で見たことがないのかねえ?」

デルフも溜め息交じりに呆れ果てた。

「ギーシュ未満。ただの馬鹿」

タバサに至っては珍しくはっきりと辛辣に彼らを切り捨てる。

ナルシストで自分に酔うギーシュでも一人の人間として最低限の矜持や道理は弁えている。

まともな人間であれば、悪魔の力を好き好んで我が物にしようなどとは考えない。

レコン・キスタにしろ、この連中にしろ自意識過剰にもほどがある。

 

『異教徒どもめ……我が教団への侮辱、万死に値する!』

憤慨するアルトの剣が突如激しい唸りを上げだす。

どうやらあの剣もイクシード機構を備えた代物だったらしい。見ればイクシードのブースターが備わっているが、ネロのレッドクイーンよりもさらに多い。

『覚悟しろ、ネロ!! 教皇の御為に、お前達を連行する!』

アンジェロ・クレドはネロに剣を突きつけ、鋭く叫ぶ。

付き従う二体の鎧騎士達も翼を広げ、左右に分かれて躍りかかってきた。

戸惑いつつ後退るネロはタバサを庇って右腕を構えようとした。

出来ればこの腕の力を彼らに、特にクレド相手に使いたくはなかったが、ギルガメスの籠手を付け直す暇もない。

 

『うおっ……!?』

アルト・アンジェロが慌てて空中で急ブレーキをして踏み留まる。

止まり切れなかったビアンコ・アンジェロはネロの目前にまで迫った直後、突如として鎧がバラバラに分断されて辺りに飛び散っていた。

ネロはハッとしてルイズ達の方を見やる。

(今のは、あいつが……?)

ルイズ達の保護者であるデビルハンターは、ネロが手にした物と同じ刀をいつの間にか振り抜いていた。

5メートル以上は離れているのに、あの男は鎧騎士に斬撃を浴びせたのだ。

はっきり見てはいなかったが、そうネロは感じ取ることができた。

 

「思い上がるな。――青二才」

冷然と呟きながらスパーダは閻魔刀を鞘に納め、ネロ達の元へと歩み寄っていく。

(怒ってる……?)

付き添うルイズはちらりと彼の横顔を見上げて息を呑んだ。

普段から冷徹なスパーダだが、その瞳はさらに冷たく酷薄でクレド達を射貫いているのが分かる。

 

『団長……! あれは……!?』

クレドの傍に戻ってきたアルト・アンジェロは横槍を入れてきたデビルハンターを見て困惑しだす。

『閻魔刀が、二つ……!?』

ネロが左腕に抱えるギルガメスの籠手に装着された刀と銀髪のデビルハンターが手にする刀を見比べてクレドは訝しんだ。

ネロの方は柄巻きが白いがあちらの方は金という微妙な違いはある。

だが、どちらも全く同一の存在であることをクレドは認めていた。

それは決してあり得ないことであり、戸惑いを隠せない。

 

「おい……」

「下がっていろ。お前のその力はこんな連中に振るうべきではない」

ネロとクレド達の間に立ったスパーダはじろりとアンジェロ・クレドを一瞥する。

睨まれた本人は僅かだが怯んでいた。





ミッション19・67-B・68で登場するアンジェロ・ワルドはアンジェロ・クレドの色違いみたいなものですが、違いは以下の通りです。
・体色が黒灰色
・翼が二つあり、羽が銀色
・左腕の盾は翼のものとは別物で手と完全に一体化していない
・盾の裏の左手が人型
・頭の上の丸い角がない
・武器はビアンコ・アンジェロのような槍(小さい)
・魔法を使う

作品の良かったところはどこですか?

  • 登場人物
  • 世界観
  • 読みやすさ
  • 話の展開
  • 戦闘シーン
  • 主人公の描写・設定
  • 悪魔の描写
  • 脚色したオリジナル描写・設定
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